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外務省 総合外交政策局 国連企画調整課
松田 賢一 課長からのメッセージ

日本における国際連合のカウンターパートとして重要な外務省総合外交政策局 国連企画調整課の松田課長よりお話をうかがいました。
【 聞き手:国連広報センター 所長 根本かおる 】

松田 賢一(まつだ けんいち)
外務省 総合外交政策局 国連企画調整課長

昭和43年生まれ
【略歴】
平成4.4 外務省入省
9.7 経済局国際機関第二課
14.4 在ベルギー日本国大使館一等書記官
19.3 総合外交政策局国連企画調整課
首席事務官
21.1 在フランス日本国大使館 参事官
24.1 沖縄事務所副所長
26.8 総合外交政策局国連企画調整課長
以上

外交官として、国連と日本の架け橋として

Q:課長就任から3ケ月半経って、国連の広報の仕事についてどう感じていらっしゃいますか?

A:すごく重要だな、と改めて感じています。このポストに就任したことを色々な方に挨拶している中で、意外と皆さん国連の仕事についてご存じないということが分かり、国連のことをもっと知ってもらう必要があると思いました。
国連協会が主催する「つどいの夕べ」など、国連英検を受けている人が大勢いるような場で話をしても、JPO試験を知らない人もいます。我々が普段お付き合いしているのは外交に関係のある方が多いので、相手がある程度の知識を持っていますが、国連はまだまだ一般の方には知られていないと痛感しています。国連の話をあちこちでする必要があると思いました。

Q:9月には安倍首相と一緒にニューヨークへ行き、国連総会もご覧になられたわけですが、どのような印象を受けましたか?

A:以前も、東京で国連総会の準備をしたことがありましたが、現場で見るのは初めてでした。世界の人々がエネルギッシュに外交活動を展開している熱気や盛り上がりはすごいなと思いました。

Q:松田さんは、そういったエネルギーが集まる場としての国連総会と日本の政府との間の「架け橋」、「結び目」的な役割を担っていらっしゃいますが、現場でどんなことをお感じになりましたか?

A:国連の仕事といっても、外務省の中でも色々な課にまたがっていますので、自分の専門分野だけでも様々な案件があり、過密な業務をこなしています。省内の別の課とうまく連携していくための橋渡しの役割も国連企画調整課は期待されています。とても難しいのですが、やらなければならないと感じました。

Q:日本のためにという視点と、世界のためにという視点とのバランスをどう保っていらっしゃいますか?

A:現在、国際社会はグローバル化が進んで、情報通信や移動が簡単になっています。日本社会の成り立ちを見ると、エネルギーや食料は海外から得ており、経済の構造からして世界の平和と安定なしには日本社会の平和はありません。二極分化して考えがちですが、「世界のため」と「日本のため」というのは別物ではないということを、外務省で仕事をするうちに実感してきました。
日本の平和と繁栄のために、世界が良くならないといけません。そのために、国連をはじめとした国際機関や主要パートナーと連携する必要があります。「世界をより良くしていくことイコール日本をより良くしていくこと」になります。もちろん、国内で解決しないといけない日本固有の問題もありますが、それと同時に世界をどう良くしていくかを考えないと日本社会が今の平和と繁栄を続けられないと考えています。そういった意味で、国連の仕事は日本のためにもなるのです。

Q:今までの海外の大使館でのどのようなご経験が、現在の国連企画調整課でのお仕事に活かされていますか?

A:今まで在ベルギー大使館と在フランス大使館で外政に携わり、ベルギー・フランス・EUがどういった外交を展開しているかを見る仕事をしていました。国連の仕事は非常に多岐に渡っていて、省内の様々な課がやっている仕事と調整する必要があります。ありとあらゆる外交案件に常に気を配りながら、世の中全体でどういうことが起きていて何が優先課題なのかを頭の片隅に置いていないといけません。国連の仕事、そして全体の調整を進めるのはすごく難しいですが、国連全体のことを考えるためには、同時に世界全体の外交案件を知っていないといけない。
大使館では、フランス・ベルギー・EUの外交がどのような観点から行なわれているかについて、全ての分野を見て、世界の色々な外交案件をフォローするという経験を積むことができました。また日本の視点からではなく、フランスの視点やベルギーの視点やEUの視点でどのように世界の外交が見えているのかを考える経験をしました。世界全体を見る際、日本人ですからどうしても日本の見方から離れることはできないと思いますが、少しでもよりバランスの取れた見方をするという訓練になったのではないかと思います。

Q:環境・開発・難民問題・女性の地位向上など国連が取り扱う分野で、日本は働きかけを行いながら活動を展開しています。松田さんが特に日本が力を入れなければならないと考える分野は何でしょうか?

A:今おっしゃったようなことは全部、力を入れなければならないと思います。ただ、ここ10年20年の間に、日本は「人間の安全保障」という切り口から物事を見ていくことに力を入れています。援助の対象となる人のほうに着目して、バランスの取れた政策をしていこう、と日本は以前から主張・提唱してますね。それを引き続きやっていくことが大事だと思います。

世界で活躍する人材育成

Q:若い人たちの国連への関心についてはどのように感じていますか?

A:統計上は、日本の留学生は減っていて、他のアジア諸国に比べると若者が外に出たがらなくなっていると聞きます。でも、海外で活躍したいという夢を持った熱心な学生はたくさんいることも事実だと感じています。そういった方々に国連で活躍してもらうための、橋渡しをしたいと思っています。

Q:10月に実施した、国連をはじめとする国際機関合同採用説明会(アウトリーチミッション)には学生や社会人など1000人近くの人が集まりましたが、手ごたえはどのように感じていますか?

A:外務省は、国連との共催によるアウトリーチミッションをはじめとして、大学でのガイダンスなど様々な広報活動を行っています。参加人数も多く、予想以上に好評ですので、留学生は減ってはいるが、熱意を持っている人はたくさんいると感じました。

Q:海外で活躍したいという意欲を持った日本人を、外務省や国連企画調整課はどのように応援していきたいと思っていますか?

A:JPOなどの制度に予算をとり、若い人たちに国際機関に入るシステムを用意して、かつ面接の仕方・書類の書き方を手ほどきするといったこともしております。また、そういった活動を外務省が行っているということが、まだまだ知られていない面がありますので、ガイダンスやセミナーなどにもっと力を入れたいと思います。潜在的に関心を持っている人たちに情報を伝えられるように、努力したいです。最近は、Facebook等のソーシャルネットワークも活用しています。見てくださる方々は、検索して初めて我々と繋がるわけですので、そういった、「繋がろうとしてくれる人」を支援していくことが大事です。しかし、そこに至らないけれど関心があるという方に、どうやって情報を届けるかが課題ですね。

日本人の強み

Q:松田さんが感じていらっしゃる日本人の強みは何でしょうか?

A:在フランス大使館など外国人と一緒に仕事をした経験から申し上げると、日本人は10の仕事を頼まれると自分で工夫して11か12までやる。休みの日も、緊急事態が発生したら融通を利かせて対処する。そのように、言われていないことまで頑張るという気質があると思います。長所と短所は表裏一体で、働きすぎ、プライベートを犠牲にしすぎると言われてしまうのかもしれませんが(笑)。コミュニティ全体として頑張る、というのが日本人の良いところだと思います。

Q:調整役に適性があるのですね。

A:全体を見ながらバランスを取るということを、いろいろな面でやる傾向があると思います。国際社会で色々な考えや利害がぶつかったときに、調整という意味ではとても機転が利くのではないでしょうか。
例えば、日本人が途上国に行くとします。もしかしたら、現地の人にとっては日本人に会うのは一生のうちにその一度しかないかもしれません。日本人職員の振る舞いが、途上国の人たちにとっての日本の印象のほとんどを占めるのではないかと思います。そういった意味で、国際機関で働いていらっしゃる方、特にフィールドに出ている日本人職員の方が、日本の良さを色々広めてほしいなと思います。

国際貢献を考えている日本の若者へのメッセージ

私自身は国連で働いたことがありませんが、国連の仕事も外交官の仕事も同じような面があります。外国語を使って、外国の社会で色々な価値観に揉まれながら仕事をしていくのは、仕事の中身そのものは勿論のこと、その人の人生にとっても非常に興味深く、良い経験が積める場だと思います。ぜひ国際的な場での仕事や国際機関職員、関心があれば外務省も目指して頂きたいなと考えています。
特に最近、日本政府は女性が輝く社会の推進に力を入れています。国際機関は日本の社会の一般的な組織に比べると、はるかに女性が働きやすい環境があると思いますし、現に今国際機関で働く日本人の6割が女性です。女性の方にもぜひ国際機関の状況を知って頂きたいですね。日本の組織だと色々難しいことがあるな、と思っていらっしゃる方はぜひ国際機関を目指して頑張ってください。