本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

日本語訳(非公式)ができましたのでお知らせします
ファクトシート

国連とダルフール

プレスリリース 07/053-J 2007年07月24日

背景 
2003年にジャンジャウィード民兵組織と同盟関係にあるスーダン政府軍とその他反政府武装集団との間で戦闘が発生して以来、ダルフールでは20万人以上が死亡し、少なくとも200万人が避難を余儀なくされたと見られます。民間人の殺害や女性、女児のレイプをはじめとする残虐行為が拡大、継続していることで、緊急な対応の必要性はさらに高まっています。

国連が2003年にダルフール危機について警鐘を鳴らして以来、恒久的な解決策の模索は安全保障理事会と二代にわたる事務総長にとっての優先課題となってきました。政治決着の模索に加え、国連とそのパートナーは現在、ダルフールはもとより、チャドや中央アフリカ共和国(CAR)の難民キャンプでも、世界最大規模の援助活動を展開中です。これと並行して、国連の人権専門家は人権侵害について報告し、実行犯の処罰に向けた国内裁判所の取り組みを監視しています。

2006年5月5日には、国連やその他パートナーの支援を受け、アフリカ連合(AU)の傘下でダルフール和平合意(DPA)が署名されました。合意に署名しなかった勢力を和平プロセスに参加させる懸命な外交的、政治的取り組みは今も続いています。国連はまた、2004年からダルフールに派遣されているAU監視員に後方支援と技術的援助を提供しているほか、多面的平和維持活動に向けた計画を策定、採択し、現在はその実施を進めています。

2006年11月16日にアディスアベバで行われたハイレベル協議には、前事務総長、安全保障理事会の常任理事国5カ国のほか、スーダン政府、AU、ダルフール地域に政治的影響力を及ぼしているその他の国家や組織、さらにはアフリカ連合スーダン・ミッション(AMIS)への兵力提供国からも代表が参加しました。このハイレベル協議での決定に基づき、国連平和維持活動局(DPKO)はAMISの増強と、過去に例を見ない国連AU混合部隊の創設に向け、3段階からなるアプローチを策定しました。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長と国際社会のいくつかのアクターが公私ともに集中的な外交努力を重ねた結果、スーダンは2007年6月、混合部隊の展開をようやく受け入れました。

政治的、外交的取り組み 
事務総長はダルフール危機の政治決着を最優先事項に掲げ、地域のあらゆるステークホルダーはもとより、より幅広い国際社会にも熱心な働きかけを行っています。また、スーダンのオマル・アル・バシル大統領とも定期的にこの問題について話し合っており、2007年1月29日にはアディスアベバで、2007年3月28日にはサウジアラビアのリヤドで、それぞれ直接会談も行っています。

2006年12月に事務総長のダルフール特使に任命されたヤン・エリアソン氏は、AU特使のサリム・アハメド・サリム氏とともに精力的なシャトル外交を展開し、政治的な状況打開に努めています。両特使の取り組みは、幅広い関係者が参加し、権力と富の共有を規定する和平合意を通じ、暴力を終わらせ、平和維持部隊による停戦の強化を確保し、ダルフールの孤立に終止符を打つことを基本としています。

2007年6月9日、両特使は国連安全保障理事会に対し、ダルフール和平に向けたロードマップを提示しました。ロードマップは3段階からなり、第1段階は継続中の和平イニシアチブの一本化、第2段階はスーダン政府と2006年DPAに署名していない勢力に対するシャトル外交、そして第3段階は和平交渉とされていますが、エリアソン氏は今夏にも交渉を開始すべきだと述べています。同氏はまた、事務総長の意向として、交渉に向けた雰囲気を作り上げるため、戦闘と爆撃を停止するよう全当事者に訴えかけています。

国連安全保障理事会の各国代表は2007年6月17日、ハルツームを訪れてアル・バシル大統領と会談し、混合部隊活動の全要素をはっきりと受け入れるよう求めました。安保理代表はハルツームで、国連が指揮統制系統を掌握するという確認が得られたとして、混合部隊への資金提供を勧告することを表明しました。

安全保障理事会による制裁 
安全保障理事会は2004年7月30日、決議1556を採択し、ジャンジャウィードをはじめ、ダルフールで戦闘を繰り広げているあらゆる非政府主体と個人に対する武器禁輸措置を決定しました。決議1591(2005)は武器禁輸の対象範囲を拡大するとともに、反政府指導者2人、旧スーダン空軍司令官1人、親政府民兵組織指導者1人の計4人に対する渡航禁止と資産凍結を含む追加措置を導入し、制裁をさらに強化しました。

平和維持 
国連は3段階型のアプローチにより、AMISの補強、そして最終的にはダルフールでの本格的な平和維持部隊の展開を図っています。このコンセプトは2006年11月16日、アディスアベバで開かれたハイレベル協議で出来上がりました。また、2006年11月30日にナイジェリアのアブジャで開かれたAU平和・安全保障理事会会合と、12月19日の安全保障理事会議長声明では、これに対する支持が表明されています。スーダン政府も今では、3段階の計画全体を受け入れるとしています。

このアプローチにより、AMISは「軽量支援パッケージ(LSP)」、「重量支援パッケージ(HSP)」、AU国連混合部隊という3段階を通じて増強されることになっていますが、それぞれの段階について、国連、AU、スーダン政府間の合意と了解が個別に必要となります。国連はこれらを取り付けるために、支援のレベルと種類、指揮統制の諸問題、平和維持活動を律する法的枠組みなどに関し、複雑な交渉を数次にわたって展開してきました。このAU国連混合部隊による活動は、国連平和維持にとってまったく新しいパートナーシップのひな形となるものです。

軽量支援パッケージ(LSPは、AMISの管理能力を支援するもので、軍参謀将校105人、警察顧問34人、民間人48人に加え、関連の物資と装備から構成されます。2007年6月末現在、LSPの大半が展開を終えていますが、装甲兵員輸送車の配置が遅れています。

重量支援パッケージ(HSPは、混合部隊展開までAMISを支援するもので、2007年後半に展開が予定されています。その構成は兵員2,250人、警察官721人、民間人1,136人で、その費用2億8,790万ドルは国連が負担します。アフリカ人の要員展開が優先されますが、アフリカに適切な人材が見つからない場合、国連は全当事者にとって受け入れ可能な諸国から、有能な要員を募るよう努めることになります。

AU国連混合部隊については、事務総長による懸命な外交努力と、国連、AU、スーダン政府間の長く複雑な技術的協議の末、スーダン政府が2007年6月12日、ようやく受け入れを表明しました。民間人の保護に加え、人道援助要員の安全確保への貢献、合意履行の監視と検証、幅広い当事者が参加する政治プロセスの支援、人権と法の支配の推進に対する貢献、チャドや中央アフリカ共和国(CAR)との国境地帯の情勢報告も、混合部隊の中心的マンデートとなる予定です。

混合部隊が全面展開されれば、兵員2万人、警察官6,147人、民間人4,860人からなる国連史上最大級の活動となり、現時点でコンゴ民主共和国に展開されている国連平和活動も上回る規模となります。DPKOは安全保障理事会からの承認を受け次第、アフリカ諸国主体の兵員と警察官を確保すべく、あらゆる必要な努力に取りかかる予定です。事務総長も明言しているとおり、展開のペースは、この3段階型アプローチを無条件で支持するという約束をスーダン政府が守るかどうか、加盟国が要員と装備を速やかに提供するかどうか、そして、平和維持要員の展開を支えるのに必要なインフラや、水などの資源が確保できるかどうかにかかっています。事務総長は国際社会に対し、ダルフールへの混合部隊展開に必要な資金と資源を提供するよう求めました。また、加盟国が国連の分担金予算を通じ、混合部隊に資金を拠出することも勧告しています。

混合部隊の指導部 
混合部隊は、ダルフール担当AU国連合同特別代表(JSR)に任命されたコンゴのルドルフ・アダダ氏が指揮します。アダダ氏は国連事務総長とAU委員長双方の直属となります。JSRの補佐役として、特別副代表も共同で任命される予定です。JSRに対する指示は、AU平和・安全保障委員と国連平和維持担当事務次長を通じて出されます。部隊の日常的活動は、国連とAUが共同で合意した活動理念に沿って行われます。具体的には、2006年のアディスアベバとアブジャでの合意や、2007年6月の混合部隊に関する共同報告書の規定を踏襲することになります。ミッションの指揮統制系統は国連が掌握します。

国連との協議により、AUが部隊司令官に任命したナイジェリアのマーティン・ルーサー・アッワル大将は、JSRに直属します。警察本部長が任命された場合も、同じ立場となります。

人道援助への取り組み 
国連の人道援助機関は、現時点で世界最大規模の活動をダルフールで展開し、危機による被災者約420万人に援助を提供しています。うち210万人はスーダンの国内避難民ですが、東チャドにいる難民は約23万6千人います。2007年には6億5,000万ドルを超える対ダルフール援助が予定されています。また、地域には1万2,000人以上の人道援助要員が展開し、ダルフール危機の被災者に支援を提供しています。その中には13の国連機関、赤十字・赤新月社のほか、80団体を超える非政府組織(NGO)のスタッフも含まれています。

この大がかりな人道援助への取り組みにより、過去4年間で数十万人の命が救われました。死亡率は緊急事態の水準を下回っています。全般的な栄養不足も2004年半ばをピークに半減しています。また、ダルフール住民のほぼ4分の3が安全な飲み水を利用できるようになりました。とはいえ、あらゆる方面からの攻撃により、ダルフールでは避難を余儀なくされる民間人が依然として続出しており、2007年初めの5カ月間だけでも、国内避難民(IDP)の数は14万人を超えています。IDPが増大する中で、新たな避難民を抱えきれないキャンプも多くあり、緊張が高まっています。

人道援助活動とその要員は、ますます暴力の標的にされやすくなっています。2007年6月時点で、一時的な拉致に遭った援助要員は69人、援助物資輸送車両に対する攻撃や略奪は37件、乗っ取りに遭った人道援助車両は61台に上ります。主要なNGOの中には、援助要員に対する暴力を理由に撤退するものも出てきました。

国連の推計によれば、人道援助を受けられない人々はダルフール全体で50万人を超えています。2007年2月の90万人という数字と比べれば、改善は見られるものの、これは治安の改善によるものではなく、人道援助要員が工夫を凝らし、しばしば高価な手段を用いて被災者への支援努力を強化しているからに他なりません。国連はスーダン政府に対し、人道援助のアクセスと援助要員の安全を改善するよう圧力をかけてきました。その結果、2007年4月には、スーダン政府と国連の共同コミュニケにより事実上、ダルフールでの人道援助活動が確保、促進されることになりました。

ドナーはダルフールでの援助活動資金のうち62%を拠出(2007年6月15日現在、所要額6億5,200万ドルのうち3億9,600万ドルの拠出を誓約または確定済み)していますが、そのほとんどは食糧援助にあてられています。他の分野は深刻な資金不足に陥っているため、さらに拠出が必要です。情勢不安が続く中で、国連とその人道援助パートナーは事実上、数百万人の生存と保護を辛うじて維持しています。

人権 
スーダン政府は2004年7月、北部・南部間の和平合意を監視する国連スーダン・ミッション(UNMIS)の一環として、国連人権監視員のダルフールへの展開を許可することに同意しました。これら人権監視員は定期的に人権侵害を報告し、スーダン政府に対して是正措置を勧告しています。

事務総長は2004年8月、人権高等弁務官のルイーズ・アルブール氏とジェノサイド防止事務総長特別顧問のフアン・メンデス氏をダルフールに派遣し、現地の情勢を評価させるとともに、すべての当事者に対し、深刻な人権侵害と国際人道法違反に終止符を打つよう求めました。特別顧問は2005年9月、再びダルフールを訪れ、それまでの勧告の実施状況を審査しました。

事務総長は2004年10月7日、ダルフールでジェノサイドが起きたかどうかを判定するため、調査委員会を設置すると発表しました。調査委員会は最終報告書で、スーダン政府がジェノサイドを政策として採用していたとはいえないとしながらも、政府軍と同盟民兵組織は「民間人の殺害、拷問、強制失踪、村落の破壊、レイプその他の性暴力、略奪、強制避難などの無差別攻撃を働いた」との結論に達しました。委員会は「ダルフールで起きた人道に対する罪や戦争犯罪は、ジェノサイドに匹敵するほど深刻かつ凶悪だ」と結論づけ、安全保障理事会に対し「実行犯に対する制裁だけでなく、被害者に対する救済」も行うよう求めました。

国連人権委員会(現在の人権理事会)は2005年4月21日、スーダンの人権状況に関する特別報告者を任命しました。特別報告者に任命されたシマ・サマル氏は定期的にスーダンを訪れ、人権委員会(後に人権理事会)と総会の第3委員会に対して、口頭や書面で声明を出しています。

人権理事会は2007年2月から3月にかけ、特別ミッションを派遣し、ダルフールでの人道状況に関する報告を行わせました。理事会はその後、スーダン政府やAUとの協力により、ダルフールの人権に関するすべての決議と勧告の履行を確保するため、人権専門家グループも設置しました。6月20日には、専門家グループのマンデートが6カ月延長されています。人権高等弁務官事務所(OHCHR)はスーダンの人権状況に関する第7回報告(5月18日)で、2007年1月から3月にかけ、ダルフールの民間人に対する空爆が行われたことを明らかにしました。事務総長は繰り返し、ダルフールで続く暴力に対する安全保障理事会の注意を喚起するとともに、村落に対する空爆をはじめ、民間人を標的とする攻撃を非難しています。

国際刑事裁判所 
安全保障理事会は2005年3月、調査委員会(上記参照)の勧告を受けて決議1593を採択し、ダルフール情勢を国際刑事裁判所(ICC)に付託するとともに、スーダンに対し、ICCの調査に協力するよう命じました。ICCは2007年5月2日、人道に対する罪と戦争犯罪を理由として、スーダン政府の元内務大臣で現職の人道問題大臣であるアハマド・ハルン氏 と、ジャンジャウィードの司令官アリ・ムハンマド・アリ・アブダルラハマン氏の2人に対し、逮捕令状を発出しました。

環境 
国連環境計画(UNEP)は2007年6月21日、コルドファン、ダルフールの各州をはじめとするスーダン国内の数カ所で、降水量の減少など、長期にわたる地域的な気候変動の証拠が見られると報告しました。UNEPによると、ダルフール北部で記録された気候変動の規模は過去に例を見ないものであり、その影響は同地域の紛争と密接に結びついていると見られます。

また、数十年間にわたる社会的反目と紛争は、国内でも重要な地域数カ所で環境サービスを急激に悪化させています。UNEPは、スーダンでどのような平和構築努力を行うにせよ、国際社会の資金援助により、また、スーダンの石油、ガスの輸出収入から、環境管理への投資を行うことがきわめて重要だとしています。

北部・南部間の平和維持 
UNMISの創設は2005年春、北部のスーダン政府/国民会議党と南部のスーダン人民解放運動(SPLM)との間で結ばれた包括的和平合意(CPA)の履行支援を目的に承認されました。スーダンを本拠に活動するUNMISは現在、約1万人の兵員と600人の警察官から構成されています。ミッションのマンデートは現在のところ、2007年10月までとなっていますが、少なくともCPAの履行期間が終了する2011年まで延長されるものと見られます。

安全保障理事会決議
関連の安全保障理事会決議としては、UNMISを設立した決議1590(2005)、ダルフールに関する制裁を規定した決議1556(2004)と1591(2005)、UNMISにダルフールでのマンデートを与え、そのための兵力を承認した決議1706(2006)、UNMISのマンデートを2007年10月まで延長した決議1755(2007)などがあげられます。

Published by the Peace and Security Section of the United Nations Department of Public Information ― July 2007