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国連地雷対策サービス部(UNMAS)リビア事務所
プログラム・オフィサー 梨本 篤司さん

梨本 篤司(なしもと あつし)
国連地雷対策サービス部(UNMAS)リビア事務所
プログラム・オフィサー

大学院終了後、青年海外協力隊としてパプアニューギニア、国連ボランティアとしてUNHCR南スーダン事務所で帰還民支援携わる。その後、JICAエチオピア事務所で緊急干ばつ対策支援プロジェクト、国連ボランティア計画(UNV)東京駐在事務所では、邦人国連ボランティアの派遣業務等に従事。2014年11月より国連地雷対策サービス部(UNMAS)リビア事務所にて、プログラム・オフィサーとして勤務。

UNMASリビアでの初日

「あなたしか知らない秘密の質問とその回答を記入し、それを封筒にいれて明日までに提出してください。」 これが、この事務所に到着した初日に受け入れ担当職員から言われた言葉でした。

止血のトレーニング

危機回避教育の講義に耳をかたむけるリビア人女性 Giovanni Diffidenti / UNMAS

「この秘密の質問は、万が一、あなたが人質事件等に巻き込まれた際に、その人質が本当にあなたかどうかを確かめるために必要です」と続く。これまでの勤務地より、安全管理に対する警戒度がとても高いことを痛感した瞬間でした。

その後も、人質事件の被害者になったことを想定した実践研修、自分が銃弾や即席爆弾の被害にあった際に、どのように動脈から流れ出る血を止血するのか、更にはどのように二次被害から自分の身を守るのか等の実践研修が続きました。自分の身を自分で守るためには、どう行動すべきなのか。緊迫した実践研修の積み重ねが、万が一の際に、生死を分けることを思い知らされました。

脅威と隣り合わせのオペレーションであることを痛感する一方で、その脅威の中で今も生きるリビアの子ども達や若者、女性や国内避難民の存在に目を向けると、戦争残留物や不発弾の処理業務、危険回避教育等を実施するUNMASリビアの活動の重みを感じるオペレーションです。

不確定要素の多い中での活動

2011年のカダフィ政権の崩壊後、リビアでは、戦争残留物や不発弾による犠牲者が多数を出し、2014年7月には、武装集団による更なる衝突が勃発。このような中で、国連リビア支援ミッション(UNSMIL)の一部として活動するUNMASにおいても、同年7月以来、隣国チュニジアへの国外退避をしてオペレーションを実施することになりました。

アジュダービヤー市内の学校に展示される戦争残留物 Giovanni Diffidenti/UNMAS

リビア国内での我々国際職員の活動が制限されていても、隣国チュニジアを拠点にして、リビア人に届く活動を考える。これが、このオペレーションに来て最初に任された仕事でした。

その中で出てきた実行可能な案の一つは、危険回避教育に関する能力強化研修でした。この分野で活動しているリビア人に対して、チュニジアにて研修を実施する内容で、ロジスティク的にも容易に運ぶのではと思われた活動でした。

しかし、チュニジア国内でのテロの脅威が高まり等から、リビアとチュニジアの国境警備が強化され、国境一時閉鎖のニュースも報道されるようになりました。また、航空会社も一時的にリビア便をキャンセルしだし、空路でのチュニジアへの移動のオプションにも暗雲がたちこみだしました。同時並行で、チュニジア外務省に対して、研修概要とリビア人研修員の氏名を事前に連絡するなどしてきましたが、研修開始直前の治安情勢によっては、研修員のチュニジアへの入国が認められないことも考えられるという、多くの不安定要素を抱えながら研修当日を迎えることになりました。

リビア人研修員とともに

研修当日、研修会場に顔を出すと、20名のリビア人研修員の姿がありました。その姿を見た時には、本当にほっとしました。研修員の姿を確認後、在リビア日本大使館の担当官に研修最終日に執り行われる予定の修了式典への出席依頼の連絡をするという、研修開始日まで多くの不確定要素を抱えた中でのプロジェクトの実施でした。

カフェで過ごす週末

チュニジアの首都チュニスには、たくさんのカフェが立ち並び、そこで仲良くなったチュニジア人とたっぷりの砂糖とミントが入った紅茶やコーヒーを飲みながら、会話をするのがもっぱらの週末の過ごし方です。現地の人々との会話は、新しい発見や学びの場になり、飽きることはなく、常に刺激的な充実した時間になります。

現地の人との会話で特に気をつけていることは、できるだけ聞き手に回るということです。チュニジア人の大切にしていることや、彼らの今一番の関心事項を聞いたり、彼らの価値観等を理解することが、チュニジアの人々の理解に繋がると思っています。

しかし、先日はカフェでとても心が痛む経験をしました。足と肩、胸に大きなガーゼをあてている3名の青年とカフェで出会いました。聞くところによると、三人はリビア人で、リビアで戦闘員だったけれども、負傷してチュニジアの病院に治療に来ているとのことでした。一人のリビア人が、自慢げに携帯電話を取り出し、車の荷台から銃を乱射している自分の戦闘風景を写した動画を見せてくれました。「傷が治ったらまたリビアに戻って戦うんだ。」という一人の青年の躊躇のないこの言葉が、胸に突き刺さりました。リビア国内の混乱、平和構築までの長く険しい道のりを思い知らされました。

» 「more than mines - 地雷の先にあるもの in リビア」
 - 梨本さんが出演、UNMASリビア事務所の活動を紹介します