works logo絶滅危機種の保護に向けて


苦悩する巨獣

ゾウサーカスや動物園、ヒンズー教寺院、さらには子どもの本の中でも、象は何世紀にもわたって見る者の心を捉え、崇拝者を生み出してきました。しかし悲しいことに、この地上最大の哺乳動物は、長い間、世界の象牙需要を満たすために殺されてもきました。

1989年から象牙取引が国際的に禁止されているにもかかわらず、象の命は依然として人間の存在に脅かされています。しかし、不法密猟が主な原因ではありません。住む場所がなくなることが、アフリカ象にとってもアジア象にとっても、最大の障害になっています。アフリカでは、大変深刻な状況に陥ってしまっています。また、生き残った象のほとんどが飼いならされているアジアであっても、生存が危ぶまれている状態です。

今日では、人間の居住する地域が拡大したり、人口が増加したり、もともと象が生息していた区域に農作物が植えられたり、と象の群れが移動し、エサを探すための場所は少なくなっています。

その結果、象が田畑を襲い、作物を破壊することが増えたり、象と人間が衝突して、年間300万人近くが命を落としたりしています。野生生物保護当局に対しては、被害を抑えるために、と人里近くに住む象の処分を望む声が強まっています。一方、1970年初頭には、象牙の不法取引が20世紀最大規模を記録しました。アフリカから輸出される象牙の80%以上は、不法に取引されたもので、今でも西アフリカや中央アフリカでは、密猟が大きな問題となっています。と言うのも、取引が禁止されているにもかかわらず、いくつかの国では依然として象牙が取引されているからです。アジアでは輸出が伸びている地域もあるようです。

野生の象を保護するには、様々な側面から取り組む必要があります。例えば、生息地の消滅問題について、密猟や不法取引について、人間と象との衝突事故増加について、などです。野生生物保護当局が、象の生息数を正確に把握し、また管理能力を育成することも欠かせません。

地球とそこに住む動物の保護に向けた国際的努力の結果の一つに、国連環境計画(UNEP)が取り扱う「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES。通称:ワシントン条約)」がありますが、これは世界で最も広範囲を対象とする自然保護協定です。

この条約は、野生動植物の標本を国際取引することによってその動植物の生存を脅かさないようにすることをねらいとしています。

今日、160カ国がこの条約を批准し、3万5,000種以上の動植物に対し、危機状況や国際取引による影響に応じた様々な保護を約束しています。絶滅のおそれのある種について国際取引を禁止するほか、現時点では絶滅の危機にはないものの今後国際取引を厳しく規制しなければその可能性があるという種も、保護の対象にしています。

この条約により、象製品の取引を検討するモニタリング(監視)制度が設けられました。象が置かれた状況は、各国の生息区域ごとに異なっています。アフリカ諸国の中には、規制枠内で合法的に象牙取引する分には、象を絶滅の危機に晒すことなく、経済的利益をもたらすという見方もあるのです。

情報収集と取引政策の評価を行うMIKE(象の不法殺害監視)とETIS(象取引情報システム)という、2つのモニタリング・プログラムが始まっています。

写真提供:国連

 

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