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コロナ禍の中、オンラインでつながる図書館 ~SDGsを合言葉に、国連寄託図書館会議が1月14日開催~

      
 

こんにちは。国連広報センターの千葉です。

 

1月14日(木)、国連寄託図書館の研修会を開催しました。

この研修会は、国連が指定する国連寄託図書館を対象にして1960年代にスタートし、そのネットワークを広げ始めた2000年代からは、あらたなパートナーとしてゆるやかにつながったその他の図書館の皆さんもお招きして、毎年開催し続けてきたものです。持続可能な開発のための2030アジェンダが国連総会で採択された2015年以降は、SDGsを合言葉に、さらに多くの図書館との関係を構築し、参加館を増やしてきました。

 

参加図書館の皆さんに向けた研修資料として事前につくった冒頭のYoutube動画で昨年の研修の様子を多少ご覧いただけますが、その内容は昨年に綴ったブログ記事にくわしく綴っていますので、お読みいただければ幸いです

 

コロナ禍の中のオンライン開催

コロナ禍の中での今年の研修会は初めてのオンライン開催となりました。実際に皆さんと対面でお会いできないのは残念でしたが、オンラインであるがゆえに参加しやすいこともあり、これまでで最多の35館、45人の図書館員の皆さんに参加していただくことができました。岡山県高梁市図書館、栃木県の那須塩原市図書館と小山市立図書館、法政大学多摩図書館愛知大学図書館、昭和女子大学図書館が今回初参加でした。

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(左上から時計回りで)法政大学多摩図書館那須塩原市図書館、愛知大学図書館、小山市立図書館、高梁市図書館、昭和女子大学図書館

 

研修会は午前10時に国連広報センターの根本かおる所長の挨拶でスタート。コロナ禍の中でも、多くの皆さんがSDGsへの取り組みを昨年以上に活発化していることに感謝と敬意を表明するとともに、コロナ禍で家で過ごす時間が増える中、読書に心の拠り所を求める人々のニーズを満たすという意味からも、図書館ネットワークの今後の発展に期待を示しました。

 

国連広報センターから講演とブリーフィング 

挨拶に続けて根本が行った30分の講演では、コロナとSDGsの関係性2020年の国連創設75周年イニシアチブ「UN75」世界中から集められた声の分析結果広報アウトリーチ上の課題などを網羅して、国連広報センターの大切なパートナーである図書館の皆さんに国連とSDGsをめぐる大局的な視点を提供。そのうえで、昨年から、SDGs達成のための行動の10年がはじまったことを強調し、図書館の皆さんが日本の人々の行動を促すべく、さまざまな活動を展開していただけるよう呼びかけました。

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根本所長は、多面的な影響をもたらしている新型コロナウィルス感染症からのより良い復興において、SDGsがなぜ欠かせないのかを紹介した

 

根本に続いて、国連広報センターの全職員が、一人ずつ、それぞれの職域から、資料やSNS、パートナーとの連携事例など、図書館にお役に立つ情報をご提供しました。 

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Microsoft Teamsで集う 図書館の皆さんと国連広報センター職員たち

 

外部専門家による講演 

研修会では、外部の専門家をお招きして、SDGsに関する新しい学びや気づきの機会を提供しています。今年は、ソーシャルデザイナーで、Think the Earthの理事・プロデューサーの上田壮一さんをお招きしました。上田さんはソーシャルデザインの観点から、全国の学校の教員や生徒たちとタッグを組み、SDGs達成のための多様な取り組みを実践。現場の先生と生徒を応援するSDGs for Schoolというプロジェクトをたちあげて、各地の指導者をつなぐための研修や交流の場をつくったり、クラウドファンディングで集めた資金でSDGsを楽しく学べる本を作成し学校に寄贈したりしていらっしゃいます。クリエイティブの力を使って社会を変える、未来を変えるということを日々、考え、企画し、実践していらっしゃる上田さんのお話を伺い、参加者の皆さんは未来に向けて図書館をデザインすることについて考えるとともに、着想のしかたを学びました。

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Think the Earthの理事・プロデューサーの上田さんから、社会課題の解決とデザインがどう交差するのかご紹介いただいた

 

図書館の皆さんが実践経験を互いに共有

研修会は、国連広報センターや外部講師からの情報提供ばかりではなく、図書館の皆さんの互いの経験共有の場でもあります。今年は、選書コーナー設置や様々な展示のほか、ウェブサイトの充実化、ソーシャルメディア、オンラインイベントなど、デジタルを活用したSDGs啓発のさまざまな取り組みについての発表が多くありました。

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福岡市総合図書館やその他の多くの図書館がSDGs選書を展示

 

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麻布図書館やその他の多くの図書館がウェブサイトで発信

 

大阪市立図書館やその他の多くの図書館がソーシャルメディアで発信

  

図書館員間の交流~ブレイクアウトセッション 

図書館の皆さんがリラックスして互いに交流できる場も確保しました。ブレイクアウトセッションです。10分ずつ4回、メンバーを入れ替えて、小グループ(3~4人)で交流してもらいました。数人単位でブレイクアウトルームに入った皆さんは、公共図書館学校図書館大学図書館専門図書館の枠を超えて、また国連寄託図書館その他のゆるやかにつながる図書館の間の区別を超えて、コロナ禍におけるそれぞれの館の状況やSDGsへの取り組みなどについて活発に情報交換していました。

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リラックスして、館員同士の情報交換

 

オンラインSDGブックトークの実践を披露

ブレイクアウトセッションで緊張の糸をほぐした参加者の皆さんが次にオンライン訪問した先は、三田国際学園中学校・高等学校の図書館です。高校生たちが「SDGブックトーク」を行う様子を視聴しました。「SDGブックトーク」は自分が読んで感銘を受けた本をSDGsにからませて紹介する取り組みです。昨年、学校図書委員として研修会に初参加してくれた高校一年生の小池ひよりさんが昨年12月に自校を含めた4つの学校の図書委員などの生徒さんたちと一緒にオンラインで実践し、その様子を同校の先生方の支援を得てビデオ映像にしてくれたのです。この映像を見た図書館の皆さんは中高生たちの行動力に大きな刺激を受けていました。

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三田国際学園中学校・高等学校の図書委員たちが、昨年12月のオンラインSDGsブックトークの様子を動画(上写真)に編集して見せてくれた

 

ニューヨーク国連本部ガイドツアーにオンライン参加

今年の研修最後に皆さんをお連れしたのは、ニューヨーク国連本部。瞬間的に距離を超えられるデジタルの強みを活かして、地球の裏側とつながり、国連本部のオンライン・ガイドツアーに参加しました。日本人のガイドが時差を超え、途中で質疑応答の時間を確保しながら、案内してくれました。リアルのツアーでは直接にその場に身を置くことの高揚感がありますが、ヴァーチャルにはヴァーチャルの良さがあります。広い議場に身を置くと、いろいろなところに視線が散ってしまいますが、ヴァーチャルツアーの場合、これまではあまり気に留めたことがなかった安全保障理事会などの議場の壁紙の細かい模様なども拡大して画面にうつし出し、細部までていねいに説明してくれます。図書館の皆さんに国連本部ビルを体感していただくことができました。 

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ツアーはまず安全保障理事会の議場へ、そのあと、経済社会理事会の議場や総会の議場などへと案内してくれた

 

終わりに

国連本部ガイドツアーを終え、図書館の皆さんがオンライン会議システムを退出したのを見届けて、私自身も退出し自宅のPCの前を離れたのは夜11時半でした。午前10時にスタートした長い一日が無事終わって、思わず安堵のため息をつきました。ニューヨークは地球の裏側で昼夜逆転だということを思い知らされましたが、でもデジタル技術がなかったら、日本各地にいる皆さんと一緒にこのツアーに参加することがそもそもできませんでした。ソーシャル・ディスタンスを保たなければいけないのはつらいことですが、いろいろなデジタルツールを駆使して、これまで以上につながりを深めたり、広めたりすることができると実感しました。

 

最後になりますが、この場を借りて、研修講師を快くお引き受けくださったThink the Earthの上田さん、SDGsブックトークにチャレンジしてくれた三田国際学園中学・高等学校の小池さんと同級生の高橋さん、それを支えてくださった藤松先生と菅原先生、国連ツアーガイドの川又さんと同ツアーコーディネーターの中野さんにあらためて深くお礼を申し上げたいと思います。

 

そして何よりも図書館の皆さんが積極的にご参加いただいたことに感謝したいと思います。この研修会は図書館の皆さんのあつい思いが作り上げています。長い一日の研修におつきあいいただいた図書館の皆さんはとてもお疲れになったと思いますが、多くの図書館の皆さんからあたたかい労いの言葉をいただき恐縮しました。

 

研修後、「発想、転換やひらめきの重要性を学んだ」、「あらためてデジタルの可能性に気づいた」などの感想もいただきました。多くの図書館がはやくも来年の研修会に向けて、取り組みへの熱意を燃やしていらっしゃることをお伝えくださり、心を強くしています。今年の研修会に一貫して流れていたサブテーマとも呼ぶべきものはまさに「デジタル」でしたが、これからの一年間、皆さんがどのようにデジタルを活かし、図書館としてのSDGs啓発活動に取り組んでいかれるのか、来年の研修会で実践報告をお聞きするのが楽しみです。(了)