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外務省 総合外交政策局 国連企画調整課
関口 昇 課長からのメッセージ

日本における国際連合のカウンターパートとして重要な外務省総合外交政策局 国連企画調整課の関口課長よりお話をうかがいました。
【 聞き手:国連広報センター 所長 根本かおる 】

関口 昇 (せきぐち のぼる)
外務省 総合外交政策局 国連企画調整課長

昭和42年米国生まれ
【職歴】
平成 3年4月  外務省入省
平成14年8月  外務大臣秘書官事務取扱(川口順子大臣)
平成16年8月  在英国大使館 一等書記官(広報文化センター次長)
平成21年3月  大臣官房総務課情報公開室長
平成23年1月  総理大臣官邸内閣官房副長官秘書官
平成25年1月  総合外交政策局国連企画調整課長 現在に至る

「外交官として他国に駐在すると、日本人の勤勉さや能力の高さを改めて感じます。そういった日本人が国際機関で活躍できれば、国際機関自体のパフォーマンスが上がり、ひいては日本の国際社会における地位の向上にもつながるのではないでしょうか。
外交といっても国と国だけではなく、そこには人と人との関係があります。政府の人間でも、国際機関の人間でも、それぞれ国益、国際社会の利益を考えて働くという点で同じベクトルを共有できる部分があります。日本政府から見て,国際機関の中で働いている日本人とは、生まれや育ちに加え,世界の利益を考えるバックグラウンドが同じもの同士、仲間意識をもって仕事ができます。それゆえに,日本政府と国際機関の間の情報のやりとりもしやすいでしょう。日本政府として有益なことで、更に国際社会にとっても有益なことに、政府と国際機関の日本人職員が協力して取り組むことで、日本の政策の推進にもつながることになりますね。
日本は他の国々に比べて過去にアフリカを中心に植民地化していないという点で、現地の人々にとってはある種の公平性をもって見てもらえるという強みがあります。また、日本は戦後の努力で経済を立て直し、そのノウハウを生かして東南アジアなどの国々の自立を支えてきました。このような歴史があるため、開発援助をするときには、さまざまな国からの信頼が得やすいというメリットがあります。日本人の傾向としては、中庸を美徳とする価値観を持っているため、各方面の顔を立てながら間に立って仕事をすることが得意ではないでしょうか。

これらの才能があるにも関わらず、現状での国際機関における日本人職員の数はいまだ十分とはいえません。それには外国語教育の問題や、地理的な問題、そして経済的な問題が理由として挙げられるでしょう。地理的に日本は島国なので、外との交流をしなくてもいい内向きの傾向があります。そして経済的に見ても、比較的安定している国内での仕事に就きたがる人が多数です。
この課題を克服するためには、国際機関での職務内容や適性について広報を充実させ、より多くの情報を提供する必要があります。またJPO (Junior Professional Officer) 派遣制度※などについて、体制やサポートを充実させ、受け入れ側の国際機関を拡充していくことも重要です。

日本人の傾向としては、良くも悪くも強烈なリーダーシップというよりは、チームプレイが得意で周囲と上手くやっていく人が多いのではないでしょうか。カリスマ的な存在として上に立つ人を輩出することだけが国際社会への貢献ではないと私は思います。例えば,組織全体を上手く管理していけるのは日本人の特徴の一つであり,そのような形の国際貢献も重要です。ルールメイキングにももっと日本人が関わっていけるのが望ましいですが、そのためにはまず幹部のポジションに就く職員を増やしていくのが課題でしょうね。」

※JPO派遣制度:将来的に国際機関で働く正規職員を志望する若手の日本人を対象に,外務省が派遣に係る経費を負担し,一定期間各国際機関へ職員として派遣し,国際機関の正規職員となるために必要な知識・経験を積む機会を提供するもの。
http://www.mofa-irc.go.jp/jpo/seido.html
 

関口課長より若い世代へ向けてのメッセージをいただきました

「日本人は世界から見ても、勤勉さ、勤労意欲、倫理的という面で非常に優秀で高い能力をもっています。無理だな、と思わずにどんどん挑戦していってほしい。それが日本のためにもなるし、国際社会全体のためにもなるので、頑張ってほしい。また実際に職業に就く前に、インターンとして国際機関の現場を知ることは非常に貴重な経験です。今後はより多くの大学や大学院でインターンシップが単位として取得できるようにするため、教育機関とも連携していきたいですね。」

取材同行及び本記事作成に当たったインターンの感想

これまでは、日本人は欧米諸国の人々と比べて能力が低いのではないかとネガティブな印象をもっていましたが、関口課長のお言葉を聞いて、日本人であることにもっと自信と誇りを持っていいのだと感じ、非常に勇気付けられました。これまで国際的な舞台の前線で、また日本国内でも重役を担われてきた関口課長のインタビューに、国連広報センターのインターンとして同行させていただけたことを貴重な経験だと感じています。国際機関への就職は難関ではありますが、国際社会での日本人の果たす役割の大きさ、必要性についてうかがい、積極的に挑戦していきたいと思います。

国連広報センター インターン:橋本ひかり・山田朋枝