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国際移住と開発に関するハイレベル対話における事務総長演説

プレスリリース 13-072-J 2013年10月08日

「国際移住と開発に関するハイレベル対話」が2013年10月3-4日、ニューヨークの国連本部で行われました。潘基文(パン・ギムン)事務総長はスピーチの中で、3日にイタリア南部の地中海にあるランペドゥーサ島沖合で発生した、500人の移住者が乗った船の火災・沈没事故について触れ、犠牲者に対して深い哀悼の意を示すと共に、移住者についてハイレベル対話を行うことの重要性を改めて示しました。以下は事務総長の演説の全文(日本語訳)です。

国際移住と開発に関するハイレベル対話における潘基文(パン・ギムン)事務総長演説

(ニューヨーク、2013年10月3日)

お話を始める前に、私は、けさのトップニュースを見るだけで、今回の対話の重要性が明白となっていることを指摘したいと思います。報道によると、地中海でアフリカからの移住者を乗せた船が沈没し、数十人が命を失いました。私は、深い哀悼の意を表するとともに、私たち全員が、さらなる行動のきっかけとしてこの事件を捉えることを願っています。

7年前、私たちはこの同じ場所に集まり、国際移住について見解の一致点を見いだせることを確認しました。

私たちは長い間、公に議論することがはばかられてきた「移住」という問題に対し、ともに関心を向ける価値と必要性があるという点で合意したのです。

それから7年、私たちは明らかに大きな前進を遂げました。

私たちはきょう、開発にとっての移住の重要性と、すべての移住者の権利保護に関する共同声明を発することになっています。

この前進を可能にしたのは、私たちが「移住と開発に関するグローバル・フォーラム(GFMD)」を通じて醸成された信頼の雰囲気です。

移住はその姿を変えつつあります。

現在、移住者の出身地と目的地はこれまでになく多様化しています。

移住者の半分近くは女性です。

移住者の10人に1人は15歳未満の子どもです。

そして、移住者の10人に4人は開発途上国に暮らしています。

私たちはこうした複雑な現状に鑑み、私たちの行動が数百万人の女性、男性、そして子どもたちに影響を及ぼすことを認識し、勇気とビジョンを持って協力を進める必要があります。

私は総会に提出した報告書で、移住者、出身地の社会、目的地の社会を問わず、すべての人が「移住を活用」できるよう、意欲的な8項目のアジェンダを提示しました。

私のビジョンを簡単にご紹介します。

 

第1に、私たちはすべての移住者の人権を保護するための取り組みを強化しなければなりません。

いわゆる「よそ者」として攻撃の対象となったり、司法に訴える手段がほとんどなかったり、悪徳業者によって賃金やパスポートを没収されたりする恐怖におびえながら暮らす移住者は、あまりにも多くなっています。

これを黙って見ているわけにはいきません。私たちは労働条件や賃金に関するものを含め、移住者に対するあらゆる形態の差別をなくす必要があります。

私たちは安全で秩序ある移住の経路を増やし、移住者の行政拘禁に代わる策を模索しなければなりません。

私は皆様全員に対し、家庭内労働者に関するILO条約、および、すべての移住労働者とその家族の権利に関する国際条約をはじめ、関連の国際法文書を批准し、これを実効的に履行するよう呼びかけます。また、加盟国に対しては、関連の国連人権メカニズムへの関与を強く促します。

 

第2に、私たちは移住のコストを下げる必要があります。

高所得国に対するものを含む全世界の送金総額は今年、5,500億ドルに達し、さらに2016年までに7,000億ドルを超えるものと見られています。

しかし毎年、そのうちの数十億ドルが不必要に高い送金手数料として徴収されています。

しかも、自分たちはおろか、家族が蓄えてきた資金もすべて不正仲介者に支払った末、借金による束縛を受ける移住者が数限りなくいます。

もし、こうした資金が子どもの学費や医療費、小規模事業の立ち上げ資金などの形で、開発に「活用」されていれば、どのような成果が得られるか、考えてみてください。

 

第3に、私たちは人身取引を含め、移住者が標的となりやすい搾取に終止符を打たなければなりません。

こうした犯罪はしばしば、女性や子どもが特に陥りやすい虐待、暴力、貧困という悪循環を永続させてしまいます。

私たちには、こうした犯罪への対処の指針となる健全な国際法の枠組みがあります。

こうした法制度をともに履行していこうではありませんか。

 

第4に、私たちは身動きの取れなくなった移住者の窮状に取り組む必要があります。

移住者が紛争や自然災害に巻き込まれることが多くなっています。

ピーター・サザーランド 事務総長特別代表は、この問題の担当者として、このような危機に巻き込まれた移住者を保護するための具体的な提言を数多く出しています。

私は、米国とフィリピンが、全関係者の役割と責任を明確化する枠組みの策定に向けたイニシアティブの先導役を引き受けたことをうれしく思います。

 

第5に、私たちは世論の移住者に対するイメージを改善する必要があります。

移住者は受入国の社会に大きく貢献します。起業家として雇用を作り出します。科学者としてイノベーションの原動力となります。医者や看護師、家庭内労働者、さらにはサービス業界の人知れぬ担い手となることも多くあります。

それでも、移住者がマイナスのイメージを持たれることがあまりにも多くなっています。あまりにも多くの政治家が、移住者を悪者にすることで、選挙戦を有利に進めようとしています。

特に失業率が高い状況で、私たちは移住によって生じる課題を無視すべきではないものの、危険な神話は一掃すべきです。

しかし、情報を提供するだけでは不十分です。移住の恩恵に関し、さらに強いプラスのメッセージを送るためには、リーダーシップが必要です。

 

第6に、私たちは移住を開発アジェンダに組み込む必要があります。

ポスト2015年開発アジェンダと、持続可能な開発に向けた新たな一連の目標に関する議論が進む中で、移住がなぜ開発にとって重要なのかをはっきりと主張する機は熟したといえます。

事実、私の報告書『すべての人に尊厳ある暮らしを』には、ポスト2015年開発アジェンダの重要な変革要素として、移住者のプラスの貢献が盛り込まれています。移住者や国外居住者がどの程度、置き去りにされることなく、開発のパートナーとして受け入れられるかは、新たなアジェンダの包摂性を測る一つのリトマス試験紙となるでしょう。

 

第7に、私たちは移住の現状を判断する根拠となるデータを整備する必要があります。

私たちは幸いにも、情報の時代に暮らしています。しかし、移住とその開発への影響に関する信頼できるデータの入手はしばしば、至難の業となっています。

移住政策は直感や伝聞ではなく、事実を基に策定すべきです。

 

第8に、私たちは移住関連のパートナーシップと協力を強化する必要があります。

市民社会からの進歩的な提案は現在、私たちの行動の決定に欠かせない要素となっています。また、私たちは15の国連主体と国際移住機関(IMO)から構成される「グローバル移住グループ」の統一性と調整の改善についても、前進を遂げています。

私はあらゆる方面に対し、その貢献の強化を続けるよう促します。私はこの目的で、ピーター・サザーランド 移住と開発担当事務総長特別代表に対し、GFMDおよびグローバル移住グループの指導層と定期的に会合を開き、共通の優先課題を明らかにするよう要請しています。

 

移住は尊厳、安全、そしてよりよい未来を求める人間の姿を反映する行動です。それは社会構造の一要素であると同時に、人類という家族構成の一部でもあります。

人的コストを含むコストから目をそらすことは非現実的でしょう。

しかし、どんなに疑い深い人でも、移住がグローバル化した現代世界の根底をなす要素となっていることは認めざるを得ません。

移住を移住者自身、そして各国の利益となるように活用することは、私たちの集団的責任です。

それは、勇気と活力、そして夢を通じて私たちの社会をより豊かに、より強く、より多様にすることに役立っている数百万人の移住者に対する義務でもあります。

私たちの作業を本格化し、そのフォローアップを確実にしようではありませんか。

私は、この問題に関心を注いでいる組織や機関に対し、深い感謝の意を表したいと思います。また、そのアドボカシーとリーダーシップによって議論を進展させ、私たちの移住問題への取り組み方を大きく改善したサザーランド特別代表にも、特に感謝します。

2013年の国際移住と開発に関するハイレベル対話が、私たちに共通の利益と共通の未来に向け、大きな前進が可能であることを立証した画期的な出来事として、歴史に刻まれることを目指そうではありませんか。

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ー「国際移住と開発に関するハイレベル対話」についてのプレスリリースは以下をご覧ください。

https://www.unic.or.jp/news_press/info/4879/