世界経済はレジリエンスを示すも、貿易摩擦や財政逼迫で曇る先行き ― 国連が警告(2026年1月8日付 国連経済社会局プレスリリース・日本語訳)
プレスリリース 26-003-J 2026年01月16日

インフレの低下と金融緩和は安心の材料となるものの、
投資の低迷と消えぬ不透明性がグローバルな勢いを削いでいる
ニューヨーク、2026年1月8日 – 2026年の世界経済成長率は2.7%と、2025年の2.8%にわずかに及ばず、パンデミック前の平均3.2%を大きく下回る見込みであると、国連が本日発表した『世界経済状況・予測2026(World Economic Situation and Prospects 2026)』は指摘しています。
2025年中には、米国による大幅な関税引き上げに対する予想外のレジリエンス(強靭性)は、底堅い消費支出とインフレの緩和が相まって、成長の持続を助ける要因となりました。しかし、根本的な脆弱性は依然として残ります。投資が低迷し、財政政策の余地が限られることが経済活動にとっての重圧となり、パンデミック前の時代と比べて、世界経済が恒常的に低成長に陥るのではないかという見方も出てきています。
報告書は、貿易摩擦の部分的緩和が、国際通商の混乱抑制に役立ったと指摘しています。しかし、マクロ経済に対する不透明感の高まりもあり、関税引き上げの影響は2026年によりはっきりと出てくることが予測されます。金融緩和と景況感の改善で、金融情勢の厳しさは緩んでいるものの、特に人工知能(AI)の急速な進化と関係する部門においては、割高な株価バリュエーションによるリスクが引き続き大きくなっています。その一方で、債務額と借入コストが高止まりしていることにより、特に多くの開発途上国では、政策的余地が制約を受けています。
アントニオ・グテーレス事務総長は「経済的、地政学的、そしてテクノロジー関連の緊張状態が重なって、世界の様相は変容しており、新たな経済の不透明性と社会の脆弱性が生まれています。多くの開発途上国が依然として厳しい状況に置かれており、その結果として、世界の多くの場所では、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた進歩を望めない状況が続いています」と述べています。
地域経済の先行き:概ね着実ながら、不均一な拡大
2026年の米国の経済成長率は2.0%と、金融と財政の緩和を背景に、2025年の1.9%を上回る見込みです。しかし、労働市場の軟化が勢いに水を差す公算が大きくなっています。欧州連合(EU)では、米国による関税の引き上げと、地政学的な不透明性が継続していることで輸出に陰りが見られ、2026年の経済成長率予測は1.3%と、2025年の1.5%を割り込むと見られます。2026年の日本の経済成長率は、国内経済の若干の持ち直しが輸出条件の悪化によって部分的に相殺される結果、2025年の1.2%から0.9%へと低下する見込みです。独立国家共同体(CIS)とジョージアでは、ウクライナでの戦争継続が依然としてマクロ経済状況を圧迫する中でも、2026年の成長率は2.1%と、2025年とほぼ変わらぬ水準を維持すると予測されます。
東アジアでは、前倒し輸出による押し上げ効果が薄れ、2026年の成長率は4.4%と、2025年の4.9%を下回る見込みです。中国経済の成長率は、重点的な政策措置に下支えされ4.6%と、対2025年で微減にとどまるものと見られます。2026年の南アジアの成長率は5.6%と、前年の5.9%から若干減速すると予測されています。これは、底堅い消費と多額の公共投資に支えられたインドの6.6%拡大によって牽引されます。。アフリカの2026年の経済成長率は4.0%と、2025年の3.9%からわずかに上昇すると予測されます。しかし、多額の債務と気候関連のショックが顕著なリスクとなります。西アジアでは、2026年のGDP成長率が4.1%と、2025年の3.4%を上回る見込みですが、この地域は引き続き、地政学的な緊張と安全保障上のリスクにさらされています。ラテンアメリカ・カリブ海では、消費需要の若干の成長と緩やかな投資回復を受け、2026年の経済成長率は2.3%と、2025年の2.4%から微減にとどまるものと見られます。
逆風にさらされる国際貿易:投資の低迷続く
2025年は政策の不透明性が高まり、関税が引き上げられる中でも、世界貿易はレジリエンスを示し、予測を上回る3.8%の拡大を遂げました。この拡大の牽引役となったのは、年内前半の出荷の前倒しと、サービス貿易の堅調な成長です。しかし、この勢いは衰える見込みであり、2026年の貿易成長率は2.2%への減速が予測されています。
同時に、地政学的緊張や厳しい財政状況が重圧となり、多くの地域では投資の成長の低迷が続いています。金融緩和と重点的な財政措置で、投資が下支えされた市場がある一方で、一部の大市場では、AIの急激な進化によって設備投資が急拡大していいます。しかし、報告書は、AIによる収益の可能性が実現しても、その分配は不均等になる公算が高く、既存の構造的不平等がさらに拡大するおそれがあると警告しています。
インフレの低下が続くも、残る生活費への圧迫
報告書はまた、ディスインフレーションが続く中でも、物価高騰が依然として大きな世界的課題になっていることも強調しています。消費者物価上昇率は2024年の4.0%から、2025年には3.4%に低下したと見られるほか、2026年にはさらに3.1%への減速が予測されています。全体としてインフレは抑えられているものの、物価の高止まりは引き続き実質所得を目減りさせています。ここ数年に見られた全世界同時の物価高騰とは異なり、インフレは地政学的リスクや気候関連リスクが高まる中で繰り返し生じる供給上の制約を反映し、より不均一になっています。
政策立案者は、供給リスクによって、より協調的かつ先見的なアプローチが必要になるという、ますます複雑なインフレ環境に直面しています。金融政策が中心となることに変わりはありませんが、信頼できる財政構造と焦点を絞った社会的対策により、脆弱な立場に置かれた人々の保護に努めねばなりません。部門別の政策も、生産力を高め、特に食料、エネルギー、物流部門でサプライチェーンを強化することで、役割を果たします。社会の安定も長期的成長も犠牲にすることなく、根強い物価圧力を管理するには、金融・財政・産業政策全体で協調的な対策を取ることが不可欠になるでしょう。
李軍華(リ・ジュンファ)国連経済社会問題担当事務次長は「インフレが収まっても、価格の高止まりと依然とした上昇は、最も脆弱な立場に置かれた人々の購買力を損ない続けています。インフレの低下を家計の実質的改善につなげるためには、必須の支出を守り、市場競争を強化し、繰返し生じる価格ショックの構造的原因に対処することが必要です」と述べています。
多国間行動の再活性化を
報告書は、貿易の再編、恒常的な価格圧力、気候関連のショックを特徴とする時代を乗り切るには、地政学的緊張が高まり、政策がますます内向きになり、多国間の解決を目指す勢いが弱まる中でも、世界的な協調を深化させ、一致団結した決定的な行動を取る必要があることを強調しています。進歩を持続させるためには、信頼を再構築し、予測可能性を高めるとともに、よりオープンでルールに基づく多国間貿易体制を作るという決意を新たにせねばなりません。
第4回開発資金国際会議の成果文書であるセビリア・コミットメントは、多国間協力を強化し、国際金融アーキテクチャを改革し、開発資金を拡大するための未来志向の青写真を提供しています。システミックリスクを削減し、より安定的で公正な世界経済を育成するためには、債務整理手法の明確化や譲許的資金や気候変動対策資金の拡大を含め、セビリア・コミットメントの主要優先課題に取り組むことが欠かせません。
『世界経済状況・予測2026』はdesapublications.un.orgでご覧いただけます。
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原文(English)はこちらをご覧ください。


