国連広報センター ブログ

国連のさまざまな活動を紹介します。 

SDGsを合言葉に、 さまざまな図書館が集まり、学び、交流しました (後編)

国連広報センターの千葉です。

1月19日(木)にオンライン開催した図書館の研修について綴らせていただいています。

前編では、国連広報センターからのブリーフィングと図書館の皆さんの活動報告の様子をお伝えしました。

SDGsを合言葉に、さまざまな図書館が多彩な取り組み

後編は、午後に続いた研修で、公立中学校図書館、子ども本の森をお訪ねしたり、ブレイクアウトセッションを行ったりした様子をお伝えします。

墨田区立吾嬬第二中学校~図書委員たちのSDGsx読後トーク

午後の研修はまず、東京都内の墨田区立吾嬬第二中学校を訪ね、その図書館の取り組みをみました。吾嬬第二中学校図書館は昨年、公立中学校図書館として初めて私たちの図書館ネットワークに参加した図書館です。同校の駒田るみ子校長先生は、一昨年の図書館研修で発表された、三田国際学園高校でのSDGブックトークをもとに、その実践を広げてくださっています。

中学生たちがそれぞれ、SDGsのゴールと本を紹介

今回のオンライン訪問では、昨年11月、同校の図書館と板橋区立板橋第3中学校、豊島区立西巣鴨中学校、大田区立大森第6中学校の4校の図書委員を中心にして、SDGブックトークに取り組んだ様子を録画した動画を見せていただきました。

動画の中で、生徒たちは本を手に取って紹介し、SDGsのゴールに関連させて読後感を共有していました。そして、生徒たちは、本をきっかけに、多様性とは何かといったテーマなどに思いを馳せ、それぞれの学校での取り組みを紹介するなどし、世界には多様な考えがあること、他人を偏見で決めつけないことの大切さなどについて議論していました。

墨田区立吾嬬第二中学校の駒田るみ子校長先生

駒田校長先生によると、図書委員の生徒たちは他校の図書委員の生徒たちとの交流を通じて、SDGsへの視野をおおいに広げていたそうです。また、この取り組みを後輩たちにつなげていきたいという気持ちを強くしていた生徒がたくさんいたそうです。駒田先生は今、仲間を増やしながら、この取り組みを続けていきたいと思っていらっしゃいます。

このオンライン訪問について、参加者の皆さんから以下のような感想をいただきました

「本をきっかけに、こうした議論をできるんだということにあらためて気づかされた」
「子どもたちがSDGsの目標を自ら見つけ出し説得力のある説明をしていたことに感服」
「感動した。自分の地域の学校図書館でもぜひSDGブックトークを広めていきたい」

「こども本の森 中之島」~子どもと本の感動的な出合いの場

続けて、「こども本の森 中之島」にもオンライン訪問しました。建築家の安藤忠雄さんが大阪市に寄附した素敵な図書施設です。

「子ども本の森 中之島」をオンライン訪問、案内人は広報担当の池田ひかるさん

「子ども本の森 中之島」の池田ひかるさん(広報担当)がライブで案内してくださいました。配架された本は12のテーマのもとに並べられ、その他にも特別テーマ展示が行われています。私たちが訪問したときは、「みんなで考えよう、SDGs」というテーマの展示がされていました。

「子ども本の森 中之島」では本の貸出は行われませんが、1人1冊、中之島公園内など外に本を持ち出して読むこともできるそうです。赤ちゃんのための絵本コーナー、子どもの目線にあわせた窓や子どもが楽しめる空間演出など、子どもたちにやさしい様々な工夫やしかけがなされている様子を説明していただきました。

伊藤真由美館長と質疑応答

また、ライブツアーが終わったあと、伊藤真由美館長が皆さんからのさまざまな質問にていねいに答えてくださいました。この施設が、子どもたちと本との素敵な出合いをなによりも大切に考えていらっしゃる思いがつよく伝わってきて、参加した図書館の皆さんはふかく感動していました。

この訪問について、皆さんから以下のような感想をいただきました。

「図書館内をライブで案内してくださり、テレビ中継のようで臨場感たっぷりだった」
「建物全体に未来を担う子どもたちへのあたたかい愛情が感じられた」
「子どもを対象にした文化施設だが、その工夫は一般の図書館にも大変参考になった」

ブレイクアウトセッション 館種を超えて、1対1のフリートーク

研修の最後は、昨年同様、図書館同士で、リラックスして、たっぷりとフリートークをしていただきました。

図書館の皆さんでブレイクアウトセッション、最後は互いに手を振りあって退出

昨年のブレイクアウトセッションは、各ブレイクアウトルーム内の人数がもう少し多めでしたが、今年は、2人ずつのペアーになり、相手を変えながら、10分ずつ、合計8回、フリートークをしていただきました。

SDGsへの取り組みについて、それぞれの図書館が互いの経験を学びあっていらっしゃいました。

ブレイクアウトセッションについて、皆さんから以下のような感想をいただきました。

「初めての人達とのトークで最初は緊張したが、始まると楽しくあっという間だった」
「いろいろな種類の館の方々と話せて、刺激を受けるとともに視野が広がった」
「複数の図書館が一緒だと遠慮するが、二人ずつだと安心していろいろ話せた」

終わりに ― 図書館のゆるやかなつながりへの期待

今年の図書館研修もまた昨年に引き続き、オンラインで開催しました。

対面形式でないことに寂しさもありましたが、図書館の参加者の皆さんのなかでは、「身体の障害・子育て・介護・遠距離という課題をかかえていたとしても誰もが参加できるオンライン開催はありがたい」と歓迎する声が圧倒的でした。こうした外部の研修に参加したいと思っているけれど、さまざまな事情があって現場を離れることはなかなか難しいという多くの図書館の方々にも、こうして研修に臨んでいただけるのは、デジタルならではの強みです。

実際、遠い地域の図書館を含め、多くの皆さんにご参加をいただけるオンライン開催は、「誰ひとり取り残さない」というSDGsのモットーにも沿うものだと思います。

さまざまな図書館からの豊かなご報告を伺いながら、図書館が人の集まる場所として、日々、利用者の方々と直接につながっていらっしゃること、現在はデジタルツールも一層駆使するようになり、その活動がさらに多様になっていることをあらためて思いました。図書館の皆さんが、SDGs達成のために、ゆるやかに連帯し、行動をしてくださっていることに、国連広報センター職員一同、勇気づけられています。

図書館の皆さんは、国連広報センターにとって本当に大切な財産です。

図書館の皆さんもまた、種類の異なる図書館の方々とゆるやかなつながりを感じ、それを育てていくことに意義を見出していただけているようです。とくに、ブレイクアウトセッションでの皆さんのご様子を拝見していて、今後は、国連寄託図書館、そして、その他のパートナーの図書館の皆さんがこのゆるやかなつながりを活かし、図書館同士で協力しながら、互いの強みを活かしあうような取り組みの事例もたくさんでてくるかもしれないと思いました。

最後に個人的な話で恐縮ですが、私は、今年3月で64歳。これまで、図書館ネットワークの構築を担当してきましたが、次回の図書館研修が、私自身が退職前にたずさわれる最後の研修となります。図書館の皆さんのこれまでのご協力に感謝しながら、また、図書館の皆さんの今年の取り組みに期待をしながら、最後の一年間を過ごしたいと思っています。(了)