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アナン国連事務総長、「女性2000年」特別総会で演説
地球の将来は女性の肩に

プレスリリース 00/56 2000年06月15日

 以下は6月5日、コフィー・アナン事務総長が国連特別総会「女性2000年会議:21世紀に向けた男女平等、開発および平和」において行った声明である。

 5年前、各国の代表と非政府機関(NGO)は北京に赴き、悪しきを正して権利を促進しようと試みました。それは、女性が不正の犠牲となれば、私たちすべてが犠牲となること、女性に力が与えられれば、私たちすべての生活が改善することを示すためでした。会議は成功を収め、その成果は「北京行動綱領」となって結実しました。それから5年後、皆さんはここニューヨークで、これまでの進歩を再検討し、今後の成果に向けて取り組んでいるのです。
 これまで、明らかに進歩はありました。
 女性に対する暴力は現在、あらゆる場所で違法行為とされています。むしろ「恥辱殺」と呼ぶべき、いわゆる「名誉殺」の問題など、有害な伝統的慣習に対しては、世界中から非難の声が上がりました。多くの国々では、新たな保健戦略により、数千人の女性の命が救われました。家族計画を利用するカップルの数も、これまで以上に増えています。
 また、内閣や取締役会、さらにはここ国連において、指導者や意思決定者となっている女性も記録的な数に達しています。とりわけ、男女平等が開発の前提条件であることを理解する国が増えています。
 しかし、それと同時に、残された課題も多いといえます。具体的な例をあげましょう。
 経済的に、男女間の格差は依然として拡大しています。女性は所得が少なく、失業していることも多いため、一般的に男性よりも貧しい状態にあります。女性の仕事は引き続き、パートであったり、正式なものでなかったり、規制対象外であったり、不安定であったりすることが多くなっています。女性が生殖においてだけでなく、生産の役割も担っているという事実があまりにも知られていません。大半の国はまだ、女性が土地その他の財産を所有する権利を認める立法を制定していません。また、ほとんどの国が法律で禁止しているにもかかわらず、女性に対する暴力は、家庭においても、また、女性や子どもが最初の犠牲者となるような、一般市民を標的とした新しいタイプの武力紛争においても、依然として増え続けています。学校に通っていない1億1,000万人の子どものうち、3分の2が少女です。中途退学者の数でも、女子生徒のほうが男子生徒を上回っています。

 これら旧来からの課題に加え、新たな課題も生まれています。2つの例を挙げましょう。第1に、エイズの蔓延は、女性と少女に破滅的な被害をもたらしています。南部アフリカで最悪の被害を受けている諸都市では、妊婦の40%がHIV陽性であり、10人の子どものうち1人以上がエイズで母親を失っています。祖母が孤児を育てていたり、少女が病気の親類の世話をするために学校に通えなかったりすることもあります。女性が懸命になって繋ぎ止めようとしてきた社会的きずなは、破壊されつつあります。第2に、聖書の時代にまで溯る悪しき慣習である女性と子どもの人身売買は、世界的な悪疫となっています。
 これらの挑戦に対しては即刻、行動を起こす必要があります。私は加盟国に対し、9月のミレニアム・サミットで、HIV/エイズの蔓延を食い止め、押し戻すための具体的目標を策定するよう要請しました。また、国連人権高等弁務官は、権利を基礎とするアプローチと強固な法制を通じ、人身売買を防ぐ国際協調キャンペーンの実施を求めています。
 新旧ともども、これらの課題はすべて、私たちが生きている複雑で相互関連的な世界の一部なのです。女性を最悪の状態に陥れるのではなく、女性がこの世界を十分に活用できるようにしなければ、これらの課題を克服することはできません。それはとりわけ、女性が教育を受け、グローバル経済における自らの役割を果たせるようにしなければならないことを意味します。少女がHIVの感染から身を守るために必要な情報を得られないのは、教育が不十分だからです。また、早期の性交渉によって女性が感染の危機にさらされなければならないのは、就職の見込みがないことに起因していることも多いのです。
 同様に、多くの女性が移住を望み、結果的に人身売買の対象となってしまうのは、経済的機会が欠如しているためです。私たちがどれほど対策法を整備しようとも、教育を受けていない女性は人身売買の餌食となってしまうでしょう。教育はすなわち、グローバル経済への入口であると同時に、その落とし穴に対する最善の防衛策でもあるのです。
 グローバル化には技術革新が伴い、単純労働者よりも高度な技術を身に付けた労働者が有利になります。これにより、男女間の所得格差はさらに広がっています。女性にこの格差を縮めさせることができるのは、教育をおいて他にありません。
 すでに、多くの女性が繊維からデータ処理に至るまで、グローバルな生産活動に従事しています。しかし、その大半は飢餓すれすれの賃金で、劣悪な条件の下に働いています。女性が経営者、起業家、雇用主、労組指導者および雇用関連の弁護士として、経済的な決定を下せない限り、また、女性がコミュニティーの指導者、交渉者、裁判官および閣僚として、社会的・政治的決定を下せない限り、この状況は変わらないでしょう。
 アフリカその他多くの地域ではすでに、女性が農業労働の主力となっています。しかし、ほとんどの女性には依然として貸付、土地所有および相続の権利が認められていません。その労働には感謝も報酬も伴いません。女性のニーズは優先されていないのです。家庭でさえ、女性の意思決定の役割は制限されています。
 この点でもまた、教育は大きな変革をもたらすことができます。女性の土地、貸付、マーケティング用施設および技術に対する権利、ならびに、土地改革における平等の発言権を女性自らが擁護できるようになれば変革がもたらされることになるでしょう。
 教育を受け、労働力に統合されれば、女性は自らの婚期と子どもの数について、よりよい選択を行えるようになります。女性とその子どもたちの栄養、健康管理および教育の状況も改善できるでしょう。そして、このような実例は、女の子が少なくとも男の子と同様に投資する価値のある存在だというメッセージを親に伝えることにより、周囲の考え方にも影響を与えることでしょう。
 事実、どの研究を見ても、女性が中心的な役割を果たす開発戦略は、男女とも社会全体にとって、最大の利益をもたらすことが確認されています。
 私は今世紀中に、最善の紛争予防における戦略が平和創造者としての女性の役割拡大にあることが立証されるものと期待しています。国連内部においても、私たちは平和維持と平和創造により多くの女性を起用する方法を見出さなければなりません。
 私のミレニアム報告書でも、また、世界教育フォーラムにおいても、私が各国政府に少女の教育を優先課題とするよう求めたのは、まさにこのような理由からです。事実、私は、世界のあらゆる人々のために私が全世界の指導者に採択を要請したすべてのミレニアム目標を達成する上で、北京綱領の実施が極めて重要であると信じています。
 5年前、皆さんは「私たちは地球上の客ではなく、その主役なのだ」という単純明快な認識を持って、北京に赴きました。そして5年後の今、私はあえて、これがあまりにも控え目な発言であることを申し上げたいと思います。私はこの特別総会が、女性は地球上の主役であるばかりか、地球の将来は女性の肩にかかっているのだということを、世界に知らしめるものと期待しています。