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講師:有吉 章 (IMFアジア太平洋地域事務所・所長)
関連資料:「IMFの機能と役割(PDF)」
ただいま、ご紹介にあずかりました有吉でございます。本日はよろしくお願いいたします。
今、お話がありましたように、IMFというのは国連の専門機関という位置づけですが、いわゆる国連本体との関係においては、やや疎遠なところもあります。そういう意味で、今回、国連のメインストリームの機関の方々とご一緒できることをたいへんうれしく思います。
ちなみに、我々も国連職員としては、出張するときには国連のレセ・パセを支給されております。そういうときには、IMFは国連機関であると、認識するところです。
IMFは、もともと政府のマクロ経済、財政金融の政策という特殊な分野を担っています。かつては、政府以外、政府の公的部門以外の方々と対話することが極めて少なかった機関です。90年代半ばまで、新聞・雑誌等で、形容詞としてその前に、Secretiveがつくことがしばしばありました。
ところが、97年から98年にかけて、アジア通貨危機、それからロシア・ラテンアメリカの通貨危機という、戦後最大の国際金融危機が発生しまして、IMFがどうしてこれを防げなかったのか、あるいはその対応をもっと上手くできなかったかと、非常に大きな議論が、内部でも、あるいは国際社会でも出てきました。その反省にたってなされた、ひとつの大きな改革が、Transparency の向上、透明性の向上でした。それまで、IMFの理事会で、議論した結論は公表されなかったのですが、それも原則、すべて公表するということになりました。現在は、理事会に提出される内部資料、各国に対する経済政策に関する審査のペーパー、スタッフが書いたペーパー、これらは相手国の合意が必要ですが、その他90パーセント以上については、公表され、いまや、とにかく膨大な資料データがIMFのウェブサイトに掲載されています。むしろ、いかにその中から、自分のほしいものを見つけ出すか、あるいは、そこに、そもそも、自分のほしいものがあるかどうか、を知ることがかなり大変です。今日の後半のお話は、この情報の洪水をどのように泳いでいくか、どうしたら目的にたどり着けるか、ということについて、すこしお手伝いができるのではないかと思います。
まずは、IMFの全般についてのお話を私からさせていただきます。
今、高校の政治経済・現代社会はどのくらい教えているのかわかりませんが、一応、IMFという名前を皆さんはご存じですし、大学の国際経済、あるいは経済学では、IMFのことは一通り教えられているのではないかと思います。ただ、ここ数年は世界経済が好調だったのでニュースにIMFという言葉自体も出てこなくなり、イメージが湧いてこない方も多いのではないかと思います。
今日は設立のところから現在まで、時系列的にIMFがどういう機能や役割を果たし、どういう構造になっているのかについて、ざっとお話したいと思います。
IMFの設立は、第2次世界大戦が終了する1年前、当時のアメリカのニューハンプシャー州ブレトンウッズに連合国側の国が集まって、戦後の国際金融、あるいは国際通貨体制の議論をしたというところから始まります。1944年7月の3週間、イギリス代表のケインズと、アメリカ代表のホワイトの二人が中心となって、IMF、それから世界銀行という、いわば戦後の通貨金融体制の骨格に合意しました。そして、設立協定に合意、調印し、実際に発効、設立されたのが、1946年であります。本部はその最大出資国の首都におかれるという規定があり、Washington.D.C.に本部が置かれました。そして、設立から約1年後、業務を開始しました。日本は、1952年8月サンフランシスコ講和条約を発効して独立を回復した後に加盟しています。ブレトンウッズ会議に参加したのは45カ国でしたが、ソ連等が抜けたため当初の協定調印国は29で発足しました。
50,60年代になって、旧ヨーロッパの植民地が独立して、加盟していきます。ひとつの大きな節目が、92年の旧ソ連各国の独立、加盟です。旧東欧各国はその少し前ですが、それぞれ独立して加盟しております。もともと、ブレトンウッズ会議には社会主義圏の国も参加していましたが、実際には設立時には加盟せず、彼らは彼らで別の体制を作ります。そして、旧ソ連が崩壊して、それに伴って、IMFにも加盟して、真にIMFが世界全体の国際通貨基金となりました。現在、185の加盟国がございます。
いわゆる、ブレトンウッズ体制といわれますが、44年の7月に連合国が集まったときに、戦争の原因は何だったのか、と経済的なバックグラウンドから考えました。一つの大きなポイントが、当時の国際通貨制度であった金本位制の崩壊でした。貿易為替規制の導入、競争的為替規制ということで、金という国際通貨が、自分たちの国から出ていかないように、まさに国際通貨の流出を防いだことに伴い、貿易が減少し、世界経済が縮小し、経済摩擦が起こり、これが、ひとつの、戦争に至る経済的背景になります。このような反省に立ちまして、戦後の体制というのは、多角的、マルチラテラルな自由貿易体制を構築しようということで、大きく三本柱が、ブレトンウッズ体制として考えられました。
一つは、貿易の自由化を推進するためのGATTです。当時はInternational Trade Organization という実際の機関を作るという構想でしたが、アメリカの議会の反対にあい、結局は、GATTという、条約に基づく体制となり、何十年かして、現在のWTOとして復活しました。GATTで貿易を自由化し、IMFで為替規制を禁止します。つまり、貿易を自由化し、モノの移動は自由ですよと言っても、支払いを規制してしまうとやはり貿易はできません。そういった貿易に伴う外貨、国際通貨の支払いについては規制を撤廃することとしました。競争的為替切下げがかつて行われたことから、為替相場の安定も目的にしました。一方、金本位制崩壊の中で強く意識されたのが、様々な投機的資金が不安定性をもたらしたのではないか、ということでした。
IMFでは、創設時の考え方では、短期資金移動というのは原則としてむしろ規制する方向を取っておりました。ところが、資本移動を規制しますと、成長するための貯蓄をどうするか、外国からの資本の流入をどうするか、それがないと自分の国が成長できないのではないかということで、世界銀行が、成長するための長期資本を供給する、つまり、民間の資本移動がある程度規制されていることの裏側として、公的な資本移動を促進しようということで、世界銀行を創りました。IMFと世界銀行は、本部がワシントンの19番街にありますので、一つのセットとなって、いろいろと議論されることが多い機関であります。
IMFの役割について、もう少し具体的に申し上げますと、4つの協定があります。ひとつは、国際通貨協力のための常設の機構、ということです。これは、実は非常に重要な意味を持っていて、戦前の体制は、金本位制でした。金本位制とは、金に対して、各国が自分で自分の金平価を設定する。例えば、金1オンスについてアメリカは35ドルにする、日本は例えば70円にする、とそれぞれ決めます。あとは、金が自然に国際通貨として流通します。金の流通に対して規制はかけません、との暗黙の合意はありましたが、お互いに通貨の面で協力する明示的仕組みはなかった。言ってみれば、市場経済と同じで、金という自然な通貨を媒介として、市場機能ですべて調整をする仕組みでした。ところが、金本位制の崩壊で、お互い、何をすればよいかと協議・協力する場がないことが大きな弱点で、皆それがわかり、常設の機構としてIMFを創りました。
それから、先ほど申し上げました通り、貿易の取引についての支払い規制、為替規制を撤廃し、為替レートを安定化しました。勝手に自分の国で切り下げなどをしてはいけない、あるいは、切り下げをしたいのだったら、事前にIMFに了解を得てから切り下げるようにしました。
最近は、むしろこれがIMFとして、スポットライトを浴びることが多いのですが、ある国が、一時的に、輸入が輸出を上回り輸入支払いができなくなる、という状況になると、その国はものすごく緊縮をしなければならない。そうなるとそれがまたその他の国にも及ぶ。そういうことにならないように、各国が国際収支の赤字を削減して、もう少し安定的で維持可能な状況に持っていくまでの間、IMFが一時的に外貨を貸して、その調整を支援しましょう、という大きな役割です。
もう一つの業務は、為替制度の安定や、国際収支の混乱を未然に防ぐための、サーベイランスという機能です。つまり、国の経済政策の審査ですね。原則、毎年一回、IMFのスタッフが日本に来て、日本の当局、中央銀行、財務省、その他と、経済の現状、先行きなどについてなどを議論して、このような政策を取るべきではないか、あるいは今のこんな政策はどうかなど、スタッフとしての考えをまとめます。それを理事会という各国代表が出る場で議論して、組織として日本に対し、こういうことをやったらいいのではないかとアドバイスをする。これを、すべての国について、同じようなかたちでやる。一国一国でなく、世界経済全体として協力して、政策の合意形成を行います。
融資以外には技術協力というものもあります。とくに途上国や、旧社会主義の国々が、政府の財政金融政策の機能、市場機能を発揮できるように、制度的なインフラを整備しなければいけない。そういった面での支援協力を行う。
最後の役割が国際通貨制度の改善です。これらの役割を遂行する中でIMFがどういう位置づけにあるかという点を少しお話します。これは国際機関論などを教えている先生方に言わせると、いい加減と思われるかもしれませんが、国連として何か行う、というのは、例えば、安全保障理事会なり、総会なりにおいて、基本的に加盟国の間の議論を通じて物事が決まり、国連の事務局はその議論を手助けするためにあります。一方、世界銀行のような機関ですと、世銀が途上国に融資をする。途上国に限らず誰でも融資は可能ですが、プロジェクトに関して融資をする。そういうことで世界経済の成長を助けます。世銀というのは執行機関でして、まさにどこに何を融資するかということを、世銀の内部で決めます。もちろん、理事会という監督は有りますが、組織としてある程度自立的にやっているということです。では、IMFはどちらのタイプかといいますと、その辺、両面有りまして、先ほど申し上げましたような国際通貨制度を議論するフォーラムをやるときには国連型の事務局ですし、融資などの際は、むしろ世銀型の執行機関としての色彩を帯びる。ですから、常に、IMFはなにか、IMFはこう思っている、IMFはなにをしている、といったときに、いったい誰が、というところが実はぼやけてくる、ということがあります。
IMFの組織がどうなっているか、ということも少しお話します。IMFのオフィスには、スタッフと称しておりますが、IMFの本部ビルに入っているいろいろな部局があります。アジア太平洋地域、アフリカとかヨーロッパなどの地域局には、それぞれの国を見ている部署の人がいる。それから、機能局ですが、例えば財政部門を横断的にみるスペシャリストや、金融資本市場の調査をやっている人がいます。この事務局は、例えば、タイに融資すべきか、通貨危機ではこれだけの金額をこれだけの条件で融資しましょう、あるいは、4条協議ということで、日本に対して、経済政策ではこういうアドバイスをしなければいけない、などの原案をつくるわけです。
そして、理事会です。通常の企業でいえば、取締役会ですが、そこで議論されて基本的には承認される。専務理事は、理事会の議長であるとともに、IMFのスタッフ部門のトップマネージメント、いわば、CEOを兼務しています。企業でいえば、取締役会の会長、兼、社長、みたいなものです。ここから上は、加盟国各国がそれぞれ任命して、監督機関みたいなものになります。総務会は、各国の大蔵大臣なり、中央銀行総裁のどちらかがなります。いわば株主代表から成る株主総会です。国際通貨金融委員会は、総務会員の185の国からなりますから、それだけではちょっと議論が拡散するので、その中の代表24人を選んで委員会をつくり、理事会、その他に対して勧告を行う、という構造になっています。
次に、国際通貨制度の変遷とIMFの役割、というのを簡単に振り返って参りたいと思います。創設時から71年まで、金ドル本位制、といわれていましたけれども、各国はドルに対して固定平価、例えば1ドル360円と設定し、金との交換性を維持する。これによって各国の為替レートが決定されました。360円の一定水準ですと、経済変動によっては、国際収支が黒字になったり赤字になったりします。少しきつくなったりした時には、IMFが一時的に国際収支の支援、外貨を貸してあげて、360円でがんばれるようにしてあげます。そして調整ができ、輸入を削減できれば、もとに戻します。3番目ですが、日本であれば、1ドル360円でどんどん黒字か赤字が増える、といったときには、切り上げか切り下げをやってもらう。こういったことをやっておりました。経常取引を自由化するということで、貿易、モノ、サービスの輸出入に関する外貨の支払いに関しては自由にしなさい、モノが少ないときには、いきなり全部自由化にはできないので、例えば、海外観光については、お金を使わせないとか、日本も戦後しばらくはそういう時期がありましたけれども、そういった規制は経過的にはかけてもいいとする。それを全部段階的に撤廃して、完全に自由化すると、いわゆるIMFの8条国となるステータスを得られる。よく8条国といいますが、日本は1964年に移行しました。思い出してみますと――思い出すと行っても私はまだ小学生でしたので思い出すというほどではないのですが――64年といえば東京オリンピックの年で、OECDに加盟、そしてIMFの8条国加盟、と日本はようやくこれで先進国の仲間入りをしたということで、私の先輩方にはこの8条国というのは非常に思い出深いことであるようです。
ただ、ブレトンウッズ体制、戦後四半世紀続いた体制も、いわゆるニクソンショックということで71年に崩壊します。確か中国との国交回復と重なっていたように思います。アメリカが金とドルの交換性を放棄、各国も固定相場を放棄することになっていった。その背景に、国際取引に使う通貨は、金本位制といっても、実際皆さんドルでお支払いになる。そうすると世界経済、世界貿易が伸びていくと、各国は決済その他のためにやはりドルが必要で、外貨準備にドルをどんどん増やした。民間部門もドルを持つようになった。ところがある時点を過ぎると、ドルの発行残高が米国の保有する金に比べて遥かに大きくなり、アメリカは金といつでも交換してあげますよ、ということでドルの価値を保証していたのですが、よく見ると、アメリカの出しているドル紙幣、あるいは外貨準備、各国が持っているドルの残高が、アメリカの持っている金より遥かに多くなった。皆がこれを金に換えてと言った瞬間、アメリカの金は枯渇してしまう。これは大変だということでいろいろと当時知恵を絞った人がいっぱいいて、これは、ドルを使っているからで、ひとつ国際通貨を造ってしまえばいい、ということで、SDRという新たな通貨をIMFが発行して、これにドルの代わりをさせましょうということになった。これが69年、IMFが協定を改正してつくったものであります。ところが、これもうまくいかず、アメリカとしてもいつドルを提示されて金と交換させられてはかなわないということで、金との交換性を停止した。さらにアメリカは為替レートも動かしたいと思った。
かつてのレートは結局、各国がアメリカに対して、米ドルとのレートを決めるという体制になっていましたから、アメリカとして例えば円に対していくらにしたい、ということが実はできない体制になっていたのですね。それでアメリカは自分のところの通貨が強すぎる、もっと本当は切り下げたい。ところが誰かに対して切り下げるということができないということで、金との平価を絶ってしまって、後は自由に変動させてしまえばいいじゃないかということになった。これで非常に混乱し、もう一回固定相場に戻ろうとした。しかしそれもうまく行かず、ご覧の通り、いまは、すべての主要通貨が原則的にお互いに自由に変動し合うという体制になっています。
第二次協定改正が78年にありまして、事実上起きていることは追認して、為替制度の選択は自由ですよということを言いました。ただ結局、ドル以外に何を、例えば日本とヨーロッパの間の決済、アフリカのタンザニアとどこかの国の決済に何を使うかということになりますと、やはりドルしかない、ということで、やはりドルが事実上の国際通貨であり続けました。ただその後いろいろ世の中が変わってきまして、ドル以外の通貨がだんだん国際取引で通貨として利用されるようになってきました。先進国でも外貨が足りなくなる可能性がありますから、皆あまり資本自由化はしていなかったのですが、ヨーロッパあるいは日本も、どんどん資本取引を自由化する。そうすると外国人にとって、マルクとかフランも使うことができるようになる。それを使って国際取引、国際決算ができる。ドルだけなくて、マルク、円、ポンド、ポンドは昔からその側面はありましたが、これらが国際通貨となる。その主要な国際通貨を発行している人の集まりがG5、あるいはG7です。これがとりもなおさず、IMFの主要株主であり、IMFにかかる決定をリードしている状況です。マルクや円などが、それぞれ自由に価値変動できますから、ドルが弱くなると買われます。つまり、為替レートが大幅な変動を起こすようになる。これも安定化させなければならないということで、IMFあるいはG7といったなかでの経済政策の協調ということが言われます。70年代から80年代の初めにかけてそういったことが次々とあった。
一方、IMFの金貸しの仕事の方ですが、多分70年代のイギリスとイタリアの例を最後に、もうおよそ先進国がIMFにお金を借りることはあり得ないだろうという状況になって参りました。実はIMFはもう仕事がないのではないかと言われましたが、別のかたちでこういった金貸しの仕事が出てきた。これが、いわゆる、累積債問題です。
これは80年代から、民間銀行などが途上国政府にどんどん外貨を貸すようになり、当初はオイルマネーの還流として始まりました。オイルショックで73年に原油価格が非常に上がりまして、産油国に猛烈に外貨準備が入ってきた。産油国はそれを全部使い切れませんので、どういう運用をしたらいいか、運用するにしても、アメリカ政府に預けるというのもどうか、ということで、民間市中銀行に預けた。民間市中銀行もこれを運用しなくてはならない。原油輸入している途上国はやはり支払いのための外貨が必要だと、国だからつぶれないだろうということで国に貸した。そうして、オイルマネーがぐるぐると回った、ということです。
途上国でも特にブラジルですね。途上国の原油輸入国の外貨建て債務がどんどん増えていき、それが80年代にアメリカが金利を上げたり、あるいは一時的に輸出品の価格が下がったりして、それが返せなくなった。そこで、返せなくなったのをどうしようと言うことで、IMFがはいって、そういった債務国の経済状況を調整して、民間銀行等とも協力して、なんとか乗り切ろうという、IMFの大きな仕事ができたわけです。さらに世の中進んで参りまして、国際的に単に銀行が国にお金を貸すというだけではなく、民間や国が債券を発行し、それを投資家が買う。日本では、退職金ファンドということで、退職された方が、南アフリカ債、トルコ債、などを買われています。あるいは民間の直接投資などで、資金が急速に移行しています。ところが一部短期的・投機的な資金も入り、メキシコ、あるいは、アジア、ロシア、ラテンアメリカといった国の先行きについて不安が生じると、お金が一挙に流出する。それで、通貨・金融危機が発生した。その際、IMFも何とか円滑におさえこめるようにしようとしたのですが、なかなかうまくいきませんでした。その結果、先ほど申し上げたいろいろな批判が出てきた。それから、もうひとつが、いわゆる新興市場国、アジア各国、あるいは、産油国が非常に成長し、おおきなプレーヤーになっています。特に、最近では例えば、世界経済の半分以上を中国、東欧、インドが引っ張っている、また、アメリカ経済がサプライムの問題を端に発して、経済成長が悪くなりそうななかで、中国、その他が経済を引っ張っていけるのか、というのが大きな議論になっている、そのぐらいに大きなプレーヤーが出てきている、というわけです。そういう非常に大きな環境変化の中で、IMFはいくつかの課題に直面しています。
グローバライゼーションの中で一体、IMFは、通貨の安定という基本的な役割をどうするか。政策協調の問題、サーベイランスの問題です。それから新しい時代にあった融資機能をどうするか。それから、新興市場国、アジアを含めて、従来の先進国、ヨーロッパ、アメリカ、日本などを中心とした、IMFの発言権、議決権のバランスをどう変えていくか、といった課題であります。
一つ目が、サーベイランス。そのなかで一番問題なのが世界の国際収支の構造です。米国が巨額の赤字、他の国、中国、日本、産油国が大幅な黒字と、きわめて対照的になっている。アメリカが発行する米ドルを他の国が保有する形で貸している訳ですね、1971年の場合は、金との関係で、各国が保有しているドルの量が、アメリカが保有している金の量を超えてしまい、不安が発生してしまった。現在、金との関係ではないですが、アメリカがこれだけ借りているけれども、いったい本当に返すことができるのかという不安が出てきたときに、どうなるのかという心配がある。そうなる前に大幅な不均衡を解消できるか。その中で、どういった役割をIMFが果たして行けばいいのか、というのが大きな問題です。
もう一つがアジア危機、その他にもありましたように、非常に世界の資本移動が増えています。例えば先進国地域で見ると、資本フローの合計がGDPの約30%になっております。途上国でも最近急激に拡大しています。こういった中で資本の流れが止まった時、危機が起きるわけです。以前であれば、資本の流れのGDP比は比較的小規模でしたので、IMFが貸してあげて、あるいは政府や民間銀行が少し政府のお金を入れて埋めることができたのですが、もうIMFのお金だけでは足りない。実はそれは80年代の初めの債務問題のときからですが、それがますます激しくなった。かつては、銀行が貸していたので銀行と手を握ればよかったのですが、最近は、いろいろなかたちでお金が入っていまして、そのなかで短期的に、どのように大量な流出を止めるための補填ができるか、という問題になっています。
最後は、代表権、議決権と関連する出資割合の見直しの問題です。IMFが国連本体と違うところは、国連は一国一票ですが、IMFでは世界の経済通貨体制に対して責任が強い国に発言権が多くなる。基本的に経済規模に応じた出資割合と投票権が与えられます。投票権の順位も45年であれば、アメリカ、イギリス、中国、フランスと、その当時の経済状況によって定められていて、日本はIMFに1952年に加盟したとき、世界で9位でした。その後、日本経済が成長して、その中で出資の割合も上がってきて、70年には5位、90年には2位。この頃はまだ日独同率でしたが、2001年に日本は単独2位になった。この出資の修正は常に実態に遅れていまして、実際には、実態として日本経済が2位になったのは、80年代だと思います。現在は、アジアのほかの国々がそういった状況です。
これは、一昨年の状況です。クオータ比というのがIMFにおける一種出資割合の比率ですが、アメリカで17.4、日本が6.2、ドイツが6.1という状況になっています。これは、GDPだけで決まっているわけではなく、GDPや貿易量で式を算出します。単純にGDPを見るとわかりやすいのですが、かなり比率のバランスが崩れています。例えば、中国はGDPでは6位になるはずなのにクオータ順位では9位、スペインはGDPでは10位になるはずなのに、クオータ順位で19位、韓国はGDPでは17位になるはずなのに、クオータ順位では28位、タイやトルコなども非常にアンバランスになっています。代表的なものをピックアップしましたが、いろいろなところで、経済の実態が出資バランスに反映していない、ということがあります。一年半ぐらい前から、これではいけないということで改訂に取り組んでいまして、韓国や中国、メキシコ、トルコなどに関して、特に出資割合の悪い国に対しては特別に増資をしまして、修正をした。さらに今後数ヶ月をかけてもう少し全般的に大幅な修正をかけて現在の経済状況に合わせた出資バランスの修正に取り組みたい。出資バランスは投票権に直結しますので、全体の中での投票権の変更ということもあります。
そういうことで、IMFが世界全体の国際通貨安定を司る機関としての正当性を維持するためには、経済実態と離れたかたちで一部の国、地域が過大な発言権を持っていては審理に影響する、ということで、今大きな見直しが行われているのです。
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