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広島平和記念式典に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶(広島、2025年8月6日)

プレスリリース 25-041-J 2025年08月06日

広島市提供

代読:軍縮担当上級代表 中満泉

日本語にて代読させていただきます。

80年前、私たちの世界は完全に変わってしまいました。

たった一瞬にして、広島は火の海となり、何万もの命が奪われ、街は瓦礫と化しました。人類は、後戻りできない境界線を越えてしまったのです。

この80年の節目の日に、犠牲となった方々を追悼し、その想いを受け継ぐご遺族の皆さまと心をともにいたします。

そして、私たちを平和へと導いてこられた被爆者の皆様の勇気に敬意を表します。年々被爆者の方々は少なくなっていますが、皆様の証言と永遠(とわ)の平和へのメッセージは、決して私たちの心から消えることはありません。

原爆投下後、広島はもはや再建不可能な街だと思われていました。しかし、広島の人々はみごとに復興を成し遂げました。

皆様は、ただ再び街を創り上げたのではありません。再び希望を創り上げたのです。核兵器のない世界という希望を育み、それを世界中と共有しました。

今年の5月、原爆を生き延びた木の苗木が、ニューヨークの国連本部に植樹されました。

それは単なる生き延びた証ではなく、人類の不屈の強靭さ、そして将来の世代を核兵器の惨禍から守り抜くという、私たちが共に背負う責任の象徴でもあります。

今年はまた、国連創設から80周年という節目の年でもあります。戦争を防ぎ、人間の尊厳を守り、そして過去の悲劇を決して繰り返さないという国連の原点を、改めて見つめ直します。

しかし今日、核戦争のリスクが高まっています。信頼は失われ、地政学的な分断は深まり、広島と長崎に破壊をもたらした兵器が、再び威嚇の手段として使われています。

それでも、希望の兆しはあります。

広島・長崎で原爆被害にあわれた方々を代表する団体である「日本被団協」は、核兵器廃絶に向けた啓発活動の功績により、2024年のノーベル平和賞を受賞しました。

また、昨年の「未来のための協定」において、各国は核兵器のない世界への決意を改めて表明しました。

しかし、これらの誓いは現実の変化に繋がらなくてはなりません。核兵器禁止条約によって生まれた機運を追い風に、核兵器不拡散条約(NPT)を柱とする国際的な軍縮体制を強化していかなくてはなりません。

世界は、広島の復興の力と、被爆者の方々の活動と知恵を、未来への糧とすべきです。

核兵器の脅威を根絶するためには、核兵器そのものをなくさなければなりません。

そして被爆者への誓いを守り、その証言と平和へのメッセージを次世代へと引き継いでいきましょう。

過去を記憶するということは、今日、そして未来の平和を守り、築くことなのです。

 

2025年(令和7年)8月6日
国際連合事務総長 アントニオ・グテーレス

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