世界社会開発サミットの成果実施と
一層のイニシアチブに関する国際連合特別総会
ジュネーブ、スイス、
2000年6月26_30日社会サミット特別総会、グローバル化の弊害に対する解決策を模索
電光石火のグローバル化の諸力が財、情報および金銭をますます速いスピードで越境移動させ続けながら、そこに加わる人々に対してより多くの利益をもたらす中で、この繁栄が世界の人々をほとんど置き去りにしているという認識が高まっている。
事実、グローバル化は世界人口の半数以上に恩恵をもたらすことなく、30億人の人々は1日2ドル以下での生活を強いられている。世界でもっとも豊かな人々ともっとも貧しい人々の格差は広がる一方で、アジアとラテンアメリカでの金融危機は、長年の成長と改善を消し去ろうとしている。
国連のコフィー・アナン事務総長によれば、「グローバル化が色々と取りざたされる中で、世界の人々の多くは、それとほとんど関係のない状態にある。世界人口の半数は、電話をかけたことも、受けたこともないと見られている。」
新たなグローバル経済時代の中で人間の不安感が募る中、国連は5年前、デンマークのコペンハーゲンで世界社会開発サミットを開催し、世界の重大な社会問題の解決に地球的な関心を向けようと試みた。186カ国の代表(117カ国の首脳を含む)が参加したサミットからは、具体的な社会開発目標に向けた作業を各国に公約させる有意義な合意が生まれた。各国代表は特に、貧困の解消に向けた努力を強化し、健康と教育を促進し、完全雇用を目指すための10の決定的な公約を含む「社会開発に関するコペンハーゲン宣言」に合意した。サミットではまた、社会開発のための目標とこれら目標を達成するための計画を定めた100ヵ条の「行動計画」も合意された。
社会サミットの再検討
サミット以降の進捗状況を再検討し、社会開発の課題を前進させるため、国連総会は2000年6月26日から30日にかけ、ジュネーブで特別総会を開催する。各国代表団の間には、コペンハーゲンで定められた目標の実現は難しいという雰囲気が広がっていたが、ほとんどの国々は依然として、社会サミットの目標の追求に専心していることを主張するとともに、ジュネーブでの特別総会が進歩を遅らせている障害を取り除くための一助となると信じている。
社会サミットの
10の公約国連経済社会局のジョン・ラングモア社会政策課長によれば、再検討会議を一貫して流れるテーマは「地球的な政治課題の中心に社会開発を据えること」である。「我々は、合意を具体的な行動と戦略に移すことにより、政治的なはずみを維持しなければならない。」
特に、世界銀行や国際通貨基金など、他の主要な国際金融機関の努力の指針となる社会開発の原則と基準を設定する上で、各国政府の参加を図る機会としてジュネーブでの特別総会を捉える向きが多い。
各国は国内の社会的課題の設定に責任を有する。社会サミット以降、多くの国々の有権者は、「より小さな政府、より少ない税金およびより高い効率」と、公平性と社会的正義を追求する政府との間に、適切な均衡を図ろうとしてきた。多くの開発途上国では、経済改革を危険にさらすことなしに社会的課題に用いる資金を見出そうとする苦闘が続いた。
コペンハーゲンの成果は、どの国に対しても法的拘束力を持たないものの、非常に多くの世界指導者による合意であるということなどから、大きな道徳的・政治的な重みを持っている。各国がこのような地球的合意を有用と考えたのは、それが社会開発に関して普遍的に認められる基準と目標を設定する助けとなりうるからである。
グローバル化の不安
1995
年の社会開発サミット開催の重要な動機となったのは、グローバル化に対する恐れである。サミット以降、グローバル化は着実に加速し、事実上あらゆる国々の政治的、経済的および社会的決定に大きく影響するようになった。ほとんどの開発途上国は、このことが、社会的進歩を達成する上での最大の障害になっていると指摘している。グローバル化に対する積年の不安はついに爆発し、1995年11月30日から12月4日にかけ、シアトルで開催された世界貿易機関の閣僚級会合には、数千人が抗議のために集まった。グローバル化に抗議する人々は、実にさまざまな方面から集まり、貿易のグローバル化が環境、労働者の権利、地元の利益、および、とりわけ人々のニーズを損っているとの批判を行った。グローバル化は、多くの人々の生活水準を向上させ、より多くの機会をもたらすプラスの力となってきた。しかし、国連のコフィー・アナン事務総長によれば、「グローバル化を進歩の使者ではなく、一瞬にして生命、雇用および伝統を破壊する能力を備えた台風のごとく、混乱をもたらす力として経験している人々は多い。多くの人々にとって、このプロセスから逃れ、自分たちの場所で安らぎを見つけようとする衝動が働いている。グローバル化は不平等を悪化させることがある。それはまた、文化的伝統を混乱させ、我々の精神的な方向性を失わせている可能性がある。」
特に、国連総会での最近の討議では、多くの国々が新たなグローバル経済の方向性(およびその社会的影響)に懸念を表明している。インドネシアのジュネーブ政府代表部のスサント・ストヤ国連常駐副代表は、総会で次のように発言した。「今日、明らかなことがある。グローバル化と貿易自由化の進展がすべての国に利益をもたらしているわけではないという。また、多くの開発途上国はグローバル経済の挑戦に応じたり、そこから報酬を獲得しようとするには、準備が不足しているということである。」
小さな主体にとって、国際舞台での将来性は高くないとするマレーシアのマハティール・ビン・モハマド首相は総会で、小さな独立国の将来は暗いと発言した。同首相によれば、資本、財およびサービスが国家間を自由に往来し、差別的な税金が何ら存在しない平面的な状況は実際、市場の崩壊に手を貸すだけである。マハティール首相は「平らな場所で巨人と小人が競争するのは公正といえるだろうか」と問い掛けた。豊かな国の巨大な銀行や企業、産業は、他の場所で得た巨大な利益を利用して、小国で利益を度外視した商売を行えるのではないか、と同首相は主張する。中小企業が閉鎖あるいは外国の大企業への身売りを余儀なくされる中で、市場は最終的に破壊され、世界貿易は収縮することになるのである。「自由貿易のために、事実上、世界はより貧しくなる。」
南アフリカのタボ・ムベキ大統領は、グローバル化の過程は必然的に、国家主権の理念と実践の再定義を迫るものであると指摘した上で、次のように述べている。「国際関係システムの民主化を通じ、グローバル統治システムに対する、これらの国々の影響力を強化することをめざして、補償的な動きを起こすことが必要となる。」
グローバル市場に人間の顔を与えるために必要な新たな努力
「サミットの根本的な哲学は、開発をより人間中心のものとすることにある」とインドのジャガット・メータ元インド外相は語る。「この哲学においては、好ましい国内および世界秩序の中での生計、保健、教育およびその他の社会サービスに対するアクセスの公平性が基本原則となる。しかし、我々は新世紀を迎えようとする中で、国際マクロ経済環境における望ましからぬ不公平のパターンに直面しており、これが開発途上地域の社会・経済開発を損っている。」
貿易は、グローバル化の過程を管理・規制する国際的努力に不可欠な要素となっているが、その他の構成要素にも取り組まなければならない。アジア経済に打撃を与えた1997年の金融危機を受けて、世界の金融市場における混乱に対処するため、新たな国際金融機構を開発する必要性に関する合意が広がっている。
「民間セクターは、確かに活力のある動態的な存在ではあるが、それ自身でグローバル市場に人間の顔を与えることも、疎外された数百万人に手を差し伸べることもできない」とコフィー・アナン氏は語る。各国が幅広いグローバル問題を対象とする合意を形成する上で国連が行った援助の成功を足がかりとして、事務総長は、社会開発達成のための基準と指針を設定する国連の役割強化に対する支援を取り付けようとしている。
新しいアイデアを推進する機会
社会サミットはすでに、地球的課題における社会問題の地位を引き上げることに一役買っている。そして今、特別総会は、これまでのプロセスを評価するだけでなく、サミットの目標を実現可能とする新たな戦略を策定する機会を提示している。
新たな社会戦略の必要性は、アジア金融危機に国際社会が対応する際、国際金融機関が危機の社会的側面の考慮を強いられたことによって立証された。
貧困対策、良質の雇用供給、環境保護およびHIV/エイズ対策など、新たな国際的課題に取り組むためには、新たな国際協力システムと、かかる協力を管理する新たな機関が必要であると考える向きも多い。
一部には、社会開発問題に関する従来の考え方を変えなければならないとする向きもある。国連のインゲ・カウル開発計画開発研究室長によれば、社会開発の分野は、経済学から多くを学ばなければならない。もう少しの教育、もう少しの保健プログラムといった、小さな漸増的変革ではなく、各国は経済のファンダメンタルズを是正するのと同様に「社会のファンダメンタルズを是正する」必要があると同室長は主張する。
すべての人々には発展の権利、社会に貢献する権利、ならびに、健康な生活、教育機会および生産的雇用に対する権利を享受する権利があるが、同氏によれば、こうした権利を各国が認めているということも、これらのファンダメンタルズのひとつになる。さらに、同氏は、各国政府があらゆる重大な政策決定を社会開発という観点から捉え、その社会的影響を判定しなければならないとしている。
カウル氏によれば、各国はまた、社会開発を無視するコストの評価を学ばなければならない。例えば、少女の教育への投資を怠ることによるコストは、実際に少女の教育に投資するコストをはるかに上回るのである。
特別総会で何が起きるか
特別総会は政府の会合ではあるが、政府が非政府組織、ならびに、財界、議会、宗教団体および市民社会のその他重要な主体の代表と対話を行う機会を引き続き提供するものでもある。特別総会と並行して、スイス政府が開催する「ジュネーブ2000年フォーラム」は、市民社会内部での社会開発イニシアチブを促進する新たな努力を開始する場としての役割を果たすことになる。
国連総会は、各国がより具体的な義務を受け入れられるようにするため、各国に対し「できる限り高いレベル」の代表を送るよう求めている。特別総会に先立つ準備過程でも、一層のイニシアチブに関する討議が行われる予定である。
各国はすでに、特別総会の成果となる文書の交渉を開始している。第1回の準備会合は1999年5月に開催され、9月には非公式協議も行われた。その結果、合意点と相違点を取りまとめた暫定的文書ができ上がった。2000年2月8日から17日にかけてニューヨークで開催された社会開発委員会の会合、および、4月の第2回準備会合でも、再び交渉が行われている。
コペンハーゲン会議の目標については、各国間に実質的な見解の相違はない。各国はサミットの成果の諸側面につき、再交渉を試みないことで合意している。むしろ、各国間の実質的な見解の相違は、サミットの成果の実施が予定通りスムーズに行かなかったのはなぜかという点にある。
開発途上国は、サミットの行動計画を実施するための国際協力の重要性と資金の必要性を強調する傾向にある。ガイアナ国連代表部の1等書記官で、1999年には社会開発問題に関して77カ国グループの代表として交渉を行ったソニア・エリオット氏によれば、開発途上国の間には、新たな問題に取り組む前に、コペンハーゲン以降に未実施となっている事項の実施を図るべきだという雰囲気が見られる。
「まず、我々はコペンハーゲンの公約実施を図る必要がある」と同氏は語る。「我々には資金、援助国からの政治的コミットメント、市場へのアクセス、投資の流れ、および、アフリカの特殊な状況の考慮が必要である。もし資金がなければ、何をどうやって達成できるというのか。」
一方、先進国は、国際協力強化の必要性は否定しないが、社会開発課題を推進する上で、統治、人権および男女平等により重きを置いている。欧州連合は英国からの提案を採用し、社会サミットの再検討は、世界銀行と国際通貨基金向けに一連の社会的原則を定める助けとなりうるという考えを示した。
国連総会のテオ=ベン・グリラブ議長は、社会サミットの実施に関する総会の議論を総括するにあたり、各国の重大懸案事項には、グローバル化と国際金融危機、公的開発援助と債務軽減イニシアチブの減少、よい統治、人間中心の開発、貧困の解消、生産的雇用機会の創出、基礎的社会サービス、ならびに、意思決定と資源配分における市民社会の役割、および開発と人間安全保障が含まれると述べた。
グリラブ議長によれば、国際金融機関、および、グローバル化の時代における貿易のルールに関する交渉が継続する中で、社会的側面を重視する特別総会は「地球的な金融機構の再編に関する討議における第3の柱としての役割を果たすべきである。」
社会サミット再検討総会はまた、シアトルの世界貿易機関会合で深刻な対立点となった労働者の権利など、社会的問題を議論する代替的な場となる可能性もある。その他、検討対象となりうる問題としては、多国籍企業の社会的責任、社会開発の資金を調達する新たな可能性、および、貧困解消のための地球的目標があげられる。
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