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国際高齢者年は「祝賀の年」

1999年02月11日

コフィー・アナン事務総長メッセージ

 以下は、コフィーアナン事務総長が2月11日、ニューヨークの「国際高齢者年」記念ビデオ会議に寄せたメッセージの非公式訳である。

 

 ここニューヨークにお集まりになった方々、そして、ビデオ会議により参加いただいている全世界の方々すべてに対して、歓迎の言葉を述べさせていただきます。政府、非政府組織を問わず、私達すべてが、あらゆる社会における高齢者と連帯し、一堂に会しているのです。

 ここには高齢者の方々も多くいらっしゃるかと思います。私もその一人であることは、皆さんもお気づきになると思います。それでも私達は、この新しい通信技術を身につけることにより、いくつかの大陸を越え、こうして手を結ぶことができるのです。これこそが、「国際高齢者年」の力強い象徴と言えましょう。

 今年はまさに祝賀の年です。私達は、本日の行事を実現させたようなパートナーシップを歓迎します。それはすなわち、高齢化に関するNGO委員会と、国連人口基金(UNFPA)、国連開発計画(UNDP)、経済社会問題局、広報局(DPI)などの国連機関とのパートナーシップです。私達は高齢化それ自体を祝っているのです。過去50年間で平均寿命は20年も延びました。高齢化というと一般的に、世も末だという暗いイメージが付きまといがちですが、これは間違いなく良い知らせです。そして、私達は老いも若きも、国連の目標である「すべての世代のための社会」を目指すという、多様なあり方を祝うのです。

 しかし、この人口学的革命に取り組む私達の努力にとって、今年はほんの出発点にすぎません。事実、私達は3つの明確な、しかし相互に関連する社会革命の真っ只中にいます。私達をますます密接に結びつけているグローバライゼーションは、経済だけでなく、価値体系にも影響を与えています。技術の進歩は、生活のペースを速め、私達が意志疎通し、自らの生活を組み立てる道具自体を変えています。こうした背景の中、人口学的革命は個人に対しても、家族に対しても、コミュニティーに対しても、そして国家に対しても、同様に幅広い影響を与えています。

 この「国際高齢者年」は、認識を高め、連帯を形成し、資源と政治的意志の両方を動員するという点で、多くのことを達成できますが、その一方で、私達は長期的な計画策定の必要性も認識しなければなりません。私達の道のりは長いのです。私達が前進していく中で、特記すべき課題が3つあります。

 その第1が、女性高齢者の置かれた状況です。ごく少数の国々を除き、高齢者の過半数を占めるのは女性です。女性は男性に比べて、高齢になるとともに貧困の度合いを増し、差別に直面する可能性が高くなります。さらにAIDSにより両親を失った孫の世話など、ケア提供者としてのその貢献が見落とされがちで、対価を受け取っていたとしても、満足な支払いが行われないことが多くなっています。

 第2にあげられるのは、開発途上国の状況です。高齢化に直面するあらゆる社会は、そのために多大な資源を割き、十分な公衆衛生および社会サービスを確保しなければなりません。高齢者の大半が暮らす開発途上国は、国際的な援助と連帯を必要とし続けるでしょう。

 第3に、いささか逆説的ではありますが、寿命の延びは、幼少時代、青年時代および熟年時代という、人生の前半の段階において、より賢明な投資を要求します。こうした投資は、健康的なライフスタイルと生涯学習など、アクティブな老後を構築するすべての基本的要素に貢献することでしょう。

 先月、ニューヨークのハーレムで、セイディー・デラニーさんという素晴らしい女性が、109歳で亡くなられました。セイディーさんは毎朝起きると「神様、もう一日をありがとうございます」と言っていたそうです。104歳でお亡くなりになった姉のベシーさんは、セイディーさんほど朗らかではなかったようです。「神様、もう1日生きるのですか」というのがベシーさんの口癖でした。

 デラニー姉妹は、シンプルな生活とよい食生活を長寿の秘訣としていました。次なる千年紀を迎えようとする中で、人類の大多数のニーズと希望は単純で率直な言葉で表現できるのです。それは、家族のための食糧、住居、仕事、教育であり、また国民を抑圧せず、その同意をもって統治する国家です。国際高齢者年において、すべての世代、すべての人々のために、こうした夢を生き返らせる約束を新たにしようではありませんか。