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「小型武器調査2003」に関する記者会見

プレスリリース 03/067-J 2003年07月14日

 「小型武器調査2003」のプログラム・マネジャー、ピーター・バッチェラー氏は7月8日、同報告書の発表記者会見において、2003年度版の小型武器調査は小型武器と経済の低開発との直接的な連関を証明したと述べました。

「小型武器非合法取引のあらゆる側面の防止、対策および根絶のための行動計画実施を検討する第1回隔年国際会合」と時を同じくして開かれたこの記者会見には、バッチェラー氏のほか、スイスのイェノ・シュトラエリン国連常駐代表と小型武器調査の責任者キース・クラウゼ氏も出席しました。

 記者会見の冒頭、シュトラエリン氏は、小型武器の野放しの拡散と闘う決意を表明。この問題に対するスイス政府の真剣な取組みは4つの分野で実証済みだとしました。第1に、政策レベルでスイスはフランスとともに、小型武器のマーキング、登録および追跡に関するイニシアチブを発足させました。第2に、スイスは国連開発計画(UNDP)の小型武器拡散の防止と削減のための信託基金に74万ドルを拠出するなど、積極的な援助を行っています。第3に、スイス政府は国内、地域および世界的レベルで、国連行動計画の実施に関連するイニシアチブを支援しています。このように、スイスは自国の状況だけでなく、アフリカやラテンアメリカにも関心を示しています。そして第4に、スイスは全世界の研究プロジェクトと研究機関を支援しています。なぜなら、小型武器との闘いには、包括的な情報を入手できることが不可欠だと確信しているからです。

 シュトラエリン氏は記者団に対し、最初2回の年報が小型武器問題の複雑性を強調しており、これに対するグローバルな認識の向上に一役買ったと述べ、この分野の関係者にとって、小型武器調査が標準的かつ不可欠なツールとなったとの見解を披露。2003年度版は、小型武器と人間開発との連関性に焦点を当てたという意味で、さらに独創性の高いものになったと語りました。この関連で、同氏は、小型武器が各国の経済だけでなく、その国民の生命をも脅かしていることを認めた上で、この年報の革新的な性格を賞賛。例えば、報告書は小型兵器への需要を削減するためのプログラムに関する提案を示していると指摘しました。これまでの戦略は、供給の削減のみを重視するものでした。

 バッチェラー氏によれば、今年のテーマである開発と小型武器蔓延の連関は、イラク情勢、および、米国のブッシュ大統領のアフリカ訪問を考えれば、特に妥当なものといえます。開発途上国の貧しい人々は、先進国の貧困層よりも小型武器で命を失う可能性が2倍以上高い、と同氏は述べ、小型武器の間接的な影響を強調しました。例えば、小型武器は援助要員と救済機関の活動を妨げています。小型武器によるけがは恒久的な障害をもたらし、労働のパターンに影響することが明白であるほか、これら武器が容易に手に入ることにより、犯罪と避難民の数も増えています。さらに、小型武器は教員と生徒が学校に通う意志をくじいたり、農民が市場へ品物を届ける妨げとなったりしています。暴力の激化はまた、社会的な支出に使われる税金の徴収にも影響しています。バッチェラー氏はイラクに言及し、小型武器が簡単に手に入る状況では、紛争後の復興に取りかかったり、不安定な地域の安全と安定を実現したりすることが困難だと述べました。

 調査報告書の構成について、バッチェラー氏は記者団に対し、小型武器の生産を取り扱う第1章では、武器業界が成長を続けていること、および、米国とロシア連邦が市場を支配していることが示されたと発言。備蓄に重点を置く第2章では、ヨーロッパ人は銃のない社会で生活していると感じているものの、欧州連合(EU)域内には実際、8,400万丁の銃器が存在し、その80%が民間人の手元にあることが明らかになったとしました。また、小型武器取引を取り扱う第3章によれば、欧州連合は全体として、最大の小型兵器輸出地域となっています。

 これに続き、クラウゼ氏は、イエメン、グルジアおよびコンゴ共和国に関する3件の事例研究について語りました。イエメンは世界で最も武器の多い国の一つですが、犯罪の水準は特に高いとはいえません。他方、グルジアの事例は、ソ連崩壊後に小型武器が簡単に手に入るようになったことで、紛争規模がどれだけ拡大したかを如実に示しています。また、コンゴ共和国では、武器回収プログラムが真剣に実施されてこなかったため、2000年には戦闘が再発しています。この3つの事例は、小型武器調査の多様性をよく示しています。

 世界中での小型武器の増大について質問を受けたクラウゼ氏は、全世界での備蓄増加分が廃棄された武器の数を上回っていることを認めました。

 小型武器が増加を続けていることは遺憾だとの指摘に対し、シュトラエリン氏は、これが苛立たしい動向であることを認めながらも、各国はこの問題に関心を向け始めたばかりであり、よりよい成果の達成にはさらに時間が必要だと回答しました。

 武器売却に歯止めをかけられるのかとの質問に対し、バッチェラー氏は、武器生産は特に儲かる事業ではなく、ベルギーでは破産申請中のメーカーもあると回答。また、冷戦の遺産として余った小型武器が流出し、グローバル市場での価格を引き下げていることが、他社の業界参入を思いとどまらせているのではないかと述べました。