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寒く、閉ざされ、近づくこともままならない北極ツンドラは、かつて(少なくとも人間にとっては)地球上で最も手のつけられていない地域でした。ところが、地球の最北端に位置する氷に閉ざされたこの地域は、多くの渡り鳥が繁殖期を過ごす場所なのです。
寒さ、限られた食糧源、長い移動距離といった厳しい自然環境に耐えられる動物でなければ北極ツンドラでは生きていけませんが、実際のところそこにある生態系は極めて壊れやすいものです。国連環境計画(UNEP)によれば、地球の気温上昇は永久凍土層を融かし、植生を損なうものと考えられます。これにより、そこに生きる動物にも深刻な影響が及び、絶滅する種も出てくるでしょう。 特に北極圏に接する地域では、最近になって鉱業活動や原子力発電所の建設が進み、自然環境だけでなく、この地域で繁殖を行う動物に対する脅威もせまっています。 繁殖期には様々な鳥の群れが北極圏に渡ります。コチョウゲンボウ、ハヤブサ、ケアシノスリなどの猛禽類も、マガンなど大人しい鳥と並んで、断崖に巣を作ります。 マガンはくちばしの周辺にくっきりとした白ぶちがあるので普通のガンとは区別されます。そのマガンにとって、この生活環境は、ホッキョクギツネなどの陸上の捕食動物から身を守る手段となっています。 マガンは移動性の高い渡り鳥で、繁殖地であるスカンジナビアやシベリアのツンドラから、南は暖かいギリシャまで移動します。ヒナは晩夏に北極圏で生まれ、秋にはヨーロッパに渡れるまでに成長します。 しかし、北極圏の気候変動により、マガンはヨーロッパで絶滅のおそれが最も高い鳥になってしまいました。気温の上昇により、マガンは渡りを開始する時期を判断できなくなり、移動する鳥の数が減っているからです。ヨーロッパに留まれば、ハンターの餌食となるか、生息地である湿地帯の消失の影響を受けてしまいます。ツンドラに長く滞在しすぎれば、そこに住む生物の間にある自然界のバランスが崩れてしまいます。 マガンの数は20世紀前半から約90%も減少し、世界全体でもおよそ5万羽しかいなくなってしまいました。マガンの追跡調査が本格的に行われるようになったのはここ20年ほどのことに過ぎないので、情報は少なく、劇的な数の減少に研究者も頭を悩ませています。 情報とアセスメントの拠点として設置された世界動植物保全監視センター(WCMC)では、北極圏の環境を保護するためのプログラムを開発しました。WCMCの調査によれば、地球温暖化とそれに伴う鳥の生息地の消失は、今後100年のうちに数百万羽規模で影響すると見られています。 マガンはまた、「アフリカ・ユーラシア渡り性水鳥の保全に関する協定(AEWA)」の保護対象にもなっています。この協定は、移動性野生動物の保全に関する条約(ボン条約)によるものとしては最大規模で、移動ルートに湿地が含まれる172種の鳥を対象としています。AEWAの対象地域はカナダ及びロシア連邦の北端から、アフリカの南端にまで及んでいます。 写真提供:国連
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