works logo絶滅危機種の保護に向けて


野生の建築家

ビーバーヨーロッパのいたるところ、河川や湖沼の岸辺には「建築物」をごちゃごちゃと忙しく作る小さな動物がいます。作られたモノはヨーロッパ大陸の湿地を守るのに役立っていますが、その作り主は、というと生存の危機に晒されているのです。

ヨーロッパビーバーは、アメリカビーバーとほとんど同じに見えますが、実は別種の生き物です。働き者で誠実で、つがいになると「ロッジ」と呼ばれる小さな家族単位でずっと一緒に暮らします。子どもたちは、3歳頃まで親と一緒に過ごした後、ようやく独立です。

家族を大事にすることからして、ビーバーが家の設計と建築に時間を費やすのは、そんなに驚くようなことではないかもしれません。ビーバーはよく野生の建築家とも呼ばれ、人間以外で唯一、環境に影響を及ぼす建築物を作る動物です。ただ、人間とは異なり、ビーバーの作るモノはもっと環境にやさしいのです。

ビーバーが新しいロッジを設けるときは、まず小さなダムを作って水の流れをせき止め、そこに巣を作ることになります。こうしてビーバーが住環境を広範囲にわたって変えることで、魚やカワウソ、水鳥、キツネ、シカなど湿地に生息する動植物が繁殖しやすい環境にもなり、結果的に湿地を守ってくれます。

ヨーロッパビーバーは、かつてイギリス諸島からロシア連邦の東岸に至るまで、ユーラシア大陸の温帯地域全体に生息していました。19世紀には、ドイツ、ノルウェー、ベラルーシ、モンゴル、ロシア連邦の小さな、人里離れた湿地帯にしか見られなくなってしまいました。

そしてほんの10年前に、もうあと一歩で絶滅というところまで事態は悪化しました。柔らかい耐水性のある毛皮と、肛門腺から分泌されるカストリウムの需要が高まり、乱獲されたからです。カストリウムには、アスピリンの有効成分であるサリチル酸が含まれています。

現在はビーバーが湿地を守るのに重要な役割を担っていることが認識されたことから、ハンガリー、英国、オランダなどで、絶滅したビーバーを呼び戻そうという環境保護活動が行われるようになりました。呼び戻されたビーバーは一生懸命働き、目立たないながらも確実に環境保護に効果をあげています。

ヨーロッパビーバーは、国連環境計画(UNEP)が取り扱う「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES。通称:ワシントン条約)」によって保護されています。

ワシントン条約は、国際取引によって野生動植物の生存を脅かさないようにするための政府間協定です。この条約により、ヨーロッパビーバーの狩猟やその生息地の破壊行為は非合法となりました。

今日、160カ国がこの条約に批准し、3万5,000種以上の動植物に対し、危機状況や国際取引による影響に応じた様々な保護を約束しています。絶滅のおそれのある種について国際取引を禁止するほか、現時点では絶滅の危機にはないものの今後国際取引を厳しく規制しなければその可能性があるという種も、保護の対象にしています。

写真提供:国連

 

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