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犯罪です! 移住者密輸(第13回国連犯罪防止刑事司法会議)

2015年03月10日

13th UNITED NATIONS CONGRESS ON CRIME PREVENTION AND CRIMINAL JUSTICE Doha, 12-19 April 2015

第13回国連犯罪防止刑事司法会議 2015年4月12日~19日 ドーハ(カタール)

「移住者が安息の地への捨て身の船旅で命を失うという悲劇的な報告が後を絶ちません。数十万人もの女性、男性、子どもが試みるこの危険な旅を手助けしているのはほとんどの場合、犯罪的な密航組織です」 – ユーリ・フェドートフ国連薬物犯罪事務所(UNODC)事務局長

    

世界中に日々、命がけで貧困、機会の欠如、自然災害、迫害、紛争、政情不安から逃れようとする人々がいます。母国での生活の改善、安全が確保できないため、国境を越えることが自分や家族にとって最善の選択、時には唯一の選択であるかのように思えるのです。合法的に移住する可能性が様々な事情で利用できないことが多い世界では、移住を求める声が、大きな利益をもたらす違法な市場を生み出しています。

移住者の密航は、発覚や検挙のリスクがほとんどないと心得ている犯罪者たちに、巨額の利益をもたらします。移住者の密航は、腐敗や不正行為を助長し、組織犯罪を生み出します。利益を追求する犯罪者たちは、移住者に合法的なチャンスがないことを利用して、その苦境につけ込み、輸送手段だけでなく文書偽造を含むサービスを高額で提供しているのです。犯罪者が、移住者に似た写真を貼った盗難パスポートを貸したり、渡航文書や身分証明書を偽造したり、不正な証明書類を提供して本物のパスポートやビザを取得する手助けをすることもよくあります。

このようなサービスは違法であることから、移住者は密航業者に対して弱い立場に陥ります。当局に助けを求めることを恐れる多くの移住者は、密航の過程で不当な扱いを受け、過酷な状況に耐えることを強いられます。目的地に向かう途中で虐待されたり、援助もなく途中で見捨てられることもあります。密航業者による強奪や搾取の犠牲になったり、命を脅かす恐ろしい状況に置かれることもあります。何千もの人々が海でおぼれたり、砂漠で命を落としたりしています。難民や亡命希望者、保護者のいない未成年や妊婦など、弱い立場にある人々が密航サービスの犠牲になることもあります。

最大の課題の一つは、この犯罪が刻々と変化する需要と供給の状況や、移住者の出身国、通過国、到達国のそれぞれの刑事司法情勢に容易に適応できるということです。取り組みの大部分は、個々の移住者を逮捕し、強制送還することに重点を置いており、関与する組織犯罪グループの解体にはあまり注意が払われていません。解決のためには優れた移民管理が必要ですが、同時に、移住者の密航を犯罪として扱い、移住者の人権を守り、合法的な移住と保護へのアクセスの可能性を探り、生命や自由が脅かされる場所への追放や送還から移住者を守る「ノン・ルフールマン」の原則を尊重する法的措置の併用をもって、移民管理を補完する必要があります。そのためには、各国の当局の機能を充実させることが欠かせません。機能の充実は、支援を必要とする移住者や難民の特定だけでなく、複雑な金融捜査を含み、密航活動を裏で操る組織犯罪ネットワークの効果的な捜査と訴追に役立ちます。実際に利益を得ている者を逮捕、訴追しなければなりません。組織犯罪グループそのものを解体し、犯罪によって得た利益を押収しなければなりません。そうしなければ、組織犯罪グループは状況に合わせて密航の方法や経路を変えて、活動を継続するでしょう。実際、国境管理を強化するだけでは、非正規入国を助ける密航業務への需要の増加につながる可能性があります。

移住者の密航は、国境と地域を越えて発生する犯罪です。国々が協力して対応しない限り、密航ビジネスは低迷することなく続くでしょう。この犯罪に効果的に取り組むためには、移住者の出身国、通過国、到達国の間で、警察と司法の協力と、密航組織の収益をターゲットにする金融捜査、腐敗や不正行為に対する厳しい姿勢をとることが必要です。

2014年に渡航件数比で死者の多かった4カ所

移住者の密航は、開発をどのように妨げていますか

移住は、本来であれば、開発にポジティブな影響を与えます。しかし、利益を求める犯罪者グループによって移住が不法に組織される場合、国際組織犯罪や当局の腐敗を助長することになり、その悪影響がポジティブな効果を上回る可能性があります。

出身国内でも、移住者と家族は、利益を追求するばかりで約束したサービスを提供するかどうかもわからない密航業者によって、さらに困窮に陥ることがよくあります。家族や地域社会全体が共同出資して、重要な働き手の移住を手助けすることもあります。移住者は借金に束縛されたり、人身取引の被害者になることもあります。密航業者と共謀して移住者を虐待し、解放のための身代金を要求する犯罪者が家族から資金を巻き上げる場合もあります。目的地に到着しても、密航された移住者が家族に送金できない場合も少なくありません。

国連は、移住者の密航とどのように闘っていますか

移住者の密航との闘いにおいて、国連の主な目標は、国連国際組織犯罪条約(UNCTOC)の不法移民および人の密航に関する議定書への世界的な順守を促し、移住者と難民の権利を確実に守りながら、加盟国が議定書を効果的に実施できるよう支援することです。

UNODCの移住者の密航阻止に関するグローバル・プログラムは、犯罪の防止と訴追、犯罪の被害者となった人々の権利の保護を目的として、加盟国とその刑事司法制度を支援するために策定されました。グローバル・プログラムは、移住者の権利を守りながら、移住者の密航という犯罪に対する国による刑事司法の対応を強化し、出身国、通過国、目的国の間で警察と司法の協力を促進することを目的としています。

UNODCは、法制度の整備、捜査官と裁判官のトレーニング、さらに、移住者の密航への刑事司法の対応を評価するための基準設定ツールも開発しています。UNODCの取り組みは、非正規の移住の問題、特に移住者の密航に関する問題に対応する国連のパートナー機関やその他の国際組織、地域組織の包括的な活動を補完します。例えば、移住問題に関する国際機関の代表レベルの協議体であるグローバル移住問題グループ(Global Migration Group)は、2015年をもって終了するミレニアム開発目標(MDGs)の後に続くグローバルな持続可能な開発目標を含め、国連の今後の開発計画において、移住問題が適切に考慮されるように努めています。

知っていますか

  • 国際移住機関(IOM)の推定によれば、2014年の最初の9カ月間で、海外への密航中に少なくとも4,077人の移住者が死亡しています。これは、2013年の1年間に記録された死亡者数を70パーセント上回っています。行方不明者もあり、死亡の報告と確認が困難であることから、実際の死亡者数は把握されていません。
  • 2014年の移住者の死亡の75パーセントは、地中海沿岸で発生しており、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の推定によると、同年の年初から、少なくとも207,000人が地中海を横断しています。
  • IOMによると、2000年以降、40,000人を超える非正規移住者が密航の過程で死亡しています。
  • 密航中の死亡の大多数は海で発生していますが、砂漠を越えて、移動中に立ち往生し、密航業者による悪意ある虐待、強奪などを受けて死亡するケースも発生しています。

行方不明の移住者に関するプロジェクト 世界の国境での移住者の死者数、2014年1月〜9月

移住者の密航と闘うために何ができますか

密航される人々は、生命と安全にはほとんど注意を払うことなく金儲けだけを考える犯罪者の手中にあることを理解することが重要です。移住者、難民、亡命希望者を含め、密航される人々は自分の意思で密航業者とかかわりを持ちますが、虐待や搾取を受けやすい立場にあります。

密航業者の手中にある人はいずれも人権を守られるべきであり、差別や暴力を受けることなく扱われるべきです。多数の民間組織が、避難所、食料、法的支援・社会的支援を提供することで、世界中の移住者や難民を助けています。苦境にあって支援を必要としていると思われる人々についてこれらの組織に通報したり、移住者や難民に組織の詳細を伝えることもできます。このような被害に対して正義を求める権利を有する人々がいるかもしれません。また、迫害や戦争から逃れて亡命を求める権利を有する難民がいるかもしれません。UNODC、UNHCR、IOMなど、この分野で活動している国連諸機関の業務について詳細を知ることで、この犯罪に対する意識の向上を助けることができます。