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講師:長瀬 愼治 (UNV 駐在調整官)
関連資料:「UNVの歴史と活動、今後の展望(PDF)」
国連ボランティア計画東京事務所駐在調整官の長瀬と申します。よろしくお願い致します。
今日はUNICのライブラリー講座第7弾UNVの回ということで第1部、UNVの歴史、活動、これからの展開をご紹介させて頂き、第2部ではUNV関連の情報を得るためのアクセス方法をプログラムアソシエートの太田晃嗣がプレゼンテーションをします。どうぞよろしくお願いします。UNVの東京事務所は、スタッフが2人という小さな事務所で、駐在事務所という形をとっています。UNVというのは本部がドイツのボンにある独立した組織ですが、国連開発計画(UNDP)の下部組織として、その管理下にあります。したがいまして、日本では、UNVとして独自の活動をするのと同時にUNDP東京事務所のアドミニストレーションの管理下にあるという、少々複雑な関係の中で活動をしております。スタッフが今日ここにいる2人ですから、なかなか多くの皆さんにアウトリーチできるだけのキャパシティーがありませんので、このような機会を与えて頂いた国連広報センターの千葉さんには深く感謝申し上げたいと思います。
それでは、まず国連ボランティア計画について非常におおざっぱな形で、現在の組織について、またその形になるまでの歴史を説明させて頂きます。その後、現在の活動についてと、これから我々が何をやろうとしているか、というところを説明させて頂きたいと思います。
UNVの歴史に関しては、資料にアクセスできるものに添って、説明させて頂きます。他の国連組織と同様に、UNVも国連総会の決議によって、組織体制、そしてその任務が規定されています。ですので、今回はUNV関連の国連総会決議をトレースしながら、現在のUNVの活動に至る歴史を追っていきたいと思います。何個かの国連決議を経て作られてきた現在のUNVの活動ですが、「開発と平和のためのボランティアリズム」、もっと簡潔に「開発のためのボランティアリズム」、という概念を中心にして、やらせて頂いております。 「開発のためのボランティアリズム」は英語で言うと「Volunteerism for Development」と呼んでいるのですが、我々はその頭文字をとって「V4D」と呼んでいます。「V4D」を中心にUNVがどのような活動を展開しているのか、ということを説明したいと思います。
最後に、今後の展望についてですが、UNVは前述した通り、UNDPの下部組織であり、UNVは2年に1回、UNDPの執行理事会で、活動を報告する義務があります。今年の6月に開催されたUNDPの執行理事会で丁度UNVの報告が、ありましたので、その結果をもとに、今後の展望をご説明させて頂きます。
国連ボランティア計画は、現在は「国連システムの中でのボランティアリズム推進の中心機関」として捉えさせていただいております。国際ボランティアを派遣する「ボランティア派遣機関」という風に理解している方が多いとは思うのですが、現在はそれだけでなく、ボランティア派遣も含んだ「ボランティアリズム」というコンセプトを世界中に普及することをマンデートとして持つことになりました。つまり、UNVは世界の開発と平和のための市民参画の主要形態として「ボランティア」というものを提唱し、具体的に3つの活動の柱を立てています。1つ目はコンセプトとしてのボランティアリズムを推進し、啓発すること、そして2つ目は具体的な形として、世界中で行われている開発活動の中で、実際にボランティアが開発活動のアクターとして認識され、活動に実質的に組み込まれていくことを推進する努力をすること、3番目は設立当時からずっと続けているボランティアの派遣です。
UNDPの本部はニューヨークにありますが、その下部組織であるUNVの本部はドイツのボンにあります。ボンは第二次大戦後、西ドイツの首都でしたが、東西の冷戦が終わった後の統一ドイツの首都はベルリンになってしまいました。で、使われなくなった西ドイツ政府の国会議事堂があった敷地にボンが、国連ビルを誘致し、その中にUNVの本部が入ることになりました。 他にもそのビルには、気候変動枠組条約(UNFCCC)や、砂漠化防止条約(UNCCD)などのオフィスもあります。ドイツにある国連組織の中では、UNVはUNFCCCに次ぐ大きな組織として活動しているようです。
UNVの現在のミッションステートメントは2つのパラグラフから成っています。第一パラグラフは、「開発のためのボランティアリズム(V4D)」、つまり、ボランティアが開発にどう寄与するのか、どういった利益が誰に対して、あるのかということを説明させて頂いており、第2パラグラフはUNVがボランティアリズムという概念の下でどういった役割を現在持っているのかを説明しています。UNVのウェブサイトにもこちらは載っていますのでお読みください。このUNVのミッションステートメントは現在の開発や国際協力全般の潮流に合わせた概念や用語を反映して書かれているものですが、こうなるまでには、設立依頼、その時代のニーズに応じてUNVに対する様々な期待が加えられてきたという歴史があります。そこの部分を少し追ってみたいと思います。
UNVは1970年に国連総会決議(26/59)により、国連機関や支援国に対して、国際ボランティアを派遣する、いわば人材派遣機関として設置されました。そして、1976年には青少年の人たちの開発活動への参画を推進する活動をしていくことがマンデートとして国連総会から付帯されました。これは必ずしも若い人たちを国連ボランティアとして支援国に派遣するということではなく、国連ボランティアの活動対象として、青少年に対する支援に注目するという意味です。UNVのボランティアには25歳以上という年齢制限があります。それは専門分野におけるプロフェッショナルを、大学卒業後に2,3年以上の職務経験、もしくはそれに順ずる経験があり、即戦力として現地で活動できる人材をボランティアとして開発の現場に送り込むということが我々のボランティアの基準になっているからです。現在は多様なニーズに答えるために、若い人たちのトレーニングのためのボランティア派遣のプログラムを作ったりもしていますが、先ほど申し上げた国連ボランティアの基準は、その中心としてぶれてはいません。
UNVが毎年の活動の一つとして重要視しているのが、12月5日の国際ボランティアデー(International Volunteer Day) なのですが、それが採択されたのが1985年です。それ以降、毎年12月5日には各国のUNVを中心に、もしくは側面支援をする形で、世界各国で国際ボランティアデーにはイベントが開催されています。今年も世界各国で色々なイベントが企画されています。
1997年の国連総会決議52/17では、2001年をボランティア国際年にすることが、採択され、その準備、実施、フォローアップの国連機関のフォーカルポイントとして、UNVが任命されました。「ボランティア国際年」は、新しいミレニアムの最初の年の2001年が、ボランティアの年になったという画期的な1年でした。この1年を通して、ボランティアに関する啓発活動やイベント、ボランティアに関する国連会議などといった活動が一年を通して行われました。補足ですが、実はこの2001年のボランティア国際年の発案者は日本人の中田武仁氏で、彼の提唱に日本政府が呼応する形で国連総会決議のスポンサーとなり、採択されたという経緯があります。中田武仁氏というのは、国連ボランティア計画名誉大使です。1993年、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)のもとで選挙が行われ、十数名の日本人国連ボランティアが選挙支援のために参加をしました。中田武仁氏のご子息、厚仁氏もその内の一人だったのですがUNVとしての業務執行中に亡くなられました。その息子さんの遺志を継いで、中田武仁氏はボランティアリズムを世界中に広めていこうという活動をされておりまして、UNVは彼を国連ボランティア名誉大使、これは他の国連機関の親善大使とほぼ同じ役割をはたすのですが、として任命し、ボランティアリズムの啓発活動に共に取り組んでまいりました。中田大使が2001年のボランティア国際年を提案されたのが、1995年でした。つまり、ボランティア国際年というのは日本発、ナカタ発、の国際年ということになります。ですから日本の政府からのサポートも非常に大きくて、2001年のボランティア国際年の活動期間中には、日本政府、また日本のボランティア関連団体から非常に大きなサポートを頂きました。中田武仁氏は今年の4月8日に15年国連ボランティア名誉大使をされ、勇退されましたが、引き続き国連ボランティア終身名誉大使として共通のミッションを持つUNVとは協力関係を継続することになっています。今後も中田大使は国内での講演活動等をライフワークとして継続して頂きますので、これを機会に是非注目していて頂きたいと思います。
前述した通り、2001年は非常にUNVにとっては大きな年であり、このボランティア国際年を通して国連からUNVのマンデート拡大が決定されたのです。2001年を境に、これまでのボランティアの派遣という任務に加えて、ボランティアリズム全体の促進や開発計画に対応したボランティアの実質的な融合をはかるための活動をすることなどがマンデートとして付与されました。2002年は2001年のボランティア国際年を継承し、発展させるフォローアップの年であり、UNVは引き続きボランティア国際年の時に付帯された任務をフォローするという使命が与えられ、現在に至っています。
以上がUNVの歴史についてですが、次はUNVの活動についてV4Dを中心として説明をさせて頂きたいと思います。
「開発のためのボランティアリズム(“Volunteerism for Development”)」というのは、2001年のボランティア国際年を境としてUNVの活動する上での中心的な概念として用いられるようになった言葉です。
つまり、世界的な開発活動のためにボランティアをもっと使っていこうということです。ところで、「ボランティアとは一体何か」ということについて我々は3つの要素を定義としてよく使っています。1つはボランティアとは、金銭的対価を伴わない活動、無償制ということです。もう1つが、命令されない活動であること、つまり「これをやれ」と言われたからやるということではなくて、自分側に選択の意思がある、つまり、自由意志に基づく活動であることです。そして3つ目が活動の公共制で、要するに個人の利益ではなく、社会全体の利益になるような活動であるということです。これら3つの要素を持つボランティア活動を開発のために使おう。開発のためにもっと使える。開発のために使わなければいけない。そういう信念のもとにUNVは活動しており、それを表す言葉としてV4Dということを申し上げています。
ボランティアを世界の開発や平和のための活動に活用することは社会にとってだけでなく、同時にボランティア個人にとってもそういった活動に参加することは利益になります。 ボランティア活動に付随する重要な付加価値として相互の信頼や助け合いの気持ちを醸成することがあります。活動の内容は同じでも、それを「ボランティア」としてやることが、労働以上の付加価値をつけ、それが活動の目標達成をより効果的に推し進めていくということが、ボランティアが求められている意義なのではないかと思います。例えば紛争地域のコミュニティというのは、紛争によって、既存の社会システムが崩壊しており、コミュニティー内のお互いの信頼関係が無くなってしまっていますが、そういう所に先ほど言ったような付加価値をもったボランティアというコンセプトを持ち込み、実際にボランティア活動をコミュニティーの人たちがすることが、コミュニティーを再生することを効果的に助けることを我々は期待しています。お互いの信頼を醸成する、壊れたコミュニティを再生するための要素として、ボランティアが持つ信頼感、助け合いの気持ちなどが上手く機能するのではないか。そういった信念をもとにボランティアリズムを推進させて頂いています。
このようなボランティアリズムをUNVが提唱している背景には3つの点があります。1つは2015年までに達成しなければいけないミレニアム開発目標があります。 この目標達成のためには開発にプロフェショナルとして携わっている人達だけではなく、より多くの人々に目標達成のための活動に参加して頂くことが必要不可欠だと言われており、このことはコフィー・アナン前事務総長もMDGs達成のためにボランティアとして世界中の人々が参加することを公にステートメントとして発表しています。もう1つの点は、開発活動の中で自助努力やサステナビリティ(持続可能性)などというようなことがよく言われますけども、やはりそのコミュニティの中から物事をよくしていこうという気持ちがあり、自分たちが行動をしないと開発というのは成功しないだろうと、そしてそのための1つの方法としてボランティアというのは有効であるというものです。3つめは、実際にボランティアという名前で呼ばれていなくても、どのコミュニティ、世界中のどの社会でも前述したボランティアの3つの要素を持った同じような活動は大昔から存在していたということです。政府や国際社会が開発を考えるときに、そういう既存の社会資源にあまり注目していなかったのではないか、そういう、すでにあるのに忘れられているもの、コミュニティの中から忘れられようとしている部分、そういう昔ながらの社会を束ねているような機能を「ボランティア」という言葉を使って、呼び戻したり、再生していくことがより効率的ではないかということです。このような背景の中でUNVは開発のためのボランティアリズムがもたらす様々な利点を提唱しボランティアリズムが開発のための事業計画の要素として融合されるように支援していこうと考えています。
実際ボランティアが開発活動の中で何ができるのか、どのような貢献ができるかということについてですが、まず第1に、ボランティアとして人々がが開発活動に参加することは、政府だけでは手が届かないところに、届く手が増えるということですから、それだけ機会やサービスなどに対して裨益者がアクセスしやすくなるという貢献をします。例えば政府の政策をコミュニティのレベルで実施しようとした時に、実際それをファシリテートするボランティアがコミュニティーにいることでより多くの住民に情報が伝わり、サービスにアクセスする上での手助けになります。第2に、ボランティアというのは基本的に裨益者であっても、裨益者自身がその活動に参加するという機会を与えるものであり、そういう中で、開発のプロではなく、一般市民の人達が自分たちのコミュニティの開発に自ら参加することによって、開発の持続可能性を向上することに貢献しますし、開発のスピードや質を向上させることに貢献します。また第3に、前述した通りボランティアとは自発性、自由意志に基づいて行われる、社会全体の利益にしする行為ですから、住民個人のボランティア活動を通してコミュニティ全体が活性化し、よりよいコミュニティー作りに貢献します。以上のことを実証するためにUNVは色々なパイロットプロジェクト等を行い、ボランティアの重要性、またボランティアが開発にとって非常に有益なものであるということを訴えさせて頂いています。
以上の議論を踏まえてUNVとしての活動領域を図式化したものをビジネスモデルとして提示しております。図を見ていただくとおり、UNVは伝統的にやってきたボランティアの派遣に加えて、2001年以降はボランティアの重要性を訴え、理解して頂くためのアドボカシー活動と、政府や国際社会のレベルで認知されたボランティア活動を実際の開発活動の中に落とし込んでいく、融合していくというインテグレーションと我々が呼ぶ活動の2つの活動領域を加えました。インテグレーションについてもう少し説明しますと、開発活動を行うためには、まずは政府や国際社会のレベルで、何ヵ年かの開発戦略というのを通常たてて、それに基づいて活動をするのですが、各国において、国家の開発戦略に沿う形で、現地の国連機関が、いかに国家の開発を支援できるかという枠組みを作成します。これは、国連開発支援枠組みUNDAF(UN Development Assistant Framework)といいまして、UNVはこのUNDAFが決められるプロセスに参加して、ボランティアというものが、その文書に明示されるように働きかけています。この文書は国連と国家政府によって公的に承認される文書ですから、その文書にボランティアが明示されるということは、ボランティアの役割が政府と国連によって公的に位置づけられたということになります。そして実際の開発戦略の実践にボランティアを使っていくという、このような活動をインテグレーションと呼んでいます。
それでは、この3つの柱から成るUNVのビジネスモデルを通して具体的にUNVは何をしているのかをご説明します。まずはアドボカシーについてですが、やはり2001年のボランティア国際年が大きな契機になりました。この年に、国際的なボランティアの重要性を訴える啓発活動をし、例えば各国のボランティア活動を支援する体制を作ろうと法整備を進める活動をしました。実際にボランティアを上手く利用する制度がないという国に対して、他の国の例を紹介したり、情報を共有をしたりしています。世界には勿論UNVだけでなく、数多くのボランティア関連機関、団体が無数に存在しています。2001年を通してUNVがしたことは、それらのボランティア関連組織とのネットワークを拡大し、そこで培われた知識や技術などを共有し、お互いが協力して、ボランティアの世界的な認知向上のための活動を行ったのです。、例えばCIVICUSやIAVEなどボランティア関連の世界的なネットワーク組織として非常に大きく、世界的にも有名な組織との連携をとりながら、ボランティアリズムに関する調査や研究、ケーススタディ、グッドプラクティス、そういったものの知識を交換する、共有することによって、ボランティアリズムの促進を促す活動をしてます。UNVはボランティア国際年を契機として、その情報交換のツールとして、www.worldvolunteerweb.org を開設し、現在もホストしています。
そういったアドボカシー活動の結果として、世界中でボランティアの役割を認知しようという動きがでてきました。そこで、UNVは例えば、タンザニアの政府に対して、国家のボランティア政策文書の作成に対しての政策提言や技術支援を行ったりしています。今年の5月に横浜でアフリカ開発会議が行われましたが、その関連で言うと、アフリカ連合(AU)が、日本で言えば青年海外協力隊、アメリカで言えば、ピースコーのようなボランティアプログラムの設立のイニシアティブがありまして、現在UNVやJICAの青年海外協力隊の事務所などが持っている経験や知識、技術などを利用していこうという動きもあり、ボランティアリズムに関してアフリカの大陸の中でも色んな動きがあるというのが現状です。
また、実は今年の北京オリンピックにもUNVはボランティアマネージメントという観点から支援をしています。オリンピックのような大量の数のボランティアの動員が必要なメガイベントのボランティアマネージメントへの技術支援などはUNVのみならず、IAVEやCIVICUSにもその専門家がいまして、支援をしています。UNVとしては、中国のボランティアリズムがオリンピックだけで終わることなく、これをきっかけにボランティアリズムに対する意識が高まり、結果として、中国の開発、特に農村開発などに今後活用できるように働きかけをしています。
ボランティアリズムに関する調査・研究については、現在、UNVがアメリカのジョン・ホプキンズ大学と国連統計局との協力の下、国民経済計算の中にボランティア活動の経済効果を組み込んでいくためのサテライト勘定という方法の研究を進めています。これは、経済的な数字、つまりボランティアの経済価値を数値で示すことによって、ボランティアの重要性を説得していくというアドボカシーの一つとして推進しています。それはジェンダーに対しても然りです。UNVも国連の組織ですのでジェンダーバランスに関しては非常に重要視しています。現在国連ボランティアの男女比率は6対4ですが、これを50:50になるように努力しています。またジェンダー予算というのがありますが、コミュニティレベルでの女性の参加の推進もボランティアを通して促進しています。
次に我々がインテグレーションと呼んでいる部分ですが、ボランティアリズムの開発計画への融合への働きかけについては、前述した通り、UNDAFにボランティアという言葉が明示されるように働きかけるという活動があります。現在41カ国のUNDAF にボランティアという言葉が載りました。残る100数カ国に関しても引き続き頑張っていきたいと考えています。これは各国政府がボランティアを開発を進める他の公的なパートナーとして認知するかどうかという問題ですので、この部分の活動を進めていくということは、非常に意義のあることであると考えています。
ボランティア全般ではなく、国連ボランティアがいかに国連の活動の中に融合されているかについてもご説明させていただきたいのですが、特にその規模において特筆すべき活動として、国連の平和維持活動(PKO)への国連ボランティアの派遣というものがあります。現在国連のPKOはUNVなしでは成り立たないと言われるほど、人材の派遣においての貢献があります。93年以降のPKOミッションには、総計約1万8000件の文民スタッフのポジションがありましたが、その内の約半分が国連ボランティアのポジションでした。現在では世界中のPKOの中で約3割の文民スタッフが国連ボランティアだということです。この中には、選挙支援や、政務 、民事、開発担当など、ミッションの中身に関係する分野へのボランティア派遣だけではなく、ミッション運営全体のサポート、例えば、国連の車の整備をする自動車整備工や、国連機を飛ばすための管制官、国連の敷地の施設を運営するキャンプ・マネージャー、発電機を管理するジェネレーターテクニシャンなど、ミッションのロジスティックスを担当する国連ボランティアも数多く派遣しています。
UNVはPKO以外にも、UNDP、UNHCR、WFP、FAO、UNICEF、UNFPAなど各種国連機関が行っている活動に対して、ボランティアを派遣することによって、国連の全体としての活動の中にインテグレートされています。では実際にどれくらい派遣しているかですが、一番多いのはUNDP、これは、UNVが下部組織だという背景がありますが、続いてUNHCRが多いです。UNHCRの現場の最前線で難民を受け入れたり、送り出したりする多くのオフィサーはUNVだったりします。その後にWFP、UNFPA、UNICEFというように続きます。各国連機関の現地での活動が例えばテレビで紹介されることがありますが、そこで活動しているスタッフのかなりの数が、国連ボランティアであるというケースがよくあります。
次に、ボランティアリズム全体としての開発活動への融合という点でのUNVの貢献についてですが、UNVは、国連ボランティアを派遣するだけではなく、彼らの活動を通して、地元のボランティアを動員することを支援する活動を行うことによっても、貢献しています。例えば、ベニンでのボーイスカウトのボランティアトレーニング。国連ボランティアが地元のボーイスカウトをトレーニングすることによって彼らがボランティアのリーダーとして地元住民のボランティア参加を促していくという支援をしています。例えばUNVはマラウィに41名の医師を国連ボランティアとして派遣しましたが、彼らはいわゆる医療活動と同時にそのコミュニティの医療や衛生をコミュニティレベルの住民に教育することによって地元の医療ボランティアの数を増やすというような活動もしています。
また、地元の学生や青少年のボランティアを活性化する支援をしています。例えば今、アフリカは特に若年層の人口比率が非常に高い半面、彼らの雇用機会が少なく、開発を妨げるリスクが非常に高くなっています。同時に彼らの教育と能力強化をすることが、その国の開発の効果を高めるというポテンシャルも持っています。UNVはアフリカの青少年の活動を促進する一つの機会としてボランティアに参加することを支援しています。例えば、ギニアビサウ、トーゴ、シエラレオネ、リベリア、コートジボワールなどが加盟するECOWASという西アフリカの地域機関が推進するYOUTH AMBASSDER FOR PEACE(平和のための青少年大使)プログラムを支援していますし、リベリアでは国家開発戦略の優先事項として青少年の問題解決が明示されており、若い人達がボランティアとして活動することによってON THE JOBトレーニングを通して自分たちのスキルを向上していくという活動を支援しています。
最後にボランティアの動員についてお話します。まずは国連ボランティアの派遣実績ですが、現在、世界168カ国出身の国連ボランティアが世界の144カ国で活動していて2007年には約7600人の国連ボランティアが派遣されました。平均年齢は37歳、男性60%、女性40%という形です100以上の専門分野の専門家を送っています。そのうち日本人は毎年約100名です。
国連ボランティアの数は1970年にUNVが設立されてから毎年増加しています。特にUNVがPKOに派遣を決めた1993年からの国連ボランティアの数はどんどん増えています。ここ数年の数の伸び具合というのは非常に大きなものがあります。
またUNVは国連機関以外にも、多くの組織とパートナーを組み活動しています。日本では広島大学の平和構築人材育成センターと共に平和構築の人材育成事業というのを去年から始めまして、今年がそのパイロットプロジェクトの第2期となっています。JICAとは、青年海外協力隊事務局との協力関係があり、青年海外協力経験者の方々を国連ボランティアとして派遣するというプログラムを行っておりまして、青年海外協力隊経験者にとってのキャリアパスの一つとして利用いただいており、毎年15名―20名の方々を派遣しております。
国連ボランティアは約100の分野の専門家がミレニアム開発目標の達成と貧困削減、HIV/AIDSの啓発活動、災害予防、復興、青少年支援、選挙・民主化支援、平和構築、人権、コミュニケーション、農村開発、環境等の分野で活動しています。ここでは、ミレニアム開発目標(MDGs)に関連するボランティアの動員と平和構築や防災に関連するボランティアの動員の2つに注目して説明します。
MDGs達成のためのボランティアの動員として特筆すべき点として以下を挙げてみました。MDGs達成が困難といわれているアフリカ諸国には年間合計7600人の国連ボランティアのうち、3600人を派遣しています。そのうち80%の人がアフリカ人です。つまりUNVはアフリカの地域内での人材交流を促進しています。例えば紛争とその後の復興を経験したシエラレオネ人が国連ボランティアとして、リベリアで活動するといった交流を促進させています。アジアとアフリカの南・南協力をボランティアを通して促進できるのもUNVの特徴です。5月に横浜で開催されたアフリカ開発会議の行動計画にも盛り込まれましたが、UNVは日本政府の支援を受けて、アジア青少年ボランティア・プログラムをタンザニアとザンビアで実施しています。これはアジアの中小企業支援と農業の専門家をアフリカに国連ボランティアとして派遣し、タンザニアとザンビアの国連ボランティアと共に活動をするというものです。
さらにMDGsに添っていくとHIVエイズに関してはGIPAというUNVが参加しているイニシアティヴがありますが、この事業はHIVエイズの啓発活動等にHIVエイズに感染している人達も国連ボランティアとして参加するというものです。保健・衛生の分野では、UNFPAと共同でスーダンの割礼防止のための啓発活動を行っています。環境に関しては、例えば、UNDP/GEF(Global Environmental Facilities)と協力して、カンボジアのトンレサップ湖でのエコツーリズムの促進のための住民へのトレーニングのプログラムを実施しています。これらのUNVが関わる活動で特徴的なのは、通常の国際ボランティア、UNVではインターナショナルUNVボランティアと呼びますが、の派遣だけではなく、地元の専門家をナショナルUNVボランティアとして、チームを組んで活動をしている点です。つまり海外から専門家は、その分野の専門性を持っている人ですが、彼らの知識・経験を現場で生かすために、現地の文化や社会制度を知っている地元の専門家を国連ボランティアとして利用して、より持続可能で、効果的な活動をしようというものです。この写真はカンボジアのトンレサップ湖エコツーリズムの支援の写真です。左の上は、水の浄化装置でUNVを通して住民に支給されたものです。非常に簡単なものですがこれで飲み水がつくれます。右上の写真はエコツーリズムのホスピタリティーのトレーニングをカンボジア人国連ボランティアが実施しているところです。左下の写真はきのこの栽培ですが、きのこを栽培を国連ボランティアの農業専門家が収入向上のために紹介したものです。
平和構築に関しては特にアフリカにおいて、多くの興味深い活動に国連ボランティアが参加しています。例えば今年の初頭、ケニアでは、選挙の結果が、民族間の対立を引き起こし、危機的な状況に陥りましたが、その危機に対応するため国連平和構築委員会のもとにある平和構築基金からの拠出による緊急のボランティアプログラムを立ち上げました。これはコミュニティの住民をボランティアとして動員し、民族の異なる住民がボランティアとして一緒に働くことによって、共存していくことを促進する活動です。
日本との関係では先ほど申し上げました、平和構築人材育成事業にUNVは参加しておりますし、防災の分野では、2005年に神戸で開催された世界防災会議で日本政府のイニシアティブで採択された神戸行動枠組において防災におけるボランティアの重要性が明示化されたことを受けて、コミュニティレベルでの防災のスキーム確立支援などを各国で防災ボランティアの動員を支援する形で行っています。
最後に今後のUNVの展望ということで、去る6月に開催されたUNDPの執行委員会にUNVから提出された報告書では、これまで説明させていただいたUNVのビジネスモデルに基づいた活動を継続し、発展させていくことが述べられています。2001年から始まったビジネスモデルですが、アドボカシーとインテグレーションという部分はまだまだ初期段階であり、引き続き、UNVとしてはボランティアを派遣する業務に加えてこの部分を充実化していきたいと考えています。先ほども申し上げましたが年間7600人という国連ボランティアの数は近年急激に増加したために、それに対応するUNVのスタッフの数の増加が行われていないのが現状で、これは組織としてのUNVの課題として認識されています。ボランティアインフラというのは、ボランティア活動がしやすい環境を法整備や制度・組織・施設の整備を通して行っていく活動のことですが、UNVのオリジナルな支援ができる部分であるため、しっかりと進めていきたいところです。自国の国内で国連ボランティアとして活動するというナショナルUNVボランティアのスキームは取り入れられてから約10年くらいが経過していますが、その制度、活動、成果についての調査・評価を実施し、より良いプログラムにしていきます。国によって、地方によって、コミュニティによって、ボランティアに対する考え方も制度も違いますので、各国の社会環境により即したプログラムにしていく必要があります。環境分野での活動においては、特にコミュニティレベルでの緩和・適応プロジェクトにはボランティア、そして国連ボランティアの活動の場がまだ多く残っているため、今後特に注目していきたい領域です。そして、最後になりますが2001年のボランティア国際年から10年経った2011年にIYV+10という活動をUNVは計画しています。これは、ボランティアリズムが10年間でどれくらい進歩したのか、今度何をしなくてはいけないのか、そしてもう一度ボランティアリズムの重要性について世界中に訴えていく、そういう一年にする計画を現在UNVを中心として構想しています。このことは、今年の9月の国連総会でも取り上げられる予定です。もう少し先の話ですが、2011年またボランティアに関する大きなイベントをやりますのでみなさん是非覚えておいてください。以上です。
ありがとうございました。
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