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潘基文(パン・ギムン)国連事務総長による 国連気候変動サミット本会議での開会あいさつ (2009年9月22日、ニューヨーク国連本部)

プレスリリース 09/046-J 2009年09月27日

皆様、

世界の指導者による史上最大の気候変動会議となった今回のサミットに皆様をお迎えでき、光栄に思います。

皆様のご出席は、気候変動という問題の重大性を示す証です。

それはコペンハーゲンでの会合が大きなチャンスであることも物語っています。

皆様の決定には、重大な結果が伴うことでしょう。

皆様には私たちの、そして将来の世代のために、より安全で持続可能、かつ豊かな進路を示す力があります。

それは、気候変動の原因となっているガスの排出量を削減する力であり、もっとも弱い立場に置かれた人々がすでに進んでいる変化に適応するのを助ける力であり、そして、世界的なグリーン成長という新時代への橋渡しをする力に他なりません。

今こそ行動を起こす時です。

皆様、

温室効果ガスの排出量は増大を続けています。私たちが決定的な一線を越える日も近づいています。そうなれば、もう取り返しのつかない結末が待っています。

世界第一線の科学者たちは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が予測する最悪のシナリオを回避できる時間的余裕は、もう10年にも満たないと警告しています。

事実、この最悪のシナリオはますます現実のものとなりつつあります。

私たちは全世界の排出量増大に歯止めをかけなければなりません。

私は今月、北極を訪れました。そしてその変化のスピードに衝撃を受けました。北極の氷は2030年までに、ほとんどなくなってしまうかもしれないのです。

その影響は、あらゆる大陸に暮らす人々に及ぶことでしょう。

つい昨日、私は小島嶼国の指導者と会談しました。そして、気候変動がこれら国々の将来をどれほど大きく塗り替えているかについて、熱のこもった説得力のある話を聞きました。

もっとも弱い立場に置かれているアフリカ大陸では、何年もかかって築き上げられてきた開発の成果が、気候変動によって台無しになるおそれがあります。

気候変動は21世紀最大の地政学的、経済的課題といえます。それはグローバルな開発、平和、繁栄の方程式を一変させているからです。

気候変動は水や食料、土地に対する圧力を高め、何年もかかって得られた開発成果を損ない、貧困をさらに進め、脆弱な国家を不安定化し、政権をも転覆させます。

気候変動対策には金がかかりすぎるという声もあります。しかし、それは間違いで、現実はむしろその逆です。私たちは今、行動を起こさなければ、容認しがたい代償を払うことになるのです。

皆様、

気候変動交渉はまるで氷河のようにゆっくりと進んでいます。その一方で、世界の氷河は今、人間がそれを、そして自分たちを守ろうとする動きよりも急速に溶け出しています。

コペンハーゲン会合までの交渉日程はもう15日しかありません。

交渉者たちは中心的な課題を解決し、交渉のペースを速め、そして提案内容をより意欲的なものにするため、皆様から直接の政治的支援と指導を必要としています。

他者に譲歩を要求するのではなく、私たちがより大きな利益のために何ができるのかを考えようではありませんか。コペンハーゲン会合で合意に至れば、より大きな繁栄、より大きな安全、より大きな平等が見えてくることでしょう。すべての人々の取り分が増えるからです。

私たちは少しずつ信頼を構築する必要があります。きょう私は、ここにお集まりの先進国指導者の方々に対し、最初の一歩を踏み出すようお願いします。そうすれば、他の国々も独自に大胆な措置を講じることになるでしょう。

また、開発途上国指導者の方々にも、取り組みの前倒しをお願いしたいと思います。すべての国々に今、一層の努力が必要だからです。

皆様、

コペンハーゲン会合とそれ以降の成果を測る手掛かりについて、ここで明らかにしておきましょう。

まず、実質的な合意が達成された場合、すべての国々が科学的根拠に基づく安全な水準に地球の気温を抑えるという、共通の長期的目標の達成に努めることになります。

そこには、2020年を期限とする先進国の意欲的な排出量削減目標が含まれることになるでしょう。

また、開発途上国が持続可能な成長を遂げる中で、その排出量の増大を抑えてゆくための措置も盛り込まれるでしょう。途上国がこれを達成するためには、多くの資金的、技術的支援が必要となるはずです。

さらに、森林破壊や海運、空運を含むすべての主要な温室効果ガス排出源への取り組みも盛り込まれることでしょう。

第二に、実質的な合意は、世界が避けられない変化に対処する能力を強化するものとせねばなりません。特に、もっとも弱い立場に置かれた人々に包括的な支援を提供しなければなりません。これらの人々は、危機をほとんど助長していないにもかかわらず、真っ先に、それも最悪の影響を被っているからです。

適応は道徳的な義務であり、政治的な至上命令です。それはまた、より安全な未来への賢明な投資でもあります。

気候変動の緩和をおろそかにしてはなりませんが、これへの適応も同じく交渉の優先課題とせねばなりません。

第三に、合意は実行のための資金と手段によって裏づけられる必要があります。適切な資金の調達がなければ、どのような解決策を話し合っても無駄になってしまいます。

合意では、開発途上国が適応と並行して、温室効果ガスの排出を抑えた成長を追求できるよう、あらゆる官民の資源を動員せねばなりません。また、炭素市場を通じたものを含め、民間投資を活用できる枠組みも設けなければなりません。

第四に、実質的な合意には、開発途上国のニーズに取り組む公平なグローバル・ガバナンス機構も盛り込まねばなりません。

皆様、

真のリーダーシップは、長期的な視野を持てるかどうかによって決まります。各国指導者はグローバルな指導者として、各国民のニーズを充足していかねばならないのです。

コペンハーゲン会合は、その新たな手段を提供するものです。これによって、持続可能な開発を強化し、数十億人を貧困から救い出すことのできる低排出量成長を基盤としたグローバル経済の実現に寄与できるからです。

コペンハーゲン会合が成功すれば、貿易やエネルギー、安全保障、保健に関するグローバルな協力にもよい影響が及ぶことでしょう。

コペンハーゲン会合で幅広い合意が達成できないとすれば、それは道徳面で許しがたく、経済面で近視眼的であり、政治面で賢明さを欠くといわざるを得ないでしょう。

このままの道を進むことはできません。私たちが昨年の危機から何かを学んだとすれば、それは私たちの運命が互いに深く絡み合っているということです。

気候変動はその他どの問題にも増して、私たちを直接に、そして劇的に結び付けているのです。

今こそ共通の利害に基づき、行動を起こさなければなりません。

歴史的に、これ以上のチャンスはもう巡ってこないかもしれないからです。

皆様、

私はコペンハーゲンでの合意を皆様に求めます。

それは、持続可能な開発を強化し、あらゆる国のグリーン成長の原動力となるような公平で、科学的根拠をしっかりと踏まえた合意に他なりません。

科学はそれを求めています。世界経済もそれを必要としています。

将来の世代の運命、そして現在の数十億人の希望と生活は文字どおり、皆様の双肩にかかっているのです。

ありがとうございました。