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「透明性と死刑」に関するパネルでの事務総長挨拶 (ニューヨーク、2017年10月10日)

プレスリリース 17-055-J 2017年10月17日

人権高等弁務官事務所と、この重要なイベントを共催していただいた加盟国の皆さまに感謝いたします。

私たちは、極めて急を要する厄介な人権問題について議論するため、ここに参集しています。その問題とは、死刑執行の継続とこれにまつわる秘密主義です。

私が事務総長として、死刑について公に発言するのは今回が初めてです。

私はこの野蛮な慣行を続けているすべての国に訴えたいと思います。

死刑の執行を停止してください。

死刑は21世紀に相応しくありません。

私の祖国ポルトガルは、150年前に死刑を廃止し、世界初の死刑廃止国のひとつとなりました。私はそれを誇りに思います。事実、私は学校で、ポルトガルが世界で最初に死刑を廃止したと教えられましたが、他にもそのように主張している国があるかもしれないので、ここで問題を起こすつもりはありません。しかし、私はそのことを本当に誇りにしています。

その理由は昔も今も変わりません。

死刑が被害者のためになったり、犯罪を抑止したりすることはほとんどないからです。

また、いくら厳密に公正な裁判を期したところで、誤審のリスクは常に存在します。

その代償はあまりにも大きすぎます。

世界は今、正しい方向に動いています。

死刑を廃止したり、その執行を停止したりする国がますます増えています。約170カ国が、すでに死刑を廃止したか、その執行を停止しています。

先月も、ガンビアとマダガスカルというアフリカの2カ国が、撤回不能な死刑廃止に向けて大きな一歩を踏み出しました。私はこの動きを歓迎するとともに、両国政府の道義に基づく態度を祝福します。

2016年には、全世界の死刑執行件数が対2015年比で37%減少しました。

現在、わずか4カ国における死刑執行件数が全体の87%を占めています。

しかし、私たちは同時に、テロ関連の事案について、長年にわたって続いてきた死刑執行停止が撤回される傾向にあることを懸念しています。

また、死刑執行を続けている国には、国際的な義務もあります。多くの場合、こうした国はその義務を果たしていません。

透明性は、死刑が国際人権基準に従い執行されているかどうかを評価するための前提条件です。

また、受刑者の生死や、その遺体がどこにあるのかを家族が知る権利を尊重することにもなります。

しかし、一部の政府は死刑執行の事実を隠し、巧妙な秘密主義的制度を用いて、誰がなぜ死刑を宣告されたのかを明らかにしていません。

また、死刑に関する情報を国家機密に指定し、その漏洩を反逆行為とみなしている政府もあります。

被告側弁護士と共有できる情報を限定し、減刑や恩赦を求める能力を制限するケースも見られます。

さらにその他、死刑執行に用いられる薬品を提供する企業名を明かさず、マイナスの評判が立たないよう守っている政府もあります。

透明性の欠如は、死刑囚とその家族の人権を尊重しないという態度を示すものです。

より一般的に、それは司法行政全体を損なうものでもあります。

政策立案者や市民社会、一般市民にとって、完全かつ正確なデータは欠かせません。それは死刑とその影響をめぐる議論を行う際の基本的要素でもあります。

死刑執行をめぐる秘密主義は、この議論を損ない、生存権を守るための取り組みを阻害します。

きょうの「世界死刑廃止デー」にあたり、私はあらゆる状況の死刑に反対することを改めて確認します。

私は死刑を廃止したすべての国に対し、死刑を存続させている国の指導者に、そのできるだけ早い廃止を視野に入れつつ、正式な死刑執行停止の確立を呼びかける私たちの取り組みを支援していただくようお願いします。

皆様の実りある、また示唆に富む議論を期待いたします。ありがとうございました。

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