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国連グローバル・コンパクト
GCサミット、腐敗防止の必要性を強調し閉幕

プレスリリース 04/061-J 2004年07月08日

企業幹部、政府高官、市民社会指導者400人超が参加、
責任ある企業市民の育成に向け1日間の討議
(2004年6月24日、ニューヨーク国連本部にて)

1日間の「グローバル・コンパクト(GC)・リーダーズ・サミット」を終えるに当たり、コフィー・アナン国連事務総長は2004年6月24日、GCの10番目の原則として腐敗防止が追加されたと発表しました。当面の課題は、GCの新たな戦略理念の中身をしっかりと定め、対象範囲の拡大に見合う新たな統治機構を設計することとなります。

責任ある企業市民を育成する国際的イニシアチブとして1999年に事務総長が導入し、翌年に正式発足したGCは、世界の財界人に対し、企業の自主的な方針と行動を通じたグローバルな経済発展の恩恵を「取り入れ、実現」するよう呼びかけています。GCはあらゆる政府の支持を得て、人権、労働基準および環境を重点とする9つの指導原則を定めています。

国連で開催された財界、労働界および市民社会指導者の会議としては最大かつ最高レベルのものとなったこの1日間のサミットは、約70カ国の参加企業ほぼ1,500社を擁するGCの影響を検討するために、アナン事務総長が招集したものです。きょうのサミットには企業幹部、政府高官および市民社会指導者400人以上が参加し、一連のラウンド・テーブル(円卓会議)、対話および記者会見も行われました。

この一日を終え、GCに対する思い入れが改めて深まったことを指摘しつつ、アナン事務総長は、サミットに出席した指導者たちが、先行きに対する不安と恐怖が高まっている時代でも、企業、労働者、市民社会、政府が反目を乗り越えられることを実証したと述べました。紛争地帯での人権の擁護、適正な労働条件の確保、「腐敗ゼロ」方針の実施など、幅広い具体的な約束も交わされました。

GCの中心的比較優位はその普遍性、国際的正当性、および、真の意味でグローバルなプラットフォームになれる可能性にあるとしつつ、アナン事務総長は、グローバルな活動とローカルな活動との間の連携、相乗効果および相互支援の可能性をGCの新たな戦略理念で特に強調する必要性を指摘。貿易、投資および科学技術が複雑に絡み合って結びついている「地球村」は、共通のきずなと価値観をさらに強めなければ繁栄できないと付け加えました。

国連総会のジュリアン・ハント議長(セントルシア)は、幅広いアクターが積極的なパートナーとして国連の活動に参加すれば、国連は憲章に掲げられた目標と目的をよりよく実現できるだろうと指摘。財界人と市民社会指導者のサミット出席は、協調と協力が平和な社会の構築に不可欠な礎であることを如実に示していると語りました。議長はまた、きょうの議論により、人権を擁護し、国連のグローバルな貧困対策を前進させるというGCの目標実現に向け、新たな弾みが生まれるだろうとの期待も表明しました。

一日を通じて行われたラウンド・テーブルの成果について報告した各代表は、GC参加企業が増えるにつれ、政治的な介入と官僚組織化を排除し続けることが重要になるだろうと指摘。流通業界や証券取引所などからは、数多くのイニシアチブが提案されており、これを具体的な行動に移すことが重要であるとしました。また、GCを疑問視する向きも多いため、10原則に実質的な拘束力が生じるかどうかは不明だと指摘する発言者もいました。

今夕には、さまざまな団体から具体的な行動も提示されました。紹介された行動の一例として「アフリカ製コットン」があげられます。これは、アフリカ製コットンを一つの品質表示ラベルとして確立しようというイニシアチブです。また、GCの新たな腐敗防止の原則に関する別のイニシアチブでは、政府、国際機関および企業に対し、腐敗および賄賂を許さないよう呼びかけがなされています。

◇コフィー・アナン国連事務総長声明
「前進の道のり:コミットメントと行動(The Way Forward: Commitment and Action)」と題する閉会の辞で、コフィー・アナン国連事務総長は、世界のあらゆる民族、政府および他のステークホルダーが一堂に会し、共通の課題を話し合い、共通の解決策を見出すこの国連総会会議場は、サミットの締めくくるにふさわしい場所だと述べ、この一日で実質面での大きな進展が見られたとしました。

一日を終えるにあたり、GCと責任ある企業市民へのコミットメントが新たにされたと事務総長は発言。サミット参加者はパートナーとして、意見の相違と緊張関係を行動に向けた建設的戦略へと変え、GCが抱える課題に取り組んだとしました。また、指導者たちは、先行きに対する不安と恐怖が高まっている時代でも、企業、労働者、市民社会、政府が反目を乗り越え、共通の土台に立って物事を進められることを実証したとも述べました。

アナン事務総長はさらに、投資関係者のはじめての参加が、市場利益とあるべき企業実践とを調和させることに対する関心の高まりを表しているとも発言。それはまた、正しい行いを求める企業の姿勢をさらに強める上で重要なよりどころを提供するものだと述べました。

アナン事務総長はこの日、腐敗防止という10番目の原則がGCに加わったことを発表。この修正に至る過程での集中的な協議は、参加者の大多数がGCの強化を望んでいることを示しただけでなく、他の模範となる審議過程でもあったとしました。その結果、GCは成長と発展を妨げる最大の障害の一つ(腐敗)に取り組み、トランスペアレンシー・インターナショナルのような団体との協力を緊密化する体制が整いました。

アナン事務総長はきょう、企業のサプライチェーンでGCの原則を実施に移すこと、紛争地帯で人権を擁護すること、適正な労働条件を確保すること、クリーン・テクノロジーに投資すること、反腐敗方針を実施に移すこと、エイズなどの病気と闘うこと、後発開発途上国で零細企業を育成することをはじめ、幅広い具体的な約束が交わされたと発言。指導者たちは、原則とプロジェクトが表裏一体をなし、規範面と実践面での取り組みは補完関係にありうることを実証したと語りました。また、国連自身もGCの原則を取り込むことにコミットしています。当初から、GCの特異な成果の一つは、内部からの国連の刷新を助けることにありました。アナン事務総長によれば、国連内部のプロセスでGC原則を採用することによって、この方向に向けてさらなる一歩が踏み出されたのです。

アナン事務総長はさらに続けて、多くの重要な側面で、旅はまだ始まったばかりだと発言。過去4年間にGCが達成した成果を見れば、自主的イニシアチブがうまく行くことは明らかになったものの、そのためには確固たる意思が必要だとしました。事務総長によれば、政府は、国民全員の利益となるような正しい政治を行わなければなりません。企業は、企業責任と慈善活動を通じて提供したものを、ロビー活動によって取り返すようなことを慎まなければなりません。市民団体も、財界が一枚岩ではないことを認める必要があります。そこには指導者も脱落者もいます。プラスの方向に踏み出した指導者は支援すべきです。

目前の課題は、GCの新たな戦略理念の中身をしっかりと定め、対象範囲の拡大に見合う新たな統治機構を設計することだ、とアナン事務総長は発言。GCの中心にある相対的強みは、その原則の普遍性、国連だけが体現できる国際的正当性、そして、先進国だけでなく開発途上国でも、幅広い訴えかけを行う真の意味でグローバルなプラットフォームとなれる潜在的な可能性にあるとしました。また、このことから、GCの新たな戦略理念は、グローバルな活動とローカルな活動との連携、相乗効果および相互支援の可能性に特に重点を置くものとしなければならないとも述べました。

アナン事務総長によれば、GCの新たな統治機構を考案する必要もあります。ビジネスの言葉に置き換えれば、GC事務所は、ブランド管理と品質保証を第一の使命とすべきです。官僚組織化は避けるとともに、オーナーシップと発案力は、企業、労働者、市民社会、原則の擁護者である国連機関、ほとんど自然発生的に林立、急拡大する国内ネットワークを含め、すべての参加者がさらに幅広く共有しなければなりません。これら国内ネットワークの3分の2は開発途上国に所在するほか、参加企業のほぼ半数も開発途上国に本社を置いています。

共通のきずなと価値観をさらに強めなければ、地球村は繁栄できません。貿易、投資、科学技術など、さまざまな要素が絡み合うことにより、その未来は固く結ばれています。「人々の生活にプラスの変化をもたらし、平和で正しく機能する持続可能な社会の礎を世界中に築くことができるまで、たゆまぬ努力を続けようではありませんか」とアナン事務総長は呼びかけました。

◇ラウンド・テーブル(円卓会議)の要旨
ラファルジュ(Lafarge)のベルトラン・コロンブ(Bertrand Collomb)会長は、自らが参加したラウンド・テーブルの成果に触れ、参加者はGCに対する強い思い入れを示したと発言。流通業界や証券取引所などからは、具体的な部門別イニシアチブの提案があったとし、これを具体的な行動に移すことが重要だと述べました。

コロンブ会長によれば、GCのねらいは、ごく一部の企業を選んで、その利点を際立たせるのではなく、企業責任を追求するグローバルな努力にできる限り多くの人々を参加させることにあります。この目的を実現する上で、企業は他のパートナーと連携すること、また、政府と国際機関はGCを認識し、その原則の普及を支援することが重要です。GCは、さらに多くの企業からの確約を期待できるものの、政治的介入や硬直的な官僚組織とは無縁の、身軽でインフォーマルな組織であり続けなければなりません。

タラル・アブガザレー(Talal Abu-Ghazaleh)社のCEO、タラル・アブガザレー会長は、自らが参加したラウンド・テーブルの成果を発表し、GCについていくつかの提言を行いました。具体的には、優先課題として企業型の組織構造を含む統治機構を設計・導入すること、資源提供、提唱活動およびリーダーシップ発揮の呼びかけを行う作業部会を設置すること、自他をともに腐敗させるという二重の罪を非難する腐敗防止の文化を確立すること、「グローバル企業市民」を事業ブランドにするための啓発計画を発足させること、および、経済指標の実質的影響を反映する社会的便益指標を開発することがあげられます。

国際自然保護連合(IUCN)のアキム・シュタイナー(Achim Steiner)事務局長は、リーダーシップの考え方を含め、きょうの会合では3つの事柄が際立ったと述べました。アナン事務総長はダボスで、GCの呼びかけを行うというリーダーシップを発揮しました。もう一つの問題として、測定あるいは説明責任の概念が挙げられます。企業が差別化を図ろうとすれば、説明責任を高めることが不可欠であり、GCはこれを避けて通ってはなりません。シュタイナー事務局長はまた、有言実行の必要性も強調。GCに対して懐疑的な向きも多く、GC 10原則に実質的な強制力を与えられるかどうかは不明だとしました。また、こうした次なるステップを踏まなければ、GCはリーダーシップ以外の役割を果たせないだろうとも述べました。

◇集団行動に関する発表
オスティムOSB(Ostim OSB)代表のジャニナ・オットー(Janina Otto)氏は、新たな「アフリカ製コットン」イニシアチブについて、このイニシアチブの目標が、アフリカ綿を第三世界で生産される綿の品質表示ラベルの一つとして確立することにあると述べました。綿はアフリカ最大の輸出産品です。多くの国々で水と土壌資源が枯渇していることから、持続可能な綿生産方法の重要性が高まっています。綿の専門家との協力により、良質な綿花を持続可能な形で栽培する方法を判断する基準を定めるというのが、このイニシアチブの考え方です。このプロジェクトの特徴は、需要市場志向だという点にあります。プロジェクトには、アフリカ市場からの代表者の参加が不可欠です。

ファイザー(Pfizer)のチャック・ハードウィック(Chuck Hardwick)部長は、GCの新たな腐敗防止原則に関し、賄賂の額は年間3兆ドルに及ぶと見られ、隠れた重税となっていることを指摘。新たな腐敗防止原則のねらいが、あらゆる形態の腐敗と闘うことにあるとした上で、ラウンド・テーブルに参加したおよそ150社は、腐敗防止を優先課題としていると述べました。政府に対しては、監視を強め、現行の腐敗・賄賂防止条約を順守すること、国際機関に対しては、透明性を高め、腐敗防止を講じるよう政府に促すこと、企業に対しては、腐敗防止についてベスト・プラクティスを採用することをラウンド・テーブルは呼びかけています。また、政府に対してはさらに、透明性を高めることが呼びかけられています。

ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のマネージング・ディレクター、アンソニー・リン(Anthony Ling)氏は報告書『思いやりのある者が勝利する(Who Cares Wins)』を提示し、20の主要な金融機関のCEOがこの報告書に支持を表明していると発言。報告書は、環境、社会および企業統治問題が健全な金融市場にとって重要だということを示す、金融業界の真剣な趣意書にあたると語りました。同氏によれば、このような問題は、新しいグローバル世界における経営全般に欠かせない側面であり、これに正しく対処することで得られる対価は大きくなっています。残念ながら、このことは十分に理解されておらず、投資業界が望んでいることと、企業が投資業界の要望だと考えていることとの間には、極めて大きな隔たりがあります。

全国人民代表大会(全人代)の成思危(Cheng Siwei)副委員長は、各企業の決定が他の企業によって制約され、外部環境から影響を受けるという点で、自由とは相対的なものだと発言。自由企業システムがなければ市場経済は成立しえないが、そのシステムは時流にかなったものでなければならないと述べました。また、CEOが所有者の利益だけを考えればよかった時代もあったが、第2次世界大戦後には、顧客の利益を考えなければならないことを認識する向きも出てきたとも述べました。

近年、CEOの中には、自らに社会や人々の利益を考える責任があり、人権や環境、さらには腐敗防止にもさらに関心を向けるべきであることに理解を示す者も出始めました。成副委員長は、GCの10原則が実行に移されるだろうとの期待を表明。政府は企業に対し、ハードな制約として法律面で、また、ソフトな制約として道徳面で、これら原則の採用を促すべきだと述べました。中国は中央計画システムから社会主義的市場システムへの移行期にありました。市場は資源配分に基礎的な役割を果たさなければならない一方で、中国的な特色を備えた社会主義制度も発展させなければなりません。副委員長は、中国でのGC実施が、平和的な国家の発展に貢献するだろうとの信頼を表明。サミットがGC推進の一里塚になることを期待すると述べました。