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「われら人民」

国連ミレニアム総会への
国連事務総長「ミレニアム報告書」
要 旨
(非公式訳)

はじめに
 国連総会は、私たちが迎えるこの世紀の転換期が、新時代における国連の活気あふれるビジョンを明瞭化し、確認する、ユニークで象徴的な機会だと確信しています。それを踏まえて総会は、2000年9月5日に始まる第55回会期を国連ミレニアム総会とすることを1998年12月に決定しました。同時に、2000年9月6日から8日にかけてミレニアム・サミット開催への合意がなされました。

 同サミットは、国連加盟国の元首・首脳が一堂に会する、史上最大の会合となります。その準備として、コフィー・アナン国連事務総長は2000年4月3日にミレニアム報告書を発表しました。「われら人民:21世紀の国連の役割」と題する報告書は、グローバル化の恩恵を世界中の人々に行き渡らせるための行動計画を提供しています。報告書は、その55年の歴史における国連の使命を最も包括的に提示しており、事務総長が各国指導者に検討を要請している多数の明確な目標と、プログラムのイニシアチブがそこには含まれています。

新しい世紀、新しい挑戦
 新たな千年紀、そして国連のミレニアム・サミットは、世界の人々に対し、自分たちがかつてないほどに相互依存を強めていく中で、その共通の運命について考えるユニークな機会を提供するものです。世界の人々は、指導者が、今後の課題を見極め、これに対処することを期待しています。加盟国がその使命感を新たに共有するならば、国連はこれらの課題に対処することができます。1945年、国際関係に新たな原則を導入するために創設された国連は、いくつかの分野でよりよい成果をあげています。新世紀の人々の生活に確実な変化をもたらすことができるよう、国連のあるべき姿を新たに定める機会が今訪れているのです。

グローバル化と統治
 経済成長の加速、生活水準の向上、新たな機会など、グローバル化の恩恵は明らかです。しかし、これらの恩恵は平等に分配されておらず、また、グローバル市場は未だ、共通の社会目標を掲げる広い支持層に支えられていないため、反発が生まれています。1945年、国連の創設者は「国際的な」世界のために開放的で協調的なシステムを作り上げました。このシステムは機能し、グローバル化の台頭を可能にしました。その結果、私たちは今「グローバル」な世界に暮らしています。この変化への対応が今日、世界の指導者にとって中心的な課題となっているのです。
 この現代社会においては、集団および個人が国家を介することなく、国境を越えて直接に接触し合うことがますます増えています。また、新しい技術は相互理解と共通の行動の機会を創出しています。しかし、これには新しい危険が伴っています。犯罪、麻薬、テロ、汚染、病気、兵器、難民、移住者など、すべてが過去よりも速く、そしてより大量に国境を越えて往来しているということです。このため、遠く離れた場所での出来事に脅威を感じる人もいるでしょう。また、遠い国での不正と残虐行為への意識を高め、加盟国に何らかの対応を期待する人もいるでしょう。私たちがグローバル化から最大限の恩恵を引き出し、最悪の事態を避けるためには、自国をよりよく統治することはもちろん、他の国々と共によりよい統治をする方法を学ぶ必要があります。
 これは世界政府の出現や国民国家の衰退を意味するものではありません。それどころか、多くの国家は強化される必要があるのです。そして、加盟国は共有された原則と価値観に基づいた、共通の制度の中で共に行動することにより、お互いを強化し合うことができます。しかし、制度は時代の現実を反映していなければなりません。また、制度は国家が、グローバル企業を含めた非国家主体と協力する場として機能することができます。多くの場合、それは、刻々と変化するグローバルな課題により速く対応できる、より非公式な政策ネットワークによって補完されなければならないのです。
 今日の世界における富の偏在、10億を超える人々のみじめな生活状況、一部の地域における紛争の蔓延、そして、自然環境の急激な悪化 ―― こうしたことがすべて重なり、現在の開発モデルは、共通の合意によって修復措置が講じられない限り、持続不可能なものとなっています。最近、6大陸にまたがる史上最大規模の世論調査が行われましたが、ここでも、人々がこのような措置を望んでいることが確認されました。

欠乏からの自由:開発の課題
 過去半世紀には、空前の経済成長が見られました。しかし、今でも12億の人々が、1日1ドル未満での生活を強いられています。極貧状態に国家間、さらにはしばしば国内の不平等が結びついていることは、私たち人類に共通の恥辱と言えます。これにより、紛争をはじめ、その他の問題も深刻化しています。さらに、世界人口は依然として急増を続け、人口増加は最貧国に集中して見られます。世界から極貧という苦しみを取り除くことは私たち一人ひとりに課せられた課題なのです。私たちは行動を起こさなければなりません。

加盟国の元首・首脳には以下の分野で行動を起こすことが強く求められています。

貧困:
 1日の収入が1ドル未満の人の世界人口に占める比率(現在22%)を2015年までに半減させる。

水:
 安全な飲料水を得られない人の比率(現在20%)を2015年までに半減させる。

教育:
 2005年までに初等・中等教育における男女格差を目にみえる形でなくし、さらに2015年までにすべての子どもが初等教育の全課程を修了できるよう支持する。

健康とHIV / エイズ:
 2015年までに以下の方法によってHIV / エイズ対策を行う。

  • 明確な目標として、15歳から24歳までの若者のHIV感染率の低下を掲げる。具体的には2005年までに最も被害を受けている国において25%低下させ、2010年までに全世界で25%低下させる。
  • 明確な予防目標を設定し、2005年までに少なくとも90%、2010年までに少なくとも95%の若者がHIV予防に関する情報とサービスを提供されるようにする。
  • 深刻な被害を被っている全ての国は、ミレニアム・サミット後1年以内に、国家による行動計画を作成すべきである。
 マラリア、結核、肺炎および下痢のような世界人口の90%に影響を与えている健康問題には、さらなる研究が必要である。

スラムの改善:
 世界銀行と国連によって着手された、2020年までに1億人のスラム住民の生活改善を目指す「スラムのない街」行動計画を支援する。

デジタルの架け橋の構築:
 インターネットへのアクセスに対する規制および料金による障害が取り除かれるべきであり、デジタル革命によってもたらされる機会が人々に確実に提供される必要がある。そのためには、関連の国家政策の見直しが実施されなければならない。

特に先進国に対しては、以下の取り組みを行うことが強く求められています。

貿易への参入:
 貧困国の産品が先進国市場へ自由に参入できることを認める。その第一歩として、2001年3月に後発開発途上国に関する国連会議が開催されることになっており、先進諸国は、同会議で提案される予定の事実上全ての後発開発途上国からの輸出品に対し免税や割当制廃止を認める、という政策を採るべきである。

債務の削減:
 今後なるべく早い時期に、昨年合意された重債務貧困国のための債務軽減プログラムを拡大する。重債務貧困国自らが貧困削減に対する明白な取り組みを行うことを条件に、それらの国々の公的債務全額を帳消しにする。将来的には新しいアプローチ、例えば大きな紛争や自然災害によって被害を被った国の債務の即時取り消し、貧困だけを理由とした重債務貧困国資格の供与、債務返済を外国為替所得の最高率に一定化すること、および債務仲裁プロセスの設置などが考えられるべきである。

ODA:
 特に、真に貧困軽減のためにその貴重な財源を費やしている国に対して、開発援助をより寛大に行う必要がある。

HIV / エイズ:
 製薬会社、その他のパートナーとともにHIVに効果的、かつ入手可能な価格のワクチンの開発に努め、開発途上国においてHIV関連の薬品がより広く一般に手に入れられるようにしなければならない。

アフリカの包含:
 アフリカのニーズに応え、アフリカの人々がアフリカの諸問題を克服できるよう彼らの努力を全面的に支援することが求められている。

恐怖からの自由:安全保障の課題
 国家間の戦争の頻度は低下したものの、過去10年間には、内戦によって500万人以上が命を失い、その数倍の人々が故郷を追われました。同時に、大量破壊兵器は恐怖の影を投げかけ続けています。私たちは今、安全保障を外からの攻撃に対する領土の防衛というよりも、国内の暴力からの社会や個人の保護という観点で捉えています。残虐な紛争の脅威には、あらゆる段階で対処しなければなりません。

予防:
 過去十年間の紛争は貧困国、特に民族あるいは宗教集団間に際立った不平等が存在する国でもっとも頻発している。これを防止する最善の方法は、人権、少数者の権利、および全ての集団が公平に代表される政治的仕組みを備えた、健全でバランスの取れた経済発展を促進することにある。また、武器、資金あるいは天然資源の不正な流れを暴かなければならない。

弱者の保護:
 私たちは国際法および人権法のよりよい実施方法を見出し、重大な違反が不処罰で終わることのないようにしなければならない。

介入のジレンマへの取組み:
 人道的介入が、主権国家の国内問題に対する不必要な介入の隠れみのとして用いられるのではないか、という懸念が存在する。しかし、いかなる法的原則も、たとえ主権といえども、人道に対する罪を正当化する手段となってはならない。安全保障理事会が認める武力介入はいかなる場合においても最後の選択肢であるべきだが、大量虐殺に直面した場合、それは放棄できない選択肢なのである。

平和活動の強化:
 ミレニアム総会は、平和活動のあらゆる側面を再検討するために事務総長が設置したハイレベル・パネルによる勧告を検討するよう求められている。

制裁の目標限定:
 経済制裁は対象を絞り込めない粗野な手段である。無罪の市民を苦しめ、本来の目的を達成できないことがしばしばあり、加盟国、特に安全保障理事会は、制裁を「巧妙化」するという提案を真摯に検討すべきである。

小火器:
 事務総長は加盟国に対し、以下の方法で、より厳重に小火器の移転の取締りを行うことを求めている。

  • 武器の移転に関して、より透明性を高める。
  • 西アフリカに見られる軽火器の輸出入および製造の一時禁止など、地域的な軍縮措置を支持する。
  • モザンビーク、パナマ、エルサルバドル、およびアルバニアで成功を収めた「兵器・物資交換」プログラムを他の地域、特に紛争後の地域へ拡大する。
核兵器:
 加盟国は、現存の核兵器およびさらなる拡散双方の危険を軽減することを新たに公約することを求められている。特に、核の危険を排除する方法を検討するために、主要な国際会議の召集を検討することが求められている。

持続可能な未来:環境の課題
 私たちは今、この地球上で将来の世代の生命がこれから先も持続していくために、緊急に対策を講じる必要に迫られています。しかし、私たちはこれを実現できないでいます。私たちは持続不可能な慣行のツケを、子供たちが受け継ぐべき遺産から支払っているのです。これを変えていくことは、豊かな国、貧しい国の双方にとっての課題です。1992年のリオ会議はその基盤を提供し、オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書は、重要な前進となりました。しかし、これ以外の分野における私たちの対応はあまりにもお粗末で、手遅れになっています。2002年のリオ+10の前に、以下の分野に関する討議を再開し、決定的な行動を取る用意を整えなければなりません。

気候変動への対処:
 地球温暖化の脅威を軽減するためには、炭素その他の「温室効果ガス」排出量を60%削減する必要がある。これはエネルギー効率を向上させ、再生可能なエネルギー源への依存度を高めることによって達成可能だと考えられている。まずは京都議定書を批准し、2002年の発効を可能にすることが、その目的を達成するための第一歩となるであろう。

水危機への対策:
 ミレニアム報告書は、2015年までに安全で供給可能な水へのアクセスを持たない人々の割合を半減させるという、世界水フォーラム閣僚会議で討議された目標を支持するよう求めている。報告書はまた、河川の流域および氾濫原の管理を改善しながら、水1単位あたりの農業生産性を向上させる「青の革命」を求めている。

土壌の保護:
 増大する世界人口が必要とする食糧を、減少しつつある農地でまかなう上での最善の希望は、バイオテクノロジーにあるといえるが、その安全性と環境への影響が激しい議論の対象となっている。事務総長は、貧しく飢える人々のニーズを損なうことがあってはならないとし、これら論争の解決を図るためのグローバルな政策ネットワーク作りを呼びかけている。

森林、漁場および生物多様性の保全:
 これらすべての分野において保全は不可欠である。政府および民間セクターは、その保全のために協力しなければならない。

新たな管理倫理の構築:
 政府はもちろん、人々は保全と管理という新しい倫理を守っていかなければならない。事務総長は加盟国に以下の4つの優先分野を提案している。
  • 一般の人々の教育
  • 環境を経済政策に統合する「緑の会計処理」
  • 規制および「緑の税」の導入や補助金削減など市場に好意的なインセンティブの採用
  • 科学データを改善すること。特に、国際協力によって地球の状態を調査する「ミレニアム生態系アセスメント」を支持し、またそれに積極的に関わること。

国連の再生
 強い国連がなければ、これらすべての挑戦に立ち向かうことははるかに困難となります。国連の強化は政府、特に民間セクター、非政府組織(NGO)および多国間機関などの他者と協力して、合意による解決を探るその意志にかかっています。国連は他者による行動を刺激する触媒としての役割を果たさなければなりません。国連はまた、情報通信技術をはじめとする新技術を十分に活用しなければなりません。事務総長は以下の分野での行動を勧告します。

国連が持つ主たる利点の認識:
 国連の影響力は権力から派生するのではなく、それが体現する価値観、グローバルな規範の設定とその維持を助ける役割、グローバルな関心と行動を刺激する能力、および、人々の生活改善を図る効果的な活動に基づく信頼から生まれている。私たちは特に、法の支配の重要性を主張することにより、これらの強みを生かさなければならない。しかし、私たちはまた、特に安全保障理事会を改革することによって国連自体を適応させていく必要がある。これにより国連は、実効的な活動と異議を差し挟む余地のない合法性を享受することができる、と考えられているからである。私たちはさらに、国連と、市民社会組織をはじめ民間セクターおよび財団との関係も拡大していかなければならない。

変革のためのネットワーク構築:
 私たちは共通の目標の達成を目指し、国際機関、市民社会および民間セクターの組織、ならびに、各国政府を結集した非公式な政策ネットワークを構築し、公式な制度を補完しなければならない。

デジタルの連携の構築:
 私たちは新しい情報通信技術を利用し、国連の効率を向上させ、世界の他の部分との相互作用を改善することができる。しかし、このためには、私たちは変革に抵抗する文化を克服しなければならない。事務総長は情報通信産業に対し、この点での支援を要請している。

静かな革命の前進:
 21世紀のニーズを充足させるため、私たちは真の構造改革、加盟国間での優先課題に関する合意の明確化、および、日常的管理に対する事細かな監督の緩和を必要としている。例えば、新たな委任事項に「サンセット(終焉)規定」を設けるなど、結果指向の予算編成を導入するためには、総会による決定が必要となる。

新たなイニシアチブ
 事務総長は報告書の中で国連が促進できる効率的なパートナーシップの例として4つのイニシアチブを示しています。

  • 「国連情報通信技術サービス(UNITeS)」と呼ばれるボランティア団体を編成し、開発途上国の人々に対して、インターネットと情報通信技術の利用方法や利用機会に関する訓練を行う。
  • 「ヘルス・インターネットワーク」を立ち上げ、最新の医療情報へのアクセスを提供する。このイニシアチブは、開発途上国の病院や診療所に1万ヶ所のオンラインサイトを設置するもので、WebMD財団、世界保健機関(WHO)、国連基金やその他のパートナーによって支持されている。
  • 「災害対応イニシアチブ「最初に現地へ」の創設。このイニシアチブにより、自然災害や緊急事態に見舞われた地域で活動する人道救済スタッフへのマイクロ波による通信や、さらには携帯電話や衛星電話による通信が可能となる。これは、国連と国際赤十字社・赤十字団体をパートナーとしてエリックソン通信会社が主導している。
  • グローバル政策ネットワークを設けることにより、若者の雇用問題への実行可能な新しいアプローチを探る。このイニシアチブ実現に向け、世界銀行と国際労働機関(ILO)双方のトップに率いられ、民間セクターと市民社会のリーダーも含むハイレベルなグループが構成される予定である。グループは1年以内に各国政府に勧告を行うことになっている。

価値の共有
 最後に、事務総長は、国連憲章の精神を反映し、新世紀において特に重要な関わりを持つ6つの核となる価値を掲げます。「自由」、「公平性と連帯」、「寛容」、「非暴力」、「自然の尊重」および「責任の共有」がそれにあたります。事務総長はミレニアム・サミットに対し、これらの価値観に従って行動する意志の証として、報告書の趣旨に基づく一連の決議を採択するよう促します。

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