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Q1. 人間の安全保障とは何ですか。 Q2. 人間の安全保障はなぜ重要なのですか。 Q3. 人間の安全保障はどのように達成するのですか。 Q4. 人間の安全保障という考え方は広すぎて、 現実に合わないとする意見がありますが、それは本当ですか。 Q5. 人間の安全保障と国家安全保障はどのような関係にありますか。 Q6. 人間の安全保障と人権はどのような関係にありますか。 Q7. 人間の安全保障と人間開発はどのような関係にありますか。 Q8. 人間の安全保障という理念には、どのような付加価値がありますか。 Q1. 人間の安全保障とは何ですか。 A1. 人間の安全保障委員会(CHS)は人間の安全保障を「人間の自由と満足感を高めるやり方で、すべての人間の生活にとって死活的に重要な中枢」を守ることと定義しています。「人間の安全保障とは、基本的自由、すなわち生活に欠かせない自由を守ることを意味する。それは深刻かつ広範な脅威および事態から人々を守ることである。また、人間の強さと希望に拠って立ち、これをさらに高めてゆくプロセスの活用も意味する。それはさらに、全体として生存、生活、尊厳の基礎を人々に与える政治、社会、環境、軍事、文化のシステムを作り上げることでもある」。 人間の安全保障とは、単に紛争がない状態を指すものではありません。そこには人権、よいガバナンス、経済的機会や教育、保健医療へのアクセスも内包されています。人間の安全保障とは、「恐怖からの自由」と「貧困からの自由」に包括的に取り組む理念なのです。
Q2. 人間の安全保障はなぜ重要なのですか。 A2. 安全に対する脅威はこれまで、外部に端を発するものと仮定されていました。このため、国家安全保障は国境線を守ることを主眼とし、軍事的な装備と解決策に主な関心を注いできました。 しかし、ここ数十年間で、国家安全保障と各種の脅威に対する私たちの理解には、内戦、組織犯罪、越境テロ、大量破壊兵器、慢性的な貧困、住民の大規模な移動、環境破壊、感染症の蔓延なども含まれるようになりました。また、個人やコミュニティが自らの安全を確保するために果たせる役割の重要性について認識が高まっていることは、最も顕著な動きといえます。 この関連で、人間の安全保障は、さまざまな危険状況に取り組み、個人、コミュニティ、国家の役割と責任に焦点を当てることにより、包括的に状況を評価するための分析枠組みを提供するものといえます、そこでは、国家安全保障という従来の概念を越え、人々を深刻な脅威から保護するだけでなく、自らの人生を切り開くためのエンパワーメントも施すような包括的政策が考慮されます。
Q3. 人間の安全保障はどのように達成するのですか。 A3. 人間の安全保障の諸目標を達成するため、CHSは人々の「保護」と「エンパワーメント」に基づく枠組みを提案しています。保護とエンパワーメントという基本的枠組み自体は特に新しいものではなく、ガバナンスが行き届いた国家なら、いずれも実践していることです。この枠組みは、法の支配、よいガバナンス、アカウンタビリティ、社会的保護手段といった「トップダウン」型の規範、プロセス、制度機構と、個人やコミュニティが不可欠な自由を定義、実現する上で果たす重要な役割を民主的プロセスで支援するという「ボトムアップ」型の視点とを組み合わせたものです。 保護とエンパワーメントの枠組みは、個人やコミュニティを援助や国家による保護の一方的な受け手ではなく、能動的な参加者として捉えます。適切な保護とエンパワーメントの枠組みを与えられれば、人々はかなりの程度、自分たちやそのコミュニティの運命を決めることができるのです。
Q4. 人間の安全保障という考え方は広すぎて、現実に合わないとする意見がありますが、それは本当ですか。 A4. 人間の安全保障についての関心は、個人や社会によって異なるため、どのような人間の安全保障の理念も動的で、かつ実生活の現実を反映するものとせねばなりませんが、だからといって、人間の安全保障が理念としての明確性を欠いているわけではありません。それどころか、人間の安全保障は、深刻かつ広範な脅威に着目し、個人やコミュニティを重視することにより、人々の安全を危険にさらしている政治的、市民的、社会的、経済的、文化的諸要因を明らかにし、重点的かつ包括的なやり方で現状に取り組むための枠組みを提供しているのです。
Q5. 人間の安全保障と国家安全保障はどのような関係にありますか。 A5. 個人やコミュニティを重視するとともに、個人とコミュニティの保護だけでなく、そのエンパワーメントも図る政策や制度機構に着目することにより、人間の安全保障は、人々が安全と尊厳の中で暮らせる現実的な可能性を作り上げ、それによって国家と市民のパートナーシップを強め、国家安全保障を補完します。
Q6. 人間の安全保障と人権はどのような関係にありますか。 A6. 人間生活の中心には、性別、人種、民族、その他何らかの特徴に関係なく、あらゆる個人が享受せねばならない基本的な権利と自由(政治的、市民的、社会的、経済的、文化的)があります。こうした基本的権利がなければ、人間の安全保障も不可能です。人権のあからさまな侵害が紛争や強制避難、難民や移住者の発生、大規模な人的被害をもたらすケースはあまりにも多く見られます。人間の安全保障はこの点で、あからさまな人権侵害と国内的・国際的危険の密接な連関を重視するものといえます。 また、市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利の間に垣根を設けないことにより、人間の安全保障は総合的、多面的、包括的なやり方で人権侵害や安全に対する脅威に取り組むとともに、特定の危険状況で問題となる具体的な権利と義務を明らかにする実践的枠組みも提供します。
Q7. 人間の安全保障と人間開発はどのような関係にありますか。 A7. 人間の安全保障は、開発の考え方に重要な一側面を導入するものです。人間開発とその目標である「公平な成長(growth with equity)」の重要性を強調するだけでなく、ダウンサイド・リスクや、経済・社会生活が一気に暗転した人々を保護する必要性も重視しているからです。 その上で、人間の安全保障は、金融、経済の急激な変動や病気、自然災害などの被害により、人々が突如として危険や貧困に陥り、数年間に及ぶ開発が台無しになるだけでなく、政情不安や武力紛争も生じかねないとの認識に立ち、公平な成長という目標に「安全な後退(downturn with security)」という重要な次元を盛り込んでいます。 人間の安全保障はこのように、個人が経済成長や開発から利益を受けられるようにするためのエンパワーメントだけでなく、危険や危機が生じた際の保護も目指す政策を促進します。この意味で、人間の安全保障は安全と開発の相互連関を認識し、これをさらに強めるものといえます。
Q8. 人間の安全保障という理念には、どのような付加価値がありますか。 A8. 人間の安全保障は第1に、国家安全保障を補完し、人権を推進し、人間開発を強化するアプローチです。また、そうすることで、持続可能な平和と安全の達成に必要な条件を整備します。 第2に、人間の安全保障は人々を分析の中心に置くことにより、先進国、途上国を問わず、すべての国の関心を現行の安全保障、開発、社会政策の見直し、および、国内、国外双方の人々やコミュニティの生活改善を重視した解決策の模索に集中させます。 第3に、人間の安全保障は相互補完性、保護、エンパワーメントという概念に依拠しています。つまり、具体的な脅威に対する解決策を探る際には、さまざまな当事者が役割や責任を担えるため、相互のイニシアティブや能力を活用するチャンスが生まれるということです。この意味で、人間の安全保障は戦災社会の復興への取り組みに欠かせない識見を提供するだけでなく、人々が保護とエンパワーメントを受け、それによって危険を予防する能力、および、危険が実際に生じた場合にその影響を軽減する能力を高められる枠組みを整備することにもなります。 第4に、根本的な危険からの自由の重要性を明らかにし、市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利の間に垣根を設けないことにより、人間の安全保障は総合的、多面的、包括的な形で安全への脅威に取り組みます。 そして最後に、人間の安全保障には、縦割りのプログラムや政策による弊害を克服せねばならない正当な理由をはっきり提示するという利点があります。人間にとっての危険が相互に絡み合っているとすれば、人権と安全保障、人道問題、開発問題を個別に取り扱うような断片的な対策では効果が上がらないからです。私たちはこれに代わり、包括的な形で一貫した取り組みを行わねばなりません。
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