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2026年の優先課題に関する総会でのアントニオ・グテーレス国連事務総長の発言(ニューヨーク、2026年1月15日)

プレスリリース 26-009-J 2026年02月09日

UN Photo/Manuel Elías

各国代表の皆様、

新年あけましておめでとうございます。

2026年中の皆様、そしてご家族の方々の平和と健康をお祈りいたします。

事務総長が総会に出席し、今後1年間の優先課題を示すにすることは、伝統となっています。

私にとって、今回はその最後の回となります。

私は、2026年の1日たりとも無駄にせず活動していくことを断言します。

私はまた、私たちが実現可能であることを知っている、よりよい世界に向けて努力し続け、闘い続け、これを求め続けていくことを固く誓い、そして決意しています。

すでに、総会議長からはきのう、今年の課題に関するブリーフィングがありました。

私たちの目の前にある喫緊の課題には、枚挙の暇がありません。とりわけ、私たちが「未来のための協定」とUN80イニシアチブの履行を進める中においては。

そこで、私はきょう、この伝統的な機会を捉え、いささか伝統的ではないお話をさせていただきたいと思います。

それは今年だけでなく、その先を見通して、私たちの世界の姿を変えつつあるより大きな力とメガトレンド、そして私たちが対処せねばならないより深遠な課題について率直に語ることに他なりません。

チェックリストを提示するのではなく、私たちの活動の指針とすべき3つの大原則に焦点を当てたいと思います。

しかし、まずはその背景からお話しさせてください。

各国代表の皆様、はっきりとさせておきましょう。

背景は混迷を極めています。

私たちの世界には紛争や不処罰、不平等、そして予測不可能な出来事があふれています。

それは、自滅をもたらすような地政学的分断や、言語道断の国際法違反、開発・人道支援の大幅な削減に反映される世界の姿です。

こうした力関係やさらに多くの動向が、グローバル協力の基盤を揺るがし、マルチラテラリズム(多国間主義)それ自体のレジリエンス(強靭性)を試練にさらしているのです。

そこに私たちの時代の矛盾があります。国際協力が最も必要とされているまさにその時期に、これを活用したり、これに投資したりしようとする意志が最も低下しているからです。

国際協力の死を看取ろうとする者までいます。

確信をもって言います。私たちは決してあきらめません。

私たちはガザ、ウクライナ、スーダン、そしてさらに多くの地域での和平の実現に全力で取り組み、必死で支援を求めている人々に不断の救命援助を届けています。

そして、この混迷を深める状況の中で、国連に活動の場が与えられていなかった場所でさえ、私たちはその機会を勝ち取っていることも認めようではありませんか。

私たちは、人工知能(AI)に関するグローバルな対話を積極的に支援し、その強大な力を人類に資するものとし、人間の尊厳を擁護せねばならないと主張しています。

私たちは公正で持続可能な開発資金を確保するための取り組みで最前線に立ち、どの国も取り残されないような改革と新たな仕組みを求めています。

私たちは気候変動対策の緊急な必要性を積極的に訴えつつ、野心ある行動を求め、そして政府や企業、市民社会の結集に努めています。

私たちはあらゆる機会を捉えて、 最も脆弱な立場に置かれた人々や国々のニーズに光を当てようとしてきました。

そして私たちは今年、これらすべての分野、そしてその他の分野でも、精力的な取り組みを続けていきます。

今後数週間で、私たちが予定しているのは以下のとおりです。

 AIがもたらす機会、リスク、影響を公平に、エビデンスに基づき評価する「AIに関する独立した国際科学パネル」を立ち上げる。

 「Beyond GDPに関するハイレベル専門家グループ」の提言により、人間と地球にとって本当に大切なものをよりよく反映する形で、進歩とウェルビーイングの進捗を測定する新しい方法を提示する。

 国連が将来に向けて最善の備えをできるよう、私たちの継続的な対話と協力を育んでいくため、UN80イニシアチブに関する皆様との一連の月次会合を始める。

 国連開発計画(UNDP)と国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)、UN Womenと国連人口基金(UNFPA)をそれぞれ統合した場合に、私たちの開発分野の活動の効率性と一貫性が高まる可能性について初期評価の結果を提示する。

 平和活動の効果と対応力を高め、今日の複雑な課題に対処できるようにするための検証も進めていく。

これらはすぐに取るべき次のステップの一部に過ぎません。

あらゆる活動に全力を挙げて邁進していきます。

各国代表の皆様、

私たちは劇的な変化の時代に活動しています。そして、世界のありのままの現状を反映する必要があります。

破壊は必ずしも破滅的となるとは限りません。

建設する力となることもあります。

UN80イニシアチブの主眼は、資金が先細り、ニーズが高まる現実の中で、より効果的に、より一貫性をもって、より大きなインパクトをもたらすことのできる国連システムを構築することにあります。

もちろん、改革とはリソースに関することです。そのリソースを効果的、効率的に活用せねばなりません。

予算は大切です。しかしそれは、加盟国が分担金を全額、期限どおりに支払っていればの話です。

今日の現状は全く持続不可能です。

これはもはや守られているとは言えませんが、すべての国は例外なく、国連憲章に基づく金銭的義務を果たすか、財政破綻を防ぐために、加盟国は私たちの財務規則を根本から見直すか、のいずれかが必要です。

この件については、さらに詳しい文書を提出します。

しかし、改革には表の数字よりもはるかに大きなものでなければなりません。

改革によって、今日の世界を反映する機構を確立せねばならないからです。

1945年の問題解決策で、2026年の問題は解決できません。

私たちの時代、私たちの世界、そして私たちの現実を反映しない機構は、正当性を失ってしまうでしょう。

事実を確認しておきましょう。

日に日に、先進経済国が世界のGDPに占める割合は、少しずつ縮小しています。

日に日に、新興経済国は規模においても、力強さにおいても、影響力においても、ますます成長しています。

日に日に、南南貿易は北北貿易をどんどん引き離しています。

私たちの機構は、この世界の変化を反映しなければなりません。

国際金融・貿易機関の改革は単に重要なだけではありません。不可欠なのです。

安全保障理事会についても同様です。

また、最も大きな力を持つ国々が改革の最前線に立つことは、明らかにそれらの国々の利益となることも付け加えたいと思います。

現在の特権に固執しようとする者は、将来的に代償を払うリスクを負っています。

だからこそ、私たち全員が変化できるほどの勇気を持たねばなりません。世界は待ってくれません。私たちも待つべきではないのです。

各国代表の皆様、

私たちは改革を推し進める上で、方向感覚を失わせるようなこの世界の中でも、自らの針路を見出すことをさらに大きな使命とせねばなりません。

この使命は、今年だけでなく、これからもずっと、私たちのあらゆる活動の基盤とすべき3つの原則に集約できるでしょう。

第1に、私たちは国連憲章を全面的かつ忠実に遵守しなければなりません。そこには条件も、付け足しも、留保もあり得ません。

国連憲章は私たちすべてを拘束する協定です。

アラカルトで個別に選べるメニューではなく、全部込みのメニューです。

国連憲章は国際関係の礎であり、平和と持続可能な開発、人権の根幹をなすものです。

私は国連憲章の管理人であることを名誉に思います。

しかし皆様もそれぞれ、国連憲章の管理人となることを引き受けています。

国際法を完全に無視し、どのルールに従うかを自分で勝手に選ぶリーダーは、世界秩序を根底から損なうだけでなく、危険な前例を作り出しているのです。

はっきりさせておきましょう。

国際法の侵害は、陰で起きているわけではありません。

それは世界が見守る中で、画面上で、そして4Kのライブ映像で繰り広げられているのです。

世界中の人々がリアルタイムで、この不処罰の結果を目にしています。武力の違法な行使とそれによる威嚇、民間人や人道支援要員、国連職員への攻撃、憲法違反の政権交代、人権の蹂躙、反対意見の抑圧、資源の略奪など。

そしてこの危険は、国家や戦闘当事者に限った話ではありません。

底なしの貪欲と不平等によって、さらに増幅されています。

上位1%の層は、全世界の金融資産の43%を保有しています。昨年だけでも、世界で最も豊かな500人は、その資産をさらに2.2兆ドルも増やしています。

私たちはますます、超富裕層とその管理下にある企業が、これまで以上に支配力を強め、経済や情報、さらには私たち全員を律するルールに対しても、並外れた影響力を行使する世界の姿を目の当たりにしています。

一握りの個人が世界の論調を曲げたり、選挙結果を左右したり、公的な議論の趨勢を決定づけたりする時、私たちは不公平だけでなく、公的機関や共有の価値の腐敗に直面するのです。

それは人工知能(AI)や、私たちの生活のあり方を決めるアルゴリズムを見ているだけでもわかります。

これらは、ごく一部の企業だけで支配したり、注目や憤激を金銭に換える目的だけで最適化したりするには、あまりにも影響力の大きすぎる問題です。

例えば、子どもたちをアルゴリズムの暴虐から守るには、どうすればよいのでしょうか。

私たちは人間がテクノロジーを制御するようにせねばなりません。その逆であってはならないのです。

「AIに関する独立した科学パネル」と「AIガバナンスに関するグローバル対話」に対する皆様のご支援に感謝いたします。私たちはガードレールや説明責任、共有の基準、そしてAI格差を埋めるための能力の構築に引き続き努める必要があります。

権力と富がこれほど少数の手に委ねられている現実は、道徳的に擁護できません。

それだけではなく、国連憲章や、すべての人の権利平等と尊厳という約束に対しても、今まさに明白な危険を及しています。

これが2番目の原則につながります。私たちは正義を伴う平和を粘り強く追求せねばなりません。それは国家間の平和についても、自然との間の平和についても同じことです。

平和は私たちのあらゆる活動の中心にあります。

しかし、きょう私たちがここに集う間も、紛争の罠によって、何百万ものの人類の仲間が暴力と飢餓、強制移住という悲惨で長引く悪循環に囚われています。

この苦しみが続いてよいはずはありません。

ガザについては、米国が発表した停戦第2段階の開始を歓迎します。そして、人道支援は支障なく届かねばならないこと、停戦は全面的に履行しなければならないこと、そして国際法に従い2国家共存の解決策へと向かう後戻りできない道を開かねばならないことを改めて強調します。

ウクライナについては、戦闘を停止させ、国連憲章や国際法、国連決議に沿った公正かつ恒久的な平和を達成すべく、全力を尽くさなければなりません。

スーダンでは、両当事者が即時の戦闘停止と交渉再開に合意し、恒久的な停戦と、包括的で包摂的、かつスーダンの人々による政治プロセスの実現を図らなければなりません。民間人は保護されなければなりません。

イエメンからコンゴ民主共和国に至るまで、また、ハイチからサヘル、ミャンマー、そして全世界に至るまで、私たちは平和の希求を決してあきらめてはならないのです。

私たちは常に、銃声を止めるだけでは不十分であることを心しなければなりません。

平和とは、単に戦争がないことではありません。

紛争の根本原因に対処しなければなりません。さもなければ、どんな解決策も不安定なものになってしまうでしょう。

人間開発指数で最低位の10か国のうち9か国が現在、紛争状態の中にあることは、何ら偶然ではありません。

持続可能な平和には持続可能な開発が必要です。

しかし、持続可能な開発目標(SDGs)の採択から10年が経った今、ターゲットの3分の2は達成のめどが立っていません。

開発途上国が2030年までにこれらの目標を達成するために必要な資金は、全世界で年間4兆ドル以上も不足しています。

そして開発途上国は、財政的な余地の制約やあまりにも重い債務負担、物価の急騰によって、徹底的に打ちのめされています。

昨年の「セビリア・コミットメント」では、開発途上国が開発と平和を支えるシステムに投資できるよう、資金援助を拡大し、債務危機に対処し、国際金融アーキテクチャを改革するための野心的なアジェンダが定められました。私たちはこれを推進していかねばなりません。

また、正義を伴う平和とは、国際法と、経済的権利、社会的権利、文化的権利、市民的権利、政治的権利を含む、不可譲かつ不可分で相互に依存する人権に根差した平和を意味します。

私たちは言論の自由と市民空間を守らなければなりません。この関連で、私はイランでの暴力的な抑圧を深く憂慮しています。

私たちは全世界の女性と女児が機会をつかむための扉を開けなければなりません。

私は、人類の半数を占める女性の権利、そして苦労して勝ち取られた平等、参加、保護の成果に対する不穏な反発に屈してはならず、また、決して屈しないことを強調したいと思います。

私は国連史上初めて、上級レベルの職員でジェンダー・パリティー(男女比同率)が達成されたことを誇りにしています。私たちはその結果、さらに強くなりました。この取り組みは続いていきます。

私たちはまた、これまでの進歩を土台として、若者との意味ある対話の拡大、障害者の全面的な包摂、そして先住民族への実質的な機会提供をさらに広げていきます。

これらはいずれも、より公平で平和、公正かつ持続可能な未来の構築に欠かせません。

各国代表の皆様、

正義を伴う平和とは、自然との平和も意味します。

気候カオス(大混乱)に陥った世界は、平和な世界となり得ません。

気候変動は脅威の増幅要因であり、土地や水、食料をめぐる緊張に火をつけ、

人々に故郷を離れることを強いて、

私たち全員が依存する生態系を引き裂いています。

また、最も責任の軽い人々が、最初に最悪の代償を払わされている現実も、著しい不公正です。

リーダーたちは、気温上昇を1.5°Cに抑えることに失敗しています。

今や一時的なオーバーシュートは避けられませんが、元に戻せないわけではありません。

私たちの使命は、このオーバーシュートをできるだけ小幅で、短期かつ安全なものに抑え、気温上昇を遅滞なく1.5°Cの軌道へと戻すことにあります。

そのために必要なことがいくつかあります。

各国の気候変動対策計画の目標を上回って、今すぐに排出量を削減し、その削減を続けること。

化石燃料から再生可能エネルギーへの公正で秩序ある公平な移行を加速すること。

2030年までにエネルギー効率を2倍に高め、すべての人にクリーンな電力を届けるためにグリッドと蓄電施設を整備し、メタン排出量を削減し、森林破壊を止めること。

適応と、損失と損害に関する約束を果たすこと。

そして、必要な時に必要な人に届く、手ごろで予測可能な資金を確保することです。

気候正義が平和と安全への投資となるのは、どこかに脆弱性があれば、金融システムやサプライチェーン、世界の安定にほころびが生じ、あらゆる場所にリスクが広がるからです。

最後に第3の原則として、分断の時代に結束を築くことを、私たちの優先課題としなくてはなりません。

人種主義やナショナリスト的な排外主義、宗教的偏狭の重圧によって、社会が崩壊するリスクが世界各地で見られています。

こうした弊害はコミュニティの構造を腐食し、分断と不信の火に油を注いでいます。

こうした危険は抽象的なものではありません。容認よりも排除を目的とする論調や偽情報に勢いを得て、何百万もの人々の日常生活のなかで目に見える形で表れています。

こうした衝動をイデオロギー的に非難したり、単に「それは悪い」と批判したりするだけでは不十分です。

多くの人々が取り残されたと感じています。こうした人々は、自分たちは生活するだけで精一杯なのにもかかわらず、周囲には富があふれていることを目にしています。

急速なグローバリゼーションと技術進歩が相まって、将来の展望が持てなくなったと感じています。

そして、大規模な人の移動を目にして、アイデンティティに勝ち負けがあるという誤った考えを吹き込まれています。

人口動態は、事の緊急性をさらに高めています。

若者が自分たちの生活で利益を実感できなければ、人口ボーナスは実現しえません。

同時に、高齢化が進む社会には、内向き志向に転じ、文字どおり、あるいは比喩的にも、壁をつくる余裕などありません。そうすれば必ず、沈滞はおろか、さらに悪いことが起きるからです。

どの国にも、法が定める範囲において国境を管理し、安全を確保する主権があります。

しかし、移民や難民にも権利があります。どこにいようとも、その権利は尊重され、守られなければなりません。

私たちは、擁壁で囲まれた要塞ではなく友好的な社会を築くことを課題、それも優先課題としなければなりません。

それは、社会的連帯、包摂、教育と技能、ディーセント・ジョブ(働きがいのある人間らしい仕事)、新たな社会契約を伴う社会的保護というソフトウエアに投資する社会であり、

あらゆる人のアイデンティティが尊重され、すべての人に居場所があり、共有の市民的価値によってつながっていると感じられる社会です。

調和は決して偶然には生まれません。意図的な政策や資源、政治的な勇断が必要です。

私たちが共通の人間性を第一に考えなければ、私たちを強くしているものすべてが失われかねません。

包摂か孤立か、刷新か衰退か、選択すべきことははっきりしています。

私たちは国家が連合する世界で、社会の連合を築かなければならないのです。

各国代表の皆様、

私がきょう率直にお話ししたのは、時代がそれを求めているからです。

私たちに自己満足や否定、先延ばしの余裕はありません。

不公正や無関心、不処罰を黙って見過ごすこともできません。

そして私たちには、異なる進路を決める力があります。

国連憲章は、そのための羅針盤です。正義を伴う平和を希求すれば、それが私たちの目標になります。そして、私たちに共通の人間性は、行動を起こさねばならない理由となります。

世界は変わり続けています。その変化は不安をもたらすことも多くありますが、感動をもたらすことも少なくありません。

分断と不平等の力は強いとしても、私たちが連帯と正義を実現できる能力も強いのです。

今日の荒海のような状況の中でも、私たちは平和、尊厳、希望を錨として行動できます。

そのためには、誰もが全力を尽くすことが必要です。

私たちが何者なのか、そして何を表象しているのかを決して忘れないようにしましょう。

国連は生きた約束です。私たちに違いはあっても、一緒に問題を解決していこうという約束です。

この約束を守ろうではありませんか。

決してあきらめてはなりません。

今ほど問題の重みが大きく、時間が限られている状況はあり得ないのですから。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。