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コフィー・アナン国連事務総長「ミレニアム報告書」 主な提案

プレスリリース 00/32 2000年04月03日

 報道解禁:4月4日(火)午前0時(日本時間)

 

 国連事務総長はミレニアム報告書の中で、世界の人々が直面する緊急課題を明らかにするとともに、加盟国がミレニアム・サミットで検討すべき多くの優先事項を提案している。事務総長はまた、サミットの場で即座に講じることのできる措置も勧告している。以下では、事務総長が提案する新たなイニシアチブに続き、各国首脳に検討が求められている目標と勧告を概観する。

 事務総長は報告の中で、4つの新たなイニシアチブを表明した。

  • ボランティア部隊 国連情報通信技術サービス(UNITeS)と呼ばれる組織が開発途上国において、インターネットおよび情報通信技術の利用と機会に関する集団研修を行うもの。
  • ヘルス・インターネットワーク 開発途上国の病院と診療所に1万のオンライン・サイトを設置し、最新の医療情報へのアクセスを提供するもの。このイニシアチブはWebMD財団、WHO、国連財団およびその他のパートナーによる後援を得ている。
  • 災害対策イニシアチブ「最初に現地へ(First on the Ground)」 自然災害や緊急事態に見舞われた地域で働く人道援助活動員に対し、携帯・衛星電話とマイクロ波による通信手段を提供するもの。このプロジェクトは通信会社L.M.エリックソンが主導し、国連のパートナーと赤十字国際委員会が後援する。
  • グローバル政策ネットワーク 若者の雇用問題に対する新しい持続的なアプローチを模索するもの。世界銀行総裁およびILO事務局長とともに招集され、民間セクターと市民社会の指導者も参加するこのハイレベル・グループは、1年以内に政府に対する勧告を行うことになる。

「欠乏からの自由」:開発に関する課題

 各国首脳は、以下の分野で行動を起こすことを促されている。
貧困:2015年までに、世界で1日あたりの所得が1ドル未満の人々の割合(現在は22%)を半減させること。
水:2015年までに、安全な飲用水にアクセスできない人々の割合(現在は20%)を半減させること。
教育:2005年までに、初等・中等教育の男女間格差を狭め、2015年までに、すべての子供が初等教育を修了できるようにすること。
HIV/エイズ:以下により、2015年までに、HIV/エイズの蔓延を食い止め、逆転させること。

  • 明示的な目標として、15歳から24歳までのHIV感染率を、2005年までに、もっとも影響の大きい国々で25%減少させ、2010年までに、全世界で25%減少させることを掲げる。
  • HIV予防の情報とサービスを得られる若い男女の割合を、2005年までに90%以上、2010年までに95%以上に引き上げるという、明示的な予防目標を設定する。
  • 影響が深刻な各々の国に対し、サミットから1年以内に国内行動計画を策定するよう促す。

スラムの解消:世界銀行と国連が発足させた「スラムのない街」計画を支持し、これに基づく行動を取ることで、2020年までに1億人のスラム住民の生活を改善すること。
若者の雇用:若者の失業を減少させる戦略を作り上げること。
デジタルの架け橋の構築:インターネットへのアクセスに対する規制面および価格設定面での障害を除去するために、政策の見直しを行い、人々がデジタル革命によって提供される機会を否定されないようにすること。
民間セクター:国内レベル、国際レベルの双方で、民間セクターとの強力なパートナーシップを構築し、あらゆる側面で貧困と闘うこと。

 先進国は特に、以下を促されている。
貿易のアクセス:貧困国の産品に対し、その市場への自由なアクセスを認めること。その第1歩として、2001年3月の国連後発開発途上国会議で、実質上、後発開発途上国からのあらゆる輸入品に無税かつ無制限のアクセスを認める政策を採用する準備を行うこと。
債務救済:昨年に合意された重債務貧困国のための債務救済プログラム拡張を遅滞なく実施するとともに、重債務貧困国が具体的な貧困緩和へのコミットメントを示すことを条件に、これらの国の公的債務を全額免除する用意を行うこと。
ODA:特に、その資源を真の意味の貧困緩和に割いている国々に対し、より寛大な開発援助を認めること。
HIV/エイズ:医薬品業界およびその他のパートナーと協力し、効果的で経済的に利用可能な抗HIVワクチンを開発するとともに、HIV関連の医薬品を、開発途上国でより広く使用できるようにすること。
アフリカ:アフリカのニーズについて、特別の措置を講じるとともに、同大陸の問題を克服しようとするアフリカ人の努力を十分に支援すること。特に、専門家と財団は、アフリカにおける低い農業生産性の問題に取り組むことを促されている。

恐怖からの自由:安全に関する課題

 各国首脳は以下を促されている。
国際法:国際法、特に、軍備管理に関する条約および国際人道・人権法の合意された条項の遵守を強化すること。ミレニアム・サミットでは、事務総長が寄託先となっている条約について、より多くの各国首脳・政府が署名を行えるよう、特別の便宜が図られることになっている。
平和活動:平和活動を実施する国連の能力を高めること。事務総長は、平和活動のあらゆる側面を再検討し、改善策を提案するためのハイレベル・パネルを設置している。パネルの報告書は、ミレニアム総会での審議に間に合うように作成される予定。
制裁の目標限定:安全保障理事会が採択した経済制裁が罪のない人々に与える過酷な影響を緩和し、目標となった体制により効果的な圧力を加えられるようにするための措置について合意すること。
小火器:特に以下により、小火器の不法取引を取り締まること。

  • 兵器取引の透明性を高める。
  • 西アフリカにおける軽量兵器の輸出入および製造の停止など、地域的な軍縮措置を支援する。
  • モザンビーク、パナマ、エルサルバドルおよびアルバニアで成果をあげた「兵器・物資交換」プログラムを、紛争後の状況において、その他の領域にも拡大する。

核兵器:核の脅威を解消する方法を明らかにするため、大きな国際会議を招集する可能性を検討する。

 持続可能な未来:環境に関する課題

 各国首脳は保全と管理という新たな倫理の採用を促されているが、その第一歩として、以下があげられている。
気候変動:京都議定書の採択・批准により、2002年までにその発効を図るとともに、温室ガス排出削減に向けた措置として、その目標の達成を確保すること。
緑の会計処理:環境問題を経済政策の主流に統合するため、国連の「緑の会計処理」システムを各国の国民会計に組み込むことを検討すること。
生態系評価:地球の健康地図を作成する国際協力作業である「ミレニアム生態系評価」に財政支援を提供するとともに、これに積極的な関与を行うこと。
地球サミット+10:2002年に予定される地球サミット10年後のフォローアップにおいて、世界の指導者が具体的で有意義な行動を採択するためのたたき台を準備すること。

国連の再生
 国連を世界の人々が利用できるより効果的な手段とするため、各国首脳は以下を促されている。

  • その責任をより効果的に果たし、かつ、世界のあらゆる人々から見たその合法性を高められるように、安全保障理事会を改革すること。
  • 国連がその任務を遂行するのに必要な資源を確保できるよう保証すること。
  • 事務局の資源が、すべての加盟国の利益となるよう、最大限に活用されるよう保証すること。このことは、事務局が利用できる最善の管理慣行および科学技術を採用し、加盟国の現状での優先事項を反映する任務に専心できるように努めることにより可能となる。
  • 非政府機関およびその他の非国家主体に対し、国連の活動に不可欠な貢献を行う十分な機会を与えること。