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生物多様性損失による収益リスク 金融機関による生物多様性リスクの認識と取り組み

プレスリリース 10-085-J 2010年10月27日

2010年10月27日 名古屋
生物多様性損失と生態系衰退によるリスクを金融機関が認識し始めています。国連環境計画 金融イニシアティブ (UNEP FI) が生物多様性会議で発表する新しい報告書ではこのような結果が報告されています。また何10億ドル規模の経済的な損失を及ぼす可能性のある事柄として、ここ12カ月の間で、生物多様性は国際テロを抜き急上昇してるとも伝えています。

生物の多様性と生態系衰退の打撃を最も受ける業界は、漁業・林業など自然資源に依存するセクターだけでなく、生態的に豊かでデリケートな領域で活動する鉱業や金属、石油・ガス、電力(水力・火力だけでなく、冷却に水をふんだんに使用する原子力まで)も含んでいます。

評判リスクが最も関心を集めているものの、他リスクも認識し始めている

生物多様性・生態系サービス衰退に関して、プロジェクト・ファイナンスやコーポレート・ファイナンス業務を行う銀行、年金基金、プライベート・エクイティ投資家、保険・再保険会社は評判リスクへのエクスポージャーを重要な領域として挙げています。例えば、融投資先の企業が重要な生息地で伐採や 種の衰退を加速するような活動、また流域汚染などをしていると判明した場合、消費者によるその製品の不買運動も起きかねません。

更に、国連環境計画 金融イニシアティブ (UNEP FI) の新しい報告書「CEO ブリーフィング – マティリアリティ(重要性)の解明- 生物多様性と生態系サービスをファイナンスに組み入れるために」では、自然資本の損失が企業の信用リスクや格付けにマイナス影響を与えかねないと考える銀行が出て来ていることを分析しています。

同時に、止まらぬ生物多様性・生態系サービスの損失は、種と生息地を保護するために既に多くの規制導入の引き金ともなっており、それが法人リスクの増加に繫がると予想する金融機関もあります。実際、政府による生態系に重要なエリアへの進入の禁止・制限は企業のバランスシートや損益計算表に打撃を与えるかもしれません。

アヒム・シュタイナー国連事務次官兼国連環境計画事務局長 「関心の高まりとリスクとしての認知の上昇は、天然資源に依存する会社と並んで、金融機関が徐々に、生物多様性と生態系の経済的重要性を認識し、組み込み始めるという根本的な著しい変化に起因します。」

リチャード・バレットEarth Capital Partnersパートナー兼国連環境計画 金融イニシアティブ共同議長「世界の金融セクターが危機から立ち直り、ポスト金融危機時代へと移行する中、あるひとつの考えがこれまで以上 に明確な形を取って現われてきています。それは、システミックリスクをもっと全体論的に理解する必要がある、ということです。本報告書では、経済活動と金融資本を支える重要な自然資本に焦点を当てています。金融業界は、融投資の管理においてこの考えを経営に反映する必要があり、本報告書は、これがなぜそうであるかを示しています。」

バーバラ J. クラムジエック(Calvert Group Ltd.社長・CEO兼国連環境計画 金融イニシアティブ共同議長「金融のプロフェッショナルは、世界の生物多様性資源を守ることの重要性に気づき始めています。持続可能な責任投資運用を専門とする会社として、カルバート社は、その議決権代理行使ガイドラインに生物多様性に関する文言を盛り込んでいます。他の運用会社にも、事業運営と意思決定において同様の具体的措置を取るよう勧めます。」

同報告書は生物多様性と生態系サービスをファイナンスに組み入れるための方法をいくつか示唆しています。
·「責任投資原則」のような原則をもって自然資本をファイナンスに組み込む
·格付け機関が各国ベースで生物多様性と生態系サービスリスクを評価する評価基準を確立する
·金融機関は、Natural Value Initiative, Forest Footprint Disclosure Project, GRIなど既存のイニシアティブとパートナーを組み、社内の能力を高め、リスクのバランス感覚を養う。

記者へのメモ
国連環境計画 金融イニシアティブ(UNEP Finance Initiative: UNEP FI)
国連環境計画 金融イニシアティブ(UNEP FI)は、国連環境計画と金融セクターとのグローバル・パートナーシップです。同イニシアティブは、UNEP FIステートメントに署名した約200の金融機関や関連機関と協働しています。UNEP FIの目的は、金融機関のさまざまな業務において、環境および持続可能性(サステナビリティ)に配慮した最も望ましい事業のあり方を追求し、これを普及、促進することです。

日本語版/英語版の報告書「CEO ブリーフィング – マティリアリティ(重要性)の解明- 生物多様性と生態系サービスをファイナンスに組み入れるために」は共に http://www.unepfi.org よりダウンロードできます。

詳しい情報に関しては、以下に連絡してください。
国連環境計画スポークスマン兼メディア・ヘッド Nick Nuttall (ニック・ナトール)、電話+81 (0)80 3660 1001(10月30日まで)、メール: nick.nuttall@unep.org
国連環境計画 金融イニシアティブ、生物多様性プログラム・オフィサー、イヴォ・モルダー(Ivo Mulder)メール: ivo.mulder@unep.org