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総会非公式会合でのアントニオ・グテーレス国連事務総長発言 (2018年1月16日)

プレスリリース 18-004-J 2018年02月05日

まず、私たちのアジェンダ全体に対する全加盟国、そして皆様全員のご支援に感謝いたします。

昨年、私は就任の際に、2017年を平和の年とするよう呼びかけました。

そして1年後、私たちは平和が依然として実現できていないことを認めなければなりません。

世界は根本的に、その逆の方向へと向かっています。

紛争は深刻化し、新たな危険も生まれています。

核兵器に対する世界的な不安は冷戦終結以来、最も高まっています。

気候変動は、私たちの対策を上回る速さで進行しています。

不平等は拡大しています。

恐ろしい人権侵害も見られます。

ナショナリズム、人種主義、そして排外主義が台頭してきています。

私にとって、これらはすべて、私たちが結束と勇気を固める必要性を物語っています。それは、現在の最も差し迫ったニーズを充足し、私たちが奉仕する人々の恐怖を和らげ、そして世界をよりよい未来へとつながる道へと導くための結束と勇気に他なりません。

国連の優先課題を定めるのは、加盟国の役割です。

私はきょう、12の懸念すべき分野に加え、全世界の女性のエンパワーメントという、分野横断的な責務についてもお話ししたいと思います。

第1に、公平なグローバリゼーションを実現するために、真の「ニューディール」を推進することです。

貧困も不平等も、決して仕方のないことではありません。グローバリゼーションの利益の不平等な分配についても同じです。

世界で最も豊かな8人が、世界人口のうち貧しいほうの半分の人々と同じだけの富を保有しているとしても、それは単なる偶然ではありません。

世界経済と国際貿易のあり方は、人間が行った選択の結果だからです。

そして、私たちの選択は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にあります。それは、誰一人取り残すことなく、すべての人にとって豊かで平和な社会を構築するという私たちの野心に他なりません。

この目標を達成するための資金の調達は欠かせません。アディスアベバ行動目標は、特に革新的な手段を活用しながら、資金を動員する必要性と方法を明示しています。私は改めて各国政府、特にドナー国の政府に対し、資金拠出の約束を守るよう呼びかけたいと思います。

また、私は国際社会に対し、開発途上国が自らの資金をよりよく動員できるよう、脱税やマネー・ローンダリング、資本の不正な流れを取り締まるメカニズムを導入するよう強く訴えます。

私たちは、開発に向けて国連システムの体制を立て直すことで、加盟国による持続可能な開発目標の達成をよりよく支援できるようになります。また、民間セクターや市民社会の活力も借りなければなりません。

若者の問題も優先課題とすべきです。私たちは若者の将来に投資するとともに、若者に発言権を与えなければなりません。

第2に、気候変動対策に関する私たちの野心をさらに大幅に高めることです。

2016年には、二酸化炭素の排出量が3年ぶりに増加に転じました。

最近の5年間は、史上最も暑い期間となっています。

パリ協定は、対策の基盤を整備しました。しかし、現時点までになされた約束は、定められた目標の達成には不十分です。私たちはこの点で、さらに野心を高めなければなりません。

幸いなことに、気候変動対策の可能性は、これまでになく広がっています。

私は、石器時代が終わったのは石がなくなったからではない、という話を聞いたことがあります。

つまり、化石燃料の時代を脱するために、石炭や石油が尽きるのを待っていても仕方がないということです。

グリーン経済に賭けることをしない人々には、暗い将来が待っています。

私たちは過去でなく、未来に投資しなければなりません。

私は来年、温室効果ガス排出量のさらに思い切った削減、気候変動への適応、そして私たちに欠かすことのできないエネルギー転換の実現に向けて国際社会を動員するため、気候サミットを開催する予定です。

第3に、人間の移動を活用することです。

「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」の採択は、私たちが今年中に果たすべき重要な任務の一つです。

これまでもお話ししてきましたが、私は、移住がプラスの効果をもたらす現象であることを改めて強調したいと思います。

移住は経済成長を促進し、不平等を減らし、社会の間の絆を作り上げるとともに、私たちが人口構成の変化に対応する際の助けにもなります。

しかし、移住が政治的な緊張や人間の悲劇の原因となっていることも認めなければなりません。

よって、私たちは正規移住の機会を大幅に拡大するとともに、開発戦略と国際開発協力の中心的目標として、人々が自国で尊厳をもって暮らし、働くことができる可能性を提供しなければなりません。

密航仲介と人身取引に対処し、その被害者を保護するための手段は、それ以外にないからです。

第4に、第4次産業革命から利益を得ながら、その脅威を防ぐことです。

技術進歩は、現在の最も急を要する課題への対応に貢献することができます。

その一方で、私たちは、技術が不平等を拡大しかねないことも知っています。人工知能は労働市場と社会に大きな影響を与え、遺伝子工学は深刻な倫理的ジレンマを抱え、サイバーセキュリティ上の脅威は増大し、プライバシーは危険にさらされることになるでしょう。

国連は、加盟国と民間セクター、学界、そして市民社会が今後の先端技術のあり方について議論し、その潜在的可能性をすべての人の利益となるように管理できる場としての役割を果たすことをお約束します。

第5に、惨禍へと無意識のうちに歩みを進めることなく、朝鮮半島の非核化を達成することです。

私は、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)による核実験と弾道ミサイル発射に対し、安全保障理事会が断固とした決定を下したことを歓迎します。この決定は全面的に履行しなければなりません。

安保理の結束は、外交的な取り組みへの道も開きます。だからこそ、私は先月、国連事務局とDPRK高官の間で実に8年ぶりの突っ込んだ政治対話を実現すべく、政治担当事務次長を平壌に派遣しました。

私は南北朝鮮間、特に軍事当局間の通信チャネルの再開を歓迎します。それは誤算や誤解のリスクを低下させ、緊張状態を和らげるうえで欠かせないからです。

私はまた、DPRKが韓国で間もなく開かれる冬季オリンピックへの参加を決定したことにも勇気づけられています。

私自身も、オリンピックの開会式に出席する予定です。

私たちは、こうした小さな希望の兆しを積み重ね、地域安全保障の文脈において、朝鮮半島の平和的な非核化を達成するための外交努力を広げていく必要があります。

第6に、中東全域で生じている混乱の収拾を図ることです。

中東全域の情勢は、まるでゴルディアスの結び目のように解けない難題となっています。

相互に関連する火種が多く存在し、紛争が一気に激化するリスクが現実のものとなっています。

私たちは、イスラエルとパレスチナが交渉の場に戻ることを強く要求しなければなりません。2国家共存に代わる解決策はないからです。最近、この解決策に対する支援が弱まる兆候を見せていることで、穏健派が弱体化し、強硬派が力を得ています。次善の策は存在しません。

レバノンでは、私たち全員が同国の主権と安定を保ち、国家機関を強化するために連携すべきです。

イエメンでは、人道主義の存続の劇的な危機を和らげるための取り組みをさらに一歩進め、当事者が有意義な和平交渉に入るべき時期が来ています。

湾岸地域に関し、私たちはあらゆる機会を捉え、緊張を緩和し、情勢の悪化を回避するとともに、政治的解決策の浮上を可能にするための基盤を確立、強化しなければなりません。

シリアに関し、国連はジュネーブで、紛争の政治解決につながる実質的、代表的かつ直接的なシリア当事者間交渉への関与を続けていきます。

そしてイラクでは、同国の領土保全を確保し、包摂的なガバナンスを追求し、宗派間の緊張状態を緩和するためのあらゆる取り組みを支援していきます。

第7に、私たちのアフリカ連合(AU)とのパートナーシップを強化することです。

私は、アフリカの問題はアフリカ主導で解決できると強く信じています。

AUと国連は、紛争が激化する前にこれを収拾し、紛争が発生した時にはこれを効果的に管理するためのメカニズムを強化することを共通の利益としています。

特に従来型の平和維持モデルが不十分であり、平和の執行とテロ対策が必要とされる場合には、国際社会がAUと小地域機関の取り組みを全面的に支援することが欠かせません。

アフリカの平和と安全のために、実効的で十分な資金を備えた機構を確立することは、グローバルな戦略上の必須要素です。

ソマリアでも、チャド湖周辺でも、サヘルでも、アフリカの部隊は国際社会と国連から、明確なマンデートと十分かつ予測可能な資金供与を伴う充実した支援を必要としています。

私はリビアで、政治的な合意を確保し、私の特別代表が提示した国会・大統領選挙に至るロードマップを全面的に実施しようと努める当事者も引き続き支援していく所存です。

第8に、ヨーロッパにおける紛争の悪化と行き詰まりをもたらした麻痺状態を解消することです。

2回にわたる世界戦争の引き金となったヨーロッパが有する資源と能力を考えれば、この地域での紛争継続を正当化することはできません。

現状を打開するためには、ナショナリズムという危険な潮流を押し返すとともに、ウクライナ東部に関するノルマンディー・フォーマットと三者コンタクトグループ、ナゴルノ・カラバフに関する欧州安全保障協力機構(OSCE)ミンスク・グループ、ジョージアに関するジュネーブ国際会合、沿ドニエストルに関する「5+2」プロセスなど、関連の調停イニシアティブを活性化することが必要です。

バルカン西部でも、長期的な安定につながる解決に向けた協調的な取り組みが急務となっています。

私はヨーロッパのリーダーに対し、豊かさの共有と平和的共存という自らの理想を地域全体で実現できることを証明するよう、強く訴えます。

第9に、テロ対策に引き続き照準を絞ることです。

紛争とテロの蔓延との間には、はっきりとした関連性があります。

アフガニスタンのような国で、和平に向けた動きが進展すれば、国内で多発しているだけでなく、国外にも広がっているテロとの闘いも前進することは明らかです。

テロを打倒するためには、グローバルな協調的対応が必要です。私は来る6月、この極めて重要な闘争で多国間協力を進めるため、テロ対策機関責任者サミットを招集する予定です。

また、その根本的原因を注視し、被害者を支援することも欠かせません。

私たちの対策は、人権の尊重と法の支配に根差すものとせねばなりません。

また、私たちが廃絶しようとしている暴力それ自体の原因となりかねない不平や主張の温床となるアプローチは避けなければなりません。

つまり、私たちはテロを予防し、テロと闘うために、強さと賢さをともに備えるべきなのです。

10番目には、国連の平和活動を強化することが挙げられます。

平和維持は未曽有の課題に直面しています。

国連のミッションは、維持すべき平和がない困難な環境で展開されることが多くなってきました。

装備が不十分なことも多い私たちの平和維持要員は現在、意図的な攻撃の標的とされています。この状況を持続させることはできません。警報を発すべき時が来ています。

私は、国連要員自身と奉仕対象の住民をともに守るため、平和維持の遂行方法を改善することを決意しています。

そのための詳細な行動計画は、平和維持活動局が策定しているところです。

しかし、そのためには兵員または警察官の提供国として、資金拠出国として、政治的取り組みのパートナーとして、そして安全保障理事会において、全加盟国の関与と支援の拡大が必要です。

私は、兵員提供国と警察官提供国の寛大さに感謝するとともに、職務遂行に命をささげたすべての要員に敬意を表します。

平和維持は、平和の連続体の中で捉えなければなりませんが、中でも私たちの優先課題が予防にあることは明らかです。

私は来月、総会の要求に従い、平和構築と持続的平和に関する報告書を皆様に提出する予定ですが、それによって、暴力的紛争の防止を図る私たちの取り組みがさらに強化されることを望んでいます。

調停諮問委員会も設置され、その活動を開始しています。

メンバーの1人であるオルシェグン・オバサンジョ元ナイジェリア大統領は、リベリアでの円滑な選挙と政権移行を支援する諮問委員会初の取り組みに着手したところです。

私たちはすでに、関係国の同意を得て、その他政情不安を抱える加盟国へのミッションも数多く計画しています。

11番目には、ミャンマーから国外に逃れた多数のイスラム教徒ロヒンギャの帰還を図ることが挙げられます。

自分たちの家と国を追われ、軍やその他の人々による残虐行為を受けたロヒンギャの人々は、自分たちのアイデンティティーそれ自体を理由に、四面楚歌の状況に置かれています。

これらの人々には、取りあえずの救命援助と、長期的な解決策や正義がともに必要です。

私は政府に対し、ラカイン州で人道援助の自由なアクセスを確保するよう呼びかけるとともに、国際社会に対し、バングラデシュに逃れたロヒンギャの人々を支援するよう訴えます。

私は、バングラデシュとミャンマーの間で成立した合意が、国際的な基準に従い、難民の出身地への安全、自発的かつ尊厳のある持続可能な帰還に道を開くことを期待しています。

ラカイン諮問委員会による勧告の全面的な実施も欠かせません。

困難な局面を迎えているとはいえ、私は、ミャンマーの民主制への移行を引き続き強く支援していく決意でいます。

12番目として、人権と国家主権の間にある偽りの矛盾を克服することが挙げられます。

事実、人権と国家主権は両立します。

人権の実現は、国家と社会を強化することにより、主権をさらに強固なものとするからです。

実効的で説明責任のある制度を備えた国は、人権を最もよく擁護できる国でもあります。

国連にはいつでも、法の支配を堅持し、市民的、政治的、経済的、社会的、文化的なすべての人権を推進し、あらゆる形態の差別を廃絶するための能力構築に努める国を支援する用意があります。

活発な市民社会と自由なメディアも、中心的な役割を果たすべきです。世界人権宣言採択70周年に当たる今年こそ、この壮大な文書が希求し、保証していることを私たちの指針としようではありませんか。

それはまた「人権を最優先に(Human Rights Up Front)」イニシアティブの精神でもあります。私は引き続き、このイニシアティブを全力で進めていきます。

紛争から気候変動、さらには大規模な移住に至るまで、これら12の分野のいずれにおいても、女性が不当に大きな影響を受けていることは明らかです。

また、女性の平等と包摂の改善が、これら複合的な課題に取り組むうえで基本的な手段であることも分かっています。

平和と安全への女性の有意義な参加は、平和の持続可能性を高めることが立証されています。

女性を労働市場に平等に参加させ、平等な賃金を支払えば、私たちの経済に数兆ドルの利益が生じることでしょう。

しかし、こうした利益を実現するためには、さらなる施策が必要です。私は次の3本柱からなるアプローチを採用します。

第1に、エンパワーメント、すなわち女性と女児に力を与えることです。力こそ、問題の核心だからです。

私は、国連のあらゆるレベルで職員の男女同数を達成するためのロードマップを発足させました。

私がきのう発表した人事により、44人で構成される国連のシニア・マネージメント・グループでは、目標を大幅に上回る速さで、完全な男女同数が達成されました。

私は、すべての国連改革で、私たちがジェンダー平等を実現する能力がいかに強化されているかを明確に示すよう要請しています。

また、国連自体のジェンダー平等関連支出を審査する権限を有する内部作業部会も設置しました。

第2に、女性に対する性的搾取と虐待を防止することです。

国連で被害者の権利保護を担当する初のアドボケート(唱道者)が任命され、各国や国連システム全体との密接な連携を図っています。

82の加盟国は、こうした犯罪を防止し、その嫌疑に迅速に対応するための「自主協定」に参加しています。

世界のリーダー58人は、私とともに「サークル・オブ・リーダーシップ」に加わることで、その決意を表明しています。

今後の道のりは長いものの、私たちには十分な決意があります。

第3に、セクシュアル・ハラスメントを予防し、これに対処することです。

私は、国連からセクシュアル・ハラスメントを一掃するという個人的な約束を改めて表明します。

最近も、職員組合と共同で全職員に送付したレターの中で、私のゼロ容認方針を再確認したばかりです。

私はまた、セクハラ事件を調査し、責任の追及を確保し、被害者に対する支援と保護を検討するため、ジャン・ビーグル管理局長を座長とする作業部会も設置しました。

私たちは、セクハラの報告手続を簡素化し、この極めて深刻な問題に対する意識を組織全体で高めるためのさらに詳細な措置にも取り組んでいるところです。

今年は国連改革にとって決定的な年となるでしょう。総会は重要な決定をいくつか下しています。皆様には私の報告と提案が伝えられています。私は皆様のコメントや提案に耳を傾けてきました。

この問題については、数度にわたって議論してきたので、きょうは深く立ち入らないことにします。今後は、平和と豊かさを実現するための針路を定めなければなりません。

私はちょうど、コロンビア訪問を終えたところです。そこでは、平和と和解に向けた心強い前進と同時に、このようなプロセスに必然的に付きまとう課題も見られました。

私は、コロンビアでの私たちの活動だけでなく、国民の勇気と強さからも希望を感じています。

私たちのあらゆる課題に、あらゆる場所で取り組むためには、時間と資金、労力、政治資源その他の投入が必要となります。

加盟国はそれぞれリーダーシップを発揮しなければなりません。

しかし、私たちの世界をより安全で持続可能に、そして人々が安心して暮らせるようなものにすることは、誰にでもどこででもできます。

逆風や憎悪が吹き荒れる中でも、私たちは国連憲章の価値を堅持しなければなりません。

しかし、そのためには、私たちが国連として、そして一つの人類として結束することが欠かせないのです。

ありがとうございました。

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