総会テーマ別討論
国際連合本部、ニューヨーク
2007年7月31日/8月1日
「地球規模の課題としての気候変動」
本書は、総会の気候変動に関するテーマ別討論において検討すべき下記に示す重要課題の概要を示すものである。
・最新の科学的評価
・対応の2つの構成要素−適応と軽減
・民間部門の役割
・多国間プロセスにおける次のステップ
附属書では、既存のコミットメント、資金構造および国連の指揮下における気候変動への組織的対応の今日までの歩みについて説明する。
概要
- 世界の平均気温は前世紀中に0.74℃上昇した。これは地球の歴史において科学者が認知することができた最大かつ最速の温暖化傾向である。最新の予測では、この傾向は継続しかつ加速するであろうことがわかる。最も確実と考えられる推定値は、21世紀中に地球は3℃暖かくなることを示している。現在では、科学者達はこの変化のほとんどは温室効果ガスを発生する人間の活動によるものであると確信している。その中でもCO2が最も重要であるが、温室効果ガスは地球の大気中に熱を閉じ込めるので、その結果として地球の温度が全体的に上昇する。そうなれば、気候の自然なパターンを崩してしまうことになる。最近の12年間のうちの11年がここ150年間の最も暖かかった12年の中に入っている。温暖化の傾向は、すでにすべての大陸と海洋に影響を及ぼしている。
- 今年発行された最新の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、多くの不確定性を払拭している。気候変動はすでに特定の地域、特に開発途上国、およびほとんどの生態系に深刻な影響を及ぼしている。それはミレニアム開発目標(MDGs)を達成する開発途上国の能力に悪影響を及ぼすであろう。しかし、報告書はこの問題は対処できるものであり、手頃な軽減策が存在することも示している。経済予測では、何もしないためにかかる費用は早期の対策を講じる費用をおそらくは桁違いに上回ることが示されている。気候変動に対処することは、世界および各国の経済的・社会的活動の深刻な崩壊を回避するために、経済的に必要である。
- 現在の課題は、この地球規模の問題に対処するために、より公平でより効果のある地球規模の対応策を策定することである。IPCCが描く最悪のシナリオのいくつかは、直ちに行動を起こせばまだ回避できるものである。それにはすべての国、とりわけ先進工業国や主要新興経済国が、温室効果ガスの排出量を大幅に削減するために力をあわせて努力することが要求される。気候変動はすでに多くの地域で人々にマイナスの影響を及ぼしているので、人々や地域社会が気候変動によってもたらされた現実に適応できるようにする方法を策定することが必要である。開発途上国は影響を最も受けやすく、最も限られた資源しか持たない国々である。この点に対処するには、集団的努力が必要となる。
- 2007年は重要な年であり、国連は気候変動に対処するための地球規模のアプローチを策定するために国々をまとめる努力を行っている。加盟国、国のグループ、市民社会、民間部門によって、多数の取り組みが着手され、コミットメントが開始されている。これらは必須ではあるが、それ自体では十分ではない。国連およびその気候変動枠組条約は、地球規模の解決策が達成できるような制度的枠組みを提供するものである(附属書Aを参照)。
I. 変動する地球の気候:科学的データおよび影響を評価する
IPCCによる最新の評価 ・今世紀に3℃程度の平均気温上昇が見込まれる。 ・最近の100年間で地球は0.74℃暖かくなったが、それはここ50年にわたって最も急速に進んだ。北極地域の気温はこれよりも2倍の速度で上昇している。 ・二酸化炭素の大気中濃度は産業革命以前の値である278 ppmから2005年には379 ppmへと増大した。
- 大気中に自然に発生する温室効果ガスの「毛布」は、地球の気候を調整するという重要な機能を果たしている。250年ほど前の産業革命の始まり以来、温室効果ガスの排出によりこの毛布は未曾有のスピードで厚さを増している。これは大気の構成に少なくとも65万年前以降最も劇的な変化を引き起こした。温室効果ガスの排出を削減するために多大な努力が行われない限り、地球の気候は今後数十年間およびそれ以降にわたり急速に温暖化し続けるであろう。
- IPCCは1988年に世界気象機関(WMO)および国連環境計画(UNEP)によって創設され、気候変動に関する現状の知識について最も権威ある包括的な評価を5年ごとに提供する。その評価は、気候変動に関する国際的な政策決定の基礎ともなるものである。IPCCは新しい研究は行わないが、世界のあらゆる地域の何百人もの専門家の仕事を利用して、気候変動の科学的、技術的および社会経済的側面に関する既存の世界中の文献について政策に関連する評価を行う。
- IPCCの最新の評価は2007年に発表されたものであるが、気候システムの温暖化は歴然としており、かつ加速しつつある。これは世界中の平均大気温度および平均海洋温度の上昇、広範囲に及ぶ雪や氷の融解、そして世界中の平均海面の上昇という証拠に基づくものである。
- 予測では、温暖化の速度がいっそう増すことが示されている。排出が現在のペースで増え続け産業革命以前のレベルの2倍になるのを許せば、今世紀に世界は3℃前後の気温の上昇にみまわれるであろう。そのような取るに足りないと思われる世界の温度変化の大きさを異なる視点から説明すると、現在の世界の平均気温と氷河期の差は5℃である。 p.4
- これらのシナリオには、海面の上昇、生育期の変化および嵐、洪水、干ばつなどの極端な天候事象が頻度や激しさを増していることを含め、深刻な影響が伴っている。気候変動の影響は地域によって異なるであろうが、最も深刻な影響は北極地域、アジアの大規模デルタ、小島嶼開発途上国(SIDS)、サハラ以南のアフリカにおいて見込まれる。気候変動は、農業、工業および都市の増える需要によってすでに乱用されている水資源をさらに限られたものにすることになる。気温の上昇により、さらに山の根雪が消滅し蒸発が増えるので、季節によって利用できる水の量が変わってくる。
- 全般的にみて、開発途上国はこれらのリスクに最も脆弱な国々である。最も脆弱な地域社会においては、気候変動の影響は人々の生存そのものを直接脅かすことになる。極端な事象の破壊的影響、気温の上昇および海面の上昇は激化し、その影響は私たちすべて、とりわけ貧しい人々に及ぼされる。
- 野生生物と生物学的多様性は、生息地の破壊や人間がもたらすその他のストレスによってすでに脅かされており、絶滅の危機の増大に直面するであろう。最も脆弱な生態系にはさんご礁、北方林(北極以南)、山の生息地および地中海性気候に依存しているものなどがある。海洋も温度がより高くなり、より多くの二酸化炭素を吸収すると、海の生物は酸性度が高くなるためにマイナスの影響を受ける。あらゆる地域において、温度の上昇が速ければ速いほど、被害の危険はより大きくなる。
- 気候は温室効果ガスの排出が削減されても直ちには反応しない。温室効果ガスの中には何年も、何十年もあるいは何世紀も大気中に残るものもある。その結果、気候変動は大気濃度が安定した後も数百年間も続くことになる。温室効果ガスの世界中の排出量を大幅に削減することが必要である。しかし、危険な気候変動を防止するために温室効果ガス濃度を安定化させるべき明確なレベルがどのくらいであるかはまだ決定されていない。
II. 気候変動への適応
- 適応とは、各社会が自らを気候変動に伴う危険によりよく対処できるようにするプロセスである。これらの危険は現実であり、水資源や食品の安全性や健康を含む人間の生活にとって必須である多くのシステムや部門においてすでに生じている。適応の選択肢は数多く、海岸堤防を増やすことや高床式の洪水に強い住居などの技術的選択肢から、水を節約して使用したりエネルギーを抑制的かつ効率的に消費するなど個人レベルで行動を変えることに到るまで様々である。その他の戦略としては、極端な事象の早期警告システムやリスク管理の改善、保険という選択肢や、例えば人々を嵐から保護するためにマングローブを保存し回復するというような、人々に及ぼされる気候変動の影響を軽減するために生物多様性を保全することなどがある。
- 適応への遅れには、開発途上国における一致団結した長期的適応への資金提供およびサポートの支援における遅れも含まれる。その遅れは、将来においてより多くの費用がかかることを意味し、人類により大きな危険を課すことになる。たとえば干ばつあるいは氷河の溶融水の減少は、大規模な人口移動や、水、食糧、エネルギーなどの少ない資源をめぐる競争の激化への引き金となりうる。スターン・レビューによれば、これらの影響は既存の政治的緊張を悪化させ、世界の不安定さを助長しかねない。
- IPCCは将来における脆弱性が気候変動だけではなく、開発の経路によっても決まると示唆している。持続可能な開発は脆弱性を緩和することができる。それに成功するには、各国、および国際的な持続可能な開発の優先度および部門別プログラムにおいて適応を主流としならなければならない。気候変動政策は適応の目標に貢献する一方で、持続可能な開発の目標を達成する際に進歩の触媒として、多数の恩恵を伴う活動を促進することもできる。
- 効果的な国の適応戦略としては以下のようなものが挙げられる:
・意思決定のための科学的根拠を高める措置
・適応を評価するための方法およびツール
・若い人々を対象とするものを含む、適応に関する教育、研修および意識の向上
・個人的および制度的能力開発の促進
・技術の開発と移転 ・地域の対処方法の促進
・適応に向いた行動を促進する法律および規制的枠組み
- 多くの国が将来の気候変動に適応するために具体的な行動を起こし始めている。持続可能な開発と適応がともに進むようにするためには、これを拡大し各国および各部門の計画に組み込む必要がある。UNFCCC(気候変動枠組条約)は、すべての締約国に適応について協力するとともに、適応手段を策定し実施し公表し更新するよう求めて適応を促進している。開発途上国において適応を実施するための様々な支援メカニズムがサポートされている。その中には科学的・技術的支援だけでなく、資金の供与、保険および技術移転も含まれる。
- 国別適応計画は低開発国のための選択肢であり、緊急の適応ニーズの厳格な評価を行う。それらの適応計画は地域社会の対処範囲を拡大することを狙いとしている。さらに、影響、脆弱性および気候変動への適応に関する「ナイロビ」作業計画は、すべての国が影響、脆弱性および適応を理解し評価するのを支援する。同計画は、実際の適応行動や措置についてインフォームされた意思決定を可能にし、協力のための構造を持つ枠組みを提供するものである。国連システム、その専門機関およびその他の国際組織もまた適応を関連する作業計画の中心に据えている。
- 適応は、地域(ボトムアップ)および国家(トップダウン)の両レベルを組み込んでいる全体的手法によって実施されなければならない。UNFCCCの役割は、この組み込まれた分野横断的な一連の行動により適応努力の触媒となることである。これらの行動は、現在の気候の変わりやすさおよび将来の気候変動を考慮に入れ、その他の多国間環境協定の環境目標だけでなく、国家別および部門別の政策や目標に結びついたものでなければならない。二国間、多国間および地域の協力は、適応措置の評価と実施の両側面に含まれるべきである。
- 適応を政策アジェンダとして進めることが重要である。UNFCCCの締約国は、京都議定書に定められた第一コミットメント期が2012年に満了するとき、気候変動への強化された多国的対応の一部ともなる重要な課題および最も重要な要素をすでに強調してきた。大規模な適応の取り組みを実施するための持続的で十分な財政的支援が、極めて重要である。十分かつ目標を定めた財政的支援がなければ、適応は効果的に対処されないという危険がある。短期的緊急救済あるいは「反応の速い」財政的支援は高くつき、長期にわたって持続可能な開発アプローチを支えるものではない。
- 適応によって温室効果ガスの排出を軽減する必要性がなくなるわけではない。適応と軽減の両戦略が必要であり、それらは相互補完的なものである。
III. 気候変動を引き起こす排出を削減する
- 現在、温室効果ガスの総年間排出量は増加している。この30年の間に、排出量は年に平均1.6パーセント増大し、化石燃料の使用によるCO2排出量は年に1.9パーセント増加している。さらなる政策措置がない状態では、この排出傾向は続くと予測される。IPCCは、1970年から2004年までの期間について温室効果ガスの排出量における最大の増加はエネルギーの供給と消費および道路輸送によるものであると見ている。同時に、MDGsを達成するにはエネルギーを入手できることが極めて重要であり、それは開発途上国の最優先事項である。というのも、経済成長にはエネルギーの供給と消費の増大あるいは効率化が必要とされるからである。
- 国際エネルギー機関(IEA)の基準シナリオによれば、世界のエネルギー需要は2030年には60パーセント増加することになっている。2030年までの期間に、世界全体のエネルギー供給インフラには合計20兆米ドルの投資が必要であり、その約半分は開発途上国におけるものである。これらのエネルギーニーズを満たす方法次第で、気候変動を管理し続けられるか否かが決まる。「環境に優しい」エネルギー供給および経済成長には、国別のおよび国際的な気候政策と気候活動が共に必要である。また、排出量の増加を経済成長から分離することも極めて重要である。次の20〜30年間にわたる軽減の努力次第で、地球の長期的平均温度上昇と、現在では避けられているが温度上昇に伴う気候変動の影響が大幅に左右される。
- IPCCによれば、クリーン技術の使用の増大や最終用途効率の改善を含め、軽減には相当な可能性があるということである。今後の数十年間にわたり世界の温室効果ガス排出量の軽減に関わるすべての部門にとって、経済的見込みは大いにある。それは世界の排出量の推定増加を相殺するのに十分であるし、また、排出量を現在のレベル以下に削減するのにさえ十分である。IPCCは2030年の安定化(445 ppm〜710 ppmのCO2e)に向けた削減のマクロ経済効果は、世界のGDPが多少増大することから3パーセント減少することまで様々であり、それは安定した目標の厳格さによって決まると示唆している。スターン・レビューは、550 ppm CO2eでの安定化へつながる排出量削減の年間費用は、2050年までにはGDPの1パーセント前後になるのではないかと示唆している。
- 利用可能な軽減策のいくつかは、実際のところ多面的な社会的・環境的利益を生み出すことのできる「後悔の生じない」機会である。と同時に、先進国がとる軽減措置が、石油輸出開発途上国の経済にマイナス影響をもたらすのではないか、という石油輸出開発途上国の懸念も考慮しなければならない。
- 気候に優しい技術を広く利用することは、軽減という難題を解くための鍵である。民間部門は、先進工業諸国と開発途上国間の技術協力によるものを含め、既存のクリーン技術を早急に取り上げ広く利用する必要がある。しかし、気候変動に対処するには、革新や新しい技術の開発による継続的な改善が要求される。
- 各国政府は、明確で予測可能で長期的でかつしっかりとしたインセチブを与えることにより、民間部門が革新的技術に投資するよう動機付ける重要な役割を果たすことができる。各国政府は、規則や規格、税金や料金、排出権取引、任意協定、補助金、奨励金、研究・開発プログラム、情報機器など、気候変動に対処する幅広い政策や措置を用いることに成功している。
- 効果的な軽減には、重要部門すべてを対象とする多様な政策が必要である。排出量を削減するための最も安価な選択肢には、建物内の節電、車両の燃料節約、農業における土壌炭素含有量の増大などがある。低炭素エネルギー源へのシフトを促進する政策は特に効果的である。各国政府は、大規模水路、バイオマス燃焼、地熱などの成熟した再生可能エネルギー技術や天然ガスの奨励を含む一連のエネルギー選択肢を促進することができる。炭素捕捉貯蔵技術は、大気から炭素排出を分離しそれをたとえば地層に貯蔵するというもう1つの選択肢である。
- 住宅・商業部門における予想排出量の約30 パーセント−IPCCが研究した全部門中最高−は純経済的恩恵をもたらしつつ2030年までに削減できるであろう。公共輸送システムやそれに関連するインフラの整備や非動力交通の促進などの輸送に関連する改善により、さらに排出量を削減することができる。産業排出量を削減するための最大の可能性は、エネルギー集約型である鋼鉄、セメント、パルプ、製紙などの産業にある。農業による排出量を削減する選択肢は、長期的気候目標を達成する上で費用競争力がある。
- 森林伐採の現在の速度は、人間が発生させる温室効果ガス排出量の20% 以上の原因となっており、地球全体の森林伐採は人間が引き起こす気候変動の大きな原因となっている。国連の食糧農業機関(FAO)の推定によれば、2000年と2005年の間に平均1,290万ヘクタールの森林が毎年失われており、その大部分が南米であり、次にアフリカそしてアジアと続く。今日の高レベルの森林伐採を阻み、持続可能な森林管理を促進し、新しい森林を植栽あるいは促進すれば、温室効果ガスの排出量をかなり削減することができる。
- 気候政策もまた、費用の見積りの要素に入れない多数の相互に有利な便益−正の外部性−をもたらすことができる。これらの外部性には、技術の革新、税制改革、雇用の拡大、エネルギー安全保障の改善、汚染の削減による健康上の便益などが含まれる。多大な副次的便益をもたらす気候政策は、温室効果ガスを削減し、数多くの経済部門に、また様々な開発目標に多大な利益を提供する可能性がある。
- 気候変動緩和を主流にすることは、持続可能な開発の不可欠な一部である。IPCCの調査結果では、持続可能な開発は温室効果ガス排出量を削減し気候変動に対する脆弱性を低減することが確認されている。ますます、気候変動に対処する戦略が国の計画や持続可能な開発の戦略に組み込まれつつある。多くの国は気候変動に関する重要な国家戦略をすでに開始し、産業、農業、林業からの温室効果ガス排出量を削減するための一連の政府の政策を実施し、野心的なエネルギー効率目標や再生可能エネルギー目標も設定している。
- 予想される気候変動により、特に低開発国において、貧困が悪化し持続可能な開発が蝕まれる可能性がある。世界的に削減努力を行えば、気候変動の悪影響の危険を低減することにより、持続可能な開発の可能性をある程度増大させることができる。効果的な多国間協力により、気候変動に対処する世界的費用は各国が独自に行動する場合の費用に比べて大幅に削減される。京都議定書の結果として生まれた新興炭素市場は、国際協定によって設定された目標を果たすために市場インセンチブをどのように使うことができるかを説明するものである。
IV. 解決策の策定に果たす企業の役割
- 世界的気候変動に関する解決策のソースとしての企業の役割は今や普遍的に認められており、公共の政策アジェンダとの相互作用が増えつつある。実業界は新しい選択肢を提供し、革新を行い、知識や技術を問題に適用しそれらを好機に変えることができる。そのような役割を確立する鍵となるのは、企業の社会的責任、リスクの軽減、持続可能な生産やエネルギーの使用に関連する規範の致命的な重要性を理解した企業の数が増えていることである。気候変動に対処する取り組みは、新しい経済成長、新しい仕事、新しい製造産業やサービス産業、農業や林業などの部門の新しい役割にプラットフォームを提供することにもなりうる。
- 世界の一流企業の多くは気候変動の問題に進んで取り組んでいるが、それはそのような企業がその問題の危険を理解し危険を最小限に抑えるために行動する必要性を認識しているからである。彼らはまた、地球の気候を脅かし続けることなく、経済を進歩させ成長させるような新しい、気候に優しい技術の開発に巨大な機会も見い出している。彼らはまた市場における自社の競争力を改善し、数年後に排出量を削減するのに貢献するであろう技術や戦略の開発に先頭を切りたいと考えている。
- 企業が気候変動の一因となるのを減らすためにとることができる活動は多い。彼らはグリーン・パワー・プログラムやコジェネレーション・プロジェクトを実施することができる。すなわち、省エネ型プロセスや製品、クリーン燃料、バイオマス・エネルギー、クリーンバーニング車両用エンジンやその他多くを開発することができる。政府からの援助を得て、彼らはパートナーシップを通じて気候変動に関する努力において重要な役割を果たすことができる。リサーチ・パートナーシップおよび気候政策の策定におけるパートナーシップは共に、何が達成可能であるか、いかにして達成するか、そしていつ達成するかということについて事実に基づく根拠を確実なものとすることができる。
- 国際レベルおよび国家レベルで、各国政府は方向の確かさを企業に知らせる必要がある。課題は企業が気候の保護において本質的役割を果たすことができるような枠組みやパートナーシップを継続的に作り出すことである。彼らは国の気候政策および国際気候政策の方向と最終目標を理解するために、気候変動が優先事項であることを知る必要がある。そうすれば、企業は自信をもって必要な技術や戦略に投資することができるようになる。
V. 気候変動への地球規模の対処における次のステップ
- 世界中で、気候変動に関する議論が緊急性とオープンさという新しい感覚で行われている。気候変動は今年いくつかの重要な国際会議や地域会議の議題に含まれているが、その多くは2007年12月にバリで開催される国連気候変動会議でよい結果が出ることを求めるものである。バリ会議は、世界に対し国連主催の多国間気候変動プロセスにさらに参加し、気候変動に地球規模で対処する次のステップを集合的に策定する機会を与えるものとなるであろう。
- バリ会議のために意見の交換を容易にし政治的意思を刺激するために、2007年9月24日に事務局長は非公式のハイレベルなイベントを総会開会中にニューヨークで召集することになっている。そのイベントは、すべての国およびその他のステークホルダーを多国間プロセスに参加させる機会を提供するものである。
附属書A
制度的枠組み:国連気候変動枠組条約および京都議定書
- 総会決議45/212は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)という結果を生み出した交渉を開始した。この条約は1992年6月4日にリオ・デ・ジャネイロで開催された「地球サミット」国連環境開発会議で署名を集めるために公開された。15年後、UNFCCCは世界の気候変動への地球規模の対処の中心となっている。同条約では、二酸化炭素およびその他の温室効果ガスの人為的排出は世界の気候を変えつつあることを認めている。同条約は開発が行われることは許しながらも、気候システムへの人間の危険な干渉を防止するために、大気中の温室効果ガス濃度を安定化させる長期的目標を設定した。
- 同条約の規定は十分ではなかったので、条約へのかなりの拡張−京都議定書−が1997年12月に第3回締約国会議で採択された。2005年2月16日に発効した京都議定書は、先進工業国のために法的拘束力を持つ排出量目標を設定した。採択以来、両文書は締約国の年次会議で締約国の決定によりさらに推敲を重ねられてきた。これらの集合的決定は、今では同条約と京都議定書両方の実施に関する詳細な一連の規則となっている。
A. UNFCCCに基づくコミットメント
- UNFCCCは気候変動の課題に取り組む国際的努力のための全体的枠組を定める。全締約国は、国別報告書と呼ばれる特別報告書を策定し定期的に提出しなければならない。その報告書にはその締約国の温室効果ガス排出量に関する情報を含め、同条約を履行するためにこれまでに取ってきた対策および実施する計画を説明しなければならない。各国別報告書は、締約国のコミットメントの履行状況の包括的技術的評価を提出するべく、「綿密な」レビューを受けることになっている。
- また、同条約は、すべての締約国が排出を抑制するための国家プログラムや措置を整備し、気候変動の影響に適応することも要求している。締約国もまた、気候に優しい技術の開発および使用、気候変動およびその影響についての教育および国民認識、温室効果ガスを大気から排除することができる森林およびその他の生態系の持続可能な管理の促進、およびこれらの事柄における他の締約国との協力に同意する。
- 同条約のもとで附属書I国と呼ばれる先進工業国には、さらなるコミットメントがある。これらの締約国は、2000年までに自国の温室効果ガス排出量を1990年のレベルに戻すという具体的な目的を持って、政策や措置を実施することに合意した。また、附属書I国は国別報告書をより頻繁に提出しなければならず、自国の温室効果ガス排出量の年間一覧表を別に提出しなければならない。その一覧表は年間技術レビュー・プロセスを受けることになっている。
- また、附属書I国は、開発途上国が自国のコミットメントを実施するのを助けるために新しい追加の財源を提供するとともに、開発途上国および経済移行期にある諸国へ気候に優しい技術の移転を促進し手助けしなければならない。そのような財源は、同条約の資金メカニズムとなっている「地球環境ファシリティ」を通じて提供されることになっているが、二国間あるいはその他の多国間チャネルを通じて提供されることもありうる。
B. 京都議定書に基づくコミットメント
- 京都議定書は、温室効果ガスの大気濃度を気候システムへの危険な干渉を防止するレベルで安定させるという同条約の最終目標を共有している。京都議定書は、同条約に基づいてすでに実施されているコミットメントの多くを踏まえ、それらを強化したものである。同条約の締約国のみが同議定書の締約国になることができる。すべての締約国が同条約に基づく自国の既存のコミットメントの実施をさらに進めることに合意したにも関わらず、附属書I国のみが議定書に基づく新しいコミットメントを引き受けたのである。具体的には、それらの締約国は2008年−2012年という時間枠にわたる拘束力ある排出目標に合意している。
- 附属書I国がその目標を達成するのを助けるために、また非附属書I国における持続可能な開発を促進するために、京都議定書は3つの革新的なメカニズムを採択したが、そのメカニズムにより附属書I国はどこか別の場所で達成された費用のかからない排出削減を利用することができる。これらのメカニズムの実施をサポートするために、京都議定書は条約の報告およびレビューの手順を強化し、京都メカニズムに基づく取引を監視するために国別登録と呼ばれる電子データベースのシステムを創設し、登録国間の発行、移転、取得を含む排出量クレジットの取引を確認するために国際取引ログを創設した。議定書は、議定書の環境誠実性を強化し、炭素市場の信頼性をサポートし、締約国による会計の透明性を保証するためのコンプライアンス・システムも確立した。そのシステムは委員会によって監督されるが、その委員会はノン・コンプライアンスについて結果を測定し適用する権限を持っている。
C. 市場メカニズムと炭素市場
- 京都議定書の市場メカニズムは、排出量の目標を達成する費用を低減しようとするものである。すなわち、クリーン開発メカニズム、共同実施および排出量取引である。クリーン開発メカニズム、すなわちCDMにより附属書I国は、排出量を削減する、あるいは植林や森林再生により吸収量を増大させるという非附属書I国におけるプロジェクトに投資することができるようになる。そうすれば、附属書I国はそれらのプロジェクトによって生み出されたクレジットを、自国の排出量目標を達成するために使うことができる。同様に、共同実施(joint implementation/JI)により、附属書I国は他の附属書I国におけるプロジェクトに投資することでクレジットを受け取ることができる。最後に、排出量取引により、附属書I国は附属書I国自身の間でクレジットあるいは排出許可量を相互に取引することができる。
- これらのメカニズムの中で、CDMは傑出しているが、それはCDMが開発途上国で温室効果ガス排出量を削減する持続可能な開発プロジェクトに融資する手段を提供するからである。CDMはCMPの権限下で運営されている執行委員会によって監督されるが、ベースラインおよび監視の方法論を承認し、プロジェクトを登録し、クレジットを発行する。1,200件を超えるプロジェクトが進行中で、CDMは2012年までに約14億トンの全体的排出量削減の可能性を有している(そのうち5億9,000万トンはすでに登録プロジェクトの形にある)。CDMはスピードが非常に速くなってきているが、市場が販売を継続するためには、2012年以降は長期的政策によって需要に確定性を持たせることが必要でる。
- 現在、CDMプロジェクトは地理的地域全体に公平に配分されていない。その結果、2006年のナイロビ気候変動会議で「ナイロビ枠組」が国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、世界銀行グループ、アフリカ開発銀行、および国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局によって開始された。同枠組は特にサハラ以南のアフリカの開発途上国がCDMに参加するレベルを高めるのを助けることを狙いとしている。
D. 気候変動に対処するための資金構造
- 各国の気候変動を引き起こす一因となっている度合い、およびその影響を防止しそれに対処する各国の能力は著しく異なっている。したがって、気候変動枠組条約および京都議定書は、より多くの資源を持つ国々が、恵まれず脆弱な国々に資金援助することを求めているのである。条約締約国は、4年ごとにレビューを受けることを条件に、資金メカニズムの運用を継続的に世界環境ファシリティに割り当てている。資金メカニズムは気候変動政策、プログラムの優先順位および融資の適格基準を決定するCOPに対して説明責任がある。さらに、以下の3つの特別基金が設立された。
(a) 特別気候変動基金−化石燃料からの収入に高度に依存する国々のための能力開発、適応、技術移転、気候変動の軽減および経済の多様化に関連するプロジェクトに融資する。
(b) 後発開発途上国(LDC)基金−LDCを援助するための特別作業計画をサポートする
(c) 適応基金−開発途上国における実際的適応プロジェクトやプログラムに融資し、能力開発活動をサポートする。CDMプロジェクトにかかる適応税から融資される。締約国も貢献することができる。京都議定書が発効するのに伴い運用可能となる。
- 炭素市場、投資および長期政策の結果を保護するために、様々な融資努力を長期の法的枠組の中で調整する必要がある。既存の資金構造およびプロジェクト・ベースのメカニズムは相互に補完しあって利用可能な資金を適応と軽減の両方に最適に向けられるようにしなければならない。各国政府は、2007年12月のバリ会議では、開発途上国のニーズに特に焦点を当てて、気候変動に対する効果的な国際的対処法の開発に関連する既存の投資の流れや計画された投資の流れおよび融資制度について検討する。
E. テクノロジー
- クリーン・テクノロジーは気候変動対策の中心となるものであり、その多くはすでに利用可能である。クリーナー・テクノロジーやエネルギー効率は、双方両得の解決策を提供することができ、手に手を取って進むために経済成長を可能にし、気候変動に立ち向かうことができるようになる。世界のエネルギー・ミックスにおいて化石燃料が主要な役割を果たし続けていることを考えれば、気候変動の目標から外れることなく化石燃料を使い続けられるようにするには、エネルギー効率、よりクリーンな化石燃料および炭素の捕捉・貯蔵技術が必要である。
- 心強いことには、UNEPおよびニュー・エネルギー・ファイナンス社(NEF)によれば、持続可能なエネルギー投資は過去2年間に著しく増加しており、風力、ソーラーおよびバイオ燃料がもっとも高レベルの投資を引きつけている。これは技術の成熟、政策インセンティブおよび投資家の投資意欲を反映している。投資家の投資意欲は、既存の技術はスケールアップする用意ができており、気候に優しい技術への投資はいまだに揺籃期にあるけれども、再生可能エネルギーは更なる技術開発を待たずともエネルギー・ミックスの中でより大きな部分を占めるようになることを示唆している。
- 世界中で軽減目標を十分に達成するために、必要とされるスケールアップには先進工業国と開発途上国がいっそう協力することが要求される。民間投資家がその中で投資活動を行う明確で予測可能な政策枠組、および公的基金が民間投資を引きつけることができるようにする革新的な融資手法もまた有益であろう。
- UNFCCCは、技術移転を目標とする多数の投資手段や投資機会を奨励してきた。現行の技術移転枠組は、開発途上国の優先度の高い技術ニーズを識別し技術移転を可能にする環境をつくりだそうと努めて、気候変動技術の移転のための融資を引きつける機会を提供している。法的・規制的枠組を改善するために国レベルで能力を作り出すことも重要であり、また、プロジェクト開発者が、提案されたプロジェクトは資金的に魅力があることを部門レベルで民間融資者に示して見せることも重要である。
- さらに、地球環境ファシリティ(GEF)は、気候変動に関連する市場の開発において、触媒の役割を演じようとしている。同ファシリティは毎年約2億5,000万米ドルを気候変動プロジェクトに助成金として割り当て支払っている。GEF資金は、たとえばリスク緩和制度、ローン保証プログラム、マイクロ融資などの革新的融資メカニズムを刺激するのに使われてきた。
- CDMもまた、温室効果ガス排出量を削減することを求められている締約国のために法的枠組や市場を提供することにより、気候変動プロジェクトに融資を引きつける多数の機会を提供している。CDMのおかげで、炭素排出削減量を売って気候変動プロジェクトに融資を引きつけることがより容易になる。このように、炭素市場には気候変動の影響に対処する一方で、技術と投資チャレンジの橋渡しにおいて果たすべき重要な役割がある。
- 開発融資機関の関心もまた、新興市場に気候変動技術移転の機会が存在することを示している。それらの機関の活動の重要な側面の1つは、民間の融資家を気候変動プロジェクトへと引きつけることである。
F. 森林伐採
- 森林伐採の削減は、生物多様性損失などの他の部門においても同様に、炭素の低減においてますます重要な役割を果たしている。
- UNFCCCは、森林保護の必要性を気候変動と闘う努力の一環として認めている。京都議定書に基づいて、先進国における森林伐採による排出は温室効果ガスを削減するという国家的コミットメントの一部として考えられている。しかしながら、熱帯の森林伐採については、化石燃料による排出を削減する努力についての主権、不確定性および推測される影響に関して論議がまとまらず、京都議定書から除外された。開発途上国における森林伐採による排出量の削減に関する議論が、開発途上国の主導によりUNFCCCプロセス内で行われている。
H. 会議日程
- 気候変動に対処する長期的協力活動についての対話に基づく第4回ワークショップ(気候変動枠組条約および京都議定書に基づく附属書I国の更なるコミットメントに関する作業部会(AWG)の再開された第4回会議の履行促進をめざす会合)
オーストリア、ウィーン
2007年8月27日−31日
- 第13回締約国会議(COP 13)および京都議定書締約国会議としての第3回締約国会議(CMP 3)
インドネシア、バリ
2007年12月3日−14日
- UNFCCC補助機関の会議
ドイツ、ボン
2008年6月2日−13日
- 第14回締約国会議(COP 14)および京都議定書締約国会議としての第4回締約国会議(CMP 4)
ポーランド、ポツナン
2008年12月1日−12日
- UNFCCC補助機関の会議
ドイツ、ボン
2009年6月1日―12日
- 第15回締約国会議(COP 15)および京都議定書締約国会議としての第5回締約国会議(CMP 5)
デンマーク、コペンハーゲン
2009年11月30日−12月11日
* *** * |