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特集:“日本版シンドラー”のストーリーに学ぶ、現代の排外主義対策の教訓

2017年01月31日

リトアニア、カウナスの日本領事館前で、ビザの申請に並ぶユダヤ人Photo: NPO Chiune Sugihara Visas For Life

リトアニア、カウナスの日本領事館前で、ビザの申請に並ぶユダヤ人Photo: NPO Chiune Sugihara Visas For Life

2017126第2次世界大戦のさなか、リトアニアで領事代理を務めていた日本の外交官、杉原千畝(すぎはら・ちうね)は、本国政府からの訓令に背き、ナチスの迫害を逃れてきたユダヤ人にビザを発給しました。

1940年、杉原は日本領事館が閉鎖された後も、自分の乗った列車が駅を出発する間際まで旅券への署名を続け、ユダヤ人難民に2,000件を超える通過ビザを発給しました。家族全員を対象に発給されビザも多くありました。杉原はその結果、6,000人のユダヤ人を救ったと見られています。

ホロコーストが続く間、自分の工場で約1,200人のユダヤ人を雇い、その命を救ったドイツの実業家オスカー・シンドラーにちなみ、杉原は日本のシンドラーとして知られるようになりました。

ドイツ東プロイセンの日本領事館に赴任中の杉原とその家族 Photo: NPO Chiune Sugihara Visas For Life

ドイツ東プロイセンの日本領事館に赴任中の杉原とその家族 Photo: NPO Chiune Sugihara Visas For Life

毎年1月27日の「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」に先立ち、ニューヨークの国連本部では今週、ホロコーストを想起するためのイベントが数多く開催されていますが、その一環として、数十人のいわゆる“Sugihara survivors”(「杉原」生存者)の子孫たちは25日、彼の人道的行為を描写した映画の特別上映会に出席しました。

「父の名前はリストの299番、叔父の名前は27番に載っています」リチャード・A・サロモンさんは UN News にこう語り、杉原の思いやりと正義感がなければ「2人ともナチスの手によって殺されてしまった」はずだと強調しました。

ユダヤ難民たちはこの査証によって、日本経由で中国の上海に到着し、その後インドを経て最終的に米国へとたどり着いたのです。

サロモンさんは「杉原は私の家族だけでなく、多くの人々に命という究極の贈物をくれました。私たちはこれを記憶にとどめておくことが必要です」と語り、米国内で杉原にまつわる所蔵品を最も多く展示するホロコースト博物館をイリノイ州に共同で設立したことを明らかにしました。

2005年の総会決議に基づき設立された「ホロコーストと国連アウトリーチ・プログラム」は、2017年のホロコースト想起・教育活動のテーマとして「ホロコーストの想起:より良い未来のための教育」を掲げています。

映画『杉原千畝 スギハラチウネ(原題 Persona Non Grata ペルソナ・ノン・グラータ)』」のチェリン・グラック監督はUN News に次のように語っています。「メッセージの主旨は単純明快です。それは、誰でも世界を変えることができるということ、たった一人の行動が大きな変革をもたらすということです」

グラック監督は、杉原の行為が6,000人以上の命を救ったことを指摘しつつ、「それから75年以上を経た現在、救われた人々の数は6,000人をはるかに超えている」と述べました。これらの6,000人のユダヤ人の末裔は、4万人から10万人に上ると見られているからです。「一人の行動がどれだけ大きな違いをもたらすか、おわかりになるでしょう」

グラック監督は「歴史は繰り返します。だからこそ私たちは、自分たちの過去から学ぶ姿勢を持つべきです。しかし私たちには、学んだことを忘れてしまう癖があります」と警鐘を鳴らすとともに、世界がまったく同じとは言えないまでも、難民や排斥された集団に対する差別という形で、再び似たような問題に直面する中、自分の映画が「共時性という意味で、現代にも通じている」と指摘しました。さらにグラック監督は「歴史が繰り返すことを許すことはできません」と強調しています。

映像:UN News のインタビューに答えるチェリン・グラック監督。数千人のユダヤ人の命を救った日本の外交官・杉原千畝を描いた映画は、過去の過ちを繰り返してはならないことを私たちに教えてくれると語った。

ユダヤ難民にビザを発給したことにより、自国の政府にとって「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」となった杉原でしたが、政府は後に、彼の英雄的行為を認めています。

上映会に先立ち、クリスティーナ・ガラッチ国連広報担当事務次長は観客に対し、「映画はホロコーストの個人的なストーリーを語ることで、私たちに過激主義の危険性と、同じ仲間である人間に対するその影響を思い起こさせてくれます」と述べました。

リチャード・A・サロモン氏は彼が2歳の時に亡くなった父について語り、最近見たドキュメンタリー映画で彼の父と叔父が写っている写真を発見しました。

ヤフダ・ゲルブフィッシュ氏は、杉原氏から彼の家族に発給されたビザの原本を見せてくれました。

スージー・ガルコビッツ氏は、ひとりの男性による行動が何十万もの命を救ったことに思いを馳せます。

ギャリー・ガルブフィッシュ氏は、彼の父が杉原氏からビザをもらわなければ、自分は存在していないだろうと語りました。

国連広報局は、ジェノサイドや人道に対する罪の発生が許される時、私たち全員に降りかかる脅威に対する認識を促し、世界の関心を高めるために、特別イベントや試写会、著名な学識者による論文、情報資料、非政府組織とのパートナーシップなどの取り組みを含め、数多くの活動に取り組んでいます。

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原文(English)はこちらをご覧ください。