本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

国連事務総長の年次報告書:ミレニアム宣言の実施
~貧困対策目標に進展も危機残る~

プレスリリース 04/083-J 2004年09月14日

世界の多くの地域で、開発途上国は2000年の「国連ミレニアム宣言」で設定された目標の達成に向け、極度の貧困を減らし、初等教育を広げ、疾病と飢餓を緩和している - 2004 年9月7日に発表されたコフィー・アナン国連事務総長の年次進捗状況報告は、このように結論しています。

東アジア、南アジア、東南アジアでは1990年以来、極度の貧困状態(1日1ドル以下)で暮らす人々の数が2億人以上も減りました。報告書はまた、北アフリカ諸国でも、2015年までに極度の貧困を半減できる見通しが立ち始めていると述べています。ラテンアメリカ・カリブ地域やアジアのほとんどの国々、北アフリカ、独立国家共同体(旧ソ連共和国)では、小学校就学率が90%を超え、2015年までに皆就学を実現するという目標達成に迫っています。飢餓は1990年以降、世界の全地域で減少していますが、2015年までに半減させるという目標を必ずしも実現できるペースでは進んでいないのが現状です。最新の統計によれば、改善された水源へのアクセスには幅広い改善が見られます。

「ミレニアム宣言をたたき台とする8つのミレニアム開発目標は4年という短い間に、グローバルな開発協力の様相を一変させた」と報告書は指摘します。「一連の明確かつ測定可能な期限付き目標について幅広いグローバルな合意ができ上がったことで、過去に例を見ない協調的な対策が実現した」

国連はそれでも、内陸国や後発開発途上国、サハラ以南アフリカ諸国などの最貧国では進展がなかなか見られないことに注意を促しています。大きな前進が見られないことが多いばかりか、状況が悪化していることさえあるのです。世界の多くの地域で、乳幼児死亡率の改善が見られず、妊産婦死亡率も高止まりしているほか、改善された衛生設備へのアクセス拡大も遅々として進んでいません。

●開発計画の焼き直し
ミレニアム開発目標では、貧困と飢餓、初等教育、男女平等、乳幼児死亡率、母子保健、疾病、環境、開発のためのグローバル・パートナーシップという8つの領域について、達成すべき目標値を定めています。ほとんどの目標値は1990年との比較で、2015年を期限として定められています。

開発途上国の中には、ミレニアム開発目標(MDGs)に添うよう、開発計画の見直しを行っている国も多くあります。国連の報告書によれば、少なくとも65カ国および5つの地域と小地域が、MDGs達成に向けた進捗状況報告書を出しています。

国連によれば、こうしたMDGs報告書では、少人数で作成するという従来のやり方から、政府が国内の議論に積極的に関わり、国家の優先課題と国情に応じてMDGs達成のための目標値を独自に作り上げる方式への移行が見られています。このことによって、国民全体が当事者としての自覚を持つようになり、国家の政策決定と計画策定への取り組みが、望まれる開発のあり方によって徐々に方向づけられるようになってきました。

国連の各国レベルでの活動についても、開発途上国政府や市民社会とのパートナーシップにより、国連開発グループがその焼き直しを行っているところです。

●国際的なパートナーシップ
貿易、援助、債務などの問題に関わる目標8の達成責任は、主として先進国にあります。国連の報告書によれば、その他の7つの目標の場合と同様、目標8に関する進捗状況も一様ではありません。

世界貿易機関(WTO)内部の交渉では、先進国が特に農業と繊維業に関し、開発途上国が比較優位を活かすための平等な競争条件の整備に二の足を踏んでいるとの批判を受けています。後発開発途上国からの輸入は「武器以外すべて」関税非課税にするという欧州連合(EU)の決定と、米国の「アフリカ成長機会法」はプラスの動きとされているものの、いまのところ大きな成果はあがっていません。

ミレニアム・サミット以来、政府開発援助(ODA)額は大幅な増大を遂げました。2000年のODA総額は実質ベースで524億ドルにまで落ち込んでいました。しかし、それからわずか2年後の2003年末までに、その額は名目ベースでも実質ベースでも685億ドルと(米ドルの下落による若干の膨らみと、アフガニスタンやイラクへの特別援助によるところもあるとはいえ)、過去最高の水準に達しています。ベルギー、フランス、アイルランド、スペイン、英国の5カ国は新たに、それぞれのODAを国連目標である国民総所得(GNI)の0.7%まで引き上げることを確約しました。これが実現すれば、これらの国々はデンマーク、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェーおよびスウェーデンと肩を並べることになります。対GNI比でははるかに低いものの、米国は引き続き世界最大の援助国となっており、新設の「ミレニアム挑戦会計」(Millennium Challenge Account)によるものを含め、援助額を大幅に増大させています。

しかし、報告書も指摘しているとおり、メキシコのエルネスト・セディージョ元大統領が座長を務める「開発金融に関するハイレベル・パネル」による推計などでは、開発途上国によるMDGs達成を援助するには、年間約1,000億ドルのODAが必要と見られています。

「重債務貧困国(HIPC)」イニシアチブの救済対象となる37カ国の対GNI債務比率は、1997年の109%から2002年には86%へと低下しました。報告書はしかし、「債務救済で浮いた資金を保健や教育など、MDGsの重点分野に投資している国々が多いことを考えれば、救済をさらに加速すべきだ」と指摘。深刻な危機に陥っている一部のより大きな国々や中所得国もHIPCの対象に含めるべきだとしています。

今年のMDGs進捗状況報告書に引き続き、2005年初めには、より包括的な事務総長報告書が発表されるほか、2005年9月には、ミレニアム宣言とミレニアム開発目標に関する国連総会ハイレベル協議も予定されています。

 

ミレニアム開発目標:2004年現在の状況

 

詳しくは下記にお問い合わせください。

Tim Wall
Development Section, UN Department of Public Information
電話:(1-212) 963-5851
Eメール:wallt@un.org

作成:国連広報局(DPI) DPI/2363-C