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戦後80年沖縄全戦没者追悼式に寄せる中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表挨拶(沖縄、2025年6月23日)

2025年06月23日

2025年(令和7年)沖縄全戦没者追悼式にお招きを頂き、80年前にここ沖縄で戦禍の犠牲になられた方々の御霊に心からの哀悼の誠を捧げます。

美しい自然と琉球王国から続く豊かな伝統と文化を受け継ぐ沖縄は、先の大戦において凄惨な地上戦の場となりました。軍人だけでなく多くの民間人の命が奪われました。対馬丸事件で若い命を奪われた子供たち、看護要員として動員されたひめゆり学徒隊の女学生たち、そして戦火の中を保護されることなく逃げ惑いながら犠牲になった市民の方々一人ひとりの恐怖と無念さを、私たちは記憶に留め、戦争の中での彼らの生と死に思いを馳せます。そして、同じような現状にあるガザ・中東地域、ウクライナその他の国々・地域の多くの市民たちの今に、胸が締めつけられます。

「平和の波 永遠なれ」の理念を象徴する「平和の礎(いしじ)」と、沖縄戦で米軍が最初に上陸した阿嘉島(あかじま)で採取した火、広島市の「平和の灯(ともしび)」、長崎市の「誓いの火」を合わせた「平和の火」を守るここ沖縄から、戦火が拡大・激化している世界に再び平和を呼び戻すために私たちが今なすべき行動について、あらためて考えましょう。戦争の記憶を継承することは、とりも直さず現在と未来の平和を守り作っていくことなのです。

真の安全保障と平和は軍事力のみや、ましてや軍拡競争によって達成されるものではありません。適切な防衛力と対話・交渉・外交努力、そして国際法に基づく国際秩序の維持、信頼醸成やリスク軽減、軍備管理や軍備削減など様々な軍縮のツールを組み合わせて初めて達成されるものです。国家間の信頼関係が崩れ、アメリカのイランへの武力行使を経て中東地域でのエスカレーションの危機が迫る今こそ、戦争への道ではなく、平和と共存への道を、そして核兵器のない世界への道を、冷静に探ることが必要です。そして、紛争下にあっても一般市民は必ず保護されなければならないという、国際人道法の原則を守らなければなりません。

戦後80年、歴史の教訓に基づき日本は一貫して平和国家として歩み、また世界中で平和構築や開発のための国際協力を推し進めてきました。国連は、そんな日本のリーダーシップとコミットメントに敬意を表し、皆さまと共に平和への努力をあきらめずに一層重ねていくことをお誓いいたします。

この地に眠るすべての御霊の安らかならんことを心からお祈りし、平和への決意と共に、私のご挨拶といたします。

2025年(令和7年)6月23日
国際連合事務次長・軍縮担当上級代表 中満 泉

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