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「ニュー・クライメイト・エコノミー」報告書発表会でのアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶 (ニューヨーク、2018年9月5日)

プレスリリース 18-059-J 2018年09月11日

経済と気候に関するグローバル委員会による「ニュー・クライメイト・エコノミー(New Climate Economy)」報告書の発表会に皆様とともに参加でき、非常に嬉しく思います。

共同議長を務めたニコラス・スターン卿とンゴジ・オコンジョ=イウェアラ氏、そしてフェリペ・カルデロン元メキシコ大統領によるリーダーシップにも感謝します。

委員会は過去4年間にわたり、経済繁栄と持続可能な開発、気候変動の間の関連性に対する理解を深めることに貢献してきました。

その結果、気候変動対策と社会経済の前進が相互に支え合う関係にあることが判明しました。

しかし、いくつか心強い動きはあるものの、私たちは十分な速さの前進を遂げていません。

気候変動は私たちよりも速く進んでいるからです。

その影響は壊滅的であり、暴風雨や洪水、干ばつ、山火事、海面上昇による最悪の影響をいち早く受けるのはいつも、最貧層と最も脆弱な立場にある人々です。

特に、災害による不当に大きな影響を常に受ける女性と女児には、大きな苦難が襲いかかります。

昨年は気候関連の災害により、数千人が死亡し、3,200億ドルの損害が生じました。

今年も、インドのケララ州では恐ろしい洪水が、カリフォルニア州とカナダでは激しい山火事が発生しているほか、北極海の劇的な温暖化は、北半球全体の気候パターンに影響しています。

このトレンドは明白です。

最近の19年のうち18年は、記録上最も暖かい年に数えられ、大気中の温室効果ガス濃度も上昇を続けています。

近日発表される気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書でも示されるとおり、地球の平均気温上昇を摂氏2度未満に抑え込み、できるだけ摂氏1.5度に近づけるための時間はなくなってきています。

国別の約束と私たちに必要な排出量削減との間には、大きな差が残ったままです。

気候変動が野放しとなり、コミュニティーや経済、平和、国家の安全に深刻な影響が及ぶ可能性は、現実のものとなりつつあります。

気候変動は、その他のリスクも増幅、悪化させることが明らかになっています。

簡単に言えば、私たちはますます大きな危機を防ぐために、気候変動対策を必要としているのです。

私たちは、より大きな野心と緊迫感をもって行動せねばなりません。

「ニュー・クライメイト・エコノミー」報告書は、そのやり方を示しています。

報告書はまず、気候変動対策に向けた弾みが日に日に大きくなっている様子を明らかにしています。

世界で最も大きな影響力を誇る130社を超える企業が、再生可能エネルギーしか使わないことを約束しています。

多国籍企業18社は、電気自動車しか使わないことを約束しました。

化石燃料への経済的依存度が高い国々は、多様化のほか、影響を受ける労働者とコミュニティーの保護確保も図っています。

投資にも変化が見られます。

世界最大規模を誇るノルウェーの政府系ファンドは、石炭への投資から撤退しました。

28兆ドルの運用資産を抱える250名以上の投資家は「Climate Action 100+」イニシアティブに加わっています。

報告書はまた、新たな持続可能な成長への道へとシフトすることで、無限の機会が生まれることも明らかにしています。

例えば、荒廃森林の回復に1ドルを投資すれば、経済的利益として最大で30ドルを回収できます。

気候変動に強い給水・衛生施設を整備すれば、毎年36万人を超える乳児の命を救える可能性があります。

劣化した土地を回復すれば、農牧民の生活と所得が向上し、都市部への移住圧力が弱まります。

大気の浄化は公衆衛生にとって大きな利益となります。

化石燃料は依然として補助金の対象となっているものの、現時点ですでに、再生可能エネルギーの費用は化石燃料を下回ることが多くなっています。

これによって、まだ電力を利用できない10億の人々にエネルギーを届けることも容易になる可能性があります。

例えばバングラデシュは、400万を超える世帯に住宅用太陽光設備を設置しました。

このことで11万5,000人以上の雇用が生まれ、農村世帯は4億ドルを超える汚染燃料への支出を節約できるようになりました。

ですから、私は政策決定者に対し、この報告書の調査結果と提言を活用し、パリ協定を支援する行動と野心を強めるよう促したいと思います。

来週、カリフォルニア州で開催される世界気候行動サミット(Global Climate Action Summit)では、全世界の国家や自治体、企業が実施している取り組みの内容が明らかにされます。

これに続き、ニューヨークで開催される気候変動サミット(One Planet Summit)と国連総会でも、気候変動が優先議題として取り上げられる予定です。

さらに12月には、気候変動交渉担当者がポーランドのカトヴィツェに集い、毎年恒例の国連気候会議が開催されます。

節目となる2020年のパリ協定締約国会合に先立ち、私たちは気候変動対策を活性化しなければなりません。

この目的で、私は2019年9月、気候サミットを招集する予定です。

私は来週、ここニューヨークで若者や市民社会、ビジネスリーダー、外交官に対し、私の現状認識と将来像についてお話しする予定です。

全世界で気候変動に対する認識が高まりを見せています。私たちはこの機会を捉え、すべての主体、特に各国政府による行動を促さなければなりません。

今回の報告書は、気候に優しく、気候変動に強い成長の利点を示すことで、この取り組みに貢献しています。

私たちがその調査結果に従い、科学と常識が要求することをすれば、野放しの気候変動を回避し、持続可能な開発目標(SDGs)を達成することはまだ可能です。

それこそまさに、私が目指し続けていることなのです。

皆様の極めて重要な貢献に厚く感謝いたします。

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原文(English)はこちらをご覧ください。