本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

潮目を変える国際海洋条約が発効へ(UN News 記事・日本語訳)

2026年02月17日

© NOAA | 太平洋北マリアナ諸島の調査では、深海サンゴをはじめとする「財宝」が発見された

2026115 ほぼ20年に及ぶ策定作業の末、国際水域と国際海底における海洋生物の保護と持続可能な利用を図る国際協定が117日にいよいよ発効し、今後数十年にわたり、海洋生態系の健全性を確保するための大きな一歩が踏み出されることになりました。

この法的拘束力を持つ国連条約の正式名称は、国連公海等生物多様性(BBNJ)協定といい、国内水域に属さない海域(すなわち「公海」)と国際海底域を対象としています。

これら水域は、地球の海水面の3分の2以上、生息環境全体の90%以上をそれぞれ占めています。これはまさに海洋が広大であり、地球上の生息空間のほとんどが海面下にあるからに他なりません。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、危機が加速化している世界にあって、今回の協定は「あらゆる人々にとってレジリエント(強靭)で生産的な海洋を確保するために、重大なガバナンスのギャップを埋める」ものであると述べたうえで、「今こそ速やかに普遍的かつ全面的な履行へと進みましょう」と呼びかけています。

そのためには、次のような重要な事実を知っておくべきです。

協定はなぜ重要か

BBNJ協定は「公海」と国際海底が人類全体の利益となるよう、持続可能な形で管理されるのを確実にすることを目指しています。

また、包摂的な海洋ガバナンスを定める初の法的拘束力を持つ海洋条約として、先住民族や地域社会の参画と、ジェンダーバランスに関する規定も設けています。

協定はその全面的な履行によって、気候変動、生物多様性の損失、汚染といういわゆる「三重の地球環境危機」への対処に不可欠な貢献を行うことが期待されています。

外交官としてタンザニアの交渉チームを率い、BBNJ協定の話し合いに臨んだムゼー・アリ・ハジ氏はUN Newsのインタビューに答え、この協定が国際水域の保護に向けた大きな一歩になると語っています。

© The Ocean Story/Vincent Kneefel

公海での活動に規制がかかるようになったことを、誰もが心しておくべきです。例えば、海洋を汚染した人は、自らの行為に対して責任を問われるようになります」

BBNJ協定は、事実上の「海洋憲法」として、1994年の発効以来、海洋と海底の開発や、海洋保護に関するルールを定めてきた国連海洋法条約を基盤としつつ、現行の国際法の枠組みを強化するものです。

協定はまた、海洋法条約の実効的な履行を確保することを目指し、生物多様性をいかに管理すべきかについて、さらに詳細な規定を行うとともに、海洋ガバナンスを気候変動をはじめとする現代の課題や、持続可能な開発のための2030アジェンダ(国連の仲介で成立した世界で最も困難な課題を解決するための青写真)とも整合させています。

「発効」が意味するもの

協定はその発効後、これまでに批准した81カ国を法的に拘束するようになります。つまり、これら批准国は、国内レベルでの協定履行に同意していることになります。

協定は、少なくとも60カ国がこれを批准し、その法的拘束力を受け入れてから120日後に効力を生じると定めていますが、これが1月17日に当たります。

批准国の顔ぶれ

現時点でのBBNJ協定批准国には、中国や日本、フランス、ブラジルをはじめ、主要経済国がいくつか含まれています。

国連の貿易機関の統計によると、2023年の時点で海洋関連品目の輸出額がおよそ1,550億ドルに達している中国は、海洋関連産業(造船、養殖、漁業、海底油田・ガス田など)に特に大きな影響力があります。

© FAO/Kurt Arrigo

主要経済国には未批准の国も

世界最大の経済規模を誇る米国は、海洋関連品目の輸出額(610億ドル)でも5本の指に入ります。同国は2023年、協定に署名しているものの、未批准であり、上院での審議もまだ行われていません。

開発途上地域の中では最大の輸出国の1つ(190億ドル)であるインドは、2024年に条約を採択していますが、批准に必要な国内法の審議が未了となっています。英国は2025年、必要な立法措置を導入したものの、議会がまだ協定を批准していません。

ロシアは、協定の採択も批准も行っていない数少ない国の1つですが、その理由として、現行のガバナンス枠組みを維持しながら、国際水域の航行と海運の自由の保証を確保したいという希望を表明しています。

協定にとって、それは大きな敗北か

主要経済国の一部が批准による全面的なコミットメントに難色を示しているとはいえ、ハジ氏はBBNJ協定が現状で及ぼすインパクトを前向きに捉え、こう語っています。

「開発途上国と小島嶼国には支援が必要です。これらの国は協定によって助けられるため、将来的にはこれを受け入れるものと期待しています。公海を守ることは私たち全員の責任だからです」

今後の展開

さらに多くの国が批准し、協定の実効性が高まる可能性は引き続き残されています。

ムゼー・アリ・ハジ氏は「何かについて交渉する際には、100%の批准を得ることも、一度に全員の承諾を得ることも不可能です。中には様子を見ながら、成り行きを見極めて参加する国もあります。将来的には、他の国々も参加するようになると信じています」と語ります。

普遍的な参加のほか、BBNJ協定を実効的なものにするための鍵は、ルールを破る者への対策を含め、その履行にあります。

協定の条文によると、この両面に関する進捗状況を確認するための第1回の会合は、協定発効から1年以内に行われる予定です。

* *** *

原文(English)はこちらをご覧ください。