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写真で綴る、国連事務総長の訪日 2018


8月7日から9日までの3日間、アントニオ・グテーレス国連事務総長が日本を訪問しました。今回の主な目的は、長崎平和祈念式典への出席です。

昨年7月には国連で核兵器禁止条約(the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons)が採択され、発効に向けた議論や取り組みが進められている中、今年5月には、ジュネーブ軍縮アジェンダ「Securing Our Common Future」を発表し、人類を守り、人命を救う、未来世代のための軍縮を訴えたグテーレス事務総長。今回の訪日でも、被爆者の方々との”強い連帯”を示し、2度と原爆の被害者を出さない、というメッセージを日本、そして世界に向けて発信しました。

”No more Nagasaki, never more Hiroshima, not any more hibakusha being necessary”
(ノーモア・ナガサキ。ネバーモア・ヒロシマ。これ以上の被爆者を出してはならない)

 

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8月7日夜、グテーレス事務総長が日本に到着!

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グテーレス事務総長を羽田で迎える(右から)デイビッド・マローン国連大学学長、根本かおる広報センター所長、中満泉国連軍縮担当上級代表 @UNIC/Takashi Okano

 

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8月8日には早朝からのインタビュー取材の後、国連広報センター所長根本かおるとインターンとパチリ。

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©UNU/Daniel Powell

 

その後、首相官邸に向かい、安倍総理との会談、および共同記者会見に臨みました。

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©UNIC/Takashi Okano

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©UNIC/Takashi Okano

会談では 、唯一の被爆国である日本は「核兵器のない世界」の実現に向け、国連と協力して取り組んでいくことで一致しました。また、北朝鮮から非核に向けた具体的な行動を引き出すためには、安保理決議に基づく措置の完全な履行が必要だという認識を再確認し、日本政府の拉致問題解決に向けた対話をめざす取り組みにも支持を伝えました。

事務総長は総理との共同記者会見で、今回の訪日には被爆者との深い連帯を示すという特別な意味があると述べました。日本について、「多国間主義を支える柱であり、また国連の重要なパートナーである」と評価し、平和や人権を推進する努力に感謝を表しました。

 

その後、政府専用機で長崎へ。

 

8日午後、長崎に到着したグテーレス事務総長は、田上富久長崎市長をはじめ地元の関係者と懇談を行ったほか、被爆者の方々にも面会しました。

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©UN Photo/Daniel Powell

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©UN Photo/Daniel Powell

被爆者からひとりの人間として直接話を聞きたい、という事務総長本人の希望を受けて、対話は車座で行われました。被爆者の方々の話に静かに耳を傾け、思いを受け止めました。

事務総長は、「広島と長崎の原爆を生き延びた被爆者の方々は、ここ日本のみならず、世界中で、平和と軍縮の指導者となってきました」と被爆者の方々に敬意を表しました。「ノーモア広島、ノーモア長崎」という大切なメッセージを広く伝えるため、そして核兵器が二度と使用されぬよう全力で取り組まねばならないとの思いを一層強くしたと述べています。被爆者の方々との対話は、事務総長にとって訪日プログラムの中で最も重要な時間のひとつとなりました。

 

この日は、グテーレス事務総長がかねてより望んでいた浦上天主堂にも足を運ぶことができました。

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若者に迎えられる国連事務総長浦上天主堂にて @UN Photo/Daniel Powell

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高見三明大司教より説明を受ける国連事務総長浦上天主堂にて @UN Photo/Daniel Powell


 

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翌9日午前、グテーレス事務総長は、河野外務大臣と朝食会にて会談しました。国連改革や北朝鮮情勢に関して意見交換を行い、軍縮・不拡散に向けて共に協力することで一致しました。

 

続いて、長崎原爆資料館および国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館を訪れました。

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原爆資料館では山里小学校の子どもたちの歓迎を受けました ©UN Photo/Daniel Powell

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子どもたちは平和祈念式典でも合唱を披露しました ©UNU/Daniel Powell

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子どもたちと折り鶴を折るグテーレス事務総長 ©UNU/Daniel Powell

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原爆資料館を見学 ©UN Photo/Daniel Powell

 

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被爆した長崎の街を表現した模型の前で足を止める国連事務総長。彼の隣で説明するのは中村館長 @UNIC/Yasuko Senoo

 

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平和祈念館の追悼空間にて ©UNU/Daniel Powell

 

そして、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館での記者会見に臨み、核廃絶への強い決意を表明しました。被爆後の惨状を乗り越え活気ある街を作り上げた長崎の不屈の精神を称賛し、「核兵器が二度と使われないようにするのは私たち一人ひとりの義務だ」と訴えています。

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©UNU/Daniel Powell

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©長崎市

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「すべての原爆被害者、そのご家族のみなさま、そして長崎にお住まいの方々との深い連帯を私は表明します。私のメッセージは明確です。勇気ある被爆者の叫びに続くこと ― 長崎を二度と繰り返さないように、と」

(“I express my deep solidarity with all the victims of the atomic bomb, their families and Nagasaki community. My message is very clear repeating the cry of the courageous Hibakusha. Nagasaki never again.”)

記者会見後に残したメッセージには、そう書かれていました。

 

この後、被爆73周年長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に参列しました。式典には、核保有国を含む71ヵ国の代表も参列しました。

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©UN Photo/Daniel Powell

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©UN Photo/Daniel Powell

 "Let us all commit to making Nagasaki the last place on earth to suffer nuclear devastation."
(私たちみんなで、この長崎を核兵器による惨害で苦しんだ地球最後の場所にするよう決意しましょう。)

現役の事務総長として初めて、長崎での平和祈念式典に参列したグテーレス事務総長はスピーチで、全ての国に対して核軍縮に全力で取り組むように呼びかけました。母国ポルトガルとも深いつながりのある長崎への訪問は、事務総長にとっても特別なものとなったようです。

 

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“Peace is not an abstract concept and it does not come about by chance. Peace is tangible, and it can be built — by hard work, solidarity, compassion and respect.”
(平和とは、抽象的な概念ではなく、偶然に実現するものでもありません。平和は人々が日々具体的に感じるものであり、努力と連帯、思いやりや尊敬によって築かれるものです。)長崎平和祈念式典でのスピーチより

 

被爆者の平均年齢は82歳を超え、長年、戦争の悲惨さや平和の大切さを伝えてきた被爆者の減少が懸念されています。

日々生活する中で、頭の隅に追いやられてしまう「日本は唯一の被爆国である」という事実。

もし再び戦争が起こったら。

もしまた核兵器が使われたら。

家族や友人、大切な人を失うことになったら。

 

平和に過ごせるのが当たり前ではないということを噛み締め、平和のために何が出来るのか考えなければいけない、と痛感する3日間となりました。

 

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©長崎市

 

今回の国連事務総長の訪日に関してはこちらもご覧ください:国連と軍縮


インターン 安部・布施)