●目次 ■国連薬物特別総会が閉幕 ......1 ■決議全文  ・政治宣言 ......9  ・薬物需要削減の指針に関する宣言 ......13  ・世界薬物問題対策に関する国際協力を強化するための措置 ......19 ■演説  ・国連事務総長 ......43  ・国連薬物統制計画事務局長 ......45  ・日本政府代表 ......47 (特別総会、閉幕) 国連薬物特別総会 ニューヨーク、1998年6月8−10日 ************************************************************ ●国連薬物特別総会が閉幕  国連薬物特別総会が1998年6月8日−10日、ニューヨークで開催された。世界の指導者を集めたこの特別総会で加盟国は、不正薬物の需要、向精神薬の生産および前駆物質の転用を削減するための集中的コミットメントを採択し、2008年までに不正薬物の需給を大幅に削減することを約束した。  特別総会は「政治宣言」、「薬物需要削減の指針に関する宣言」、および、「世界薬物問題対策に関する国際協力強化措置」に関する決議を無投票で採択したが、これらはいずれも、薬物乱用から生じる個人的・集団的問題への取組みをめざす史上初の国際的合意である。  コフィー・アナン事務総長は特別総会の閉幕に寄せたメッセージにおいて、特別総会の閉幕が、地球的薬物統制の新たな1ページを開くものだと述べた。また「私達は、新たな『麻薬戦争』を始めようとしているわけではありません。実際、これまでもそのようなものは存在しませんでした。むしろ国際社会は、死に至る病に立ち向かう医者のような存在と言えましょう。薬物は人々を殺しているのですから、永遠のの責任は治療法を見つけることにあります。政治宣言と行動計画の選択により、薬物のない世界はまた一歩近づいたと言えます」と述べた。またウドベンコ特別総会議長(ウクライナ)は閉会の辞において、特別総会がしっかりとした戦略と、特定期限までに達成されるべき措置および目標のパッケージを採択したことを指摘した。課題を設定する3つの政治文書は、全会一致の支持を得たが、それについて「今次特別総会が真に画期的な出来事として歴史に残るためには、これらの計画全てを実際の行動に移す必要がある。一致団結すれば、国際社会は、薬物問題対策に新たな道を切り開き、国連が現代世界の最も大きな脅威の一つを解決できるという強力なメッセージを送ることができよう」と訴えた。  需給削減に加え、「政治宣言」は加盟国に対し、数多くの薬物問題対策を講ずるよう求めている。加盟国は2003年までに次のことを要請されている。  ・薬物削減戦略およびプログラムの新設あるいは拡充を行う。  ・アンフェタミン系興奮剤(ATS)とその前駆物質の不正製造、取引きおよび乱用と闘う国内立法およびプログラムを確立あるいは強化する。  ・国内のマネー・ローンダリング対策立法およびプログラムを採択する。  ・薬物関連犯罪に関与する犯罪組織を取り締まるため、司法および法律執行当局の多国間協力、地域的協力および二国間協力を強化する。  また2008年までに、加盟国は以下の履行を誓約した。  ・向精神薬の製造、マーケティングおよび取引き、ならびに、前駆物質の転用を根絶あるいは大幅に削減する。  ・需要削減について意義のある測定可能な成果を達成する。  ・コカ、大麻およびケシの不正栽培削減について、意義のある測定可能な成果を達成する。  「需要削減指針に関する宣言」には、各国政府が目標期日までに薬物需要削減プログラムを確立するうえでの基準が含まれている。また各国政府が効果的な予防、治療および社会復帰プログラムを設置する上で指針となる基準も含まれており、そうしたプログラムに対する十分な資源の提供が呼びかけられている。  5部構成の決議により、総会は加盟国に対し、「世界薬物問題対策に関する国際協力を強化する措置」を講じるよう促した。この措置には、ATSとその前駆物質に対処し、不正薬物作物の根絶と代替的開発に関する国際協力を促進する行動計画、前駆物質の取締り、司法協力の促進およびマネー・ローンダリング対策に関するものがあげられる。同決議により加盟国は、コミットメントに見合った実際的な行動をとり、実質的で測定可能な成果を確保するのに必要な資源を投入する決意も示した。そして国際社会、ならびにUNDCPをはじめとする関連国連機関が、薬物生産国に対し、代替的開発のための資金援助と技術援助を提供するよう求めた。さらに国連システム構成機関と関連金融機関は、不正作物栽培の影響を受ける地域および人々を対象とした農村開発を支援すべきであると述べ、国際金融機関と地域開発銀行に対しては、代替的開発プログラムへの資金援助提供を奨励すべきである、と訴えている。  なお特別総会は、国連システムの機関および計画の長で構成される行政調整委員会(ACC)から特別総会に対する共同声明に留意。事務総長が覚書(文書A/S‐20/3)で伝達したこの声明において、各機関の長は、持続可能な開発を促進する国連システムのプログラムの要素に、代替的開発措置を含めることを奨励した。ACCはまた、国連薬物統制計画と密接な協力を行っていくという誓約を再確認した。 特別総会はさらに、国際薬物統制に関する国連機構の見直しおよび強化のために開催された専門家グループの報告(文書A/S−20/2)にも留意した。この13名からなる専門家グループは、制度的変革と資金調達方法の改善により、UNDCPの実効性を強化すべきことを強調した。専門家グループはまた、国際薬物統制問題の主たる政策立案機関である麻薬委員会の活動と機能の評価も行った。事務総長が召集するこの専門家グループは、6月にウィーン、11月にニューヨークで会合を開いた上で、1999年に最終報告書を提出することになっている。  今次特別総会の目的は、国際的な薬物問題の現状を評価するとともに、バランスの取れた需給削減アプローチに基づき、21世紀に向けて時代を先取りする戦略を打ち立てることにあった。そして、不正作物根絶と代替的開発、アンフェタミン系興奮剤、前駆化学品、マネー・ローンダリング、および、司法協力という重要課題に焦点を当てることにより、世界薬物問題に対するアプローチを行った。  本会議では、世界薬物問題に関する高級協議が行われた。これと同時にアドホック全体委員会が開催され、ここで交渉された最終案文は総会に提出されて採択された。一般討議には、国家元首23名、首相8名、副大統領1名およびオブザーバー7名を含む計158名が参加した。アドホック委員会は、特別総会の最終文書の承認に加え、国際麻薬統制条約および薬物統制体制の加盟および実施状況の再検討を行った。同委員会はまた、国連の計画および機関、ならびに、非政府機関の代表からも意見聴取を行った。  特別総会と並行して開催された行事としては、アルラッキ氏が議長を務めた薬物とマネー・ローンダリングに関するパネル討議、ならびに、国連児童基金(UNICEF)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連人口基金(UNFPA)およびUNDCPの共催による、子ども、若者および薬物乱用に関する円卓会議などがあげられる。  本特別総会開催は、1996年の経済社会理事会決議1996/17によって提案されたものである。この決議で提案されたテーマは、薬物と向精神薬の不法生産、販売、需要、取引きおよび流通を防止するための国際協力であった。第51回国連総会は、1998年6月に3日間にわたって特別総会を開催することを決定(決議51/64)するとともに、特別総会準備に関し、麻薬委員会を中心的な政府間フォーラムとすべきであるとした。このプロセスは、3月16日から21日にウィーンで開催された麻薬委員会の第2回準備会期で実施された。その結果として作成された最終文書案は特別総会に提出され、その最終的承認を仰ぐことになったのである。  特別総会の一般討議と採択された文書の要旨は以下のとおり。 ●一般討議  開会に当たり、コフィー・アナン事務総長はすべての国家に対し、薬物のない世界に向けた課題に立ち向かう決断を下すよう求めるとともに、若者たちは、指導者が一致団結して、不正薬物の生産、取引きおよび乱用に対策を講ずることを必要としていると述べた。事務総長はまた、向精神薬の乱用および生産の増大傾向を逆転させなければならず、不正な合成薬物とその前駆物質の台頭には特に目を光らせなければならないと指摘した。  薬物取引き対策にはバランスの取れた戦略が必要だとする向きも多かった。こうした意見によれば、地球的な薬物対策は、共同責任、包括性および多国間主義に基づくべきであり、国際社会は、薬物市場には需要と供給の両方があり、これらすべての側面に対処しなければ実質的な解決策は見つからないことを認めるべきである。また需要問題を社会的行動や価値観だけでなく、公衆衛生上の問題として捉え、医療、教育、訓練および文化プログラムによって対処しなければならない。なおコロンビア大統領は、犯罪収益で取得した財産の没収によって得られた資金の一部を利用して、薬物対策のための世界基金を設立するよう求めた。  薬物取引き対策には国際協力が必要だとする意見も大勢を占めた。このような薬物需要の充足において最も大きな人的、社会的および制度的負担を被るのは中継国であり、薬物取引きとの闘いで最初に命を落とすのも、こうした国の人々である。多くの薬物中継国の国境は脆弱であり、完全武装した密売人を通さないようにするためには、これらの国々に資金および技術援助を提供する必要がある。代替的開発プログラムには、中継国の小規模農家、運び屋および漁民の状況に対処する要素を組み込むべきである。これらの人々は貧しく、代替的生計手段を持たないがために、薬物の不正取引きに引き込まれているのである。  国家主権を侵害する一方的な措置の使用を非難する向きも見られた。この意見によれば、いかなる国も他国に判断を下すべきではなく、いかなる国も自国の法律執行のために他国の法律に違反する権利を持つなどと考えるべきではない。また各国が講ずるいかなる措置も、共通の責任共有に基づくべきであり、このためには、国連憲章と国際法に従った地球的でバランスの取れたアプローチが必要なのである。  さらに一定の国による薬物対策の評価により、各国が貿易上の特権を失ったり、その他の経済的・政治的制裁を受けることになる、一方的な「認定」政策を非難する意見も出された。こうした見方をする者は、国際的な取締りと評価は国際麻薬統制委員会(INCB)が一手に引き受けていることを理由として、認定手続の使用が、協力、多国間主義、および、各国の主権と独立の尊重という概念に反する、と強調した。  一部の発言者は総会に対し、武器と薬物の連関が暴力と暴力的犯罪の激化を生んでおり、これによって国際の平和と安全は損なわれ続けるだろうと警告した。この主張によれば、小国が不正な薬物作物の生産、栽培および輸出の取締りを義務づけられているのだから、武器生産国もこれと同等の武器取締りを行わなければならない。一部の政治勢力が、薬物取引きで得た資金で武器を購入し、政府の不安定化工作を行っていることも指摘された。また国際的な措置により、薬物販売収益のマネー・ローンダリングに関与した金融機関の営業停止と処罰を行うべきだとする意見も見られた。  さらにマネー・ローンダリングが、金融システムの安全を脅かすことを指摘する意見も多かった。これによれば、マネー・ローンダリングは、国際貿易システムをも脅かしており、国際的麻薬カルテルに莫大な資金をもたらしている。また1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」におけるマネー・ローンダリング防止規定を実施する必要があり、国連薬物統制・犯罪防止室は、訓練、助言および技術援助を提供すべきである。  地球的な薬物問題が、最近の世界経済の変革によってさらに悪化しているとする発言も多くみられた。この意見によれば、グローバリゼーション、国際市場の自由化および国境の消滅は、薬物取引きの繁栄に手を貸している。衛星通信その他の技術進歩により、取引き組織網にとって、世界経済システムに適応し、これをさらに利用するための、新しい効率的な作業ツールが生まれている。  開発途上国の中には、薬物対策に費やされる数十億ドルの一部を貧困緩和、人間開発、教育および医療に割り当てない限り、世界の薬物問題は継続するだろうと指摘する向きもあった。この見方によれば、薬物問題対策の前提条件はあまりに膨大であり、貧困の帰結との戦いを強いられている多くの開発途上国の能力を越えている。市場アクセス、安定した作物価格および公正な取引きが確保されれば、薬物の生産、取引きおよび消費に関与する数百万人の人々の大半は、代替的なライフスタイルを選択することになろう。  薬物の消費が子ども、女性および若者に拡大しているという発言もあった。これによれば、薬物問題は開発の精神的側面に対する取組みの失敗に起因しており、その解決策は、大々的な政府プログラムではなく、分散型のコミュニティー活動にある。薬物に関連する中毒、疾病および暴力を緩和するためには、倫理的価値の再生と家族構造の活性化が有用と見られる。スポーツ、教育、および、自尊心と帰属意識の促進は、若者が友人からの薬物使用の誘惑を拒絶する助けとなりうる。  薬物中毒から回復しつつある43歳のHIV感染者は、アドホック委員会に対し、薬物のない世界の希求は非現実的であり、薬物使用の犯罪化は非生産的であると述べた。この意見によれば、犯罪化が価格の高騰をもたらしたため、薬物常用者は、購入資金を稼ぐために、日和見的犯罪に走るようになった。全世界で過去数十年間の規範となってきた抑圧的な薬物政策の類型を考え直すときが来ている。薬物乱用に対処する上で最も有用な戦略の中には、薬物常用者自身が策定したものもある。  「プロジェクト・アウトリーチ」の代表は、国内的解決策に向けて目や耳や心臓の役割を果たし、コミュニティー・プログラムによって需要削減活動を主導している非政府機関(NGO)が、麻薬戦争において疎外されていることを遺憾とした上で、各国政府も、疑う余地のない真剣な態度で薬物問題に専心するNGOと直接接触できるよう、その政策を転換すべきだと述べた。 ●採択された決議  「政治宣言」により、加盟国は2008年までに、需要削減における有意義で測定可能な成果を達成することを誓約した。加盟国はまた、公衆衛生、社会福祉および法律執行当局との協力による需要削減戦略およびプログラムの新規策定あるいは拡充について、2003年を目標期日とすることを約束した。さらに各国は、教育、情報活動およびその他の予防措置を通じて若者と協力することにより、需要削減に注意を払うことを決定した。  加盟国は、2003年までに国内の立法およびプログラムを策定あるいは強化し、本特別総会で採択された、ATSとその前駆物質の不正製造、取引きおよび乱用の防止に関する行動計画を実行することも求めた。加盟国はさらに、合成薬物を含めた向精神薬の不正製造、マーケティングおよび取引き、ならびに、前駆物質の転用を各国が根絶あるいは大幅削減する上で、2008年を目標期日とすることを決定した。  これに加えて宣言は、1988年条約の関連規定に従って国内のマネー・ローンダリング対策法およびプログラムをまだ採択していない国々に対し、2003年までにこれを行うよう勧告した。また各国は、2008年までに、コカ、大麻およびケシの不正栽培を廃絶あるいは大幅削減するために、UNDCPとの密接な協力の下で戦略開発を行うことを誓約した。加盟国に対しては、薬物犯罪および関連犯罪に関与する犯罪組織に対処するため、2003年までに、司法当局および法律執行当局間における多国間、地域、サブ地域および二国間協力の見直しおよび強化を行うことが奨励された。  3つの薬物統制国際条約への加入またその完全実施を行っていない国については、これを行うことが求められた。各国はまた、国連とその薬物統制関連機関、特に麻薬委員会に対する支持を再確認し、これら機関の機能および統治の強化に対する決意を表明した。  「薬物需要削減の指針に関する宣言」は、課題、コミットメント、指針および行動要請の4節から構成される。宣言には、国内の薬物統制戦略を検討する政府向けの追加的参考資料が付属している。  この宣言により加盟国は、公衆衛生問題の緩和、個人の健康と福祉の向上、社会的・経済的統合の促進、家族制度の補強およびコミュニティーの安全向上に資すると見られる需要削減プログラムへの投資に対する持続的コミットメントを誓約した。供給抑制と需要削減のための地域間および国際協力促進についても合意が見られた。加盟国は、1988年条約に規定する需要削減措置の採択を誓約した。  宣言によれば、需要削減プログラムは、薬物の使用および乱用の性質および規模、ならびに、国民の間での薬物関連問題に関する定期的評価に基づくべきである。また需要削減努力は、より幅広い社会福祉・健康増進政策、および、予防教育プログラムに統合すべきである。かかる削減プログラムはまた、国民一般のニーズと、若者をはじめとする特定集団のニーズに取り組むべきである。さらにジェンダー、文化および教育面での差異を勘案しながら、プログラムを最も危険性の高い集団にアクセス可能なものとし、加盟国は、刑事司法制度内で、薬物乱用者を教育、治療および社会復帰サービスによって援助する能力を養成すべきである。  「世界薬物問題に対処する国際協力を拡充するための措置」は、ATSとその前駆物質の不正製造、取引きおよび乱用防止に関する行動計画(A部)、前駆物質取締り措置(B部)、司法協力促進措置(C部)、マネー・ローンダリング対策(D部)、および、不正薬物作物の撲滅と代替開発に係る国際協力に関する行動計画(E部)で構成されている。  ATSに関する行動計画(A部)は、ATS問題に対する認識向上、需要削減、正確な情報提供、供給抑制、および、ATSとその前駆物質の取締りシステム強化の5節で構成される。  行動計画は、ATSを麻薬委員会の定期的議題とすることを含め、国際社会がこの問題の優先度を高めることを確保する、数多くの行動を求めている。ATS問題を認識させるためには、各国による努力に加え、民間セクターおよびNGOの動員を図るべきである。各国はまた、ATS乱用の社会、経済、保健および文化面に関連する数多くの措置を要請されている。  行動計画は、教育および訓練目的に、インターネット等の情報技術を積極的に活用することを主張している。行動計画によれば、各国は、科学技術を用いて、ATS乱用の健康、社会および経済への悪影響に関する情報を広めるべきである。主たる供給抑制戦略は、取引きに焦点を絞ること、不正製造を止めさせること、および、試験機器と前駆物質の転用を防止することにある。そして合法的国際取引きから不正経路へのATSの転用を防止するためには、業界の密接な協力が必要であるとされた。  前駆物質の取締り措置(B部)は、「麻薬および向精神薬の不正製造に用いられる前駆物質の不正製造、輸出入、取引きおよび流通を防止する措置」、「前駆物質取締りに関する国際協力の普遍化をめざして」、ならびに、「代替化学品」という3節から構成される。  決議によれば、各国は、前駆物質移動の監視を可能にする立法的基盤を確立すべきである。各国は、国内の担当当局とその特定的役割を明らかにし、この情報を他国と共有する必要がある。国際・地域機関および民間セクターと協力して、各国はまた、前駆物質取引き監視のためのメカニズムおよび手続を改善すべきである。また不正薬物製造に必要な前駆物質の密売人に対する入手可能性を制限し、転用の試みを明るみにできるようにするためには、すべての国家による行動の統一化が必要である。さらに化学業界と協力して、特別監視リストに掲載される物質の合法的経路から不正取引きへの転用を防止すべく、監視措置を適用すべきである。  司法協力促進措置(C部)は、各国に対し、犯罪者引渡し、相互司法援助、裁判移管、その他の協力形態および訓練、取引き追跡捜査、海路による密輸、ならびに、補完的措置の7つの分野について、行動をとることを勧告している。  各国は、国内立法による犯罪者引渡し手続の簡素化と、自国民の重大薬物犯引渡しの検討を要請されている。決議の勧告によれば、各国は、相互司法援助の要請を作成および実行する当局を指定すべきである。各国はまた、類似の法制度を備えた他国と協定を結ぶことにより、刑事裁判の移管あるいは受入れ、および、法律執行職員交流プログラムの開発あるいは拡充を行うよう要請されている。さらに決議は各国に対し、その立法、手続および慣行により、国内・国際レベルの双方で、取引き追跡捜査の実施を可能にするよう勧告している。  マネー・ローンダリング対策(D部)において、総会は全加盟国に対し、1988年条約およびその他の関連国際取極に含まれるマネー・ローンダリング対策規定の実施を促した。この文脈において各国は、マネー・ローンダリング罪の防止、捜査および起訴を規定するために、マネー・ローンダリング行為を犯罪化する立法枠組みの策定を促されている。各国に対しては、犯罪者に国内・国際金融システムへのアクセスを拒絶する金融・規制体制の確立も促されている。  不正薬物作物の根絶および代替的開発に係る国際協力に関する行動計画(E部)は、「大量の不正栽培に対処するバランスの取れたアプローチの必要性」、「代替開発のための国際協力強化」、「代替的開発へのアプローチの改善および革新」、「監視、評価および情報共有の拡充」、「不正作物取締りに関する法律執行の必要性」ならびに「フォローアップ」の6節から構成される。  行動計画は、薬物作物の不正栽培が行われている国に対し、測定可能な目標を含めた、不正作物の削減・廃絶に関する国内戦略の開発を助言している。また各国が、代替開発のための国内計画を実施し、制度の整備と、これに適した法的、経済的、社会的枠組みの創設を行うべきである、とする。また各国が、ある地域あるいは国から別の場所への不正栽培の移動を回避するため、協力を行い、不正薬物作物栽培の問題を抱える国については、代替開発プログラムの法律執行措置による補完を確保するよう要請している。  そして国際社会と、UNDCPをはじめとする国連システムは、代替開発のための資金および技術援助を提供すべきであるとする。国連システムと金融機関は、不正作物栽培の影響を受ける地域および住民のための農村開発支援においても、協力を行うべきである、とした。 ●特別総会役員  特別総会議長は、第52回総会のヘンナディー・ウドベンコ議長(ウクライナ)が務めた。副議長は、中国、コンゴ民主共和国、エジプト、エチオピア、フランス、ギリシア、ギニア、アイルランド、ヨルダン、キルギスタン、メキシコ、モンゴル、パナマ、カタール、ロシア連邦、セントビンセント・グレナディーン、南アフリカ、トーゴ、英国、米国およびベトナムの代表が務めた。  アドホック全体委員会の議長には、アルバロ・デ・メンドンカ・エ・モウラ氏(ポルトガル)が選出された。副議長にはアルベルト・スカバレッリ(ウルグアイ)、N.J.ンサカト=ディセコ(南アフリカ)、ダニエラ・ロズゴノーバ(スロバキア)およびN.K.シン(インド)の4氏が選出された。シン氏は報告官を兼任した。 (政治宣言) 国連薬物特別総会 ニューヨーク、1998年6月8−10日 ●政治宣言  薬物は生命や社会を破壊し、人類の持続的な進歩を徐々に蝕み、犯罪を生み出す。薬物はすべての国々の社会のあらゆる分野に影響を与えるが、特に、薬物の乱用は世の中で最も貴重な財産である青少年の自由と成長に影響をおよぼす。薬物は全人類の健康と福祉、国家の独立、民主主義、国の安定、すべての社会構造、何百万もの人々とその家族の尊厳と希望を脅かす。 したがって、  我ら、国連加盟各国は、  世界の深刻な薬物問題を憂い、第20回特別総会に参集して、信頼と協力の精神の下に、この問題に取り組んでいくための対策の拡大を検討し、 1. 国内および国際戦略によって世界の薬物問題を克服し、薬物を不正な売買の両面から減少させるために、確固たる決断とコミットメントを再確認する。 2. 世界の薬物問題に対する行動は各国共通の責任であり、国連憲章及び国際法の目的と原則に完全に合致した統合的かつバランスのとれた取り組みを必要とする。また、その取り組みにはとりわけ、国家の主権と領土保全、内政不干渉の原則、すべての人権と基本的自由への十分な配慮が求められることを認識する。私たちは、世界の薬物問題には多国間的な取り組みが必要であるとの認識から、三つの国際薬物統制条約にまだ参加していない国に対し、条約への参加とその完全な実施を求める。また私たちはこれらの条約の条項を実行するための包括的な国内法と戦略を採択、履行するため、定期的な見直しによって戦略の有効性を確保しながら、コミットメントを新たにする。 3. 国連およびその薬物統制機関への支援、特に、世界の薬物問題に対する国際協力のグローバル・フォーラムである麻薬委員会(CND)への支援を再確認し、これらの機関の機能を管理の強化を決意する。 4. 計画と政策決定のあらゆる段階に男女がともに関与することによって、世界の薬物問題に対する戦略から、男女がいかなる差別もなく同等の利益を確実に得ることを保証する。 5. 各国で個々に、および協力して達成された進展を評価し、アンフェタミン系興奮剤をはじめとした不正な薬物使用が行われている新たな社会状況に対し、深い懸念を表明する。 6. 薬物乱用に対して様々な分野で活躍している人々の努力を歓迎し、不正な薬物を使用しない大多数の青少年の行動に励まされつつ、公式、非公式を問わない教育活動、情報活動、その他の予防対策を通じた青少年への投資および青少年との協力によって、薬物の乱用の削減に格別の注意を払っていくことを決意する。 7. 薬物乱用者となった子ども、青少年、成人男女の治療とリハビリに必要な資源を提供して、彼らの尊厳と希望を回復するための社会復帰を可能とし、世界の薬物問題のあらゆる側面に対して闘う決意を確認する。 8. 国連システムへ要請を行い、また、世界銀行及び地域開発銀行等の国際金融機関に呼びかけ、各国の優先順位を考慮しつつ、それらの機関のプログラムに世界の薬物問題に対する行動を盛り込むよう要請する。 9. 必要があれば国連薬物統制計画(UNDCP)や国際麻薬統制委員会(INCB)の助力も得て、地域や小地域メカニズムの確立や強化を要請し、そうした機構に対して、国家戦略の実施から得られた経験と結論を共有し、それぞれの活動を麻薬委員会(CND)へ報告するよう要請する。 10. 薬物の密造と不正取引き、およびテロリストグループや犯罪者、国際的な組織犯罪の関係に深い懸念を表明し、これらの脅威に対する私たちの協力強化を決意する。 11. 武器、薬物の密造と不正取引きの結びつきから生じる暴力の増大を懸念して、密造武器の不正取引き根絶に協力し、適切な対策を通じてこの領域における具体的な成果を達成することを決意する。 12. 生活に入り込むことを断じて許してはならない不法な薬物の使用に取って代わる、健康的で生産的かつ十分な代替手段を強調、促進することによって、家庭をはじめとする我々のコミュニティー、政治や宗教、教育、文化、スポーツ、ビジネス、労働組合指導者、世界の非政府組織とメディアに対し、薬物の乱用のない社会を積極的に推進するよう要請する。 13. 合成薬物の密造、不正取引き、乱用が増大している傾向に特別の注意を払うことを決意し、特別総会で採択された「アンフェタミン系興奮剤およびその前駆物質の不正製造、取引きおよび乱用防止に関する行動計画」を実行するための国内法や国家プログラムを、2003年までに確立及び強化することを要請する。 14. 特別総会で採択された前駆物質の規制対策に特別の注意を払うことを決意し、さらに、合成薬物や前駆物質の転用を含む向精神薬の密造、不正販売、不正取引きを、2008年に根絶もしくは大幅に減少させることを決意する。 15. 薬物取引きに関連するマネー・ローンダリングに対して特別の努力を払い、これに関連して、国際、地域、小地域の協力の強化の重要性を強調し、1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きに対する国連条約」を未だ採択していない国家に対して、同条約の当該条項に沿った国内のマネー・ローンダリング規制やプログラム、ならびに特別総会で採択されたマネー・ローンダリング対策を、2003年までに採用することを勧告する。 16. 特別総会で採択された司法協力推進対策に沿って、薬物犯罪やこれに関連する犯罪行為に関与する犯罪組織に対応する司法当局と法執行当局間の多国的、地域的、小地域的、および相互的協力の推進に着手し、これらの対策実行を見直し、適宜、2003年までにそれを強化するよう、各国に対し奨励する。 17. 世界の薬物問題に対抗するためのグローバルな取り組みにおいては、薬物需要の削減が重要な柱であると認識し、「薬物需要の削減の指針原則に関する宣言」の中で示された条項を各国のプログラムと戦略の中に取り入れること、国連薬物統制計画(UNDCP)と緊密な協力を行って行動志向型の戦略を策定し、宣言の実行を援助すること、そして公衆衛生、社会福祉、司法当局との密接な協力で策定する、新たに拡大した薬物需要削減戦略を2003年をめどに確立することを明言し、2008年までに需要削減の分野において大きな、かつ重要な成果の達成を約束する。 18. 本特別総会で採択された「不正薬物作物の撲滅および代替開発に係る国際協力に関する行動計画」に沿って、薬物作物の根絶に向けた総合的な取り組みの必要性を再確認する。不正な薬物取引きに巻き込まれる最も脆弱な人々を、合法的かつ活力ある経済活動へより適切に融和させることを含めて、代替作物開発においては協力が極めて重要であることを強調する。また環境保護に特別な注意を払いつつ、不正な栽培や合成、密造、不正取引きに対抗するための撲滅プログラムと法執行の必要性を強く訴える。この関連で、代替作物開発の分野における国連薬物統制計画(UNDCP)の作業を強く支援する。 19. 不正な農作物の根絶に対する国連薬物統制計画(UNDCP)のグローバルな取り組みを歓迎し、国連薬物統制計画(UNDCP)と緊密に協力してコカ、大麻、ケシの不法な栽培を2008年までに根絶もしくは大幅に縮小することを目指した戦略を作成する。私たちは、自らの努力でこれらの目標を達成するため、国際的な支援を動員する決意を確認する。 20. すべての国家に対し、この特別総会の結果を踏まえて国家政策と国家プログラムを策定すること、これら2003年と2008年の目標を達成するための活動に関する報告を麻薬委員会(CND)に2年ごとに行うことを要請し、同委員会に対しては世界薬物問題と闘う協力的な活動を拡大するために、これらの報告書の分析を求める。  これらは新たな、重大な公約であり、その達成は困難ではあるが、目に見える真の成果を確保するために必要な実際の行動と資源によって、このコミットメントを達成することを固く決意するものである。  我々は協力を通じて、この課題を達成することができるのである。 (需要削減の指針宣言) 国連薬物特別総会 ニューヨーク、1998年6月8−10日 ●薬物需要削減の指針に関する宣言 I.課題 1.すべての国は、健康への悪影響、犯罪、暴力および汚職の急増、社会・経済開発に利用し得た人材、天然資源および資金の流失、個人、家族およびコミュニティー破壊、ならびに、政治的、文化的、社会的および経済的構造の崩壊といった薬物の乱用と不正取引きの破壊的帰結を被っている。 2.薬物の乱用は、社会のすべての部門、および、あらゆる開発レベルにある国々に影響を与えている。したがって薬物需要削減のための政策およびプログラムは、社会の全部門を対象とすべきである。 3.社会的・経済的環境の急激な変化は、薬物の入手可能性と宣伝の増大、および、これに対する需要とともに、世界において薬物乱用問題の規模拡大を助長している。この問題は、薬物の乱用、供給および流通パターンの変化によって、一層複雑化している。青少年をはじめとする人々をより脆弱化し、薬物の使用および薬物に関連する危険な行動の可能性を高めるような社会的・経済的要因も増えている。 4.薬物の不法な生産、取引きおよび流通を取り締まるため、あらゆるレベルで、政府による幅広い努力が続けられている。薬物問題に対処する最も効果的なアプローチは、相互補強的な供給抑制と需要削減、および、責任共有の原則の適切な適用からなる、包括的でバランスの取れた協調型アプローチである。私たちの需要削減努力を強化し、このために十分な資源を提供する必要がある。 5.薬物需要を削減するためのプログラムは、すべての乱用物質に対する需要を削減する包括的戦略の一部とすべきである。これらプログラムは、関係者全体の協力を促進するような形で統合され、多種多様の適切な介入策を含み、個人、家族およびコミュニティーの間で健康と社会福祉を増進し、個人および社会全体にとっての薬物乱用の悪影響を和らげるべきである。 6.本宣言は、1991年から2000年を対象とする「国連薬物乱用防止の10年」の重要なイニシアチブである。宣言は、国内、地域および国際レベルにおける有効な不正薬物需要対策の導入に関する国際的文書の必要性に応えている。宣言は、付属に掲げる多くの関連国際条約および勧告を強化・拡張するものである。 II.誓約 7.我ら国連加盟国は、  (a)この「薬物需要削減の指針に関する宣言」を私たちの行動の指導原則とすることを約束し、  (b)公衆衛生問題の緩和、個人の健康と福祉の改善、社会的・経済的統合の促進、家族制度の強化、および、コミュニティーの安全向上に貢献する需要削減プログラムに対する政治、社会、保健および教育面でのコミットメントを持続することを誓い、  (c)バランスの取れた形で、供給抑制と需要削減のための地域間協力および国際協力を促進することに同意し、  (d)締約国が「麻薬および向精神薬の不正需要の除去あるいは削減を目的とした適切な措置」を講ずるべきであり、このような需要の除去あるいは削減を目的とした二国間あるいは多国間の合意あるいは取決めを結ぶことができるとする、1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」第14条4項の規定による措置を採択する。 III.指針 8.国連憲章および国際法の原則、特に、国家の主権と領土不可侵性の尊重、人権と基本的自由および世界人権宣言の諸原則、ならびに、責任共有の原則に従い、国内的および国際的薬物統制戦略の需要削減措置を策定する上で、以下の原則を指針とする。  (a)薬物問題解決への総合的アプローチとしては、需要削減と供給削減が相互を補強するような、バランスの取れたアプローチを採用するものとする。  (b)需要削減政策は、   (i)薬物使用の防止と薬物乱用の悪影響軽減を目的とし、   (ii)一般的にも、また、地理的位置、経済情勢あるいは相対的に多い薬物中毒者数等を理由とした特に危険の高い状態においても、コミュニティー・レベルでの個人の積極的で協調的な参加を規定・奨励し、   (iii)文化とジェンダーの双方に配慮し、   (iv)支持的環境の整備と維持に貢献するものとする。 IV行動の要求 A.問題の評価 9.需要削減プログラムは、薬物の使用および乱用、ならびに、国民を取り巻く薬物関連問題の性質と規模の定期的評価に基づくものとすべきである。これは新たに起こっている動向を明らかにする上で不可欠である。各国による評価は、関連する調査の結果を活用し、地理的要素の考慮を認めながら、同様の定義、指標および薬物状況評価手続きを用いて、包括的、体系的かつ定期的な方法で行うべきである。需要削減戦略は、調査から得られた知識と、過去のプログラムから得られた教訓に基づいて策定すべきである。これらの戦略においては、現行条約上の義務に応じ、国内立法および「薬物の乱用統制に関する将来の活動の学際的な総合的要綱」に従いながら、当該分野での科学的進歩を考慮すべきである。 B.問題への取組み 10.需要削減プログラムは、使用開始の予防から薬物乱用の健康および社会に対する悪影響緩和に至るまで、防止のあらゆる分野を対象とすべきである。プログラムには、情報、教育、啓発、早期介入、カウンセリング、治療、リハビリ、再発防止、アフターケアおよび社会復帰が含まれるべきである。必要を有する者に対しては、早期の援助とサービスへのアクセスを提供すべきである。 C.パートナーシップの形成 11.コミュニティー全体が参加するパートナーシップ型アプローチは、薬物問題の正確な評価、実現可能な解決策の判別、ならびに、適切な政策およびプログラムの策定・実施にとって死活的重要性を持つ。したがって各国政府、非政府機関、保護者、教員、保健専門家、青少年およびコミュニティー団体、雇用者団体、労働者団体、ならびに、民間セクターの間の協力が不可欠である。このような協力は、一般の認識を向上させるとともに、薬物乱用の悪影響に対処するコミュニティーの能力を強化する。一般の人々の責任と認識、および、コミュニティーの動員は、需要削減戦略の持続可能性の確保に極めて重要である。 12.需要削減努力は、より幅広い社会福祉・健康増進政策と予防教育プログラムに統合すべきである。健康的な選択肢が魅力的でアクセス可能となるような環境を確保・維持することが必要である。薬物需要を削減する努力は、多部門間の協力を奨励する一層幅広い社会政策アプローチの一環として行われるべきである。このような努力は、包括的、多角的かつ協調的なものとし、国民全体の健康および社会的・経済的福祉に影響する社会政策および公共政策に統合すべきである。 D.特別なニーズの重視 13.需要削減プログラムは、国民一般のニーズとともに、青少年に特別な注意を払いながら、特定グループのニーズにも取り組むことを目的とすべきである。プログラムは、ジェンダー、文化および教育面での相違を考慮しながら、最もリスクの大きいグループにとって効果的、妥当かつアクセス可能なものとすべきである。 14.薬物乱用者の社会復帰を促進するため、適宜、加盟国の国内法および政策にしたがって、各国政府は、有罪判決あるいは処罰の代替策、または、処罰に追加するものとして、薬物乱用者が治療、教育、アフターケア、リハビリおよび社会復帰のための措置を受けるべきであるとする規定の制定を検討すべきである。加盟国は、刑事司法制度内において適宜、薬物乱用者に教育、治療およびリハビリのサービスを提供する能力を開発すべきである。この全体的文脈においては、刑事司法、保健および社会制度間の密接な協力が必要であるため、これを奨励すべきである。 E.正しいメッセージの発信 15.教育および予防プログラムで利用される情報は、明確で、科学的に正確で信頼性があり、文化的に有効で、時宜に適い、かつ、可能であれば対象者についてテスト済みのものとすべきである。信頼性を確保し、センセーショナリズムを避け、信頼を促進し、実効性を増大させるために、不断の努力を行うべきである。各国はメディアと協力して、薬物使用の危険性に関する世論の認識向上、および、大衆文化における薬物使用の宣伝に対抗する予防メッセージの推進を図るべきである。 F.経験の活用 16.各国は、需要削減戦略およびプログラムの策定、実施および評価のあらゆる側面において、政策立案者、プログラム計画担当者および実務担当者の訓練を十分に重視すべきである。これらの戦略およびプログラムは継続的なものとし、参加者のニーズ充足を目的とすべきである。 17.需要削減の戦略および具体的活動は、その実効性向上のために十分な評価を受けるべきで ある。この評価はまた、特定の文化およびプログラムにとって適切なものとすべきである。 評価結果は関係者全員と共有すべきである。 ●付属 ●国内薬物統制戦略を検討する政府のための追加的参考資料 1.1972年の議定書で修正された1961年の「麻薬に関する単一条約」第38条、および、1971年の「向精神薬に関する条約」第20条によれば、これら条約の締約国は、麻薬あるいは向精神薬の乱用防止、および、「乱用者の早期発見、治療、教育、アフターケア、リハビリおよび社会復帰のために」あらゆる実際的な措置を講ずることを義務づけられている。1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」第14条は、締約国が「人間の惨禍を緩和し、不正取引きへの金銭的インセンティブを排除するために、麻薬および向精神薬に対する不正需要の根絶あるいは削減を目的とした適切な措置を講ずるものとする」と規定している。 2.薬物乱用の規模、性格および影響に対する地球的懸念の高まりにより、対策を強化する機会と意志が生まれていることを考慮し、各国は、需要削減の分野でこれまでに策定された国際協定および宣言の有効性と重要性を再確認している。需要削減の重要性は、1987年6月17日から26日にかけてウィーンで開かれた「麻薬の乱用と不正取引きに関する国際会議」によって確認された。同会議では「麻薬の乱用統制に関する将来の活動の学際的な総合的要綱」が採択されている。学際的な総合的要綱は、需要削減分野における14の目標と、国内、地域および国際レベルでこれを達成するために必要な活動の種類を定めている。総会、経済社会理事会および麻薬委員会はすべて、学際的な総合的要綱に支持を表明し、需要削減への注意を深める必要性を強調する決議を採択している。さらに、麻薬および向精神薬の不法な生産、供給、需要、取引きおよび流通に対処する国際協力に関する第17回特別総会は、1990年2月23日の決議S−17/2において「政治宣言および地球的行動計画」を採択した。地球的行動計画の第9条から第37条は、「麻薬および向精神薬に対する不正需要根絶を目的とした薬物乱用の防止と削減」、ならびに、薬物乱用者の治療、リハビリおよび社会復帰に関連する問題を扱っている。1990年4月9日から11日にかけてロンドンで開かれた「薬物需要削減およびコカイン対策のための世界閣僚級サミット」では、需要削減に一層の注意が向けられた。 3.加えて、「児童の権利に関する条約」第33条は、麻薬および向精神薬の乱用から子どもを守る必要性を強調している。「2000年とそれ以降を目指した世界青年行動計画」にも同様の規定があり、その第77条および第78条には、需要削減活動に青少年団体と若者を関与させるための提案が含まれている。同じく重要性を持つものとして、国際労働機関の三者間専門家会合によって採択され、後に1995年の同機関理事会第262会期で支持された、職場におけるアルコールおよび薬物関連問題の管理に関する行動規範があげられる。また、1958年の「雇用および職業面での差別に関する国際労働機関条約(No.・)」に含まれる機会および処遇均等の原則も、需要削減に直接関係するものである。 (国際協力の強化のための措置) 国連薬物特別総会 ニューヨーク、1998年6月8−10日 ●世界薬物問題対策に関する国際協力を強化するための措置 内容 A)アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質の不正製造、取引きおよび乱用防止に関する行動計画‥‥20 I.アンフェタミン系興奮剤の問題に対する認識向上 II.不正なアンフェタミン系興奮剤の需要削減 III.アンフェタミン系興奮剤に関する正確な情報の提供 IV.アンフェタミン系興奮剤の供給抑制 V.アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質に関する取締まりシステム強化 B)前駆物質の取締まり‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥25  I.麻薬および向精神薬の不正製造に用いられる前駆物質の不正製造、輸出入、取引きおよび流通を防止する措置   a.立法および国内取締まりシステム   b.情報交換   c.データ収集  II.前駆物質取締まりに関する国際協力の普遍化をめざして  III.代替化学品 C)司法協力を促進するための措置‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥31  I.犯罪人引き渡し  II.司法共助  III.刑事手続きの移送  IV.その他の協力形態と訓練  V.コントロールド・デリバリー  VI.海路による不正取引き  VII.補完的措置 D)マネー・ローンダリング対策‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥34 E)不正薬物作物の撲滅および代替開発に係る国際協力に関する行動計画‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥37  I.大量の不正栽培に対処するバランスの取れたアプローチの必要性  II.代替開発のための国際協力強化  III.代替開発へのアプローチの改善および革新  IV.監視、評価および情報共有の拡充  V.不正作物取締まりに関する法執行の必要性  VI.フォローアップ ●A.アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質の不正製造、取引きおよび乱用防止に関する行動計画  総会は、  以下の「アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質の不正製造、取引きおよび乱用防止に関する行動計画」を採択する。 I.アンフェタミン系興奮剤の問題に対する認識向上 ・問題 1.アンフェタミン系興奮剤(ATS)の問題は、多くの国では比較的新しい問題ではあるが、急速に拡大しており、このまま消え去るとは考えられない。その規模と地理的範囲も急速に広がっている。しかし、この問題に関する世界的な認識は限られており、対応もまちまちで一貫性を欠いている。 行動 2.国際社会は、より高い優先度を以って、アンフェタミン系興奮剤の問題へのあらゆる側面からの対策を進めるべきである。国連システムの権限ある主体は、この問題を適切に考慮すべきである。アンフェタミン系興奮剤の問題の優先度を高め、麻薬委員会の定期的な議題とすべきである。 3.国際機関および地域機関は、幅広い国際条約の枠組み、ならびに、経済社会理事会、麻薬委員会および国際麻薬統制委員会が採択したアンフェタミン系興奮剤問題の諸側面に取り組む決議あるいは決定の実施を求め続けるべきである。 4.国連薬物統制計画、国際麻薬統制委員会、世界保健機関等の国際機関は、アンフェタミン系興奮剤問題の技術的・科学的側面に関する活動を強化し、各国および一般向けの定期刊行物でその成果を普及すべきである。 5.各国は、この問題に正当な優先度と注目を与え、上記3.で触れた地球的枠組みを実施すべきである。 6.各国による努力に加え、アンフェタミン系興奮剤問題に対する認識を高める上で、民間セクターおよび非政府機関の動員も模索すべきである。 7.各国は、本行動計画遂行のために取った行動に関する情報を広め、これを麻薬委員会に報告すべきであり、報告を受けた麻薬委員会は、国内、地域および国際レベルにおける行動計画実施状況の審査および評価を行うべきである。 II.不正なアンフェタミン系興奮剤の需要削減 ・問題 8.多くの国において、アンフェタミン系興奮剤の乱用はますます若年層に集中する傾向があるが、若者たちの間では、こうした物質が安全で無害であるという誤った考えが広がっている。このようなアンフェタミン系興奮剤の乱用は、消費文化の主流に躍り出る危険をはらんでいる。 ・行動 9.国連薬物統制計画、世界保健機関等の国際機関は定期的に(a)アンフェタミン系興奮剤とその副産物の健康に対する影響に関する目下の情報を照合し、(b)アンフェタミン系興奮剤に対する需要の原動力となっている社会的、経済的および文化的諸力を研究し、(c)アンフェタミン系興奮剤乱用の防止および治療、ならびに、合法的なアンフェタミン系興奮剤の処方に関する適切な慣行を判別、文書化および普及し、(d)これらの分野で非政府機関と活動の調整を行うべきである。 10.各国は、(a)アンフェタミン系興奮剤の乱用パターンの変化を継続的に監視し、(b)アンフェタミン系興奮剤乱用の社会面、経済面、健康面および文化面を調査し、(c)能力があれば、アンフェタミン系興奮剤乱用の健康に対する長期的影響に関する研究を優先課題とし、(d)国際機関が照合した情報を含め、これらの活動の成果を、対象を絞った予防・治療努力、および、適当な場合には啓発キャンペーンに活用して広め、(e)アンフェタミン系興奮剤乱用の悪影響に関する情報をその教育キャンペーンに含めるべきである。 III.アンフェタミン系興奮剤に関する正確な情報の提供 ・問題 11.これまで裏社会に隠れていたアンフェタミン系興奮剤に関する情報は、近代的技術によって幅広い人々に入手可能となっている。アンフェタミン系興奮剤のヤミ製造法、アンフェタミン系興奮剤の乱用方法、無害な薬物としてのアンフェタミン系興奮剤のイメージ、および、現行の取締まりをかいくぐる方法は、いずれも幅広く知れ渡っている。この悪影響に対処するため、インターネットなどの情報技術を教育・訓練目的に活用すべきである。 ・行動 12.国内、地域および国際レベルにおいて適宜、従来のメディアおよび通信・ソフトウェア業界の代表と協議を行い、その自制を促すとともに、現行法に基づき、不正な薬物関連情報の排除に向けた枠組みを開発すべきである。この枠組みの開発は、ユーザーがインターネット上で不正な薬物関連資料を発見した場合にこれを報告できる「報告ホットライン」等、業界が管理する開放的苦情メカニズムを起点とすることができよう。執行行為の責任は、引き続き適切な執行機関が負うべきである。各国は、ソフトウェアの格付け・選別方法の開発および利用を奨励することで、違法ではないが好ましくない情報を含んでいる可能性のある資料からユーザーが身を守ることを可能にすべきである。 13.各国は、不正薬物と薬物関連情報に関する自国の法的枠組みが適宜、オフラインの場合と同様インターネットにも適用されることを確保すべきである。 14.国連薬物統制計画、国連教育科学文化機関、世界保健機関、国際刑事警察機構、関税協力理事会(通称世界関税機関)等の国際機関と、適切な地域・国内機関は、全世界的な情報交換システム(すなわち、インターネットを通じた薬物乱用に関する国内、地域および国際資料センターの電子接続)に参加し、アンフェタミン系興奮剤問題の諸側面に関する正確で時宜に適った情報を広めるとともに、特に開発途上国への援助を重視して、遠隔学習へのインターネットの活用を行うべきである。 15.各国は、(a)近代的情報技術を用いて、アンフェタミン系興奮剤乱用の健康面、社会面および経済面での悪影響に関する情報を広め、(b)とりわけ国際情報交換システムを通じ、アンフェタミン系興奮剤に関する対策方法の開発、用語の統一および協調的データ収集を奨励すべきである。 16.各国はまた、1971年の「向精神薬に関する条約」第10条(取締まり対象物質の一般向け宣伝禁止)および1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」第3条(薬物関連不正行為の公然の教唆禁止)にある規定を完全実施するよう、適切な行動をとるべきである。 IV.アンフェタミン系興奮剤の供給抑制 ・問題 17.アンフェタミン系興奮剤に関し、主たる供給統制戦略は、密売に焦点を絞り、不正製造を止めさせ、試験機器および化学原料(すなわち前駆物質)の転用を防止することである。地域22間で取引きされるのはアンフェタミン系興奮剤の最終生産物ではなく、前駆物質であることから、この最後の要素は特に重要である。しかし前駆物質には幅広い合法的な産業用途があり、合法的な国際貿易にも組み込まれている。実効的な監視は、産業の密接な協力があってはじめて可能である。このような協力はまた、合法的供給源からのアンフェタミン系興奮剤の転用防止においても、死活的な役割を果たす。各国政府が国際麻薬統制委員会に提出した情報によれば、アンフェタミン系興奮剤の合法的国際貿易から不正経路への転用が見られており、一部の国ではアンフェタミン系興奮剤の合法的消費量が多くなっている。 ・行動 18.1988年条約第12条、関連する経済社会理事会決議、および、国際麻薬統制理事会の勧告に規定する前駆物質取締まりに関する既存の枠組みに基づき、国際、地域および国内レベルの権限ある当局は、アンフェタミン系興奮剤の前駆物質を対象として、以下の行動をとるべきである。  (a)アンフェタミン系興奮剤の前駆物質の取引きを律する措置や行動規範を確立すべく、業界との密接な協力を促進する。  (b)輸出前通告の使用拡大および国内・国際レベルでの情報交換手続の改善を含め、1988年条約の対象リストに掲げられたアンフェタミン系興奮剤前駆物質の転用取締まり措置の実施を拡大する。  (c)疑わしい取引きの判別を助けるための当局と間連業界との自発的協力を含め、アンフェタミン系興奮剤の不正製造に頻繁に用いられることが明らかになっている取締まり対象外物質の監視を改善する。  (d)一般的早期警戒システムの一環として、上記(b)に述べた物質の国際的特別監視リストを確立する。  (e)1988年条約第3条に言うところの刑事犯罪として、アンフェタミン系興奮剤の不正製造に用いられることを知りながら取締まり対象外の化学物質の転用を行った者を処罰することを検討する。  (f)不正取引きの発見および防止を目的とした取締まり対象外物質に関する調査の場合を含め、あらゆる関係機関間で情報の交換を行う。 19.アンフェタミン系興奮剤のヤミ製造に対象を絞るため、国際、地域および国内当局はまた(a)ヤミ製造法を監視し、(b)薬物の特性分析とプロファイリングを開発し、(c)1988年条約第13条に従い、試験機器の販売をできる限り監視し、(d)アンフェタミン系興奮剤の技術的複雑性を取り扱うすべての執行・取締まり担当職員を訓練し、(e)化学構造が類似する物質の区別、および、アンフェタミン系興奮剤に含まれる個別物質発見のための手続きを開発し、これを執行当局の使用に供する可能性を模索すべきである。 20.各国は、アンフェタミン系興奮剤の不正製造および密売対策の執行努力を強化すべきである。 21.1971年条約および関連する経済社会理事会決議に基づき、権限ある当局は、業界との協力の下(a)合法的な製造、国際貿易および小売取引き(薬局)からの不正経路への転用、ならびに、(b)かかる物質の無責任なマーケティングおよび処方を発見・防止するために、 アンフェタミン系興奮剤の不正製造、取引きおよび流通の動向を厳しく監視すべきである。権限ある当局はまた、1971年条約および関連する経社理決議に従い、あらゆる関連情報を交換することにより、国際麻薬統制委員会とも密接に協力すべきである。 V.アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質に関する取り締まりシステム強化 ・問題 22.国際薬物統制システムは、アンフェタミン系興奮剤のヤミ製造に適用しようとする場合、いくつかの弱点を露呈するが、その中でも重大なものとしては、取締まり対象の向精神薬を決定する手続きが複雑であること、前駆物質取締まり体制が比較的新しいものであること、および、国際薬物統制条約による取締まり範囲の変更に異なった手続きが用いられていることがあげられる。地域ごとに異なりうる緊急事態について効果的な対処あるいは予防を行うためには、迅速かつ柔軟で新たな状況への適応力を持ち、かつ、新たに発生するアンフェタミン系興奮剤問題の複雑化に技術的にも理念的にも対応できる取締まりシステムが必要である。 ・行動 23.規制による幅広い取締まり範囲に関し、国際機関および地域機関、ならびに、各国は適宜、以下を行うべきである。  (a)不正市場で発見された新しいアンフェタミン興奮剤を迅速に判別・評価する。この評価を利用して、各国は、不正製造および密売に対する法的行動をとれるよう、かかる物質を取締まり対象とすべきか否かを決定することもできる。  (b)特に取締まり対象物質指定の柔軟化に関し、取締まりの技術的基盤を改善する。このためには、様々な国で用いられている以下のモデルのいずれかが適用されることになろう。   (i)対象物質指定の緊急あるいは簡素化プロセス   (ii)構造的に類似したグループ(類似品)に基づく対象物質指定   (iii)化学構造の類似性、および、既知あるいは予測される薬学的効果に基づく、刑事訴追を目的とした取締まり  (c)関連する経社理決議を実施するとともに、1971年条約により、向精神薬の取締まりを麻薬と同等のレベルに強化することを目指した国際麻薬統制委員会の勧告を検討する。  (d)1971年条約第22条および1988年条約第3条に従い、アンフェタミン系興奮剤の不正製造および密売に対する適切な制裁および罰則措置を導入し、アンフェタミン系興奮剤に関連する犯罪に対する法律執行努力を強化し、国内の法律および政策に沿って、アンフェタミン系興奮剤乱用に対する適切な罰則や代替的措置を検討する。  (e)発見したヤミ製造所の規模、製造法、用いられる前駆物質、純度、価格、アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質の供給源、疫学的情報等の問題に関するデータ収集と情報交換を改善する。  (f)とりわけ、アンフェタミン系興奮剤取締まりに関する国内法の制定・修正に関する国家相互の情報交換、アンフェタミン系興奮剤のヤミ製造および密売における新たな動向を監視するための地域的取決め、ならびに、迅速な通信経路の確立を通じ、地域的協力を強化する。  (g)アンフェタミン系興奮剤が提起する複雑な技術的問題に対処するノウハウが限られている国々の要請に応じ、アンフェタミン系興奮剤の製造、密売および乱用に対する効果的措置の実施に必要な情報と援助を提供する。  (h)アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質の取締まりシステムを強化し、「己の顧客を知れ」という原則を貫徹させるために、アンフェタミン系興奮剤の絡む取引きに関する各国間の情報交換を改善する。 ●B.前駆物質の取締まり  総会は、  近年において、前駆物質の転用が不正薬物製造分野で最も深刻な問題の一つとなっているという事実を認識し、  1961年の「麻薬に関する単一条約」、1972年の「単一条約を修正する議定書」、1971年の「向精神薬に関する条約」および1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」が、薬物および前駆物質の取締まりに関する国際的基盤を定めていることに留意し、  化学品の合法的取引きから不正薬物製造への転用防止が、薬物の乱用および密売に対処する包括的戦略に不可欠の要素として重要であることを再確認し、  この問題に立ち向かうためには、かかる犯罪行為の防止および処罰を可能にする厳格で近代的な法律の制定と実効的適用、ならびに、この問題への対処に必要な人的・物的資源を有する効率的で十分に訓練された捜査機関および司法機関の設立が要求されることを認識し、  その多くが簡単に代替できる化学品を用いて、様々な方法で不正に製造できる合成薬物によって提起される特別な問題に留意し、  また国際麻薬統制委員会の『前駆物質および不可欠な化学品の転用防止に関する国内当局用指針』、および、1988年条約第12条の実施に関する国際麻薬統制委員会年次報告の付録「各国政府による1988年第12条の実施に関する国際麻薬統制委員会の勧告概要」をはじめとする、国際薬物統制条約実施に関する実用的指針の開発において見られた進展にも留意し、多くの国の権限ある国内当局間の協力によって得られた前駆物質出荷取締まりの進展、ならびに、この協力を促進し、不正取引きへの転用防止のために個別取引きの合法性を検証する政府への援助を行う上で国際麻薬統制委員会が行った重要な作業を意識し、また多くの国々が、取引きの合法性を判定できるような詳細な捜査を実施するために十分な資源を欠いているという事実も意識し、前駆物質取締まりの経験によれば、前駆物質転用を防止する上で、全関係国の権限ある国内当局および関連国際機関の間の多角的情報交換を、必要に応じて二国間および地域的情報共有取決めによって補完することが不可欠であることを考慮し、薬物密売人が、1988年条約の表・および・に記載された物質およびその他代替品として利用される物質を含め、薬物の不正製造に必要な前駆物質を入手し続けていることを深く憂慮し、前駆物質転用防止措置が効果を現すのは、共通の原則と目標に導かれた全世界的な協調行動と国際協力を通じてのみであることを考慮し、代替的化学品を含む麻薬および向精神薬の不正製造に用いられる前駆物質の不正製造、輸出入、密売、流通、および、合法経路から不正取引きへの転用を防止する措置、ならびに、前駆物質取締まりに関する国際協力を強化するための追加的措置を、以下のように採択することを決定する。 I.麻薬および向精神薬の不正製造に用いられる前駆物質の不正製造、輸出入、密売および流通を防止する措置 a.立法および国内取締まりシステム ・問題 1.各国が転用防止のためにとるべき行動、および、転用の試みを暴き、出荷を防止する上でのこれら行動の成功は、各国が、前駆物質の移動を実効的に監視するのに十分な立法基盤あるいは取締まりシステムを確立した場合にのみ可能となる。さらに、現行立法を効果的に実施するためのメカニズムおよび手続きも確立しなければならない。 2.実効的な取締まりシステムを確立するため、各国は、権限ある国内当局とその特定的役割を明らかにし、この情報を他国と共有する必要がある。各国はまた、取締まり措置の実際的適用の詳細も共有すべきである。 3.これら必要な措置を講じていない国々も多い。 ・行動 4.各国は、権限ある国際機関および地域機関、ならびに、必要に応じてできる限り各国の民間セクターとも協力し、以下を行うべきである。  (a)特に、1988年条約の表・および・に記載する物質の製造および流通に関わる企業および個人の取締まり・許可制度、ならびに、疑いのある積荷の発見を容易にすることを目的とした、かかる物質の国際貿易監視システムの設立を含め、まだ着手されていない分野において、「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」第12条の規定および提案、ならびに、関連する麻薬委員会および経済社会理事会の決議の厳格な遵守に必要とされる国内法規を採択・実施するとともに、かかる取締まり実施の責任を負う権限ある国内当局を指定する。  (b)国際麻薬統制委員会の1988年条約第12条実施に関する年次報告に含まれる同委員会の関連勧告を十分に考慮した上で、現行の前駆物質取締まり規定を定期的に審査し、何らかの弱点が明らかになった場合には、これを強化する適切な措置を講ずる。  (c)国内立法規定に従い、前駆物質の合法的取引きから薬物の不正製造への転用に関連する個人あるいは企業の違法行為を、1988年条約第3条に言う刑事犯罪として処罰するために、刑法、民法あるいは行政法上の措置を講ずる。  (d)立法措置採択のための手続き、ならびに、適当な場合には取引き追跡捜査の利用を含め、前駆物質の不正取引きおよび転用を防止・処罰する措置の適用に関する経験を交換する。  (e)時宜に応じて、国際麻薬統制委員会に対し、輸出入の認可のために満たすべき要件の詳細を含め、前駆物質の輸出入および中継を取り締まるために採択された国内規制に関する報告を提出する。  (f)押収された化学品の処分が環境に悪影響をもたらさないようにするため、必要な措置を講ずる。 b.情報交換 ・問題 5.輸入国と輸出国の間の迅速で時宜に適った情報交換は、効果的な前駆物質の取締まりの鍵を握るものであり、これによって各国は、個別取引きの合法性を検証し、前駆物質転用防止のために疑わしい積荷を判別できるようになる。時宜に適ったフィードバックを含め、その他の権限ある国内機関および国際麻薬統制委員会との間で、このような情報交換を確保する体系的メカニズムを極秘ベースでも確立していない国が多い。 6.同様に、密売人も、必要な化学品の入手の道が閉ざされたとき、その他の国の供給源に素早く乗り換えている。経験によれば、転用未遂および疑わしい取引きあるいは足止めされた積荷に関する情報を、他の場所で同じ試みが行われないよう、他国および国際麻薬統制委員会と即座に共有することの重要性が確認されている。 ・行動 7.各国は、権限ある国際機関および地域機関、ならびに、必要に応じてできる限り各国の民間セクターとも協力し、以下を行うべきである。  (a)以下の行動を含め、前駆物質取引き監視のためのメカニズムおよび手続きを改善する。   (i)特に、輸出国から輸入国の権限ある当局に対する、1998年条約の表・にある物質と、同第12条10項の要件に加えて無水酢酸および過マンガン酸カリウムが絡むあらゆる取引きに関する輸出前通告、ならびに、輸入国の要請に応じた事務総長の通告を含め、前駆物質の輸出が行われる前に、これに関して輸出国、輸入国および中継国の間、ならびに、国際麻薬統制委員会との間で定期的な情報交換を行う。麻薬および向精神薬、特にアンフェタミン系興奮剤の不正生産に効果的に対処する上での輸出前通告の重要性と有用性を認識し、表・に記載されるその他の物質についても、同様の努力を行うべきである。これらの措置は、これも前駆化学品の転用防止を確保する上で必要な、すべての国における厳しい国内取締まりを補完すべきである。   (ii)該当する化学品に対する合法的な国内需要に関する情報交換、輸出前通告を受けた国による輸出国に対する時宜に適ったフィードバック、および、輸入国から要請があった場合に、合法的な最終用途を検証するために十分な時間(15日間まで)を認める輸出国による規定を含め、事前に取引きの合法性を検証するメカニズムの権限ある国内当局による実施を促進する。   (iii)輸出国、輸入国および中継国の間、および、国際麻薬統制委員会との間で、前駆物質が絡む疑いのある取引き、および、適切な場合には行われた押収および取引き拒否に関する情報を交換する。  (b)1988年条約第12条11項の規定に従い、前駆物質の輸出入あるいは中継および意図された用途に関して各国が提供した報告に何らかの業界・企業秘密あるいは取引きプロセスが含まれている場合、これを非公開とする。必要に応じ、個人データの正当な保護を確保するため、適切な法的枠組みを設定すべきである。  (c)輸出入であれ積換えであれ、ある取引きの合法性が検証できない場合に下された前駆物質出荷許可の拒否決定について、可及的速やかに国際麻薬統制委員会および必要と考えられるその他の関係国に通報を行うとともに、他国が同様の行動を検討できるよう、拒否理由に関するすべての関連情報を提供する。輸出入国あるいは中継国は、出荷許可の発行を検討する場合、当該取引きのあらゆる要素、特に、該当する積荷について許可を拒否した国によって提供された情報がある場合、かかる情報を十分に評価した上で、決定を下すべきである。 c.データ収集 ・問題 8.合法的取引きの通常のパターン、ならびに、前駆物質に係る合法的用途および要件に関する情報は、個別取引きの合法性を検証する上で必要である。このような情報がなければ、1988年条約第12条が義務づける前駆物質の移動監視は難しくなる。前駆物質の合法的移動に関するデータを収集できていない国も多い。この能力の欠如は、十分な取締まりのための枠組みおよびシステムが出来上がっておらず、前駆物質取締まりに関する権限分担が明確化されていないことを示しているとも考えられる。 ・行動 9.各国は、権限ある国際機関および地域機関、ならびに、必要に応じてできる限り各国の民間セクターとも協力して、以下を行うべきである。  (a)秘密保持とデータ保護に関する規定に従いながら、前駆物質の合法的製造・輸出入および前駆物質取引きに関連するその他何らかの活動に関するデータ取得、ならびに、前駆物質の疑いのある発注あるいは盗難事件を報告し、常に権限ある国内当局と協力することを義務づけられた、前駆物質関連活動を行う公企業あるいは私企業の登録簿作成を含めた前駆物質の移動監視を目的として、柔軟で効果的なメカニズムをそれらがまだ存在しない分野において、設計・確立する。  (b)例えば、指針あるいは行動綱領の制定を通じ、化学品の貿易・生産業界団体、および、前駆物質に関連する何らかの活動を行う個人あるいは企業との協力を確立あるいは強化し、かかる物質の取締まりを狙いとする努力を強める。  (c)情報交換を改善するため、化学品の製造あるいはマーケティングを行う者について「己の顧客を知れ」という原則を確立する。 II.前駆物質取締まりに関する国際協力の普遍化をめざして ・問題 10.前駆物質の転用防止に成果が見られているのは、対策を講ずる輸出入国・地域および中継国・地域の政府が世界中で増えているためであるが、その数は依然として限られている。 11.これらの国々は、前駆物質取締まりに関する包括的立法を制定していない場合でも、自らの領土で前駆物質の移動を監視する特定の措置を講じている。しかし取締まりが不十分な国および地域を密売人が、転用地点として利用しているという事実があるにもかかわらず、十分な前駆物質取締まりシステムを開発していない国も多い。前駆物質の密売に関して類似の状況に直面するすべての国々が、転用の試みを暴くために同様の実際的な措置を講じなかったり、取締まり実施に関する経験を共有しなかったりする場合、取締まりはその目的を果たさない。密売人による不正薬物製造に必要な前駆物質の入手可能性を制限するためには、すべての国々がより統一的な行動をとる必要がある。 ・行動 12.各国は、権限ある国際機関および地域機関、ならびに、必要に応じてできる限り各国の民間セクターとも協力し、以下を行うべきである。  (a)疑いのある取引き、ならびに、国際麻薬統制条約とこれに関連する決議、指針および勧告に基づき、二国間あるいは地域協定を補完するような形で国内の前駆物質取締まり法規を実施する過程で足止めされた積荷に関し、広範で多角的な情報交換を促進するための統一的手続を制度化する。  (b)前駆物質の国際取引きの効果的な監視に不可欠な情報の交換を奨励する多国間協定を促進し、特に個別取引きに関する情報共有のための実際的システム考案に重点を置きながら、類似の二国間あるいは地域協定を補完する。  (c)1988年条約第12条12項(c)に従い、前駆物質の不正取引きおよび転用を防止する措置を講ずることを目的として、かかる不正行為について犯罪組織が用いる方法や手段に関して、より体系的な情報を広める。  (d)前駆物質の取締まりを強化し、その不正目的への転用を回避するため、最も資源が少ない国々を最優先に、要請に応じた各国向けの技術援助プログラムを促進する。  (e)警察、税関、ならびに、その他前駆物質転用の行政捜査、差押え、発見および取締まりに関連する経験の交換を促進する。  (f)必要に応じ、専門的な技能とノウハウを向上させるため、前駆物質の不正取引き・転用対策に関する専門家会合を開催する。 III.代替化学品 ・問題 13.1988年条約表・および・に記載する不正薬物製造に必要な前駆物質の中には、同条約の規定実施の結果、入手が特に困難となったものがある。密売人は、取締まりの厳しい前駆物質の代替品として利用しうる化学品の入手に成功している。これに加えて密売人は、1988年条約表・および・には現在のところ記載のない物質を必要とする、新たな加工法あるいは製造法を判別・利用している。密売人はまた、いわゆる取締まり薬物類似品も製造しているが、その多くも、現在表・および・に記載されていない物質を原材料としている。 ・行動 14.各国は、権限ある国際機関および地域機関、ならびに、必要に応じてできる限り各国の民間セクターとも協力し、以下を行うべきである。  (a)1996年7月24日の経済社会理事会決議1996/29第・節によって要請されるところに従い、現在は1988年条約表・および・に記載されていないが、その薬物不正取引きへの利用について実質的な情報が存在する物質に関し、国際麻薬統制委員会との協力の下に限定的国際特別監視リストを作成し、同条約第12条12項に従って、合法的経路から不正取引きに転用された取締まり対象外物質について定期的に委員会に報告することにより、上記リストの維持に貢献するとともに、薬物の不正製造に用いられかねない物質の時宜に適った判別を目的に、取締まり対象外物質の潜在的用途に関する研究を促進する。  (b)国内あるいは地域レベルで妥当な物質に関する特定の監視措置を含め、化学業界との協力の下に、自発的、行政的あるいは立法的監視措置を適用し、特別監視リストに含まれる物質の合法的経路から不正取引きへの転用を防止する。加えて各国は、1988年条約第3条に言う刑事犯罪として、麻薬あるいは向精神薬の不正製造に用いられることを知りながら取締まり対象外の化学物質の転用を行った者を処罰し、関連する刑事罰、民事罰および行政罰を導入することを検討する。 ●C司法協力を促進するための措置  総会は、  司法協力を促進するために、以下の措置を採択する。 I.犯罪人引渡し 1.各国に以下を勧告する。  (a)必要な場合可能な限り、その国内立法を定期的に見直し、自国の憲法上の原則と法律制度の基本理念に合致する方法で、犯罪人引渡しの手続きを簡素化する。  (b)犯罪人引渡し請求の受付、対応および処理を担当する権限ある当局についての情報を他の国に提供する。この関連で、国連薬物統制計画に当該当局の名称、住所および電話番号を通報することは有用と言える。  (c)国内の法律および犯罪人引渡し慣行をまとめた資料を作成し、これを他国の利用に供する。  (d)憲法の規定、国際薬物統制条約および国内立法に従うことを条件に、外国での起訴を認めるが、有罪判決が下された場合には国籍国で服役すべく送還されるという合意の下に、自国民の重大薬物犯罪人の引渡しを検討するとともに、特に重大犯罪が絡む場合、その他従来の犯罪人引渡しに関する例外規定を再検討する。  (e)犯罪人引渡し条約を交渉する際、「犯罪人引渡しモデル条約」を適宜、資料として活用する。  (f)安全で国内の法律制度と矛盾しないかぎりにおいて、通信を容易にするために近代技術を最大限活用する。 II.司法共助 2.各国に以下を勧告する。  (a)1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」第7条の実施を可能にする国内立法を確保する。  (b)司法共助の要求を実施・執行し、または執行の移送を行う権限を持った当局を指定するとともに、1988年条約第7条8項および9項の規定に従い、かかる要求の受理を担当する当局の名称、住所、FAX番号および(あれば)電子メール・アドレス、ならびに、受付可能な言語を事務総長に通報する。  (c)司法共助の要求方法について、他国に手引きあるいはマニュアルを提供する。  (d)司法共助要求のためのモデル書式を作成する。  (e)司法共助に関する条約を交渉する際、「刑事に関する司法共助モデル条約」を適宜、資料として活用する。  (f)安全で国内の法律制度および利用可能な資源と矛盾しない限りにおいて、インターネット、ファクシミリ等の近代通信技術を最大限活用し、司法共助要求およびかかる要求の執行を迅速化・効率化する。  (g)安全で国内の法律制度および利用可能な資源と矛盾しない限りにおいて、証人の発言および証言を得るために、電話および映像回線技術の活用を検討する。 III.刑事手続きの移送 3.各国に以下を勧告する。  (a)刑事に関する手続き移送の経験がある場合、かかる経験に関する情報をその他の関係国に提供する。  (b)刑事手続きの移送あるいは受入れに必要な立法の制定を検討する。  (c)刑事手続きの移送あるいは受入れに関して類似の法律制度を有する他国、特に自国民の犯罪人引渡しを行わない国との間で、協定を結ぶことが有用であるか否かを検討するとともに、その際の交渉の基盤として「刑事に関する手続き移送モデル条約」を参照する。 IV.その他の協力形態と訓練 4.各国に以下を勧告する。  (a)法廷証拠、または金融取引きの捜査等の分野で援助を行うことができるか、薬物密売および関連犯罪に関する知識、経験および技術を交換できる専門家の交流を特に考慮して、法執行職員交流プログラムの開発あるいは拡大を検討する。  (b)適当な場合、法執行機関間の協力を強化する方法を検討する。複数国で活動する薬物取引き組織と闘うため、情報の共有と合同捜査戦略の開発を改善する。ある国における捜査活動が他国における捜査を補完するようにする。関係国の司法管轄権を損なわずに、特定プロジェクトについて協力する用意を整える。  (c)特に、押収された麻薬、向精神薬および前駆物質の科学的特性と包装材料の検査に基づいた法廷分析を通じて開発された情報を交換する。  (d)国内の法律制度に矛盾しない高速の情報交換を促進するため、近代通信能力を活用する安全な手段の開発を検討する。  (e)薬物取引き事件の捜査、税関や沿岸警備隊、警察等あらゆる関係機関の間の密接な協力推進および訓練提供の確保のために、法執行機関内あるいはそれに結びついた特別ユニットの設置を検討する。  (f)薬物乱用および関連する健康問題を緩和するため、刑事司法、保健および社会システム間の協力を補強する措置を検討する。(g)執行機関間だけでなく、司法当局間の協力も強化する。  (h)協定あるいは取決めを通じて、隣国と適宜協力し、自国の内水が不正取引きに用いられないようにする。 V.コントロール・デリバリー 5.各国に以下を勧告する。  (a)自国の国内法制度の基本原則が許す場合、国家間で相互に合意された協定、取決めおよび了解に従いながら、立法、手続きおよび慣行により、国内レベルおよび国際レベルの双方で、取引き追跡捜査の手法を用いることができるようにする。  (b)取引き追跡捜査の利用を促進するため、隣国をはじめとする他国との協定あるいは取決めの締結を検討する。あるいは、ケース・バイ・ケースでかかる可能性を検討する。  (c)経験と機材の交換を通じ、相互の援助を行う。また、不正薬物の積荷を追跡する技術的機材を開発したか、不正薬物を代替できる無害物質を開発した場合、取引き追跡操作の成功を確保するため、かかる機材あるいは物質を他国に供給することを検討する。 VI.海路による不正取引き 6.各国に以下を勧告する。  (a)権限ある国内当局の判別、船籍簿の保管、十分な法律執行権限の確立等、1988年条約の法的要件の充足を確保するよう、国内立法の見直しを行う。  (b)迅速な対応と決定を確保するという目標を持って調整と協力を促進するため、権限ある当局間の通信経路および手続きの見直しを行う。  (c)国内薬物法執行機関の長による会合を含め、二国間および地域会合によって、海上における薬物法執行に関する地域協力を促進する。  (d)1988年条約第17条に従い、海路による薬物不正取引き対策に関する協力を強化する二国間および多国間協定を交渉,実施する。  (e)疑いのある船舶の判別と監視、乗船手続、捜査手法および薬物判別を含め、海上における薬物法執行を担当する法律執行職員の訓練を行う。  (f)多国間訓練セミナーを通じて他国と協力する。  (g)その法律制度と矛盾しない範囲において、国連薬物統制計画の海上における薬物法執行訓練の手引きを用いて、共通の海上法律執行手続を促進する。 VII.補完的措置 7.以下の分野において、1988年条約の実施をさらに強化する補完的措置の策定を検討し、個人の人権尊重を正義と安全の基本原則に調和させることを各国に勧告する。  (a)薬物不正取引きが絡む事件において状況から正当化される場合における、裁判官、検察官、証人およびその他の監視・法律執行機関メンバーの保護  (b)新しい捜査手法  (c)国際協力を増大させるための手続きの調和および簡素化  (d)特に薬物関連犯罪に関する、法律機関とその司法協力能力の開発あるいは強化  (e)技術協力、訓練および人材育成の強化による、刑事司法担当職員の専門化 ●D.マネー・ロンダリング対策  総会は、  麻薬および向精神薬の不正取引きならびにその他の重大犯罪から派生する資金の洗浄問題が国際的に拡大し、金融・貿易システム、さらには政府機構の一体性、信頼性および安定性に対する地球的な脅威となっているために、犯罪人とその不正な収益に安全な逃げ場を提供しないよう、国際社会全体が対策を講ずる必要があることを認識し、  マネー・ローンダリングを処罰可能な犯罪として確立すること、および、当局が薬物不正取引きの収益を判別、追跡および凍結あるいは差押えを可能にするために必要な措置を取ることを全締約国に義務づける1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」の規定を想起し、  先進7カ国の首脳および欧州委員会議長によって設立された「金融行動タスクフォース」の40項目勧告が引き続き、関係国によって採択されたマネー・ローンダリング対策を判定する基準であることを指摘した1996年4月24日の麻薬委員会決議5(XXXIX)、ならびに、米州機構全米薬物乱用統制委員会が1996年10月にブエノスアイレスで開催された第21回通常会期で承認し、1996年12月にモンテビデオで署名された「西半球薬物対策戦略」と題する文書に満足を示し、国際社会に対して、第17回国連特別総会で採択された「地球的行動計画」の強化への顕著な貢献として、西半球における薬物対策戦略を十分に考慮することを促した1997年7月21日の経済社会理事会決議1997/40を想起し、  欧州理事会閣僚委員会によって1990年に採択された「犯罪による収益の洗浄、捜索、差押えおよび没収に関する条約」、1995年にブエノスアイレスで開催された「犯罪の収益洗浄および手段に関する米州サミット会議」の閣僚コミュニケ等に反映されたものをはじめとする、国際社会によって表明された政治的意思、ならびに、米州機構全米薬物乱用統制委員会、マネー・ローンダリングに関するアジア太平洋グループ、カリブ金融行動タスクフォース、オフショア銀行監督官グループなど、いずれもマネー・ローンダリング対策を目的とする広く認められた多国間イニシアチブであり、関係国がマネー・ローンダリング対策を決定、採択する法的あるいは政治的枠組みを構成する機関によって表明された政治的意思を認識し、  銀行その他の金融機関を通じて洗浄される、薬物不正取引きおよびその他の不正行為の収益が、金融市場を歪めるという点において、合法的投資を誘致するための金融市場自由化に向けた政策の実施にとって障害となることを意識し、  各国がその司法管轄権の範囲でマネー・ローンダリングと闘うために実行している行動を害することなく、マネー・ローンダリング対策に関する政策の適切な調整を確保する目的で、国内立法を調和させる必要があることを強調し、  不正行為から取得あるいは派生した財産の捜査、凍結、差押えおよび没収のための効果的なメカニズムを促進,開発することにより、犯罪人によるその使用を回避する必要性を認識し、  マネー・ローンダリング問題への効果的な対策は、国際協力ならびに各国に権限ある当局間の情報交換を認める「エグモント・グループ」等、二国間および多国間の情報網の確立によってのみ可能であることを認識し、  マネー・ローンダリングを刑事犯罪とする国内立法を策定,適用しようとする多くの国々の甚大な努力を強調し、  関連勧告への適合を図るあらゆる国々の大きな進歩、ならびに、効果的マネー・ローンダリング対策実施の促進および強化を目指す国際的,地域的イニシアチブに各国が積極的に参加する必要性を認識し、 1.薬物不正取引きその他の重大犯罪から派生した資金の洗浄およびこれを目的とした各国金 融システムの利用を強く非難する。 2.すべての国に対し、憲法の基本原則に従いながら、以下の原則を適用することにより、 1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」およびマネー・ ローンダリングに関するその他の関連国際文書に含まれるマネー・ローンダリング対策規 定の実施を促す。  (a)とりわけ以下を通じ、マネー・ローンダリング罪の防止、発見、捜査および起訴を規定するために、重大犯罪から派生する資金の洗浄を犯罪とする法的枠組みを確立する。   (i)犯罪収益の判別、凍結、差押えおよび没収   (ii)国際協力およびマネー・ローンダリングが絡む事件における司法共助   (iii)マネー・ローンダリング罪を司法共助協定に含め、この犯罪に関連する捜査、訴訟あるいは裁判における司法援助を確保すること  (b)以下を通じ、犯罪人とその不正資金に国内・国際金融システムへのアクセスを拒絶する効果的な金融・規制体制を確立することにより、全世界的な金融システムの全体性を維持し、マネー・ローンダリングに対処する法律およびその他の規制への適合を確保する。   (i)権限ある当局が顧客の身分と金融取引きに関する必要な情報を入手するための「己の顧客を知れ」という原則を適用した顧客の身分証明の要請   (ii)金融取引き記録の保管   (iii)疑いのある活動の報告義務づけ   (iv)マネー・ローンダリングの防止、捜査および処罰に向けた努力に対する銀行の守秘義務の障害除去   (v)その他の妥当な措置  (c)とりわけ以下のための道具を提供する法執行措置を実施する。   (i)マネー・ローンダリングに関わった犯罪人の効果的な発見、捜査、起訴および有罪判決   (ii)犯罪人引渡し手続き   (iii)情報共有メカニズム 3.国連薬物統制・犯罪防止室に対し、マネー・ローンダリング対策に関するその地球的プログラムの枠組みにおいて、マネー・ローンダリングおよび薬物取引き対策に関わる妥当な多国間および地域機関ならびに国際金融機関と協力し、要請に応じて適宜、各国に対して訓練、助言および技術援助を提供することにより、上記の原則を貫徹させるべく作業を継続するよう求める。 ●E.不正薬物作物の撲滅および代替開発に係る国際協力に関する行動計画  総会は、  不正薬物との闘いが、責任共有の原則に基づき、国際薬物統制条約の規定に従って続けられなければならず、国連憲章および国際法の目的および原則に完全に適合し、特に各国の主権と領土不可侵性、各国の内政不干渉の原則、ならびに、あらゆる人権および基本的自由を完全に順守する総合的かつバランスの取れたアプローチを必要とすることを再確認し、  効果的な作物統制戦略が代替開発、法執行および根絶を含め、多種多様なアプローチを含みうることを認識し、  包括的で恒久的な不正薬物問題の解決という枠組みにおいて、対象となるコミュニティーおよび集団に特有の社会文化的特徴を認識しながら、薬物対策を実行している国における持続的な国民経済の成長および持続可能な開発努力の文脈において、特定的に策定された農村開発措置を通じ、  麻薬および向精神薬の成分を含む植物の不正栽培を防止・排除するプロセスとして代替開発を定義し、麻薬および向精神薬の不正生産の問題がしばしば開発問題と結びついていること、ならびに、こうした連関は、責任共有の文脈において、各国、国連薬物統制計画をはじめとする国連システムの権限ある機関、地域機関および国際金融機関の間の密接な協力を必要としていることを認識し、  薬物乱用対策の効果を最大限にあげるためには、不正な需給双方の削減を含むイニシアチブに適切な資源を配分することにより、バランスの取れたアプローチを維持する必要があることを意識し、  麻薬および向精神薬の不正生産を削減する共通の努力の実効性を確保し、持続可能な人間開発に貢献するための戦略、プログラムおよび国際協力に関し、以下の目標を定めるべきことを主張する。 I.大量の不正栽培に対処するバランスの取れたアプローチの必要性 ・問題 1.不正薬物作物の禁止を促進する国際条約が採択されているにもかかわらず、ケシ、コカおよび大麻の不正栽培は依然として由々しき問題となっている。歴史が示すところによれば、不正薬物の栽培および生産を削減,排除するための決まった対応策はない。バランスの取れたアプローチは、戦略の効率化と大きな成果をもたらす可能性が高い。 ・行動 2.各国はケシ、コカおよび大麻ならびにその他の薬物作物の不正栽培を強く非難するととも に、コミュニティーの指導者にもこれを非難することを促すべきである。 3.各国は、1961年の「麻薬に関する単一条約」、1972年の「単一条約を修正する議定書」および1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」における不正薬物作物栽培に関する特定的コミットメントの実施および執行を確保すべきである。特にこの中には、麻薬および向精神薬の成分を含む植物の不正栽培を防止するために適切な措置を講ずること、ならびに、代替開発への支援を含め、根絶努力の効果を上げるために協力することを締約国に義務づけた1988年条約第12条2項および3項が含まれる。 4.薬物作物の不正栽培が行われている国は、既存の薬物統制マスタープランを考慮した具体的で測定可能な目標を含め、不正作物の削減および廃絶に関する国内戦略を開発すべきである。国内薬物作物削減・廃絶戦略には、代替開発、法執行および根絶に関するプログラム等、包括的な措置を含めるべきである。 5.各国は、代替開発に関する国内計画を開発・実施するための適切な措置を講じ、適切な機関とともに、相応の法的、経済的および社会的枠組みを創設すべきである。 6.代替開発のプログラムおよびプロジェクトは、国内薬物統制政策、ならびに、影響を受ける農村共同体における国内持続可能開発政策および戦略との一貫性を保つべきである。 7.農民の間に低所得生産構造がある場合、代替開発は強制的根絶に比し、持続可能性が高いばかりでなく、社会的にも経済的にも適切である。 II.代替開発のための国際協力強化 ・問題 8.代替開発は、不正薬物作物の栽培に対して、合法的で持続可能な経済オプションを創出・促進する上で重要な要素であるばかりでなく、国連の地球規模戦略という包括的枠組みの中で採択された不正薬物生産削減のための政策およびプログラムにおいても、鍵を握る要素の一つとなっている。代替開発の策定および実施の一義的責任は、不正薬物栽培が行われている国にある。しかし不正薬物作物の生産国は、責任共有の原則に基づき、薬物作物の廃絶を図る国内努力支援のための資金提供を必要とし続けるものと見られる。現在のところ、国内レベルでも国際レベルでも、代替開発に利用できる資金は不十分である。 ・行動 9.代替開発プログラムの成功は、地域社会、薬物統制措置の効果的執行、および、薬物乱用の悪影響に関する地域住民の啓発を含めた総合的農村開発の支援に対する、影響を受ける各国政府および国際社会双方の長期にわたる政治的・財政的コミットメントにかかっている。 10.国際社会および国連薬物統制計画をはじめとする関連国連機関は、不正薬物作物の削減および廃絶を目的として、代替開発のための十分な資金および技術援助を提供することにより、各国の不正薬物生産対策を援助すべきである。かかる援助は、被援助国の国内統制戦略の文脈において提供すべきである。また不正栽培国の国内的コミットメント、および、1988年条約第14条に含まれる規定を実施する強力な政治的意思にも援助を関連付けるべきである。 11.国連システムの機関および関連する金融機関は、その権限の範囲内で、不正作物栽培の影響を受ける地域および住民のための農村開発支援に協力すべきである。 12.国際金融機関と地域開発銀行に対しては、代替開発プログラムへの資金援助提供を奨励すべきである。 13.国連薬物統制計画は、国際金融機関、非政府機関、関連する国連機関および民間セクターに対する媒介的役割を継続し、自国の代替開発プログラムおよびプロジェクトの資金調達および支援を目的に、かかる機関にアプローチする関係国政府を援助すべきである。 14.各国に対し、国境地帯における根絶および代替開発プロジェクトを策定・実施するために、協力に関する二国間メカニズムに合意することを呼びかける。 15.不正目的で栽培される作物の合法取引き目的の生産による代替から生じる価格およびマーケティング関連の問題を克服するため、国際社会は、代替開発製品の国内および国際市場に対するアクセス改善を図るべきである。 16.代替開発プログラムは十分な薬物統制および開発の潜在的可能性をもつ地域を対象に策定すべきである。 III.代替開発へのアプローチの改善および革新 ・問題 17.代替開発は、バランスの取れた包括的薬物統制戦略の重要な構成要素であるとともに、この戦略実施のための環境整備を目的としている。その意図は、生計を立てる唯一の現実的手段として不正栽培に手を染めたコミュニティーおよび住民グループを対象として、合法的で持続可能な社会経済的オプションを促進し、総合的な貧困の根絶に貢献することにある。しかし既存のプロセスを強化し、新しい革新的な代替開発プログラムを実施するためには、累積的な努力と計画・実施方法をさらに改善する必要がある。 ・行動 18.代替開発プログラムとこれを目的とした国際協力は、以下の性質を持つものとすべきである。  (a)所定のプロジェクト対象地域で一般的な特定の法的、社会的、経済的、生態的および文化的条件に適応する。  (b)不正栽培の存在によって影響を受けるコミュニティーおよび住民グループの生活条件向上に資する、インフラ整備を含めた総合的農村開発を通じ、社会的,経済的機会の創出に貢献する。  (c)コミュニティーの参加を奨励する民主的価値観の促進に貢献し、不正作物栽培を拒絶する市民文化を開発する社会的責任を醸成する。  (d)対象となるコミュニティーに薬物乱用が見られる場合、適切な需要削減措置を含める。  (e)策定および実施を含め、開発プロセスに男女が公平に参加できる条件を整えることにより、ジェンダーの側面を組み入れる。  (f)「アジェンダ21」の目標を勘案し、環境の持続可能性に関する判断基準を順守する。代替開発のプログラムおよびプロジェクトは、生態的に脆弱な地域への不正栽培の拡大あるいは移動を回避する有効な手段として用いることができる。 19.代替開発の持続可能性を確保するために、代替開発の判別、準備、実施、監視および評価には、対話と説得に基づき、コミュニティー全体および関連非政府機関を含める参加型アプローチを採用すべきである。地方のコミュニティーと行政当局は、共通の合意による目標を開発するとともに、コミュニティーを基礎とする協定により、廃絶に至るまで不正作物を削減することを誓約すべきである。 20.地域および地方レベルにおける制度の建設は、代替開発によって育成される活動への参加レベルの向上に貢献する要因として捉えるべきである。 21.各国は、地域的文脈を勘案して代替開発プログラムを策定すべきである。各国は、二国間、地域および多国間の手段を通じて協力し、ある地域あるいは国から別の場所への不正栽培の移動を回避すべきである。 IV.監視、評価および情報共有の拡充 ・問題 22.各国はしばしば、ケシ、コカおよび大麻の不正栽培廃絶のために勇敢な努力を行ってきた。それにもかかわらず、政策および活動レベルでの情報と協力が不十分なために、かかる努力の潜在的効果は完全に発揮されていない。また近年では、不正薬物作物の栽培および生産がその他の国にも現われ、世界中のあらゆる地域に広がっている。最近の動向の中には、新たな方法及び技術を用いた囲い地での栽培,生産も見られる。 ・行動 23.生産地域の政府は、もっとも効率的かつ費用効果および利用可能性の高いデータ収集方法を用いて、効率的で正確な監視・検証メカニズムを策定すべきである。 24.各国政府は、代替開発プログラムの質的、量的効果を自分で監視できるようなフォローアップおよび評価システムを実行すべきである。不正作物削減の持続可能性は、代替開発にとって最も重要な評価基準である。 25.不正栽培廃絶のための協力を拡大するため、各国政府は、国連薬物統制計画との間で、さらに、他国政府との間で相互に、不正薬物作物の評価に関する情報を共有すべきである。その他の開発問題との関連も含め、薬物作物生産の原因と影響に関する情報も評価の対象とすべきである。 26.近年になって不正薬物作物の栽培および生産が増えている国々は、問題の程度を評価する資料を作成し、この情報も同様に交換すべきである。このような国々は、不正薬物作物の栽培および生産問題に取り組む国内計画を策定・実施する際、これらの要因を考慮すべきである。 V.不正作物取締まりに関する法執行の必要性 ・問題 27.代替開発プロジェクトが成功を収めたとしても、単にその他の機会が存在するという理由だけでは、自発的に不正生産を止めない可能性が高い栽培者および加工者もいる。このような人々には、薬物作物の不正栽培を続けることには危険性が伴うことを理解させなければならない。 ・行動 28.不正薬物作物の栽培問題を抱える国々は、必要に応じて法執行措置により、代替開発プログラムを補完するようにしなければならない。  (a)代替開発が実施されている地域においても、密売連鎖のその他の箇所においても、不正薬物製造所の操業、前駆物質の転用、密売、マネー・ローンダリングおよび関連する組織犯罪等、その他の不正行為に対処するためには、代替開発プログラムを補完する要素として法執行措置が必要となる。  (b)包括的な法執行プログラムは、不正に栽培される薬物作物の収益性に影響を与えることにより、これに代わる合法的な所得源の競争力と魅力を向上させることもできる。 29.不正薬物作物の栽培や薬物生産に犯罪組織が絡んでいる場合には、1961年条約および1988年条約で求められる不正薬物作物の根絶・廃棄および逮捕等の措置が特に適切である。 30.実際の代替所得源が既に存在する地域においては、薬物作物の不正栽培の存続に対抗する法執行措置が必要である。 31.代替開発プログラムによって実際の代替所得源がまだ確保されていない地域においては、強制的な根絶措置の執行が代替開発プログラムの成功を妨げる可能性がある。 32.根絶努力においては、利用できる研究成果を活用し、環境面で安全な方法の利用を確保すべきである。 VI.フォローアップ 33.我々は国連薬物統制計画事務局長に対し、第20回特別総会の全般的成果を勘案した上で適宜、麻薬委員会に本行動計画のフォローアップに関する報告を行うよう要請する。 (アナン事務総長演説) 国連薬物特別総会 ニューヨーク、1998年6月8−10日 ●コフィー・アナン国連事務総長の演説 (以下は、コフィー・アナン国連事務総長が、6月10日の特別総会閉幕に寄せたメッセージである。当日、ピノ・アルラッキ事務局長が代読した。)  今次特別総会の閉幕は、国際薬物統制における新たな1ページを意味します。私達は今週、世界に向けて希望のメッセージを発信しました。各国が責任をなすりつけ合う時代は終わったのです。  私達は、新たな「麻薬戦争」を始めようとしているわけではありません。実際、これまでもそのようなものは存在しませんでした。むしろ国際社会は、死に至る病に直面する医者のような存在と言えましょう。薬物は現に人々を殺しているのですから、私達の責任はその治療法を見つけることにあります。政治宣言と行動計画の採択により、薬物のない世界はまた一歩近づいたと言えます。  皆さんは、ニューヨークでの成果を誇って然るべきではありますが、本当の作業はこれからです。国際社会は、この成就の精神を以って、2003年および2008年までにあらゆる不正薬物の消費と生産を一層あるいは大幅削減しなくてはなりません。そして、あらゆるマネー・ローンダリングおよび薬物密売の試みを頓挫させなければなりません。  特別総会を単に一つの外交行事と評する向きもあります。私達はこの見方が間違いであることを証明しなければなりません。私達の作業を、会議室の一片の紙切れで終わらせてはなりません。ここで自己満足して他の問題に目を移すことはできません。改善の余地は常にあります。いつでもできることはあるはずです。そのためには、どのように薬物のない世界を実現できるかに関する建設的な批評に耳を傾けなくてはなりません。常に正しい人など存在しないのです。  前進を続けられるかは、これらの計画を自らのものとする皆さんのコミットメントと具体的な成果の希求にかかっています。約束を実際の行動と成果に変えていかなくてはなりません。世界中が私達を見守っています。私達が事態を見守っていたのではどうにもなりません。成功か失敗かは、懸命な努力の結果はじめて分かることです。諦めは禁物です。  私達は、環境、女性問題、人口および社会開発に関するその他重要な国連会議の前例を踏まえた上で、目的意識と行動意識をもって前進しなければなりません。薬物統制問題も、これらの問題と肩をならべる世界的な最優先課題となっているからです。  このことは、国際協力の枠組みと国連憲章に具現された主権尊重を常に想起しながら、政治的な弾みを利用していくことを意味します。人権のための寛容と連帯の理念は貴重なものであり、私達はこれを守るべく警戒を続けなければなりません。私達は、いかなる活動においても、このことを念頭に置いていく所存です。薬物使用も一種の人権だという主張は、中毒による破壊から人間の命を守る価値などないと言っているのも同然であり、そもそも不道徳な考えであると言えます。  国際的なレベルで国連薬物統制計画(UNDCP)は、あらゆる面において、各国政府および非政府機関による目標の達成とより市民的な社会に向けた作業を援助していく所存です。  実際の行動と実質的かつ具体的な成果の確保に必要な資源によって、薬物のない世界をめざした私達のコミットメントを実現するよう、決意を持って前進していこうではありませんか。私達は共に働くことによってこの課題を克服できるのです。さあ、作業に取りかかりましょう。 (アルラッキ事務局長演説) 国連薬物特別総会 ニューヨーク、1998年6月8−10日 ●ピノ・アルラッキ国連薬物統制計画事務局長の演説 (以下は、ピノ・アルラッキ国連薬物統制計画(UNDCP)事務局長が6月8日、特別総会の全体委員会で行った演説である。)  皆さんおはようございます。まず私は、今次特別総会の準備機関の役割を果たした麻薬委員会の委員長、ポルトガルのメンドンカ大使に深い感謝の意を表したいと思います。準備機関が包括的な政治宣言案と革新的な行動計画を作成できたのは、大使の卓越した指導力の賜物です。  世界の指導者たちによる大きな会合は、社会運動の終わりを意味することもあれば、その始まりを意味することもあります。今週の私達の会合は、薬物のない21世紀に向けた国際社会の旅路を導く、灯台の光のようなものだと言えましょう。  薬物のない世界など実現できないと言う人々もいます。「だから諦めて、資源を他に使った方がよい」と。このような悲観論者たちは、国際社会が決意を持って大問題に対処すれば、どれだけの成果が達成できるかを知らないのでしょう。人権と男女平等の推進、環境の保全などについて、私達が歩んできた道のりを見ればお分かりになるはずです。世界がこれらの課題を放っておいたとしたら、今頃どうなっていたでしょうか。私達の集団的努力によっても、薬物問題に大きな効果は期待できないとする意見について、私は納得できる根拠を聞いたことがありません。  9カ月前に事務局長に就任して以来、私は、不正薬物対策への各国政府及び人民のコミットメントによって勇気づけられてきました。私はまた、日本の麻薬・覚せい剤乱用防止センターによる毎年恒例の薬物対策キャンペーンをはじめ、草の根レベルの非政府機関や個人の貢献に感銘を受けました。特に私は、今春カナダのバンフで開かれた青少年フォーラムに24カ国から集まった200名の若者たちの献身的な努力に心を動かされました。  今次特別総会では、各国政府の意志と決意が如実に示されています。6月10日、新世紀を迎える中での国際薬物統制の進め方に関する合意を携えて、私達はニューヨークを後にします。この合意の主な要素は何でしょうか。  まず、特定の期限までに達成すべき措置と目標のパッケージがあります。おそらく最も重要 なことは、このパッケージが、需用削減を新たな世界的薬物統制戦略の一つの柱とすることで、 真にバランスの取れたアプローチを包含しているということでしょう。事実、皆さんが採択す ることになる需用削減に関する宣言では、新たな均衡が達成されています。  第二に、過去の経験に基づき、2008年までに大麻、コカおよびケシの不正栽培を根絶あるいは大幅削減するという合意です。  第三に、各国政府は今後5年以内に、1988年条約のマネー・ローンダリング規定を強化するという固いコミットメントを行います。  第四に、合成薬物と前駆化学品の問題に対処するという国際的コンセンサスです。  最後に、司法共助、犯罪人引渡しおよび海事協力の分野をはじめとして、司法協力を拡充する必要性が認識されています。  これらの措置はすべて明確な目的を持っています。薬物統制問題は、世界的な最優先課題となりました。この政治的な弾みを活用しなければなりません。国内レベルにおける成功は、これらの計画を自らのものとし、具体的成果を求める皆さんの強い決意にかかっています。今こそ皆さんの約束を実行に移し、薬物対策の推進を国際的優先課題とし続けなければならないのです。  国際的なレベルでUNDCPは、あらゆる側面から各国政府の目標達成を支援していきます。私達は既に、薬物問題対策の新しいイニシアチブを推進する上で、皆さんとの密接な協力を行っています。例えば、私達が最近完了した研究は、銀行の秘密性と金融「逃避所」が、マネー・ローンダリング防止に関する国際協力の妨げとなっていることを明らかにしました。  皆さんが採択する文書は、UNDCPの活動に幅広い意味合いを持たせることになります。UNDCPがこの地球的戦略に適応するためには、21世紀の新たな課題に立ち向かうことが必要です。私達は、研究とノウハウの地球的接点となることで、その実現を図っています。私達は、薬物統制における新たな問題と動向に対処する世界的早期警戒システムとしての役割を果たさなければなりません。このために私達は、戦略的に考え、地球的調整役として機能し、問題発生地点のすぐ近くで活動していく所存です。  しかし、現在の資源でこれらの期待は充足できません。さらに努力を続けていくとしても、正直なところ、現在の6,000万ドルの予算ではこのような指導力を発揮することは困難です。私達が望んでいるのは非現実的な理想ではなく、任務遂行のための適切な道具なのです。  麻薬戦争なるものはこれまでも存在しませんでしたし、これからも存在すべきではありません。薬物問題はむしろ病気のようなものだということは、私達全員が分かっていることです。ですから私達はともに、患者を治療し、薬物密売人と犯罪集団に対抗し、不正栽培に関与する人々に代替的な生活手段を提供していかなければならないのです。 (日本政府代表演説) 国連薬物特別総会 ニューヨーク、1998年6月8−10日 ●日本政府代表の演説 (以下は、高村正彦外務政務次官が6月9日、日本政府を代表して行った演説である。)  今日、薬物問題は地球規模の深刻な問題であり、国際社会が一丸となって取り組むべき重要な問題であることは言うまでもありません。  とりわけ、近年では、世界的に薬物乱用の低年齢化と、従来のヘロイン、コカイン等に加え覚せい剤の乱用が進んでいる状況にあり、薬物問題は、二十一世紀に向けて人類として何としても解決せねばならない優先課題であります。  そもそも、薬物犯罪が組織犯罪の典型であることに鑑みますと、薬物犯罪と組織犯罪とを総合的に関連づけて対策を講じていくことが必要であり、特に供給面への対策については、かかる観点を踏まえた法執行の徹底が重要であります。  一方、薬物乱用の防止には、供給面のみならず需要面においても適切な対策がとられることが必要であります。薬物使用に対する教育、治療、リハビリとともに末端使用者への厳正な取締りを含む総合的な対策が必要であり、なかんずく、青少年への薬物乱用防止教育、啓発活動が重要と考えます。  我が国としては、このような基本認識の下に先日、「薬物乱用防止五カ年戦略」を発表し、今後の中期的な指針を示したところでありますが、その中でも、特に覚せい剤対策と青少年対策について訴えたいと思います。  第一に、覚せい剤につきましては、その製造容易性及び製造廉価性等から、近年従来の薬物に替えて又は加えて、急速に世界的な規模で乱用が広まってきている状況にあります。  そもそも、覚せい剤の害は、ヘロイン、コカイン等と比べ、決して勝るとも劣らないものであります。二十一世紀の主要な薬物問題と指摘されながらも、最近になり急速に広まってきたものであるため、概して人々の危険性の認識が未だ低い状況にあり、今後の乱用が特に危惧されます。  我が国の状況について申し上げれば、従来からも覚せい剤が薬物問題の中心でありましたが、特に近年、乱用の低年齢化や薬物の入手容易化等の乱用傾向の質的な変化が見られてきており、「第三次乱用期」に入ったものと考えられる状況にあります。  第二に、青少年対策につきましては、需要削減の指針の一つとしての教育の重要性について言及されているところであります。人類の未来を担う青少年を不正薬物の害から守るには、当然のことながら、青少年に対して薬物に対する正しい知識を付与し乱用を防止するための教育や啓発活動が重要であることは言うまでもありません。  我が国における具体的な事例として、警察職員等の専門家を学校に派遣して実施している薬物乱用防止教室の開催や、麻薬・覚せい剤乱用防止センターが中心となって実施してきております「ダメ。ゼッタイ。」運動があります。これらの活動はこれまで大きな成果を上げているところであります。 薬物問題の解決には国際的な協力体制が不可欠であり、我が国としては、「薬物乱用防止五カ年戦略」でも言及しているとおり、各種協力を推進することとし、特に国連システムの中で麻薬対策で中心的役割を担う国連薬物統制計画(UNDCP)への協力を核として国際協力を行って参ります。  まず、第一に「東南アジア覚せい剤プロジェクト」への協力であります。  最近、東南アジア地域において、これまでのけしの不正栽培とヘロインの密造に加えて覚せい剤の密造が大々的に行われるようになってきておりますが、これに対抗するUNDCPのプロジェクトが、この「東南アジア覚せい剤プロジェクト」であり、我が国はこれを全面的に支援します。  第二に、ミャンマー「ワ」プロジェクト支援であります。  このプロジェクトはミャンマーの北東部「ワ」地域において従来より行われてきたけしの栽培に替わる代替作物を開発するものであります。  この他、我が国は本年四月ヤンゴンにおいて、UNDCP及びミャンマー政府との共催で、「けし代替開発に関する麻薬セミナー」を実施し、同国を含む当該地域のけし栽培の代替開発に協力してきています。  なお、UNDCPと覚書を締結している東南アジア周辺六カ国が今次会合で共同宣言を出すと伺っており、我が国としても勇気づけられるものであります。  第三に、法施行面での協力です。  薬物犯罪が典型的な国際組織犯罪としての性格を有することに鑑み、警察、税関等の取締機関相互の国際的協力関係が重要であり、実務レベルでの各国間協力、関係国際機関を通じた協力、情報交換を強化して参りたいと考えております。  昨年十月には、我が国の横浜において、UNDCPと我が国海上保安庁とで、海上薬物取締り研修セミナーを開催いたしました。この種の海上薬物取締り能力向上のための研修事業は、今後とも継続して実施していきたいと考えております。  さらに、マルチでは米州機構・全米麻薬濫用取締委員会への拠出があり、また、バイではUNDCPとの連携で、ミャンマーにおけるけしの代替開発にもつながる食糧増産援助計画を検討中であります。  本特総は、二十一世紀に向けての新たな国際的な薬物乱用防止戦略を策定するために開催されるものであります。これまでの累次の準備会合において、「政治宣言」及び六つの作業文書に関する多くの議論が行われました。これらが、今後の総合的、国際的な薬物乱用撲滅のための対策の中核となることを期待しております。  そして、これにより一日でも早くすべての薬物乱用が地球上から撲滅されるよう祈念してやみません。 本小冊子の作成にあたっては、(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターのご協力を頂きました。 1998年8月 国際連合広報センター 東京都渋谷区神宮前5丁目53−70国連大学ビル8階 〒150‐0001電話(03)5467―4451〜2 UN home page http://www.un.org