●開発への課題 ブトロス・ブトロス=ガーリ 国連事務総長 開発への課題 1995年 関連の国連文書を増補 ※これは非公式訳である 国際連合広報センター1995 広報局 会議支援サービス局 行政管理局 編集部注 この刊行物の第一部は、総会の要請に基づいて事務総長が作成した「開発への課題」に関する三本の報告書である。第二部は、この問題について進行中の論議を反映する追加的な国際連合文書である。この刊行物に掲げられた文書でシンボルの「A」が付されているのは、総会の正式文書を示す。 Copyright (C) 1995 United Nations United Nations Publication Sales No.E.95.I.15 ISBN92-1-100556-6 広報局(Department of Public Information)刊 New York, NY 10017 ●目次  緒言...........................................1 第1部:開発への課題  課題の必要性  総会決議47/181の実施進行状況事務総長覚書  A/48/689、1993年11月29日.......................5  開発への課題  事務総長報告  A/48/935、1994年5月6日........................13  開発への課題:提言  事務総長報告  A/49/665、1994年11月11日......................62 第2部:関連の国連文書  総会の決議....................................83  経済社会理事会  上級部会の報告................................89 ●緒言 1 開発は今日、人類が直面している最も重要な課題である。しかし国際連合が50周年を迎えるにあたり、われわれにはこうした不可欠な課題を見失ってしまう危険がある。紛争の増大につきまとわれ、緊迫した冷戦後の環境下での平和を維持する必要に迫られて、われわれは長期的な開発努力を犠牲にして平和維持の緊急性の中に迷い込むリスクを冒している。 2 過去3年にわたって国際連合は、開発の再点検と再定義という作業に当たってきた。われわれが携わってきたのは、過去半世紀の間に達成された前進を踏まえつつ、開発の諸問題に当然与えられるべき緊急性を回復するためのプロセスにほかならなかった。 3 一連の世界会議を通じて、われわれは開発に関する価値観について一定の広範な総意を形成してきている。国際連合は1992年に、環境と開発のかかわりを討議するためにリオデジャネイロに国際社会を集めた。国際連合は1993年には、ウィーンに世界の指導者たちや民間部門の代表を集めて、人権の完全な尊重なくして永続的な開発はありえないという提言を論議した。開発の権利が基本的人権として再確認されたのは、実際にこの会議であった。 4 1994年にカイロで開かれた「人口と開発に関する国連会議」は、人口問題の次元を開発の中核的側面であると再確認した。人口増加は開発のひとつの資産となりうるが、抑制されることのない人口増加は開発努力に対して特別の挑戦をつきつけうるのである。 5 1995年3月に、国際連合はコペンハーゲンで「世界社会開発サミット」を開催することになっている。この会議では、貧困、失業、社会秩序の混乱といった積年の問題が国際社会の代表者たちによって検証される。ここでは貧困撲滅への新たな公約が交わされ、失業問題への想像力に富んだ施策が提案され、社会的秩序の混乱を収束させるために勇気に満ちたイニシアチブが討議されるだろう。 6 1995年9月には、国際社会の代表が国連の招待で北京に集い、開発努力への女性の参入について討議する。女性の積極的参加なしに開発はありえない。より大きな女性の役割は開発の指標でもあり、開発過程の前提でもある。 7 最後に、1996年にはイスタンブールで「世界人間居住会議」(ハビタット・)が招集される。都市環境における開発をめぐる多くの問題に対処するこの会議の重要性は、いみじくも「都市サミット」と通称されるほどに大きい。 8 このように国際連合は、今世紀が終わりに近づくなかで開発への新しい総意の土台を固めつつある。「開発への課題」は、これら国際連合の諸会議で起草されているものである。これらの会議にはすべて、加盟各国の首脳レベルが参加した。あわせて非政府機関、草の根団体、その他の民間分野代表からの意見具申が、これら会議で採択された行動計画をあらゆる地域の住民のニーズに対する深い理解に立脚したものにした。国際的協力を要するものとはいえ、開発は加盟各国の責任に帰されることであって、それは住民のニーズに対応し、かつ政治的枠組みのなかで明確に反映されて、初めて成功するものなのである。 9 「開発への課題」のとりまとめの過程で、総会は、私に討議の資料となる報告書と提言を公表するよう要請した。そこで私は、総会や一連の国連主催世界会議で引き続き進められている作業の資料として、この記録文書を提出する。これで「開発への課題」集約のために多少とも資するところがあればと願うものである。 10 来たるべき新しい世紀は開発の世紀でなければならない。 ●第1部 開発への課題 ○課題の必要性 総会決議47/181の実施進行状況 事務総長覚書 A/48/689、1993年11月29日 I.序文.  1 この覚書の目的は、1992年12月22日付の総会決議47/181の実施進行状況に関する情報の提供であり、同決議に基づき、総会が事務総長に対して、加盟各国とも協議のうえ、第48回総会に提出する開発への課題をとりまとめるよう要請したことを受けたものである。  2 従って、この覚書は、「開発への課題」への所見を求めた事務総長の1993年5月20日付の口上書に対して、加盟各国から寄せられた回答に関する情報も提供する。これらの回答をはじめ、事務局内部および1993年10月28日〜29日に開かれた行政調整委員会や国連システム内の各組織との協議を踏まえて、事務総長が「開発への課題」とりまとめのために提言することになっている、いくつかのアプローチやおおまかな主題の素案的提示も含まれている。この情報が、この主題を集中討議することになる今総会の諸会議において、広範な議論を促すよう願うものである。議論のなかで示された見解は、総会の要請で進行中の「開発への課題」に関する報告のとりまとめ作業に反映される。  3 報告公表までの時間的予定に関して事務総長は、前記の口上書のなかで、「開発への課題」で取り上げるべき諸問題のもつ複雑性から、その推敲には総会決議47/181が想定した時間枠より長くかかることを示唆している。加盟各国の多くは口上書への回答のなかで、この見解に同調している。従って事務総長の意図は、総会決議47/181で求められている報告書を1994年の早い時期に公表することにある。そのためには、この主題に関する事項が1994年の経済社会理事会および第49回総会の議題に取り上げられるよう総会の配慮が望まれる。 II.加盟各国から寄せられた回答  4 1993年11月16日現在、下記の加盟各国が1993年5月20日付の事務総長の口上書に回答を寄せた。オーストリア、バングラデシュ、ブラジル、カナダ、中国、キューバ、デンマーク(EC諸国を代表)、フィンランド(北欧諸国を代表)、ガーナ、6開発への課題日本、メキシコ、モロッコ、パナマ、ポーランド、イギリス、アメリカ合衆国ならびにジンバブエである。  5 回答の多くが、平和と開発を国際協力における主要な双子の主題としている。それらは「開発への課題」が、経済的・社会的諸分野で国連システムがわき役に外される危険にあると受け取られる事態や「平和への課題」が設定した目標と、持続型ないし持続可能な開発の目標を目指すシステムの能力との間の格差の拡大を是正する機会をもたらすことになる点も指摘している。  6 従って「開発への課題」の最優先の目標は、寄せられた多くの回答によれば、世界経済の持続的成長、とりわけ開発途上国の成長と開発の再活性化に対する国際協力の増進に置かれるべきだということになる。  7 回答の多くは、「開発への課題」は貧困と低開発にしばしば直結する不安定性の根本原因に対処すべきだ、としている。それと同時に、開発への課題が平和、安全保障および安定と明白に関連しているにせよ、貧困や社会的疎外を克服し、国民の健康を増進するための開発への課題もそれに値する形で対応されるべきだ、との見解も表明された。人権と民主化の重要性はおおむね認知されているが、それらと経済および社会開発とのかかわり方を強調する異なった見解も表明された。  8 大半の回答が「開発への課題」は、関連する政府間協定や行動宣言および行動計画からも要点を取り入れた(a)行動のための新しいコンセンサスの領域の全体的枠組への統合のための手段であるべきであり、(b)国連システム内部の諸活動の調整を強化するための実質的な基盤を提供すべきである、という点で合意している。 A.新しいコンセンサスの領域を統合する手段としての「開発へのA.新しいコンセンサスの領域を統合する手段としての「開発への課題」  9 回答は、国際社会ではきわめて遠大な変化や新しい動向が現れて、地球的問題としての開発の定義やその国際的課題としての地歩に新たな関心を向け、開発の全段階におけるアプローチも点検し、評価し直さざるをえなくなっている、と指摘している。  10 同様に回答は、世界経済のグローバル化の拡大および諸国間や経済・社会・環境分野で顕著になっている相互依存の兆候の増大を指摘している。また開発途上諸国が直面している諸問題の重大性や、持続的ないし持続可能な開発との相互関係についても強調している。  11 こうした変化や動向に対応して、新たなコンセンサスの領域が現れつつある。その点について回答は、生態学と経済がからむ諸問題に関して国連環境開発会議で形成された統合的なアプローチを強調している。回答はまた、公正性と持続可能性を保証する人間本位の開発に向けて形成されつつある新たなコンセンサスにも触れている。人口、女性、社会開発などを主題に今後開かれる会議やサミットは、こうしたコンセンサスの領域の拡大に寄与するはずである。  12 回答国の多くが、開発に対するより包括的で効果的な新しいアプローチを促進しつつ開発協力を世界全体の中核的関心事として復活させること、それが「開発への課題」の大きな潜在的貢献能力とみている。「開発への課題」は、総会や他の国際会議で採択された到達目標や公約を基盤に構想し、達成された前進を評価し、当面する障害を克服する方法を提案し、新たな国際的コンセンサスの領域の形成を促して国際的枠組みに統合することなどによって、それを果たすことになろう。  13 「開発への課題」は、刷新とコンセンサス形成の手段のひとつとして主権平等・互恵・分担責任の承認に基づいた政府間の新しいパートナーシップをはじめ、政府と国際連合、その他の開発関係従事者間にも協力関係を促すべきだ、との希望が多数の回答で表明された。これに関連して、開発をめぐる意見交換の場をさらに拡げて国内および国際レベルでの地域団体や非政府機関を加えることが、住民のニーズと住民参加に基づく確固とした開発戦略を作り上げるためには不可欠であると考えられている。  14 回答は対処が求められる多様な優先目標を提案している。それには下記が含まれる。   (a)とりわけ後発開発途上国および過渡期にあたる経済の差し迫った必要を考慮に含めた新規の追加財源の確保   (b)貿易、金融、財政、マクロ経済政策調整などの諸分野に関する公約の履行促進と国際経済協力への開発途上国のより完全な参加の保証   (c)人材への投資の強調   (d)所得配分を含む長期的社会発展を促すための経済成長の推進   (e)人口圧力の緩和   (f)開発における女性参加の促進 B.国際連合システム内における調整を向上させる手段としての「開発への課題」  15 国連の経済社会部門が不明確な主体性、不十分な可視性と信頼性、過度の細分化などで悩まされていることに留意して、多くの回答が「開発への課題」を、国連自体による介入の効果性を高め、国連システム内部全体の協調の改善に役立つ明確な体制を作りだす能力を助長するような形で、開発における国連の目的、到達目標や役割をよりよく定義するための重要な活用手段と受け取っている。  16 いくつかの国は、国連の三つの主要な機能として考える事項に関心を寄せている。つまり、   (a)加盟国すべてが問題を討論のために提起し、望むらくは決議できる会議   (b)分析と情報収集ならびに国際的規範の順守状況を監視する手段としての存在   (c)加盟国を支援して開発ならびに救援の任務を付託された諸機関のネットワーク組織  17 いくつかの回答は、国連活動が重視すべき具体的領域を示唆している。それには下記が含まれる。   (a)マクロ経済政策監視のために強化された機構の導入   (b)技術移転および諸国間のより広範な技術協力の促進を含む貿易投資、商品取引に関連する諸問題の監督。貿易ブロックとその国際貿易に及ぼす影響を含む新しい貿易関係の出現への対処   (c)市場志向型の開発方式と社会的保護、福祉、公正への配慮との間の和解調整の支援   (d)開発における海外直接投資と多国籍企業の役割への対処   (e)持続可能な開発課題の推進   (f)復興段階の危機的状況から脱しつつある国々への支援ならびにその開発課題設定の支援   (g)国際的な経済貿易関係に有効に参加させる意味も含めて、開発途上国における人的能力の育成と人的資源開発の領域における唱道の役割   (h)開発途上国における政策立案能力の向上を支援する地球規模のデータベースの構築  18 回答は、開発に向けたより包括的で効果的な取り組み方や国連の役割と貢献の焦点を定め直し、推進すれば、それによって「開発への課題」も国連システム総体としての開発活動における一貫性の向上という到達目標をさらに進めることができる、という期待感を反映している。それに関連して多くの回答が、国際連合とブレトン・ウッズ機関との間の一層密接な協力関係の育成をきわめて重要な問題として強調している。同じ文脈で、社会開発プロジェクトに活用される資金の動員をめぐる多国間金融機関の役割も強調されている。関係機関の活動に関しても各々の開発金融や環境問題についての協調に改善が必要なことも同様に強調されている。  19 概して、国際連合および同システムが総体として、政策と実践の両側面で、より大きな「目的の一致」を育成することが「開発への課題」の決定的な目標のひとつと見られている。 III.「開発への課題」に求められるいくつかのアプローチと主題  20 様々な会議や事務総長の口上書への回答に示された加盟国の見解に照らし、また国連システムの計画や機関のなかで進行中の論議を踏まえて事務総長は、「開発への課題」での実行可能なアプローチと同報告で対応すべきいくつかのおおまかな主題についての基本的考察を提出することを望んでいる。  21 「開発への課題」は、新しいマクロ経済理論を供与しようとしたり、世界経済の詳細な分析の提供を求めたりすべきではない。事務総長の見解では、現時点で同報告を通じて果たしうる最も有用な貢献は、プロセスの終着点ではなく、出発点となるような開かれた実用的な課題を国際社会に提示することである。そのような見地から、課題の有効性はなによりもまず、それがもたらす論議の特質と内容の掘り下げ、討論のプロセスやコンセンサスの構築、さらには新しいアプローチの試行などを通じて判断されるべきである。  22 植民地解放後の時期を通じて、開発協力への大半の弾みは東西二極の競争がもたらしたものだった。今日その根拠はなくなった。これまでのところ明らかな証拠は、人類連帯のための責務が冷戦時のような動員力を持たないということである。開発は国際的課題から転落しているように見受けられ、短期的な諸責務のためにますます傍らに押しやられる危機にある。「開発への課題」は、すべての段階でこうした傾向を逆転させ、開発をそれにふさわしい世界的課題の冒頭に据え直さなければならない。  23 経済成長は開発の推進力である。成長率の加速は開発途上国にとって、資源基盤の拡大とそれによる経済的、技術的、社会的変換への条件である。  24 国際連合による開発と平和活動という連続体では、一方の端で予防外交が平和の条件の崩壊を阻止するよう努めなければならない。もう一方の端では紛争後の平和建設に、住民間に信頼感と安寧をもたらす機構を確認し、支援する努力が含まれなければならない。経済と社会開発の推進は、この連続体の両端にとってきわめて重要である。  25 開発の伝統的なアプローチは、貧困国や紛争終息国の変革に失敗した。それは大半の開発途上国で成長目標を達成させることに成功しなかったし、さらに重要なことに貧困を減らすのにも、持続可能な開発の土台づくりにも失敗した。開発戦略が伝統的に構築の基盤としてきた平和の条件という仮説は、アフリカ諸国、その他の地域に広がる実情と著しい対照をなしている。  26 従って「開発への課題」は、経済的、社会的、環境的領域におけるグローバルな平和と安全保障に対処することにより、「平和への課題」を補完することになる。  27 「開発への課題」が果たす貢献のひとつは、経済の流れのグローバル化を強調し、国家間や問題ごとに増大する相互依存の拡大を活用して、世界経済に新しい顔を生み出すことでなければならない。  28 自由化と規制緩和に助長され、技術革新に後押しされた各国間の相互依存の拡大は、経済問題をかつてなかったようなグローバルな視点で検討しなければならないことを意味している。国内と国際の経済政策区分概念はあいまいになっている。技術分野における金融と貿易の流れおよび国際協力は、この文脈で検証し直す必要がある。  29 相互依存の拡大によって、開発協力の内容の全体的な見直しが必要になっている。それは、しばしば貿易、金融、技術などの先進国から途上国への流れの譲与的要素に関連づけられている。これに関して、政府開発援助の利用枠の早すぎる削減がもたらす結果と影響を過小評価してはならない。多くの開発途上国にとっては、貿易、債務、民間資金の流入は少なくとも同程度に重要だからである。今日では、開発協力とはすべての開発途上国の利害をグローバルな貿易、投資、技術協力の議論のなかに組み込むことである。  30 過去10年間、貿易の拡大や自立を達成した開発途上国はわずかしかなかった。これらのほとんどの国では貿易自由化による恩恵によって潜在能力をフルに生かし、輸出所得を増やすことが現実化しなかったためである。保護主義の壁は今もなお高く、輸出所得の拡大で追加的な開発資金を生み出す開発途上国の能力を弱めている。輸出供給能力へ11事務総長覚書の投資を妨げている主たる要因は現在の参入水準が今後自由化されるのか、制限されるのか、それとも現状維持されるのかが不確実なことである。  31 物質的な資本の形であれ、人間が作り上げた知見の形であれ、技術は成長の強力なエンジンである。技術はまた、グローバル化の過程にとっても根源的かつ基軸的要素である。近年の地球経済を特徴づけ、将来も継続される科学と技術の急速な進歩に各国が参加することなく、持続的開発の過程が実現することはありえない。技術は、成長の促進のみならず、環境の保全管理や貧困の軽減のためにも開発されなければならないし、各国に導入され、分かち合わなければならない。技術へのアクセスの問題は世界経済の成長を左右する要因のひとつとなろう。世界がますます統合されるのに伴って、すべての国の相対的優位性は、労働力の技能、教育水準、技術的能力によって決定されることになろう。  32 開発は従って、貧富の差や志向を超えてすべての国が分かち合う関心事として考えられるべきものである。開発を根本的な地球的問題として取り上げる場合、状況や必要条件の共通性と特異性が十分に配慮されなければならない。重要な共通性のひとつは、開発途上国の国際経済システムに占める位置と、自国の経済的・社会的開発への機会に大きな打撃を与えることがあるような決定に対して影響力を行使する権限能力に関するものである。それと同時に、開発援助活動が当該国で特定の必要条件を満たし、必要な効果を上げるためには、特異性についても明確化し、対処しなければならない。  33 このことに関連する重要な具体例は、変革過程にある国々が直面している特有な問題である。それは、このプロセスが暗示するように、すべての望みとすべての困難を伴って東欧のみならず、アフリカ、アジア、ラテンアメリカなどの市場経済に移行しようとしている多数の国々に共通している。  34 第二の実例は、災害復興の過程にある国々の必要条件に関するものである。それには地理的例外はない。こうした状況への効果的な国際的救援や、救援から再建および開発の再開にいたる手順という挑戦的課題は、「開発への課題」のなかで処理される必要がある。  35 第三の実例は、内戦か国家間の戦争かは別として、紛争のさなかにある国々に対する支援の必要条件に関するものである。こうした状況下で開発努力を追求するという挑戦的課題は、国際連合が直面させられることが多くなっている現実であり、「開発への課題」の中で考慮しなければならないことである。  36 第四の実例は、紛争から復興しつつある国々の必要条件にかかわるものである。これらの国の特殊な開発ニーズも伝統的な開発理論は想定しておらず、「開発への課題」の中で明確にされなければならない。  37 経済や社会的次元を全体として包括し、特定の必要条件や状況の特異性を考慮することの重要性などを含めた、全体論的観点から開発を考察する必要性から、国際連合の活動が集中すべき分野とその優先的主題を明確にすることを排除すべきではない。それらの主題に基づいて、政策の開発を国家および地域レベルで推進し、諸政策を国際レベルで調和させるといった、総会ならびに経済社会理事会の役割を向上させる方策も検証される必要がある。特別会議の貢献についても、同じ文脈から再評価されるべきである。  38 開発援助政策や国家能力の開発を支援するという国際連合の役割の評価も、民間部門の役割の推進、企業体の開発に対する国連の貢献とともに、この論議の重要な部分をなしている。  39 より効果的な開発のアプローチ、開発に対する国際連合の役割を明確化することは、ブレトン・ウッズ機関との協力緊密化を含めた機関相互の協調を強化する方策を検証する基準を生むことにもなる。同じ観点から「開発への課題」では、地域次元での開発も、地域委員会の役割や国際連合システム外部の地域組織との連携関係を含めて論議の対象に加えられるべきである。  40 事務総長が総会に提出する報告書のタイトルは「開発への課題」とされる。英語のタイトルに不定冠詞の「An」を付したことには重要な意味がある。これから課題の内容を推敲する上では、すべての国による貢献がきわめて重要になろう。事務総長による「開かれた」「実行的な」課題の提出は、すべての国が自らの共通の将来にかかわる決定に貢献できる対話のプロセスの出発点であり、国際連合が扱うべき開発の主題と優先度について加盟国の間で新しい論議を引き起こす役割を果たすであろう。それはまた、組織のすべての部分にわたって新しい結束感を行きわたらせることになろう。  41 事務総長はこのアプローチに対する加盟国の見解を求めるものである。 ○開発への課題 事務総長報告 A/48/935、1994年5月6日 序文  1 総会は1992年12月22日付の決議47/181において、私に加盟国と協議の上で開発への課題に関する報告を提出するよう求めた。私は開発の論点について、できるだけ広範な見解を集めるために、担当機関や各計画の事務局はもとより全加盟国に具申を求め、世界の官民両部門にも提案を促した。このプロセスで集められた貢献は、本報告のとりまとめに活用された。  2 私は1993年12月21日付総会決議48/166の第5項に基づき、経済社会理事会の1994年の実質討議における論議や総会議長によって進められる討議で表明される見解を踏まえた開発への課題に関する私の結論と提言を総会の第49会期中に提出する。 I.はじめに:なぜ「開発への課題」か.  3 開発は、基本的人権のひとつである。開発は、最も確固とした平和の基盤である。  4 「開発への課題」の発想は、こうした原則の尊重や私自身の開発への強いコミットメント、また歴史的にみても現時点でそれが国際連合にとって必要であると認識されたことなどによって具体化したものである。  5 開発の発想、および貧困と非識字者を減らし、疫病や死亡率を引き下げるために払われた数十年におよぶ努力は、今世紀の偉大な成果である。しかし共通の大儀としての開発は、われわれの課題の前面から消滅しかねない危機にある。冷戦当時に影響力を競いあったことが開発への関心を高めた。その動機が常に愛他主義だったわけではなかったが、開発を願う国はその関心から益するところがあった。今日、最貧困国に開発をもたらすための競争は終わった。多くの援助拠出国が、この事業に倦み、疲れてしまっている。貧しい国々は落胆しきっている。開発は危機にある。  6 最貧困国は、一層遠くに取り残されている。指令経済から自由経済に移行中の諸国は、はかりしれない苦難に直面している。繁栄を手にした国々では、その成功が社会、環境、文化、経済などにかかわる一連の新しい問題を伴うことを知った結果、多くの国が従来の水準での援助政策を続けることさえ躊躇している。  7 現下の状況には、より広範な知的理解とより深い道義的コミットメント、より効果的な政治的施策が求められている。それらなくしては、この半世紀の少なからぬ前進が根底から覆されるかもしれない。それより悪いことは、すべての人類が条件の悪化するこの惑星に住み、首尾一貫性のある方法で自らの運命を作る能力を次第に失っていくことだろう。  8 開発のための具体的な提言や詳細な提案が数多く生み出されたが、そのすべてが真剣な検討に値するものである。国連システムは、開発の多様な側面について豊富な検討結果や報告を作成したが、それらはきわめて貴重な素材である。  9 こうした様々な努力の成果に立って、本報告は、開発のビジョンを再活性化し、その全分野にわたる集中的議論を鼓舞することを求めている。  10 国際連合憲章では、開発の重要理念について入念に推敲できるようになっているが、二十世紀の最後の十年間に、開発の理念を具現化することがわれわれに託された。  11 国際連合が開発の諸問題よりも平和維持を重視しているとの懸念が表明されている。こうした危惧は、通常予算や平和および開発関係の要員数に裏付けられてはいない。しかし平和維持のための財源要請が増大するにつれて、国連の開発諸活動への拠出額を増やすのは困難だとする加盟国もある。とはいえ、開発のないところに永続的平和への展望もまたないのである。  12 開発の責任は主に各国政府が負うものだが、国連にはその事業に対する支援が、重要な権限として付託されている。国連の開発への関与はこれまでの5回にわたる「開発の10年」においてみられたが、それは、経済、社会、文化ならびに人道的性格などからなる地球的問題を包括したものである。国連は開発のすべての段階、あらゆる部門で活動している。  13 従って本課題は、国連による独自な体験に立脚している。第2部では、相互に関連し合う五つの主要な課題を提示する。第3部では開発にかかわる人々の多様性と、開発の異なった各次元にかかわる人々の連携を支援するための国連によるプロセスを記述する。本報告の付属文書Iは、国連の開発への関与の規模を示している。国連の関与を論ずるについて私は、原則として基金ならびに計画を含めて、国連本体に限定した。国連システムの各専門機関の任務は重要だが、本文書の中心テーマではない。  14 開発への新しいビジョンが出現しつつあるなかで、開発に対する国連の代替案はまったく存在していない。国際連合は、大小を問わぬすべての国の主張が平等な明瞭さで聴き取られる討議の場であり、非政府関係者が最も広範な聴き手にその見解を知ってもらえる場でもある。共に前進しはじめるまでには、なお時間のゆとりがあるものの、一層の緊急性が要求されている。一日遅れるごとに、作業はさらに高価となり、困難になる。  15 戦争がある限り、確実に平和な国など存在しない。窮乏がある限り、人は永続的開発を実現しえない。 II.開発の諸次元 A.基盤としての自由  16 伝統的アプローチは、平和な状況のもとで開発が推進されるものと措定している。しかし現実にはそういう場合はきわめて稀であった。平和を欠いた状態が、世界の多くの地域に広がっているのが現実であった。人々は過去、現在の、あるいは迫りくる紛争の背景の下で開発に取り組まなければならなかった。多くの人々が最近の破壊やうち続く民族抗争の重荷を負っている。横行する武器の拡散、地域紛争、潜在的な敵対する影響圏に逆行してしまう可能性などの世界の諸現実を回避できる国はない。開発の水準に基づく国の分類法に、紛争下の国々の分類法を加えるべきである。国際連合は人道的援助、難民支援、平和活動の各分野の最先端で積極的に活動しており、従って開発の根源的次元としての平和に深くかつ不可分に関与している。  17 開発は、軍事的関心が生活の中核やそれに近い位置を占めている社会では進められない。経済努力の主要部分が軍事的生産に向けられる社会では、必然的に国民の開発への見通しは悪くなる。平和の欠如はしばしば予算の大半を保健、教育、住宅といった開発需要よりも軍事に振り向けるような社会にしてしまう。戦争を準備するということは、過大な資源を吸い上げて、社会制度の開発を阻害するということになる。  18 開発の欠如は、国際緊張や軍事力に必要と思われるものに寄与する。そしてそれが緊張をさらに高めることになる。こうした悪循環に陥った社会が対立、紛争あるいは全面戦争を回避するのは困難である。  19 国によっては、兵役は教育や市民生活のために職能を身につける最も信頼できる手段であり、軍事生産がその最新技術を最終的には民生目的に波及することもある。しかし開発に直接向けられる国家予算のほうが、平和と人間の安全保障の目的によりかなっている。  20 紛争状態にある国は、平和である国とは異なる開発戦略を必要とする。開発の特性は状況の様相によって異なる。国際戦争の環境下での開発には、ゲリラ戦の中での開発あるいは軍政下での開発に伴う問題は含まれない。  21開発活動は平和の中で最善の成果を生み出すものの、それは交戦状態の終了以前に開始されるべきものである。緊急援助と開発は二者択一的に扱われるべきではなく、一方が他方に着手する基盤をもたらすものである。救援の要件は、開始時から永続的な開発の基盤を作るような内容でなくてはならない。難民のキャンプは、単なる被害者の落ち着き場所以上のものでなくてはならない。予防接種活動、識字運動あるいは女性への特別配慮などは、そのような時期にあってこそ重要である。それらすべては、緊急援助が進んでいる中でコミュニティー開発の土台を置くことになる。能力づくりの手順は、交戦状態の公式終結を待つまでもなく緊急戦時活動と並行して着手されるべきである。紛争は恐るべきことだが、大きな改革やその固定への良い機会をもたらしもする。民主主義の理想、人権の尊重や社会正義への手段は、こうした段階で形作られるからである。  22 平和の建設とは、紛争の再発回避のために平和を強化し、固定させる傾向のある構造を識別し、支援する活動のことである。予防外交が紛争発生の防止を目的とするように、平和の建設は紛争が進行している間に、その再発を防ぐために開始される。伏在する経済的、社会的、文化的ならびに人道的問題に対する、持続的かつ協調的活動だけが、確固とした基盤に立つ平和を達成しうる。紛争の後の再建と開発がなければ、平和が保たれる期待もまた、ないも同然である。  23 平和の建設は、あらゆる開発段階にある国にとっての問題である。紛争から立ち直りつつある国にとって、平和の建設は開発にも弾みをつける社会的、政治的、法制的機構を確立するまたとない機会である。農地解放をはじめとする社会正義のための措置は実施しうる。体制移行中の国では、平和の建設のための措置を持続可能な開発のコースに国家の制度を乗せる機会に活用できる。富と力の水準が高位にある国々は、兵員の部分削減と防衛の文民転換のプロセスを早めるべきである。現時点で下される決断はそれぞれの社会や国際社会の将来の世代の前途に、きわめて大きな影響を与えうる。  24 平和の建設で最も差し迫った任務は、住民が被る戦争の影響を軽減することである。食料援助、保健衛生システムへの支援、地雷の除去、戦線に近い地帯での基幹的な諸組織への補給支援が、平和の建設の初期的任務を代表している。  25 現段階において緊急ニーズに対応する努力は、妥協するよりも、長期的開発目標を促進する方法でなされている。食糧が供給されると、食糧生産の能力を回復することに努力を集中させねばならない。救護物資の配達に関連して、道路の建設、港湾施設の改善、地域貯蔵と流通センターの設立にも注目を払うべきである。  26 地雷除去は紛争後に特有な作業である。世界は地雷の拡散が開発の大きな障害となっており、阻止されなければならない現実に気づきはじめている。それは紛争が終わった後も長い間、地中に残り、無差別に人を殺傷し、広大な面積の農地の利用を事実上妨げて、紛争後の国の家族や保健施設にきわめて大きな重荷を負わせている。多くの場合、地雷や不発弾の除去がすべての紛争後の平和の建設活動の前提条件である。ほとんどの国に広くみられる状況で応用可能な技法は手間もかかり、苦労も大きい。地雷除去はかなり長い年月にわたって続けなければならず、それぞれの国が管理し、実施すべきことである。地雷除去の監視、査定、実施能力を確立し、国際的指針に基づいた国内基準を維持する必要がある。  27 戦闘員の再統合は困難だが、紛争後の時期の安定をはかるためにはきわめて重要である。多くの紛争において、兵員は非常に若くして動員されてきた。その結果として、元戦闘員が平常な社会に復帰して生きていく順応力は大幅に弱められ、それが社会の開発への展望を土台から傷つけている。  28 戦闘員の効果的な再統合は、平和の持続可能性にとっても欠かせないことである。元戦闘員たちを生産的な雇用にありつかせるために、信用や小規模企業計画が絶対的に不可欠である。市民社会に再び参入するための基礎的教育、特別職能教育、実地訓練、農業技術や経営技能の教育などは、紛争後の平和の建設の重要な手かがかりである。兵員たちが習得した技術的な技能は、ある程度国家再建にとって重要なものとなろう。  29 紛争は通常、統治機構に重大な損失を与えることから、紛争後の努力はその修復に特別な関心を払わなければならない。たとえば法制システムのような市民社会の根幹的機構は補強の、場合によっては新設の必要があろう。それは、公的部門の歳入を生み出す公正なシステム、人権擁護のための法令基盤、さらには民間企業の経営に関する法規といった行政的諸活動の支援を意味している。  30 紛争の根を抜き捨てるのは、当座の紛争後の当面の要件や戦禍を受けた社会の修復などをはるかに超えたことである。紛争の背景となった条件は処理されなければならない。紛争の原因が多様なのだから、その処理の手段もまた多様でなければならない。平和の建設とは、平和の文化を助成することである。農地解放、分水計画、共同経済企業地区、共同観光プロジェクト、文化交流などは大きな変化をもたらすことができるだろう。雇用の拡大を回復することは、若者に軍人を職業として放棄させる強力な誘因となろう。  31 軍事支出の削減は、開発と平和をつなぐ鎖の決定的な環のひとつである。世界全体の軍事支出は生産資源や能力の過大な部分を消費し続けているが、近年になって前進がみられた。世界全体では1987年から1992年にかけて、累計5、000億ドルの平和の配当が実現した。このうち4、250億ドルが先進工業国と移行過程国、750億ドルが開発途上国で削減された。この平和の配当のほとんどが、開発に振り向けられていないように見受けられる。  32 1990年代の前半は、武器輸出に相当な実質的減少が見られたが、重大な懸念は今なお続いている。急速に軍事施設の削減を進める国からの通常兵器の輸入備蓄が、第三国に流れている。迫撃砲、機銃、ロケット発射機など新兵訓練に使われるような比較的単純な武器が、はかりしれないほどの死と破壊を引き起こしている。逆説的だが、全世界の武器備蓄の増加に重大な懸念を表明しているものが、その源の当事者でもあったりする。安全保障理事会の5常任理事国が、世界各国に流れる武器供給の86パーセントにかかわっている。  33 しばしば輸入武器は、他の資本財や消費物資を犠牲にして購入される。軍事支出の削減は、開発に振り向けられる財源を増やし、消費需要を満たし、基本的な社会福祉面のニーズに応えることを可能にする。軍事支出の減少は、予算の改革やマクロ経済的安定の推進の一助にもなろう。国家努力は、軍事優先からより生産的かつ平和的目標に転針できる。地球的な緊張と対立関係は緩和させられるのである。開発への総体的な影響はきわめて大きいものがある。  34 軍隊は、社会で最も能力に富む人々を集めているが、彼らに投じられる訓練コストは社会水準を上回り、その能力を性能が高まるばかりの兵器の操作運用に向けている。兵器生産は、他に活用できる産業技能と能力を駆使している。  35 多くの移行過程にある国では、新型兵器システムの調達が崩壊して、今やほとんどの軍事支出が恩給を含む人件費になっている。防衛産業に依存していた全共同体は、様変わりする要件に主体的に対応せぬ限り窮地に立っている。一層の失業増加への不安が軍の規模的な削減を鈍らせている。一方、軍事産業はマクロ経済的全体目標を損なうような多額の補助金によってその支払い能力を維持している。  36 非武装化は工業化した市場経済にも、移行過程の諸国ほど厳しくはないものの、一連の傷みをもたらした。特定の地域や企業は深刻な影響を被ったが、市場メカニズムがその資材を他の分野で吸収するのをいくらか容易にした。しかし多くの労働者にとって、代わりの雇用先をみつけるのは多くの場合困難であり、再訓練は散発的であった。  37 とはいえ、こうした諸問題が、各国のより小規模な軍備への移行推進を阻害し、転換させるようなことがあってはならない。軍事支出は、社会的目的への公共支出を束縛から解くばかりでなく、経済的投資に必要な信用供与をももたらす。短期的には傷みを伴うにせよ、長期的にはこういう移行は有益であることが明らかになろう。  38 冷戦の終結が軍事支出の劇的な減少につながると期待されたが、民族紛争と経済的不安定が際立つばかりの状況下で、その成果を上げるのは困難であった。二極間の軍備競争が終りを遂げた時の安堵感は、いくつもの地域にみられた通常兵器や大量殺戮兵器の拡大備蓄に対する警戒感に圧倒されてしまった。とりわけ中東およびアジアをはじめとする多くの国では、軍事支出は増え続けた。共有資源をめぐる対立、国内不安や強力な軍備をもつ近隣国の脅威などが、その原因であった。超大国による介入の可能性が薄くなったことが、一触即発の地域的敵対感情を高めた場合もいくつかあった。武器取引が儲かるものである側面も、検討されるべきである。この観点から、私は、地雷とその部品の生産と移動を世界的に禁止せよ、とする主張を支持する。  39 軍備管理と非武装化は、破壊の脅威、経済衰退、戦争に至る緊張などを軽減する。軍事支出が削減され、軍事施設が縮小され、兵器備蓄が縮小され、軍事関連行動による環境破壊が減った世界は、それ自体が望ましいものであるばかりでなく、開発のためにも好都合である。  40 今日では、ある国の辺地紛争でさえ国境を遠く越えた安全保障上または開発上の懸念となりうる。この新しい認識が国際平和と安全保障の上に、紛争中でも開発を進められる手法を確立し、それを成功させて開発を平和確立のひとつの手段として示唆するという、より視野の広い意味を与えることになる。 B.発展への機関車としての経済  41 経済成長は開発全体にとっての機関車である。経済成長なくしては、家庭や政府における消費、官民双方の資本形成、保健・福祉・安全保障などの水準の持続的上昇もありえない。貧しい社会では、社会プロセスがどのような配分を選択したにせよ、実現能力にはきわめて厳しい限界があり、その能力は経済成長によって強化されるものである。本報告で論じられる平和、環境、社会および民主主義といった開発の他の側面も、経済成長に積極的効果を与えるものである。  42 経済成長率の加速は資源基盤拡大の、従って経済、技術、社会などを一変させる条件でもある。経済成長は、その利得の公平な配分や自然環境の保護を保証するものではないが、経済成長なくしては環境悪化対策の物的資源も、長期的に社会計画を効果的に持続する可能性も実在しえない。経済成長の長所は、それが人間の選択の幅を広げることである。  43 しかし、経済成長だけのためにそれを追求するのでは十分とはいえない。成長が持続的ないし持続可能であることは重要である。成長は完全雇用や貧困緩和を推進すべきであり、またより公平な機会を通じて所得配分の形態改善を求めるべきなのである。  44 もしも貧困が継続あるいは拡大し、また人間としての生存条件が放置されるとすれば、政治的・社会的緊張が時間とともに安定を危うくすることになる。貧困緩和は、経済発展の成果への参入が可能な限り広げられ、また特定した地域や部門、住民に過度に集中しない開発を必要とする。  45 改善された教育、保健、住居は、充実した雇用の拡大とともに貧困やそれがもたらす重大性の緩和に直接寄与する。教育、保健、住居は、それ自体が望ましい目標であるばかりでなく、生産労働力ひいては経済成長に不可欠である。飢餓や栄養不良の根絶も、当然に目標とされるべきである。  46 持続的成長を実現するには、二つの条件が必要である。すなわち、それを支える国内環境と良好な国際情勢である。適切な国内政策がなければ、二国間であれ多国間であれ、いかに巨額な国際援助も持続的な経済成長を実現させることはできない。逆に、そういう形で供与された国際援助は、対外依存度を高めてしまう。良好な国際情勢がなければ、国内政策の改革は困難になり、諸改革の成功を脅かし国民の困窮をさらに増すことになる。  47 成功しうる国家経済の経験は、現実的政策に基づいたものでなければならない。市場の効率を活用する必要性には、市場がすべての正解を示せないような場合には政府が対処することがある、という認識が加味されなければならない。  48 もはや、政府を最高権威の経済機関と考えることはできない。しかしながら政府は、競争的な市場システムを効率よく運用するための規制体制を設ける責任を担っている。政府は、インフラへの投資、生産部門の開発に対する助成、民間企業を促進させる環境作り、適正な社会的安全網の設置、人的資源への投資、環境保護などへの配分に介入しなければならない。政府は、国民がそれぞれの長期的展望に沿って計画を立てられるような体制作りをすべきである。  49 役割の分担についての明確な規定はない。おしなべて公共と民間それぞれの支出は、代替し合うものではない。両者の関係はしばしば、競争的であるよりは補完的な性質。安定したマクロ経済体制を推進するための政府の施策は、持続的経済成長に不可欠である。そのようなマクロ経済政策は、乏しい資源を効率的に配分できるような確固としたミクロ経済を基盤にしなければならない。市場がその機能を果たせなくなり、また基本的な福祉への配慮をしないような場合には、政府が介入する余地が生まれる。しかし、政府の政策や計画もまた、失敗しないとは限らず、そのような事態では強力な民間部門が不可欠になりうる。  50 政府の経済指導と民間主導性の奨励との間に適正な釣り合いを見いだすことが、おそらく最も差し迫った経済開発の挑戦的課題である。これは、開発途上国や移行過程にある経済に限った問題ではない。「ディリジズム(経済統制政策)」と「レッセ・フェール(放任経済政策)」の間にあるはずの困難な道程の模索には、すべての国がかかわっている。周期的な不況と持続的な高失業率を抱える主要市場経済も、この挑戦に直面しているのである。  51 各国間で拡大する相互依存は、プラスの成長のはずみとマイナスの衝撃との伝達を加速した。その結果、経済問題はたとえ国内的なものでも世界的な文脈の中で扱われなければならなくなっている。国内および国際経済政策における区別は消え去ろうとしている。いかに成功した国であれ、現在の世界に存在する人口、環境、経済、社会、軍事といった諸問題から無縁ではありえない。地球上のある一部の窮乏や疾病災害、紛争の影響は、他のあらゆる地域に及ぶ。地球規模の開発が行われなければ、それらへの十分な対処はなしえない。  52 すべての国がひとつの国際経済システムの一部分であるにもかかわらず、多くの国が完全にシステムに組み込まれてはおらず、その他の国は極端に不安定に弱い。開発は、対外債務問題、国外資源の流入減、交易条件の急速な劣化、高くなるばかりの市場参入障壁などに阻まれている。不十分な技術協力が多くの国の効果的な資源活用の改善を妨げ、従って国際競争力の向上に悪影響を与え、世界経済への統合をさらに阻害している。  53 国際貿易の拡大は経済成長に不可欠であり、開発の経済的次元に必須な部分である。より低い取引コスト、より大きい経済的機会、国際的な自信や信頼、安全性の強化など、拡充された商取引や貿易による恩恵に疑いの余地はない。  54 世界貿易システムへの困難な参入は、開発にとってきわめて大きな障害である。現在このシステムはしばしば、多くの一次産品価格が下降傾向にあるのに低賃金の利点も制限することで、開発途上世界を差別している。  55 経済活動の国際化、拡大する市場力への依存、民間主導性が経済成長への強い力であると広く受け入れられた認識、貿易自由化に向けられた開発途上国や移行途上国の大きな努力、などのためには、盛り込まれた規則や規律がすべてから尊重されるような開放的かつ透明な貿易システムがぜひとも必要である。特定の経済活動分野で明らかな比較優位に立ち、それに沿って投資している国々が、その投資が成果をあげたり、製品が他の市場に進出しはじめた段階になって、新しい保護主義的措置に直面するようなことがあってはならない。  56 しかし、経済的相互依存は急速に貿易や財政を超えた問題になってきている。資金や人材、着想の移動を、もっと開放的にしようとする傾向が世界的にみられる。これが各国政府による対外投資誘致のための国内環境整備を促している。  57 国際的経済環境を形成できる経済力をもつ諸国による責任ある地球的マクロ経済政策の追求は、すべての開発努力のためには不可欠である。世界の金融における主要経済の役割は、なお圧倒的である。金利、インフレ、為替レートの安定などに対するこれら諸国の政策はとりわけ重要である。為替レートの大幅な変動は、金利、外貨所得および準備高、債務償還などに影響して、債務問題を悪化させている。国内問題に対処する主要経済の政策は、ますますグローバルな資本市場の性格を帯びつつある世界にとって決定的な重要性をもつことになる。  58 開発への効果的な国際協力は、主要経済がそれを自らの目標としない限り成功しえない。主要経済が自らの経済を地球的に恩恵をもたらすような構造転換に誘導し、あるいは地球的により責任を負う経済、財政、金融政策を採用しえる機構は存在しない。  59 現在のところ主要経済間の経済政策調整は、「グループ・オブ・セブン(先進7カ国)」に集中されている。「グループ・オブ・セブン」を「グループ・オブ・フィフティーン(協議と協力のための南世界間首脳グループ)」と結びつける、進行中の試みのような開発途上世界が繰り返す努力は失敗してきた。もはや主要先進国の成長だけが地球的発展の主エンジンではない、という認識に立ち、経済政策の調整過程がより広範な基盤に沿ったものとなるように変化することは間違いない。  60 国際レベルでの責任ある経済政策と国内レベルの成長を統合しえるような機構は、いまだ完全には開発されていない。その優先順リストのはじめに並ぶのは、深刻な国際債務の重荷を軽減する適正な方策、保護主義への志向を抑制する政策、新しい世界貿易機関(WTO)の体制から開発途上世界が恩恵に浴せるような保証などである。  61 経済開発に必要な資金源の不足は、債務危機でさらに募り、それがすでに困難な状況をいっそう悪化させている。最近10年間に、債務を負う開発途上国では国内総生産(GDP)の2パーセントから3パーセントを国外に移転せざるをえず、中には移転がGDPの6パーセントあるいはそれ以上になっている場合もある。正義に反することだが、開発途上諸国のなかには、資金の純輸出国になってしまった国もある。  62 債務問題は多様な側面をもっている。いくつかの国では商業銀行に、多くの低所得国は二国間または多国間の公的債権者に、それぞれ多額の債務を負っている。商業債務繰り延べの努力はなされており、二国間の公的債務が免責された場合もある。しかし多国間債務の重荷を軽減し、あるいは巨額な債務償還の重荷にもかかわらず不履行に陥っていない国を支援するうえでは、十分に対応されていない。  63 経済成長を生みだす単一の方程式は存在しないが、開発が独立した探究の分野として登場してからの半世紀の間に、特定の基本的要件が必須のものとして認識された。その筆頭にあるのは開発のために戦略的決断を下す必要があるということである。国家は、行動するための政治的意思をもたなければならない。  64 開発の決断は、真空の中で下されるものではない。あらゆる社会が、過去の開発の選択、政治的支持基盤、生産の構造、外部環境との関係、文化的価値や期待などを考慮に加えなければならない。成長のパターンは、これらの要素の影響やそれらとの調整などに大きく左右される。  65 この数年間に急速な開発を達成した国々の経験に照らすとそれは、戦略的優先度を開発に置くという国による意図的選択の成果とみることができる。たとえば研究開発の勧奨、インフラ設備や教育面での援助供与といった国家政策の影響力がきわめて重要だったのである。しかしそれは、成長が国家の制度を通じてなされることを意味するものではない。国は成長への弾みを与えはするが、それで成長すべきなのは経済であって、国家そのものではない。  66 成長を、その政治的支持基盤が受け入れられるような形に改めるのは国家である。どのような生産方式を採用するにせよ、物的・人的・制度的資本などの集約に依拠する持続的な開発は、現在の消費に一定の犠牲を伴うものである。将来に期待できる利得のために消費を抑えるということは、政治的選択ではあるが、貯蓄するという各個人の決断でもある。  67 ここ数十年間の基本的教訓は依然として適正である。すなわち要件や状況、能力が異なることから、成長を生みだすための機構にも差異がなければならない。成長には政なコミットメントとビジョンが伴わなければならない。国連は推進役や連絡役として行動できるが、個々の国やその国内的・国際的パートナーのコミットメントを代替することはできない。 C.持続性の基盤としての環境  68 環境は、平和、経済、社会および民主主義と同様に開発のすべての側面に浸透し、開発のあらゆる段階にある国々に大きな影響を与えるものである。開発途上世界では、環境上の困難が長期的開発を土台から脅かしている。移行過程国では、何十年におよぶ環境無視による汚染のために今後長期にわたって経済活動を維持できない地域を広範に残してしまった。最も豊かな国々では、消費パターンが世界開発の将来を危うくするような形で世界の資源を枯渇させつつある。  69 開発と環境とは互いにかけ離れた概念ではなく、また一方とのすり合わせなしでは双方とも成功裡に対処できるものでもない。環境は、開発にとっての資源である。環境の条件は重要な物差しであり、その保全策は開発にとって不変の関心事である。成功しうる開発には、環境を考慮に入れた政策がすすめられる。この連携関係は、1992年の国連環境開発会議(UNCED)で採択された。同会議では、開発にさらに一貫性をもたせるために払うべきその他の努力のモデルを定めた。  70 なかでも、地球にある天然資源の入手可能性の確保と利用方法の合理化は、個人や社会、国家が否応なく直面する最も切迫した問題のひとつである。しばしば天然資源とは、その国にとって最も入手しやすく、活用しやすい開発資産である。これらの天然資源がいかに巧みに管理され、保護されるかは、開発や社会の発展の可能性に重要な影響を与える。  71 開発の文脈において、それぞれの社会は天然資源の長期的保護という難題と取り組まなければならない。必要性と利害の競合には均衡がはかられなければならない。現にある社会的・経済的必要性も、長期的な資源の入手可能性や、われわれと将来の世代が依存する生態系を損なわないような形で満たされなければならない。  72 環境の劣化は、人類が直接的に利用する天然資源を質量両面で損なう。天然資源の破壊に十分な関心を払わないことがもたらす結果は、破滅的なものになりうる。水質汚染は漁業に打撃を与える。土中塩分の増加や表土の浸食が、穀物収量を減少させる。農業の劣化と森林破壊は干ばつと土壌浸食を促して、ある地域では栄養不良や飢餓が当然の出来事になりつつある。過剰漁獲と漁業資源の枯渇が、古来からの社会を危機におとしいれている。樹木の過剰伐採と熱帯雨林の破壊が貴重な生物を絶滅させ、地球の生物学的多様性を根底から破壊している。環境的に不健全な天然資源の採集慣習が広大な地域に荒廃と汚染を残した。  73 最も警告的なのは、場合によっては劣化が回復不可能になりうるという事実である。この惑星の健全性に永久的打撃を与えるような慣習は、緊急に特定されるべきである。そうした慣習はやめさせなければならない。  74 天然資源保護の確立とは一定の制限を意味することだが、それはまた、新しい発想への多くのインセンチブや機会をもたらすことでもある。科学と技術は重要な役割を果たしうる。エネルギー効率の向上と新エネルギー源や再生可能エネルギー源の開発は不可欠となろう。より豊かな階層がエネルギー消費面での生活慣習や考え方を変え、より効率的な生産方式を追求することが、地球開発のより持続可能な方式への貢献につながる。  75 天然資源の管理と保全を国家の開発に統合することによって、広範囲かつ多くの有益な結果をもたらすことができる。多くの国が依存する観光は、重要なインフラ施設の創出、直接・間接雇用の増加、外貨残高の増加、環境意識の向上、国際的周知度の向上や国民意識高揚へのユニークな機会などを含む、重要な恩恵をもたらすことができる。自然環境を保全する持続的な観光戦略を作りだすことは重要なのである。  76 いくつもの加盟国が先駆している創造的事業も、あらゆる開発努力に地域社会が参加することの重要性を実際に証明している。地域住民を単なる二次的な受益者ではなくインセンチブのパートナーにすることで、これらの計画は新しい境地を切り開いている。多くのところで、天然資源保護の恩恵に対する理解の向上、観光資産の保全や農村の所得増大のための地域協力の拡大など、際立った成果をあげている。これらは、他の多くのものが学びとり恩恵を受けることができる実例である。  77 しかしながら、環境と開発を結ぶ環には、天然資源の健全な活用よりはるかに多くの要素が含まれている。環境の生態学的均衡の保全や保護は、人間開発のみならず人類の生存にとって決定的な構成要素である。  78 社会福祉は、水質や大気の汚染やその他の環境的リスクを原因とする不健康や早期死亡率などによって後退を余儀なくさせられている。汚染物質は、直接的被曝あるいは間接的に自然環境の変化を通じて健康問題を引き起こしうる。健康への脅威は、紫外線の過剰被曝から食物や飲料水の質の劣化まで広範囲に及んでいる。  79 有害化学物質や重金属は、河川やその他の水資源を汚染しうる。こうした汚染物質の多くは、通常の浄水技術では飲料水からの除去が困難である。その汚染物質は、食物汚染に気づかない人たちの口に入ることもありうる。産業事故の結果として起こりうる有害物質への被曝や汚染の危険も、開発と環境を結ぶ環にかかわる問題である。  80 環境をめぐる論議の実体的かつ具体的側面が、他の恩恵についての論議に影を落とす場合がしばしばあるにせよ、自然に本来備わっているもろもろの価値は尊重されるべきであり、また自然環境を楽しむことで得られる無形の満足も認められるべきである。  81 自然災害は開発努力に巨大かつ劇的な打撃を与えうる。自然災害は辛苦して得た成果をたちまちのうちに一蹴してしまうことからも、開発計画は避けられない打撃を和らげるような方法に焦点を据えて立案すべきである。それによって、社会構造が壊滅的な被害を受け、経済的諸努力が永久に妨げられ、被災住民を無期限に外部の援助に依存するような状況に置くことのないように努力しなければならない。  82 改善された環境管理の下では、営業活動、家庭、農民、国際社会、政府がそれぞれの行動形態を変えなければならない。環境的価値が経済活動の中に十分に反映されることを保証するためには、目標を定めた政策が必要である。企業体は官民ともに、その事業活動による環境面への影響に責任を負わなければならず、政府は環境的に安定した開発を促進しうる政策の立案や開発戦略の遂行を先導しなければならない。  83 多くの国では、制度上の不備が、環境の安定と責任ある開発計画の立案や実施の大きな障害になっていることが明らかになってきた。従って環境政策の立案、実施、強制における国家の能力を強化すべきである。  84 環境と社会、経済、政治の関与との相関関係は、開発の環境的側面について国家的文脈において対処することの重要性を強調している。貧困と環境的持続性との環は、とりわけ注目を要する。貧しい国では、しばしば伝来の土地に対する管財上根強い道徳律が守られているが、人口増加の圧力や資源不足のために環境悪化の阻止が困難になっている。生存ぎりぎりの状態にあがく最貧困層は、その日を生き延びるのに精一杯なのである。しばしば、彼らは環境劣化の被害者であると同時にその行為者でもある。たとえば水質汚染の緩和といった環境改善政策は、しばしば社会の中の最貧困層に最大の恩恵をもたらしうる。貧困緩和のための効果的政策は人口増加の抑制に役立ち、環境への圧力も弱める。  85 技術協力を促進する政策と資源の効果的利用もまた、環境の挑戦的課題の解決策を見いだすのに役立つ。経済活動への財貨の投入、成果の回収ならびに総合的効果と環境との関連性は、絶えず変化している。持続可能性を向上させる鍵は、必ずしも生産を減らすことではなく、むしろ異なった方法で生産することにある。所得の増加によって環境改27事務総長報告善向けの投資は引き合うし、自然枯渇や劣化防止は、損害の復旧よりはるかに少ない費用で可能なのである。  86 個人や地域は多くの場合、環境に及ぼす影響や低コストで被害を避ける方法の情報に乏しい。従って政府その他の関係者は、積極的に環境意識の向上に努めなければならない。自覚することが環境的行動を動機づける最も重要な要素である。  87 持続可能な開発を成功させるためには、政府のみならず、社会全体がそれに関心を寄せ、コミットしなければならない。持続可能な開発とは、再生可能な資源を利用し、再生不能資源の過剰消費を避けるよう、責任をもって努力することである。それは、環境への悪影響が最も少ない製品と製法を選択することである。農業では、それは有害かつエネルギー消費型の化学物質の過剰使用を避けて、生物学的多様性を保全することである。官民一体となって、天然資源の保全と生態学的均衡の保護に責任をもって努力することである。  88 国際的環境政策に優先順位をつけることは、とりわけ複雑なことである。何の対策もたてないことによるツケは他の国民に負わせられ、最も困難な決断を受け入れたものに何の成果ももたらされないこともある。  89 全段階におよぶ問題すべてに、検討が加えられなければならない。たとえばオゾン層の破壊のような、いくつかの問題は地球的なものである。国境をまたぐ産業汚染は地域的問題といえよう。飲料水汚染は事実上、地区的な問題であろう。異なるレベルでの個々の規制やインセンチブの役割がきわめて重要となりうる。規範や直接的規制が必要となるだろうが、課税や免許制も成果をあげるだろう。  90 森林破壊と環境悪化の結果が、激しい抗争を伴う窮迫状態を生みだした。貧困と資源の劣化と抗争とが、あたりまえの三角関係になった地域は次第に多くなっている。世界各地にわたって、環境の劣化や枯渇の影響による難民が、そうでなくても問題を抱えた都市地域に新たな重荷を加えている。  91 しかし資源がらみの抗争の範囲が、環境と開発との挑戦的課題を扱ううえですべての関係国が持っている共通利害を劇的に示しているとはいえ、環境と開発をめぐる広範かつ共通した関心と効果的に対処するためには、国際協力が必要である。環境悪化の影響が国境を越えると、個々の国内でのように、法令体系や統一的な規制措置や経済的インセンチブ措置の配分、さらには政府の強制力、といったものに頼ることができなくなるのである。  92 国際的環境問題の解決策は、説得と協議に支えられた主権国家間の共通原則と協力のルールをよりどころにしなければならない。地域的問題は、たとえば国際河川や地域海域のような共通した資源を分け合っている国の間で、場合によっては政治的な意味合いもからんで表面化しうる。大気圏や海洋のように多国間行動の目標とすべき地球的環境資源もある。特定の一国だけの資源であって、たとえば生態学的生息地や稀少種のように国際社会にとって価値が高いものである場合には、当該国はそれを共通遺産として保護するための国際協力を要請する権利が与えられる。  93 持続可能性は、開発の指導原理として強化されるべきである。パートナーシップは開発のすべての段階で必要であり、それは国家行政の全段階や異なった部局の間ばかりでなく、国際機関間、政府と非政府関係団体の間などでも同様である。つまり、真のパートナーシップは人類と自然の間にぜひとも必要なのである。 D.社会の柱としての正義  94 開発は、真空の中で行われるものでも、抽象的基礎の上に築かれるものでもない。開発は一定の社会的文脈の中で、また一定の社会的条件に対応して行われるものである。それは社会の側面すべてに影響し、また社会のすべての側面が、開発に貢献するか損なうかする。経済成長と技術革新は、人間関係や社会構造、価値観、生活態度に影響する。社会や人的資源の開発は、社会的、経済的関係をより調和のとれたものにし、包括性と社会的結合を促して長期的発展を達成するための、堅固で順応力のある基盤をもたらす。  95 現に存在している社会的諸条件が、開発努力の出発点である。広い意味では、それらが開発努力の優先順位とその方向性を決定する。開発途上世界では広い範囲にわたって、貧困、疾病、教育、生存のための最低の生活条件などへの対応が、開発のための最も緊急かつ否応なしの優先課題である。移行過程にある国の多くでは、突然の経済困難や崩壊する産業とインフラ、際立った社会的混迷などが、開発として緊急に対処すべき問題である。最も豊かな国々では、不満をうっ積させた半恒久的な低所得層の増加、増え続ける経済難民の流入、外国人アレルギーや閉鎖的態度の表面化などが、前進や発展を続けるうえで直面しなければならない現実である。  96 国民は、国家の主要な資産である。彼らの健在が開発を定義する。彼らのエネルギーと率先的努力が開発を推進する。彼らのもつ特性が、持続可能な人間開発の性格と方向性を決定する。とはいえ、国民への投資の恩恵は労働者の生産性向上や地球規模の機会への道をもたらすだけではない。健康で十分な教育を受けた市民層は一国の社会的結合力に貢献し、生活と文化のあらゆる側面に活力を加える。  97 世界総人口の5分の1が絶対的貧困、飢餓、疾病、非識字に苦しんでいる。開発にとって、これら諸悪の原因をつきとめ症状を改善させることほど差し迫った任務はない。これは行動とコミットメントを伴うことを要する任務である。国の威信ではなく、人間として充実させる事業のために、開発努力を可能な限り広範に分散させ、幅広い基盤に立った戦略と方向づけを備えた開発努力を実行することが必要な課題なのである。  98 人口増加率は、社会の消費と生産の形態を左右する。しかし一定の線を越えると、持続不可能で扶養不可能となる人口増加は、地球全体としての開発努力に悪影響を与えうる。その影響はさらに、水、森林、燃料、大気といった天然資源の利用にも重大な意味を与える。住民が必要とする教育や保健を含む基本的サービスを供与する政府の能力にも影響を及ぼすのである。  99 出生率と死亡率は、単なる人口統計値を超えた社会的意味合いを含んでいる。たとえば出生率の下降は、より少人数の家庭や出産と育児のための時間の短縮を意味する。こうした変化によって、より多くの女性が引き続き公的教育を受けることができ、家庭の外で働くことを選べるようになる。教育は女性たちの就職の機会をさらに増やし、生活のあらゆる場面での選択能力を高める。低水準の出生や死亡率はまた、労働力、依存度、社会福祉措置、健康保険制度などに重大な意味をもつ人口の高齢化を招く。  100 長期化する紛争は、人口の構成に劇的影響を与えており、女性が家長の家庭が、孤児や障害をもつ人の数と同様に増えている。こうした弱い立場の人々に対する周到な配慮は、当面の大きな優先課題である。それなくしては、社会そのものが立ちゆかないからである。いったん単位としての家族が再建され、また弱者や最も被害を受けた者たちに援護の手がおよべば、かれらは開発努力の基盤に広く役立つであろう。  101 開発の優先課題である社会的統合が重要であることは、全世界にわたり、また開発のあらゆる範囲で明白になっている。社会的統合の欠如を示す現象は差別、狂信、不寛容、迫害などと身近かなものである。それがもたらす結果もまた、社会的不満、分離主義、狭域民族主義および紛争などと身近である。  102 社会的統合という挑戦的課題は、いまや国際化しつつある。より良い新たな暮らしを求める人々の、国境を越える大移動が国内的、国際的課題に深刻な影響を与えている。何百万人が戦争や飢饉や自然災害から逃げだしている一方で、別の何百万人が職を求めて国外に移住している。多くの受入れ国側では外国人移住者の入国管理が対立を呼ぶ政治問題になる一方で、多くの出身国側では、社会的・経済的緊張に、海外移住を強いる政治的圧力が重なっている。移住出国者たちは最高レベルの職能技術者や教育修了者である場合が多く、国としては深刻な人材と人的投資の損失である。  103 地球規模の開発が改善されるまでは、規制や抑制に努力しても多くの人々は国境を越え続けるであろう。いくつかの社会では、外国人移住者への反発が憎悪と不寛容の炎を煽っているが、当局の対策は、社会的統合の推進ではなく、分離主義を大目にみているように見受けられる。他の場所では、外国人移住者のグループが社会的統合に抵抗してきた。外国人移住者の処遇は多くの二国間関係でかなり緊張した問題になってきている。  104 開発への巨大な挑戦的課題は、満足に食べることや身体を蝕む病気が瘉ることを考えるだけで精いっぱいな人々の手では進められない。非識字者や教育知識のない人々が、ますます複雑かつ精密になる一方の世界経済の場で競争することなど望むべくもない。女性が差別され、機会の平等を欠いている社会では、人間の能力を全面的に活用させることはできない。  105 物的資源への投資は、経済成長を刺激するための重要な側面だが、人間開発は長期的には競争力への投資であり、安定した持続可能な開発にとって必要な構成部分である。従って人的資源への投資は、単なる経済成長の副産物としてではなく、むしろ開発のあらゆる側面に必要な強い推進力とみられるべきである。安定した経済と安定した政治秩序を、安定していない社会に築くことはできない。強力な社会構造は持続可能性への前提要件である。  106 資産と機会への広範なアクセスをもたらすような環境の創出には、政府による対策が必要となる。社会開発に十分に力点が置けるような政治的条件を創出し、社会開発政策を実行に移すことも不可欠である。これらは政府をはじめ社会のすべての機構の主要な責任である。政府は、市場経済の枠内での社会的・環境的要素に配慮すること、また社会全体の中での人間開発を促す活動が強調されることを保証すべきである。教育、保健、住宅、社会福祉などは、政府の活動がとりわけ必要とされる分野である。  107 永続的で成果のある社会開発の創出には、活力のある市民社会が不可欠である。定着するような社会開発は、社会の内部から芽生えたものでなければならない。政府は指導や助成には当たるべきだが、政府が社会の発展の唯一の力にはなりえず、そうあってはならない。非政府機関(NGO)、地域社会の組織、民間企業、労働者組織、その他のグループなどのすべてが、積極的にかかわっていかねばならない。とりわけ地元に根ざすNGOは、住民に発言させて、ニーズをはじめより良い社会へのビジョンや選択を主張する機会を与える仲介役として役立つことができる。政策担当者は、こうした組織を政府の競争相手ではなく、パートナーとして考えるべきである。市民社会が脆弱である国では、市民社会の強化が政策の重点のひとつとされるべきである。  108 社会開発を推進しうる条件を整えるには、社会のあらゆる階層の人々の参加が決定的に重要である。人々は自らの潜在能力を完全に発揮するために、そして自らの到達目標を纏めるために積極的に活動すべきであり、その意見は彼ら自身にとって最も望ましい開発の道を求めるものである以上、政策決定母体が十分に聞き取っていくべきである。  109 民主主義と活力ある市民社会は、政府を政策に伴う社会的コストに敏感であるようにするために、とりわけ重要である。多くの国では、経済構造の調整に必要だとされた過程が過酷な結果をもたらした。消費物価の上昇や雇用と所得の減少は、しばしば調整や変革がもたらす最も直接的で歴然とした影響であった。これらがもたらす困難が貧困層や弱者に与える不当な打撃は、とりわけ破滅的である。財政緊縮措置に伴う社会部門支出の全体的減少は、多くの人々の苦しみを増幅した。  110 構造調整は、深刻な経済不均衡を癒すために必要な処方箋には違いない。しかし、それはまた人間的ニーズや優先順位が無視されてはならないものであることを明確にすべきであり、調整や改革には明確な人間的焦点がなければならない。経済原則は変えられないが、それが社会に与える結果は緩和させられるものである。柔軟性が要求されているのである。そういう挑戦的課題に当面した際には、政府は進路を維持するよう力づけられるべきだが、こうした改革が人間面にもたらす恐ろしい結果に政府が対処することを援助する、より大きな配慮も払われるべきである。  111 生産的雇用の拡大は貧困の軽減・緩和と社会的統合の充実の中核をなすが、世界のいたるところで失業の水準が上昇している。多くの国で、就業者の実質賃金の下降が過去最高の失業水準の上昇に伴っている。以前は完全雇用が通常であった国々では、急増する失業が、厳しい経済的・社会的打撃とは別に強い心理的悪影響ももたらした。いくつかの国では、長期化した経済縮小が「失業増大」の現象や雇用不安感の一層の浸透を生みだした。世界の労働人口25億人のうち、推定30パーセントが生産的に雇用されない状況にある。  112 失業を癒し、生産的雇用を拡大できるような青写真は一枚もない。労働市場対策や職業教育・再訓練計画、集中的雇用創出計画、マクロ経済政策などのすべてが雇用水準に影響を与えうる。近い将来では職の大半が民間部門で創出されるとみられることから、よく練り上げられた雇用インセンチブ構想は、民間投資を雇用拡大に誘導するうえで重要な役割を持っている。国家の任務のひとつは、民間部門がより良い職をより多く創出できような環境を作ることである。公正で信頼しうる法令制度や安定した投資環境、基本的インフラの保守などは不可欠である。  113 開発途上世界では農業が労働力の大きな部分を吸収するので、農業生産性の向上、農場区域や農場外活動の拡大分散などを開発の優先課題とする必要がある。食料価格政策、農業技術、農村部での雇用と関連させた非農業活動、農村部インフラ、環境的に適正な保全計画などは農村部門支援の基本的構成要素である。増収のための農業研究は引き続き支援されるべきである。  114 潜在的雇用能力も、国際経済の状況とその環境構造の影響を被っている。貿易障壁には後向きの波及効果があって、産地国の生産的な雇用や生計を奪い経済成長の潜在能力を阻害している。  115 今日、雇用問題は国際的な文脈で検証されなければならない。移行過程の国では、市場経済原則に向けて、過去の経験を上回る失業を一時的に伴う必要措置がとられた。豊かな工業諸国の間では構造的失業が増大した。加えて国際競争の強まりが多くの産業を陳腐化し、何千もの防衛産業の職が消え去りつつある。こうした転換では、何百万もの労働者の再訓練が必要である。両方のタイプの経済を通じて、職能的可動性が雇用創出の重要な部分となっている。職能的可動性は経済的には効率がいいものの、心理的、社会的混乱の原因にもなりうる。政府、企業、労組などには労働者の適応力や可動性を助成し、転換期間中の訓練や社会保障を供与するうえで、一層の重い責任がある。  116 初・中等レベルでの良質な一般教育は、広い基礎知識を与えるばかりでなく、その後目標を絞った技能を続いて取得する基礎を作り、身につけた技能を個人や社会の変化するニーズにより良く適合するように刷新し、適応しあるいは変化させるためにも役立つ。教育は機会の平等を促して、より大きい公正に貢献する。広い基盤に立った柔軟な教育は、政治、経済、環境、社会などのあらゆる次元での発展の推進力となりうる。  117 開発に及ぼす社会的側面の重要性は、認識されるだけではなく順守されなければならない。社会開発問題の政治的側面は国内・国際両面で取り上げられるべきである。各国は自国内の社会開発に対処する義務があり、これらの挑戦的課題に対する地球規模の解決への前進に寄与する義務もある。今日、過剰ともいえたイデオロギー的緊張から抜け出し、比較的自由な環境の中で、これらと取り組んでいける歴史的機会がもたらされている。この機会をしっかり掴んで利点に転換すべきである。 E.統治力としての民主主義  118 開発と民主主義との絆は直観的なもので、理路を立てて説明するのは、今もなお難しい。経験則から、民主主義と開発とは長期的にみて不可分にみえるが、現実の事象は、この二つの過程の間に明瞭でかつ因果関係のある絆があるとは、常に示してはいない。ある国々では、まず開発が一定の水準に達した後を民主化への流れが追った。他の国々では民主化が経済革命への道を開いた。  119 民主主義を開発の文脈から見ると、事象よりもむしろ過程と傾向がわれわれの焦点でなければならない。この観点からは、開発と民主主義の自然な結びつきがより明瞭となってくる。開発が事象よりもむしろ過程であるように、民主主義もまた、時を経て成長し持続する過程と考えるべきである。世界人権会議は、民主主義と開発と人権の尊重の間には相互に強化し合う内的相関性があることを強調した。  120 民主主義と開発とは、根源的な意味で繋がっている。両者は、民主主義が民族、宗教、文化などの権益対立を、暴力的内部抗争を最小限に抑えながら処理する長期的基盤をもたらす、という点で繋がっている。民主主義が、開発の全側面に影響する統治の問題に、本質的にかかわっている点でも両者は繋がっている。民主主義が基本的人権なのであり、その推進そのものが開発の重要な物差しである点でも、両者は繋がっている。生活にかかわる決定過程への住民参加が開発の基本的教義である点でも両者は繋がっている。  121 経済的絶望の積み重ねと変革を起こす民主的方策の欠如は、比較的に単一民族の社会にさえも、暴力的かつ破壊的な衝撃を引き起こし、状況を悪化させたりした。国内紛争はますます、国際平和への脅威となり、開発の重大な障害となってきている。世界のいたるところで民族対立、宗教的不寛容、文化的分離主義が社会的結合や国家の統合を脅かしている。阻害され不安に駆られた少数派ばかりか多数派も、社会的・政治的不満を打開するために、ますます軍事的紛争に走っている。  122 民主主義は、絶えず国を破壊し社会を引き裂く脅威を伴う、多くの政治的、社会的、経済的、民族的緊張を仲裁し規制する唯一の長期的方法である。競争への対話の場としての、また変革への手段としての民主主義が不在の場合は、開発は脆いままであり、恒常的に危険な状態に置かれるだろう。  123 社会不安や紛争は、何年も苦労して達成した開発の成果を数カ月で破壊しうる。積もる怨みを晴らし、身に染みついた不満を癒し、新しいユートピアを打ち立てるための最後の突撃にあっては、どのような成果であれ、多くの損害のうちのひとつにすぎないのである。  124 選挙の実施は、民主化のひとつの要素にすぎない。加盟国は、非植民地化を進めて自決権を獲得するために、円満な民主化移行の手順を整えるために、また紛争に代わる民主的体制を築くために、国連の支援を求めた。国連の支援は、憲法の起草、行財政改革の着手、人権に関する国内法令の充実、司法制度の強化、人権問題担当官の訓練、武装抗争グループが自ら民主的な対立政党に転換するための支援などの諸活動も供与した。  125 統治力の改善強化は、あらゆる開発をめぐる課題や戦略の基本的条件である。統治力は、各国の政治支配の枠組みで開発にかかわる唯一最重要な変数でありうる。  126 開発の文脈の中では、改善された統治力はいくつもの意味を含んでいる。なかでも特にそれは、開発のための包括的国家戦略の設計と追求を意味している。それは、近代国家としての中核的制度に能力、信頼性、厳正性を確保することを意味する。それは、政策を立案し、実施機構の管理運営を含めて機能する政府の能力を改善することを意味している。それは、活動への責任と政策決定の透明性を意味している。  127 イデオロギーや地理的位置あるいは開発段階にかかわりなく、民主主義を欠く社会は長い間には、相対的に影響力の弱い中間層、沈黙を強いられる大衆、持続的かつ構造的に腐敗した体制を通じて懐を肥やす独裁的支配層などの点で、互いに似通った傾向がでてくる。民主主義下の国民は汚職に対して公然と発言する自由を有している。改善された統治力とは、官僚的な手順が役人を金持ちにするのではなく、公正さを確保することを意味する。  128 民主主義だけが統治力の改善を実現する唯一の手段ではないが、信頼できる唯一のものではある。民主主義は、より大幅な市民参加を促して、国家開発の目標に社会の広範な願望と優先課題が反映される見込みを大きくする。民主主義は、政権継承の適正な仕組みと方針を整えることによって、行政、司法制度さらに民主主義のプロセスそれ自体を含めた中核的国家機構の能力や信頼性、厳正性を守る誘因をもたらす。民主主義は、政府の政治的正当性を確立して、それらが政策を効果的かつ効率的に実行し機能する能力を強める。民主主義は、市民に対する責任を政府に負わせて、その政府を民衆の関心により良く反応するようにし、政策決定の透明性を増す誘因を加える。  129 国民による統治権限の付託は正当性をもたらすが、それはしかし、技量と英知への保証は含んではいない。民主主義は即座に良き統治力を生みだすことはできないし、また民主的な政府が、たちまち成長率や社会的条件あるいは平等などの実質的な改善に導けるものでもない。生活にかかわる決定への市民参加の道を開くことで、民主主義は政府をより人々に近づける。地域社会構造の分散・強化を通じて、関連のある地域的要素が、開発の決定のなかでより適正に検討されるようになる。  130 民主主義には自己満足の入る余地はない。反民主的な慣習は民主主義が最も深く根づいている国に見られる。慢性的な低投票率、利権側の立候補者への資金提供、特定の政府機関の不透明性などが特徴的な例として指摘される。同様に、半恒久的な低所得層の存在は多くの豊かな国の特徴のひとつである。最後に長期的な高失業率と外国人移住者の存在が、最高の生活水準にあるいくつかの社会で、外国人アレルギーや超国家主義者、原理的反民主主義運動の復活を引き起こした。これらの現象は、民主主義が確立されて久しい社会においてさえも、政治的進展を強化する必要があることを示している。  131 その他では、数十年にわたる一党支配によるうっ積した欲求不満からの解放が、複数政党での選挙と永続的な民主主義をめぐる混乱をもたらした。複数政党制と議会は民主的政府への移行に不可欠だが、一党制国家の消滅は民主主義の勝利を保証するものではない。複合民族社会の細分化と市場経済への移行開始の困難が、政治力の行使を求める反民主的傾向を復活させた。  132 貧弱な経済的実績に対する大衆の失望に訴えかける反民主勢力の台頭は、豊かな社会や移行過程の社会に限られたことではない。今や開発途上世界の多くの社会が、民主化への移行と経済改革に同時に取り組んでいかなければならないという困難な任務に直面している。改革の初期に広がった高揚した期待感と困難な経済状況も、民主化という挑戦的課題を突きつけている。多くの場合、国内または国際間の紛争に引き込まれて状況をさらに複雑にさせている。資源が乏しく、住民の多くが基本的な必要を満たせないところでは、政治開発を達成するのは途方もなく困難である。政治的進歩はしばしば、経済的・社会的向上をめぐる苦闘に妨げられている。  133 民主主義と開発をひとつの国で持続させることは、各国間および国際システムの全段階においても並行して民主主義を拡大することと密接に関連している。国際関係における民主主義は、各国相互の支援と尊敬を築く唯一の基礎をもたらす。国際関係に真の民主主義がなくては平和は永続せず、満足すべき開発ペースも保証されえない。  134 「諸国の家族」の中における民主主義は、国連憲章が描き出した国際関係システムに不可分な原則である。それは、大小を問わず、すべての国に助言を求め参加する完全な機会を与える、という原則である。それは、国連そのものの内部に民主的原則を適用することを意味している。それは、すべての国連機関も順守してそれぞれの役割を完全に果たさねばならないことを意味している。それは国連がその政治的、経済的、社会的活動の均衡を保って補強しあうのを助ける。  135 国際関係における民主主義は、国連の外で行われる相互交流における民主的原則の尊重も意味している。それは二国間の脅しあいではなく、二国間の討論を意味している。それは他国の領土保全と主権の尊重を意味している。それは、相互の利害がかかわる問題に協議と調整で対処することを意味する。それは、開発のための協力を意味する。  136 対話や討論や合意は、厳しい作業である。しかし、それらは各国そしてその家族の民主主義の基本要素である。特にこれらは、諸国家の社会が共通の意思を表明し、発展を遂げるための第一義的手段である。  137 情報・知識・通信・知的交流などが、経済や社会の成功にきわめて重要なこの新時代では、民主主義は単に理念や事象としてだけではなく、具体的な進歩の達成に不可欠な過程としても見られるべきである。民主主義は成功する開発への唯一の長期的かつ持続可能な道順を与える。国際システム内部の民主化は、開発への意見が聴き取られるばかりではなく、政治的な重みが加わる機会を与える。より民主化した世界は開発の課題への協力的作業を促進しうる。  138 平和・経済・環境・社会・民主主義という、ここに列挙した開発の5つの次元は、密接な相関関係にある。これらの次元は恣意的なものではなく、国連その他と政府、組織や国民などによる、半世紀にわたる実務作業の中から現れたものである。開発における一貫性やコンセンサス、協力の一層の達成については、以下で論述される。 III.国際連合と開発. A.従事者の識別  139 個々の国家は、もはや単独な開発従事者ではないが、各国は引き続き自国の開発の第一次的責任を負っている。国家的責任と表現されようと国民の権利と表現されようと、開発には有能な政府指導者、整合性のある国家政策と人々の強いコミットメントが必要である。  140 しかし、援助を受けずに開発の全側面を遂行できる社会は、あるにしてもきわめて数少ない。開発には国際協力が必要であり、他の従事者もそれぞれに努力を通じて国家を支援することが必要である。ある国から他の国に対してなされる二国間援助は年間620億ドルに達している。こうした援助は、しばしば「ヒモ付き援助」の形で供与される。  141 各国は、独自な開発の取り組み方をもっている。同じ政府内でさえも、開発に関連する問題ごとに異なった部局が担当している。現在のところ国際的開発機関の中では、ひとつの政府が農業、環境、財務、経済、外務などの様々な中央省庁によって代表されている。  142 発想、財源、プロジェクト、関係グループなどの範囲という意味では、開発は真の地球規模事業としてその姿を現しつつある。官民、国家・国際などの開発従事者は、人数の点でも多様性でも増え続けている。いまや、従事者や代理者の多様性そのものが、いくつかの社会の開発努力を圧倒する恐れがでている。事業の全体にわたって一層の一貫性が必要になっている。その上、開発の諸次元への各種資源の配分が不均衡のままであり、その結果、多くの活動とりわけ社会開発分野が財源不足を続けている。関与する様々な機関は、それぞれ独自の目標、課題、支持基盤、運用方式をもっており、従って調整と優先化がきわめて重要である。平和、経済、環境、社会、民主主義のために、国内資源の活用や対外援助(技術と財務の両面)を動員させる国際協力システムを設ける必要がある。  143 国連諸機関は、憲章によって新しい調整規範を必要とする開発において一定の役割が与えられている。総会は憲章の第4、9、10章によって経済および社会に関する国際協力について根元的責任を与えられている。総会はその半世紀を通じて、すべての国に影響する開発上の問題をめぐる討論と行動の普遍的な対話の場となってきた。経済社会理事会は、憲章第10章に定める機能と権限に基づき、開発に関する調査研究、着手、調整の範囲に責任を有している。安全保障理事会は、第7章の条項により、制裁が適用された国の国内および周辺諸国その他における開発の進行に阻害的影響を行使することができる。事務局は、開発計画の立案、政策、統計、エネルギー、天然資源、行政の諸分野を含む開発上のニーズへの技術的助言、援助などの実質的支援の源である(本報告の付属文書Iは国連の予測支出額、財源および計画を示す)。責任が多様な機関の間に分散しており、調整と一貫性が重要であることは明らかである。地域委員会を通じて、事務局は加盟国の利益のために、部門間の計画の調整と技術協力を推進している。  144 国連の諸計画と財源は年間36億ドルを運用活動に支出している(付属文書II参照)。事業の進捗に伴って新しい傾向が現れつつある。特定目的への財源配分を指向する傾向が、国連開発計画(UNDP)に、受益国の政府に一貫した持続可能な人間開発をすべての次元で進めさせる計画を支援するという、新しい挑戦的課題と機会を与えている。もうひとつは、重点を開発から救済活動に移す、という傾向である。たとえば世界食糧計画(WFP)の活動によって新記録の量が譲渡されているが、その5分の3もの量がやむをえず、長期的な開発ではなく短期的な緊急救済に振り向けられている。暴力や社会的困難あるいは経済的必要に迫られて、いまや2,000万人の難民と2,500万人の国内避難民が援助を求めている。1993年にはこのために、11億1,500万ドルが国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によって支出された。  145 国連システムの専門機関は、それぞれ独自の規定、予算、管理機構をもっている。純支出額は、63億ドルの譲与フロー、78億ドルの非譲与と貸付フローであった。専門機関はその運用資金の40パーセントを国連の諸計画や基金から得ている。加盟国も、特定のプロジェクトを対象にした資金を当該関係機関に拠出している。新しい傾向が現れている。ここ何年間かにわたってブレトン・ウッズ機関[世界銀行、国際通貨基金(IMF)]は、長期的な開発の社会的側面は国連システム内の諸機関にまかせ、焦点をマクロ経済の安定性と経済成長をめぐる当面の問題に置くこと、とされてきた。グローバルな開発の方向性と性格の変化が、この二分割方式を見直しに向かわせている。第一に、「ハード」と「ソフト」の区分があいまいになってきている。今ではブレトン・ウッズ機関も、調整計画との関連の中で社会開発と社会的安全ネットの構築に関与するようになっている。IMFは、質的に高い成長を促進するための中期的文脈において、助言や資金供与に次第に関与するようになっている。世界銀行は、調整計画の社会的次元の資金調達への融資や特別枠資金を供与するにあたって環境に及ぼす影響を考慮するようになっている。第二に、国際融資と投資の規模の増大から世界銀行の貸付決定は、開発に対する直接的影響が弱まり、むしろ民間資本市場への信用力の指標としてより重要になってきている。第三に、IMFのコンディショナリティーが各国政府による政治の裁量幅を狭めたために、国内的な不安定度のリスクを増大させた。まとめて言えば、これらの傾向は、ブレトン・ウッズ機関による政策助言およびその各国内での活動と、他の開発従事者の取り組み方との間の相互調整をより密にする必要があることを示唆している。  146 地域的な協定や組織は世界的に強まっている現象であり、毎年55億ドルを開発援助に供与している。地域主義は、国連が表明する国際主義とは相容れないものでもなく、それを代替するものでもない。地域協力はどこでも、やむをえない開発のために必要になっている。地域貿易協定は、拡大した市場を域内企業のために提供し、貿易促進のための域内協定を奨励している。地域援助は政治的境界を越えた開発を扱い、場所を問わず必要にこたえることができる。水資源、電化、運輸、通信、地域保健システムなどのすべてが地域規模の取り組みの恩恵に浴すことができる。地域間協力は多国間の相殺勘定を設定し、下級官僚相互の縄張り争いを乗り越えることができる。しかし地域化は、保護主義や官僚主義的に層化する危険を伴ってもいる。地域主義が、包括的開発の求める一層の協調をもたらすよう、周到な運営が求められている。  147 NGOは、年間70億ドルと評価されるプロジェクトを実施している。長い間平和を求めて活動してきたNGOは、しばしば紛争の初期段階から、現地で被害住民の緊急援助や戦火に破壊された社会の再建の土台作りなどに決定的な貢献を果たしてきている。柔軟な組織体制、民間資金を募る能力、高い目的意識をもつ構成員など、NGOは開発の大義のためにきわめて大きな潜在能力をもっている。ここ10年間のNGOの人数と影響力の増大は驚異的である。彼らは新しい地球ネットワークを創出しつつあり、この10年間の大きな国際会議の重要な構成要素であることを立証している。NGOと国連の活動を、さらに一層生産的な協議と協力関係のあるものにする時期が到来したのである。  148 民間国際投資のフローは、年間1兆ドルに達し、職業創出、技術移転、訓練の可能性、貿易促進などに膨大な潜在的可能性をもたらしている。この過程で解放された活力は、停滞する経済を回復させ、地球経済システムへの統合を促進しうる。直接対外投資は、開発のために各国が活用できる技術プールに積極的な効果をもちうる。民間企業は、従来は公共当局の特別の領域と考えられてきた問題に解決をもたらす重要な要素として、次第に高く認識されるようになっている。いくつかの国では民間企業が、たとえば電気通信、運輸、発電、ゴミの再利用、配水などの効率的公共事業を提供している。多くの場合、一部の利用者には実コストを負担させて、国営各社への補助を、より広範なニーズに公的資金を再配付できる限度額補助に切り換えることもできる。  149 学界・科学界は数世紀前に、地球規模の生産的な学識と研究の網を織りはじめた。今日、数千ものそうしたセンターは、思考や実験、創造性、ほとんど瞬間的ともいえる知的交換処理などのネットワークを地球上に広げている。彼らの作業はますます専門領域や政治境界を乗り越えて広がり、古い範躊を再整理して、新しい社会的有用性のパターンに組み入れつつある。科学界は、特定の基本的関心や価値観、基準を共有する、世界的ネットワークを構成している。それは、開発の大問題に取り組むうえで果たすべき重要な役割をもつ共同体である。科学や技術のセンターは、蓄積された科学的・人間的成果と当面の問題とのかかわりの長期的見通しを探る一方で、人間の日常生活に身近で実用的重要性をもつ疑問とも取り組んでいる。科学は、安全で単純で効果的な新しい家族計画の開発、環境にやさしいエネルギー源の開発、農業技術の改良、より良い疾病統制その他様々なことを通じて開発の選択肢を広げることができる。あまり認められてはいないが、社会科学、人文科学、芸術の研究も非常に重要である。これらは、古くから認められてきたとおり、人間の存在を豊かなものにするばかりでなく、その様々な形式のすべてによって、人間社会における生活の多くの基本的特性とニーズに新しい光をあてている。  150 宗教界や地域団体、自立グループのような草の根組織は、経済的、社会的、人間さらには持続可能な開発などの間の相互関連性に理解が深い。往々にして見すごされる小さな地域社会のニーズと彼らが取り組む中で、開発の学習過程が双方向で進んでいく。草の根や地域社会の組織は乏しい資金に苦しんでおり、しばしば技術援助を必要としている。資金は主として地域内で募られるべきだが、国連が草の根組織の補助を通じてミクロ段階の活動を支援することはできる。151開発従事者の現在実数、その活動が反映するグローバルな傾向、問題の相互関連性とそれを解決する仕組みなどのすべてが、より高い自覚と決意に満ちたコミットメントが差し迫って必要なことを強調している。 B.情報・自覚・コンセンサス  152 地球規模の開発への挑戦的課題と取り組むには、開発の多くの次元に対する共通の自覚を促し、多様な開発従事者の重要性に対する理解を深めることが必要である。自覚の高まりと地球的コンセンサスの創出は、「開発の文化」とも呼ばれるべきものの創造を助ける。開発の文化を概念規定することは、共有する情報ネットワークへの普遍的アクセス、といったことを超えたものを示唆している。言及されたように、開発の文化はあらゆる行動が開発との関連において考慮されることを示唆している。20世紀を閉じる数年の間に、急速に発展しているこの普遍的な開発の文化に基づいて、国連は普遍的な行動規範を確立するための、ますます効果的な対話の場になっている。  153 普遍性のある構成メンバーと包括的な権限をもつ国連には、広範かつ重要な問題に地球的関心を引きつける責任と能力がある。国連は、即効的かつ簡単な解決策では御しきれない問題について警報を発し、情報を流し、国際的な注視を維持することを助けることができる。国連はここ数年、環境対策の必要性に関心を引きつけ、人口変動の影響に対処し、人権の大義や開発の全側面に国際的焦点をあてることなどの面で、不可欠な存在であった。  154確固とした情報基盤は、経済政策のあらゆる側面を組織立てるうえできわめて重要である。政府および民間の計画立案や決定は、依拠する情報が正確かつ最新であってこそ、有効なものになる。経済的、社会的、政治的活動への大衆参加も、彼らが事情に通じていなければ有意義なものにはなりえない。  155 適正な情報基盤を欠いては、各国は二国間または多国間の交渉で不利な立場で行動することになる。国際経済、人口問題、社会的、環境条件などの情報への国家アクセスは、情報に通じた政策決定ばかりではなく、国際市場で競争的かつ効率的に活動するためにも欠かせない。    156 加盟国にとって国連システムは、データや統計数値の積極的収集者として貴重であるにもかかわらず、十分に活用されない場合がある情報資産である。国連システムは、情報・通信インフラを設立し改良するための技術協力を供与する努力の先頭に立ってきている。そうした努力は広く評価されているが、加盟国による一層の積極的支援が求められる。  157 同システムは、データの組織化と構築のための共通で類似した取り組み方を形成し、技術的交信の統一基準を促進し、データ収集方式を改良し、国際的データと情報の相互に有益な交換を助成し、データの分析と評価を支援し、情報活用の援助と訓練を供与する。  158 国連システムは、人口計画、保健、統治、行政、雇用創出、賃金・所得問題、社会福祉的ニーズなどでデータを収集、分析、活用する国際協力構築の先駆者だが、それはすべて人々と政府が、より情報に通じた決定を下せるようにするために計画されたものである。国連は、人的発展を新しい手法で数量化し、一人当たり国民総生産の物差しを乗り越えた人間開発の統計数値像を提供することを追求している。UNDPの「人間開発報告」は、開発を測定するためのパラメーターの再考に着手した。  159 国の経済活動を監視し、経済的、社会的、環境的変化を追跡した信頼性のある統計数値は、情報に通じた政策決定に欠かせず、また国家開発の成功にとっても必要不可欠な基盤である。各国が自らの経済数値に新鮮な認識を持ち、データの活用度を高めることができる新しい「国民経済計算体系」(SNA)は、国連が主唱し、IMF、世界銀行、経済開発協力機構(OECD)、欧州連合委員会が協力したものである。  160 環境的統計数値を収集し広く配布する新しい方法が、様々な国連の技術協力計画を通じて多くの国でテストされている。データの入手可能性、品質、一貫性、アクセス性における各国間の格差が拡大しているだけに、この試みは特に重要である。多くの経済で、「情報赤字」が環境と開発に関して情報に通じた政策決定能力を阻害しつづけている。  161 情報収集と分析は、情報に通じた論議ばかりでなく、容認できしかも実行可能な解決策を立案するうえでの前提条件でもある。信頼性のある標準化された情報は、だれもが開発の文化に参加できる共通の言語を提供する。もし情報が信頼でき、また入手可能で利用可能な形式で提供されるのでなかったら、コンセンサスは捉えどころのないものとなり、成功する行動もないだろう。  162 近年、世界規模の会議が加盟国その他に、開発の過程で世界が当面する主要な選択についてともに考え、さらに合意に基づく開発の文化を促す機会を提供した。こうした地球規模の集まりは、最高レベルでの戦略的問題に焦点をあて、加盟国が自国の政策を国際社会がまとまって是認した価値観と原則に即したものにできるようにする。それらは国際的努力に政治的方向性と新しい勢いを与え、また各国や組織、人々を鼓舞激励する。  163 UNCEDは、一組の分担すべき将来目標について、これまでに例のない世界の指導者による公約を実現した。そのアジェンダ21(注1)は、地球的コンセンサスを表明した初の国際協定であり、持続可能な開発の中に包括された環境的、経済的発展への行動に対する、最高レベルによる政治的公約である。UNCED以後、環境的関心は開発の文化の主流に確固として位置づけられた。1994年4月25日から5月6日にかけてバルバドスで開かれた「開発途上島嶼国の持続可能な開発に関する地球会議」は、持続可能な開発を追求するうえでの開発途上島嶼国家と国際社会の責任を、さらに明確に定義した。  164 世界人権会議は1993年6月14日から25日までウィーンで開かれた。ウィーン宣言と行動計画(注2)の中で、同会議は「開発の権利に関する宣言」によって確立された「開発の権利」は普遍的かつ阻害されえない権利であって、基本的人権の不可分の一部であることを再確認した。1948年の「世界人権宣言」の布告から「国連人権高等弁務官」の創設に至るこの間に、総会は合意された人権の国際的原則の順守への期待を強調した。  165 1994年9月にカイロで開かれる「人口と開発に関する国際会議」は、開発に対する人口的要素の影響と、真に人間中心の開発という挑戦的課題を取り上げる。  166 1995年に開かれる「社会開発世界サミット」は、国連50周年記念に合わせ、世界的に重要な統合行事となろう。公正な社会が高い失業率を容認しえないことは、ますます明らかになってきている。安定した社会は、それを構成するすべてのグループが開発の成果から排除されることを許すことなどできない。安全な社会は、最も不利な立場にある者のための社会的安全ネットなしには存在しえない。国内的にも国際的にも効果的な行動への自覚と政治的コミットメントを高めるために、断固とした地球規模の努力が求められている。世界サミットは、過去の成果を一貫性のある全体として集約し、協調的努力としての新しい分野を提示する不可欠な機会となろう。それは、社会問題に対処する国内的・国際的制度の強化、その経済分野での活動の助成、十分な金融的支援やその他の援助の供与などによって、社会開発の課題を経済成長と同等の水準に高めることになろう。  167 この過程は1995年に北京で開く第4回世界女性会議で継続される。国連は、主として1946年に設立された「婦人の地位委員会」を通じて、女性の権利を平等に推進する法的基盤の確立を支援し、また政策開発、政治的コミットメント、制度的開発の先頭にあった。その画期的前進は、1979年の「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の採択であった。同条約下で現在、その条項の履行状況を132カ国が定期的に報告している。「児童の権利に関する条約」と世界人権会議のウィーン宣言も、女性の権利の制度的規範を明確にした。次世紀へのビジョンは、これらの成果に立脚し、性別に関する視点を完全に反映して構築されるべきである。  168 1996年にはハビタットII・人間の居住に関する会議、略称「都市サミット」が、世界人口の大部分が暮らすことになる都市地域を、安全で人道的で健康で、なおかつゆとりを持って住めるものにする行動計画を論議することになっている。  169 地球規模の開発の文化を強化するための国際努力は、加盟国に加えて、より広範な国際的社会も取り込むべきである。非政府従事者による開発の文化への貢献は、UNCEDと世界人権会議で明確に実証された。NGOおよびこれに関心を抱く者たちは、彼らがもつ開発の文化創造への正当な権利を主張した。  170 各国の国内では、政党、労組、議会人およびNGOといった市民社会の構成分子が、一方では開発努力への大衆支援を、他方では具体的な開発援助を獲得するうえでますます重要になっている。いまや非政府の諸組織とその運動は、開発政策の方向性を定め、実体的な成果を生みだすためのネットワークになっている。成功するためには、政治的なコンセンサス形成がその全体を包み込まなければならない。  171 あらゆる段階の従事者たちは、主導権をとり、特に関心を寄せる問題を強調し、その現実的解決を進めることによって、地球的な人類の関心事の全分野にわたる国際的努力が結実するのに役立つ。人々と政府が発展への政治的ビジョンを共有し、それを達成する政治的意思をもたなければ、永続的な価値をもつ成果をあげることは不可能である。 C.法的規範、標準および条約  172 確実な国際的行動は、協力を通じてのみ達成できる。国際法は、構想や意思を行動に転換する手段と枠組みをもたらす。国際的従事者の権利、義務、責務や原則の成文化によって、国際法は協力を構築する基盤をもたらすばかりでなく、協力の条件や限界も規定する。  173 拘束されない規範、国際的に認知された標準、あるいは拘束力のある責務のいずれの形式であれ、多国間協定の締結は国際法の基盤的要素である。問題の政治的輪郭と公共的可視性を際立たせることによって多国間協定は関心を刺激し、行動の焦点となる。多国間協定は、問題を扱う共通の枠組みを創出することによって調整を強化し、一貫性を促すことができる。多国間協定は、共通の要因と基本的な規則を確立して、国際的な相互作用と交換を促進することができる。多国間協定は、行動のための共通の法的、政治的枠組みを確立して、国際努力を評価し監視する確固とした基盤をもたらすことができる。多国間協定は、コンセンサスを形成し解決を求める実務的な機構として、開発支援にむけた意味のある国際的行動を達成させる鍵である。  174 総会は、開発協力のための国際的枠組みの確立に向けて、数多くの重要な貢献を果たした。この文脈で開発の課題に関する総会決議47/181に関連のあるものには、「国際的経済協力に関する宣言」とりわけ「開発途上国における経済成長と開発の再活性化」、「第4次国連開発の10年のための国際開発戦略」、「カルタヘナ・コミットメント」、1990年の「アフリカ開発のための国連新課題」、「後発開発途上諸国のための1990年度行動計画」およびUNCEDで採択された「アジェンダ21」を含む、コンセンサスのための様々な協定や条約がある。  175 関心を刺激し行動の焦点となるのは、多くの多国間協定の目的でもあり効果でもある。協定案を通じてコンセンサスを形成し成文化する過程は、各国や選挙民が独自の関心や展望、課題の推進あるいは擁護を求める際、その重要問題の政治的輪郭を浮かび上がらせる。国際的な論議は、しばしば検討対象の問題の可視性を高めて、新たな大衆の自覚や関心、参加を生みだす場合が多い。  176 UNCEDに関連して採択された協定、条約、規範は、コンセンサス形成と成文化の過程がもちうる広範な効果を例証している。何年もの調査と準備、世界の最高レベルによる会議が果たす触媒効果、特定の行動や責任努力を成文化させる力などが、これ以上の環境悪化を食い止めるという差し迫った必要や、何をおいても環境的に安定し持続可能な開発を追求する重要性への普遍的な関心を呼び起こした。この過程は、各国が条項や提言を十分に考慮するような形で、環境への関心を世界の課題として提示して、有用かつ必要な行動を生みだし、世界中に環境問題への自覚を広げ、この最大関心事をめぐる多くの事項についての貴重な政策見直しをもたらした。  177 関心や世論への刺激の他に、多国間協定は行動の焦点の役割も果たすことができる。たとえば「海洋法に関する国連条約」(注3)は今や、海洋利用とその資源をめぐる全側面の開発上の問題を扱う仕組みを規定している。新技術や資源への渇望が各国の海洋資源開拓能力を高めるのに伴って、条約は海洋資源の合理的管理の普遍的枠組み、絶えず持ち上がる様々な問題や挑戦的課題の検討を導く一連の合意原則の枠組みも規定している。条約は、航海、上空通過、資源の探求と捕獲、保全と汚染、漁業と海運などの国際的な討論と行動の焦点を提供している。  178 多国間条約および了解事項の枠内での国際協力の文脈において国際的な人道的努力には、「緊急援助回廊」の創設、国連平和維持軍による人道的任務への拡大、民間人虐殺の抑止、国際法違反容疑の捜査、国民和解の助成などが含まれている。国際社会は、人道的国際規範や国際協力の実務的基盤を強める条約および了解事項に基づく活動を通じて、多国間の取り決めには行動の触媒として、また成果をもたらす仕組みとして役立つ大きな潜在能力があることを明らかにした。  179 さらに開発への貢献として不可分な国際法の役割には、政策実施面での調整を促し、また政策の内容構成が一貫性を持つようにすることがある。多国間の法的規範、標準および条約は直接的にも間接的にも、これらの目標を具体的かつ有意義な形で進めることを助けている。  180 個別行動では十分な成果があげられず、また他との協力が行動の効率性を飛躍的に高めるような場合には、調整が明らかに望ましい。たとえば国際航空輸送の規制は、個別の行動では効果がない。同様に、オゾン層劣化の進行防止も、個別的な努力や行動が調整されてはじめて達成しうる。こうした問題に対処するための多国間協定は、必然的に調整を実現する仕組みの役割も果たすことになる。  181 国際的政策の策定にあたって一貫性と両立性を促進することは相互が密接に関連する目的であり、また同等に本質的な目的でもある。多国間協定は、ある政治的選択を排除してその他を促進し、妥協とコンセンサス形成を通じて政治的戦略の差異の幅を狭めるという意味で、国際的政策策定の一貫性と両立性を促進する。ある慣習に報いて他を罰し、ある行動を禁止して他を勧奨し、ある原則を尊重して他を拒否するといったことは、法的規範や標準および条約が機能するための仕組みであり、またそれによって政策の一貫性や両立性が一層高められるのである。  182 たとえば生物学的多様性を促進するために、多国間の環境協定は必然的にいくつかの国家開発の選択や政策を進める一方で他を制限しあるいは削除する。一定の汚染物質排出基準を制定して、多国間協定は必然的に、ある種の行動やその水準を制限し、その標準に合致しない開発、産業戦略を排除する。いずれの場合もその結果、政策策定における一貫性や両立性が一層高められる。  183 人々が国境という制約を越えてますます作用し合うようになる世界では、国際的性質をもつ民間の法律的関係を管理するための一連の規則や手段があるのが特に望ましい。法的紛争を解決するための共通の手続きを制定し、規則に合意することは商取引を盛んにするのに有益なばかりでなく、平和で安定した国際関係を築くことにも大きく貢献する。調整のためのこれらの努力は、ともに相互交流と開発を活発にし、国家の法体系が生みだした法規の多様性に実務的一貫性をもたらすのに役立つ。  184 ある種の国際条約は今や、ますます広範になる民間の国際交流の分野で機能している。法律的次元では国際条約が、訴訟手続き、証拠収集、判決の執行、国際間の法的紛争などを扱っている。家族法の分野では、重要な国際協定が交渉された。商業の分野では、国際条約が金融取引から商品販売の国際規則までの広範囲な活動を促進し開拓している。  185 共通行動の決定的重要性は、各国間の相互交流を管理する広範な規則と原則を確立するための国際的努力に特にはっきり現れている。多国間協定は国際労働基準の監督、航空路の管理、国際通信の周波数利用の規制を定め、また郵便物の国際交換、世界気象の監視などを促進しているほか、他の重要分野での広範な国際的相互交流を進めている。  186 多国間協定はまた、地球規模で受容可能な貿易規則を作るために現在も続いている努力も体現し反映している。国連は「国連貿易開発会議(UNCTAD)」を通じ、「特恵のための一般システム」の制定によって開発途上国が輸出で特恵待遇を受けられるようになるのを援助し、また制限的商慣習を規制するための国際的な商品協定や合意原則の採択を促進した。「関税と貿易に関する一般協定(GATT)」と最近完結した多国間貿易協議の「ウルグアイ・ラウンド」は、貿易を促し開発を進めるうえで多国間の協力がもちうる影響力を如実に示した。ウルグアイ・ラウンドの期間中に成立した協定の結果として、世界貿易は500億ドルも拡大すると推計されている。この刺激材料が雇用、生産および貿易にもたらす実質的影響は、国際社会のすべてにわたって大きいものがあろう。  187 ウルグアイ・ラウンドは、多国間協定が、国際貿易と商取引の促進を通じて開発に対してもちうる、本質的な影響力を有す鮮明な例である。その他の重要な実例には、「内陸国の通過貿易に関する国連条約」「物品の海上輸送に関する国連条約」「物品の国際販売契約に関する国連条約」がある。  188 開発支援あるいはその他の分野での国際努力を評価し追跡する基盤を与えることも、多国間協定を追求する本質的部分である。国際協定の結果、「国際労働機関(ILO)」は世界的に労働慣行を追跡することが可能である。「気候変動に関する国連枠組条約」(注4)は、気候変動に影響する国家政策の国際的再調査や温室効果ガス排出の国際モニタリングを規定している。これらや他の多くの場合でも、国際協定がそれぞれの基盤を敷いて、情報収集や順守状況の監視、強制的手続きなどの根拠を規定している。  189 とりわけ人権の分野では、各国の行動を追跡し評価する根拠と権利を確立するうえで多国間協定が重要であることはきわめて明確である。そのような協定は行動の評価基準ばかりでなく、順守状況の追跡への関与についても国際的に合意をえた根拠を与えている。こうして多国間協定は、国際社会が、人間的尊厳を国境や国民の特殊性を超越した関心事、とする原則に即して行動することを可能にしている。  190 実際、個々の人権は国際社会によって守られうるのだ、という観念は、国際法の偉大な実務的かつ知的な成果のひとつである。国際法の仕組みや手続きを通じて、国際標準、盟約および条約は、人権と人道主義的大義を支援する国際的行動に、責任の基準と法的根拠を与える。  191 問題に共通した取り組み方を実施するための実務的手段に合意することは、多国間協定が達成を追求していることの本質である。国際協力の枠組みをもたらすことで、国際法は事実上、地球開発の全側面に重要で具体的な貢献を果たしている。相違する政策や努力の調整、目標・目的の推進、法規範・標準の制定、条約の協議などを通じて、国際法は協力への媒体と行動へのメカニズムをもたらす。  192 国際法の主唱者として、また国際協力の最重要な討論の場として国連には、多国間協力の幅と効率性を、国際的法規範や標準、勧告に投影されるような形で高めるという中心的役割がある。その役割において国連は、すべての関係国による国際協定あるいは手段についての協議や実施、再調査、管理を推進し支援する特別な責任を担っている。 D.運営、コミットメント、変更  193 国連は、国際協力の媒体であり、政策分析と情報の源泉でもある政治的コンセンサスを形成する討論の場を提供する。しかし世界の何百万もの人々にとっては、国連は実体のある成果を達成するために活動する重要な運営機関でもある。  194 開発途上国で、移行過程にある、あるいは苦難の中にある国で、国連は開発の成果を直接人々にもたらすために活動している。これらの現地活動は、多くの形式をとっている。国連機関は事務局、計画や基金を通じて、開発計画の策定を助け、開発計画やプロジェクトを支援し、技術訓練や能力形成を供与し、政府の全体的開発戦略制定を補助する。  195 加盟諸国が自国の開発に一次的責任を負っているので、国連の開発活動は、政府や地域共同体との密接な協力のもとで実施されている。地域のインフラは、これらの努力の重要な部分である。多くの活動がNGOその他の非政府組織を通じても進められている。その他の努力は国連機関が直接に実施している。  196 現地での努力を通じて、国連は必要度の高い独特な役割を果している。特に国連機関による現地活動は、国際的な決定を地域の活動や戦略の中に移し直し、有益な非商業的開発計画を支援し、敏感な部門での開発努力を進めるなど開発援助の新しい領域や新しいタイプの先頭に立っている。  197 人類が直面している途方もない挑戦的課題には国際協力が必要である。しかし、協定は行動の出発点にすぎない。国連の現地計画は広範な国際協定の制定と、それを自国の行動に移し直す各国の能力との重要なかけ橋となっている。その地球規模の経験と展望によって国連機関は、加盟国が近代社会の直面する広範な共通問題と取り組むにつれて、実務的支援のきわめて重要な源泉になってきている。かかる支援がなければ、多くの加盟国は問題に対する熟知度も発展に当面必要な能力も欠くことになってしまう。UNCEDの直後、国連は要請があれば、必要な行動の特定、規則や政策の起草、環境的目標を追跡し執行するメカニズムの構築などについて加盟国を助けてきた。  198 開発の展望上きわめて重要な多くの部門において、国連だけが中立性と目標達成に必要な専門技術の双方を立証することができる。公的行政、統治、民主化に影響を及ぼす開発政策は重要な例である。政府や社会が変革の必要性を認識しながらも、後に圧力や支配に道を開くことになりうることを恐れて、外部からの援助を真剣に検討するのをためらうことがある。多くの重要な開発部門において国連は、国家の開発努力への奉仕と支援の敏感性、中立性、経験について長い記録を書き出すことができる。これは多くの加盟国が依存する国連の奉仕であり、国連機関が引き続き提供できるようにすべきことのひとつである。  199 国連の現地活動はまた、開発援助に新しい型や分野を開拓する価値のある役割も果してきた。戦後期の長期的外国貿易と助言規定の重視から、資源は次第に国家能力と専門技術の強化に向けられるようになってきている。多くの初期の焦点領域の必要性を実証し、新しい支援の源を生みだした国連は、ある特定の努力の領域に引き続き全面的に関与するだけの価値があるかどうか、ということを絶えず評価しなければならない。  200 国連機関そのものにとって、また国際社会全体にとって、国連の現地活動と国連機関が世界各地で繰り広げている活発な開発の存在性にも、より広範な重要性がある。一般的な国際事情における国連の地歩や道義的権威と、開発の人的挑戦を把握して自ら対応する制度としての能力は、国連機関の存在性と現地における努力に密接に関連している。  201 人間としての向上をはかる活動という根本的なコミットメントを通じて国連は、その適格性と世界平和への手段としてのその信頼性を確固不動のものとした。世界中で国連の旗は、平和のみならず発展へのコミットメントの象徴として立っている。国連機関の全努力は、その開発のためのコミットメントと活動の可視性によって測り難いほど強められた。その道義的コミットメントは、国連の活動をこれからも、国連機関に支援を頼る人々に向けて規定し続ける。この道義的権威は、抽象的概念ではなく人々のための現実的奉仕の上にのみ築かれるものである。  202 あらゆる国連機関とその全活動を通じて、現地で開発を進めるために働く職員たちの経験は、均衡、展望、理解などの貴重な資料を増大させている。本課題自体も、こうした人々による実務的経験の広範な蓄積に負うところがきわめて大きい。  203 理論は現地の事務所を通じて、具体的経験を通して試される。問題は、より実際的な文脈で検討される。現地にあることによって国連機関は、住民について学ぶばかりでなく、奉仕する住民から直接に学ぶのである。  204 しかし明らかなのは、開発への国連活動が、世界中のすべての開発問題を解決できるという保証も目処をつけることもできない、ということである。実際的活動は、累積的成果を達成し、部分的解決でさえ問題の永続的発展への展望を高める効果があるように設計されなければならない。つまり開発の事業の根本をなす概念は、苦難の除去からさらに発展の永続的基盤を創出することである。  205 特定の戦略を短期間のうちに正確に評価することは、まず不可能である。しかし国連にとって、開発は長期的コミットメントである。各地における努力の効果は、重要な発展を達成した。たとえば現地の保健活動を重視することは、天然痘の根絶や広範な児童予防接種、世界各地の児童死亡率の劇的下降を確立するのに役立った。共有文化遺産の重要性に対する認識は、アブシンベル、アクロポリス、アンコールワットのような遺跡の保存努力を盛り上げるのに役立った。悪化するこの惑星の状況を暴露することで、考え方の変革や損傷の復元のための具体的努力を世界規模でもたらした。  206 国家能力の形成は、発展の主たる構成部分であった。多くの場合、現地における国連の開発努力は、各国の開発努力に着手し持続する能力を飛躍的に高めた。国連機関の存在が、開発努力を解体から防ぎ、深刻な格差を埋め、またインフラ劣化に補いをつける、という場合があったことも同様にきわめて重要である。  207 測定するのは難しいが、半世紀にわたる技術協力と訓練は地域の専門技術の増強という重要な遺産を残した。この貢献はきわめて重要なものである。人々が自らの開発を押し進める能力を持たなければ、発展は不揃いなままになり、開発も確実なものにはならない。  208 開発活動の枠組みとなり、しばしば傘ともなるような環境を設定することによって、国連は開発に直接に貢献するばかりでなく他の多くの従事者による開発努力を促進する。国連機関が確立したその存在性は、開発協力に対するより受容的な風潮を創出し、他の従事者を勇気づけるのに役立つ。とりわけ緊張と不安定の時期にあって、国連が象徴する国際的存在性は、開発を追求する能力と勢いを保つうえできわめて重要でありうる。  209 より一般的には、国連が認定した優先順位はしばしば、他の従事者がより深くかかわり、参加できるようにする根拠をもたらしてきた。国連機関が取り決めた協定もしばしば、他の従事者が関与できる文脈をもたらしてきた。国連機関そのものにとって、また広く国際社会にとって、現地における国連の存在性は、開発の働きにとってきわめて重要な資産である。 E.優先順位の設定と調整  210 開発の概念は、本報告に明らかなように、いくつかの密接に関連した次元と従事者の多様性を内包している。優先順位の設定と調整が必要である。  211 開発の各次元が、他のすべての成功にとって、また人間中心の発展の核心的概念にとってきわめて重要である。成功する開発は、孤立したひとつの次元の追求では達成できないし、どの次元もそれをひとつだけ開発過程から除外することはできない。平和を欠いては、人間のエネルギーを絶えず生産的に活用することはできない。経済成長を欠いては、問題に取り組む資源の欠乏が起こる。健康な環境を欠いては、生産性が人間的発展の基盤を損なってしまう。社会正義を欠いては、不平等性が明確な変革への努力の最良の成果を無にしてしまう。自由な政治参加を欠いては、人々は一人ひとりの、そして共通の運命について声をあげられない。  212 限りある資源と国内外の束縛は、選択と優先順位の設定をしなければならないことを意味している。過去にも開発のある部分を達成する努力が延期されたことがあった。たとえば、いくつかの国では経済改革のための短期的努力が、政治的安定性を脅かしかねなかった。  213 活動の調整は、開発資源で最大効果をあげ、優先化を確実に活かすために欠くことができない。調整とは、明確な責任分担、開発にかかわる多くの従事者の労力の効果的な配分と共通の目標や目的に向けた各従事者のコミットメントを意味する。個々の開発従事者は、その努力を孤立的、競争的ではなく補完的、寄与的なものとするよう努めなければならない。その観点から調整は、個々の従事者の活動と相互交流を導かなければならない。  214 すべての国、地域および地球規模の参加者が協力すべき課題には、国際平和と安全保障、経済発展、環境、社会正義、民主主義と良き統治などが含まれる。これらのすべてが単一の事業の一部分でなければならない。国際社会は過去において、資源の優先化と努力の調整によって疾病の根絶、飢餓との闘い、環境保護事業、大量殺戮兵器の拡散制限の追求などに成功を収めた。開発努力の優先化と開発従事者の調整は、活動のすべての段階で必要である。エイズ・ウイルス(HIV)およびエイズ(AIDS)との闘いのような世界的な問題においては、各国をはじめ国際的・地域的組織、非政府機関、政府機関などの間の調整が必要である。その他の場合では、調整は特定の地域や社会の部分に焦点を置かなければならない。拠出者側では相互間の調整が必要であり、受益者側では国家機構内部での調整が必要である。  215 開発は多面的で際限のない事業と理解されるべきであり、また開発努力は特定の国家のニーズ、優先度、状況などに対応すべきことなので、単一の理論や一組の原則をすべての国に同時に適用することはできない。しかし開発は、優先度と重点との均衡の永続的維持、必要性および政策の継続的再評価を必要とするので、開発を促進するための良き政府の役割と重要性は、どれほど高く評価しても過大ではない。開発は国際的な働きであるべきものであるため、統治力とは、その重要性と影響が国境を越えて広がりうる問題である。  216 政府は、困難な政策を支持するタイミングや国内外の強い圧力に抵抗するタイミングを決めなければならない。良き政府は英知と歴史的責任に即して市場力を機能させるタイミング、市民社会に主導させるタイミング、政府が直接介入するタイミングなどをはかる。  217 国の開発戦略は、開発計画とその事業に整合性と一貫性を確保するよう努めなければならない。国内的にも国際的にも多数の従事者と課題がかかわることから考えて、細分化と相互矛盾は頻発する問題である。国内的には、挑戦的課題は一貫性のある包括的な開発のビジョンを作ることである。国際的な挑戦的課題とは、努力や資源を国家開発の目的を支持するために整理することである。  218 各社会が各々の開発の選択を検討するとき、国際社会は賢明に行動すべきである。圧力ではなく説得が、最も断固たる努力と最も永続する成果を生みだす。各国の政府に開発の第一義的責任があることから、彼らの事業に伴う複雑性を認めることが、それを支援する国際的な開発従事者の最初の責任である。  219 成果のある調整は、協力してことにあたる意思があってのみ達成できる。重複し競合し矛盾しあう分野に対処する機構や構造は、作りだすことができる。しかしより良い機構や構造は、協力を強要し保証することも、政治的意思を代替することもできない。援助供与側に競い合いではなく協力する用意がなく、政府機関が相互に競争相手ではなくパートナーとして仕事する意思がなく、そして各機関に努力の成果を達成された発展で計る勇気がなければ、重複や競合や矛盾が開発努力を妨げ続けることになるだろう。  220 開発の優先順位やモデルを、国際社会が特定の人々に押しつけるようなことがあってはならない。これは我々が、過去の努力から学びとるべきことである。しかし国際社会は、どのようにして国際的開発資源を最大限にし、国際的開発従事者の間に一層の整合性と調整を実現するかを決定できるし、すべきである。  221 国別戦略ノートは、より強化された調整をもたらす新しい重要な媒体である。このアプローチによって各国は、国連とともに開発プロジェクトを設計し開発資金利用を優先化することができる。この技法の開発援助への広範な応用は、大きな効果をもちうる。開発協力の全側面におよぶ総括的な取り組み方がない現在、政府間および非政府を含む国際的開発努力の優先化と調整が、差し迫って必要とされている。  222 駐在調整員体制は、開発援助を国の全体計画の枠組みにより良く組み込むための貴重なメカニズムとなっている。国際連合システムの全体としての能力にパイプを持つ駐在調整員は、国連機関の広範な活動能力が国の目的を全面支援し、国の能力形成に十分に活用されるように努力する。駐在調整員は、経済・社会的調査研究や政策分析、実務活動、人道援助と人権促進などが国家レベルで相互に支援し強化されることを助ける。駐在調整員体制は引き続き強化されるべきである。  223 国際連合は、普遍的な構成メンバーと包括的権限を持つ組織として、国際開発の優先順位確立を容易にし、多数の開発従事者間の調整と協力を促進するという、特に重要な役割を有している。自覚を高め、情報を提供し、コンセンサス形成への討論の場を与え、法規範や標準および条約制定を通じて協力の向上に努め、そして特に現地の従事者として、国連は開発努力に貢献している。  224 優先化と調整は、あらゆる組織や制度にとって欠かせない配慮だが、特に国連のように構成が多岐にわたり、権限が広範な組織が効率的に機能するには、これらの要件はきわめて重要である。  225 国連憲章自体が、国連システムにおける調整の特別な重要性を認識し、総会の権威下で活動する経済社会理事会に、国連とその多数の専門機関との間の政策と活動を調整するという、重要かつ困難な作業を与えている。同理事会は、開発資源の配分優先化を助けるための即応的で強い能力を備えた媒体を用意している。調整は、各政府と政府間制度を包含するばかりでなく、重要な非政府開発従事者の活動も考慮に加えなければならない。  226 多くの国連の組織体が、すでに実業界、労働界、消費者その他の各界代表の参加による恩恵を受けている。開発努力へのすべての段階での話し合いに、こうした従事者を加えるような新しい方法が必要である。  227 何年にもわたって総会による明確な政策指針がなく、経済社会理事会も有効な政策調整および規制を欠いたことで、システム内部に結合と焦点を欠く結果となった。中央組織、各計画、地域委員会のすべての段階を通じて、下部的組織の絶え間ない拡散と政策の一貫性欠如の増加がみられた。再活性化した経済社会理事会は、国連システム全体の内部の政策的一貫性と調整の向上に大きく寄与しうる。  228 国連システムは、開発途上国が自由に活用できる類例のない知識と専門技術の組織体を構成している。国家レベルで同システムの強みをまとめるためには、目的の一致に促された新しいコミットメントが必要である。その主たる財源機構であるUNDPを通じて国連は、各国事務所という独得なネットワークを持って、世界にまたがる国連機関の運用活動の下部構造を供与し、諸機関が変化する各国の優先順位に弾力的かつ速やかに対応できるようにしている。  229 ブレトン・ウッズ機関は、専門機関として国連の不可分の一部である。同機関は、開発融資と政策助言の重要な源である。同機関は次第に技術援助に積極的になっているが、それがUNDPの中心的な融資の役割や他の専門機関の適性が確立している分野で、競合をもたらす可能性がある。同機関と国連システムの他の機関が、それぞれの得意分野に立って、より密接に協力できるよう考慮することに、特別な関心を寄せる必要がある。ブレトン・ウッズ機関からの資本援助を、UNDPや他の専門機関からの技術援助融資と協調的、補完的かつ相互補強的な方法で、より組織的に活用することは、業務推進の上で正当化される。  230 その政策や活動に、本報告が示すような相互関係を反映する国連の能力は、かなりの部分で調整機構と構造の有効性に依存している。しかし国連は、加盟国に代わって決定を下すことはできない。本課題の目的は、各加盟国の思考と行動に指標を提供することである。 IV.結論:開発が約束するもの.  231 生活のすべての主たる次元を開発のひとつの側面として考える開発の文化が、巨大で苦しみの多い努力の中から姿を現している。共通の理解と協力的で協調的な行動への可能性は、かつてなかったほど大きい。  232 平和、自由、正義、発展などの目標を、劇的に変化した地球的文脈で追求できるような筋道を新しく考え直す必要があるというほぼ普遍的な認識が、ここ数年の間に生まれた。開発の文化は、これらの目標を単一の包括的ビジョンと行動の枠組みに包み込むことができる。この文化の基盤には、「人間の尊厳および価値」に対する憲章の基本的コミットメントがある。国連の制度は何物にも代え難いものである。  233 開発は、世界に住む人間一人ひとりを指向するものでなければならない。この人間社会が未来の世代をも含んでいるという認識が、それからさらに生まれなければならない。この世紀の記録は、人々が夢想的将来のために苦難を強いられたとき、あるいは現世代が生まれてくる者たちの福利に心を向けないときの破滅的結果を実証した。前者の極端な一例が本世紀の初めの数十年を性格づけたとするなら、後者は最近の我々のビジョンを遮っている。  234 開発の地球的時代の兆候は目に見ることができる。それは逆説を提示している。農業と産業革命は今や、情報と通信と先端技術の時代にとって替わられた。このことが、過去には所与のものと考えられていた時間や場所、資源の制約から人間を解放する潜在可能性をもたらす。しかしこれらの変革は同時に、人間の条件を新しい方法で試みる、自然災害、人災、人口、疾病、政治的対立、文化的・宗教的敵意、失業や環境悪化といった古い力を伴っている。これらの苦難は人類そのものと同じく古いものだが、それが新しい敵意に満ちた形と組み合わせで立ち向かってきている  235 開発の展望は、資金や専門技術を持てる者から持たざる者に移すことに限定された理解から、人間の営みのあらゆる範囲を包み込んだ概念に移りかわった。財政や社会や人口や環境のためであっても、返済できない負債を負うことで将来の世代の福利を損なってはならない。同様に重要なのは、先輩たちから手渡された貴重な思想や理想、制度を十分に活用するという、地球に現在住んでいる者の責任を認識することである。発展は本来的な人間の条件ではなく、退歩もありえぬことではないのである。  236 人間社会が前進し続けるためには、我々が与えられたものの上に丁重に築き、現在の成果をすべての人が利用できるようにすべきことを認識し、また我々が残していくものが修理の要る構造物ではなく、将来の発展への土台であるようにすることが必要である。これは修辞学以上の問題でなければならない。これらを踏まえて、本報告に添付したのは、国際連合の開発のための作業目録である(付属文書IおよびII参照)。  237 このビジョンが実現するかどうかは、世界人類の現世代とその指導者が、国連をそういうものにできるか、あるいは失敗するかで測られる。比類のない満場一致の瞬間に創設され、創設者たちの理解を大きく超える広範な目的に献身し、世界の人々の最良で最も包括的な目的を体現し、実際的な成果をもたらすために必要な機構を備えて、国連機関は過去と現在と未来とが一点に集まる場に立っている。  238 現在の世界危機の複雑な特徴は、それを効果的に解決するために、まずその複雑性を完全に把握しなければならないことである。集団的安全保障、基本的人権、国際法、すべての人々のための社会発展などの概念が、自民族優先主義、孤立主義、文化的敵意、経済や社会の衰弱などに侵されている。国際協力の礎石としての国家の概念も、それを排他的な意味で規定し、あるいはその現代的妥当性や効力を疑問視するものたちに傷つけられている。  239 このような懸念は、未曽有の地球的変化の中で感じとられる様々な生態学的、科学技術的、人口学的、社会学的動向は、在来型の国際的運営能力を超えてしまっているようにみえる。こうした挑戦的課題を前に、国際協力の現代的事業を放棄して、武力外交や影響圏をはじめとする、不信任された過去の危険な手法への回帰を唱えるものさえもいる。  240 この発生を許してはならない。国連は、加盟国による国際協力の基幹的機構として、柔軟性と合法性と普遍的な行動範囲を保有している。慎重に効率的に、そして自信を持って活用されるなら国連は、手にすることのできる最良の世界情勢の運営手段であり、成功も十分に期待できる。  241 現在のところ、この機構は閉塞的な循環関係に捕らえられている。国の統御権を失うことの恐れから多国間主義への抵抗がある。自らの利益にもなるという評価を確信できずに合意目標を達成する財政手段の供与に躊躇する向きがある。完全な見通しと実施期間の保証を求めて困難な事業に当たるのを渋る向きもある。  242 新しい、切迫した集団的ビジョンを欠いて、国際社会がこの循環関係を打破することはできない。従って本報告は、開発のビジョン再活性化への探究に初めての貢献を果たそうと意図するものである。  243 本報告において私は、開発努力の性格と範囲を記述した。開発の新しい文化とビジョンの出現を願って、開発過程の次元とそれにかかわる従事者について提示した。しかし、このビジョンが持続的な支援を駆使するためには、それが国際社会に承認された開発への合意目的とコミットメント、および実証ずみの成果の記録とに確実に根ざしていなければならない。国連はその記録を提供できる。さらに国連は範囲の比類ない広大さばかりでなく、従事者と次元の多様性を統合する独自の潜在能力をもたらすことができる。  244 この約束が果たされるためには、すべての機関と組織が憲章によって与えられた任務−明確に記述されながらいまだ完全に意図が実行されていない任務−を全うしなければならない。  245 今や国際社会は、憲章の目的と基本的原則に啓示され、総会で採択された目的と責任努力に留意しつつ、開発の新しいビジョンの輪郭作りの開始に進むことができる。すべての人々による新しい開発の文化の前進への実際的コミットメントによって、来たるべき国連最初の半世紀の祝典は、全人類の物語の転換点となろう。 注  1 国連環境開発会議報告、リオデジャネイロ、1992年6月3-14日(A/CONF.151/26/Rev.1 Vol.IおよびVol.I/Corr.1、Vol.IIおよびVol.IIIおよびVol.III/Corr.1)(国連刊行物、販売番号E.93.I.8および正誤表)、Vol.I:会議で採択された決議1、付属文書II。  2 A/CONF.157/24(第1部)第3章  3 第3回国連海洋法会議公式記録書第17巻(国連刊行物、販売番号E.84.V.3)、記録文書A/CONF.62/122.  4 A/AC.237/18(第2部)/Add.1およびCorr.1、付属文書I。 ・添付文書I 国連の機関別および部門別開発に対する概算支出 1992年〜1993年、全出資金源 a/ (100万米ドル) 部門           国連 UNICEF UNDP c/ UNFPA UNRWA c/ WFP -----------------------------------------------------------------------------              b/ 一般開発問題      48.0 658.1 一般統計        693.0 11.0 11.1  天然資源        161.5 174.5 242.0 エネルギー       119.6 48.0 農業、森林および漁業  62.3 294.5 342.0 産業          34.7 147.7 運輸          49.9 135.1 39.0 通信          47.1 7.0 21.2 貿易および開発     152.1 58.2 人口          459.9 8.0 1.7 323.4 人間居住        70.9 4.0 101.1 28.0 保健          106.3 1,106.0 141.5 209.0 教育          251.0 73.0 296.0 雇用          42.3 人道支援および災害管理 248.0 84.4 601.3 1,850.0 社会開発        2,518.6 124.0 88.5 10.0 文化          358.8 6.7 科学および技術     81.4 環境          35.3 3.0 55.5 ----------------------------------------------------------------------------- 合計          370.8 1,810.0 2,231.5 333.4 601.3 3,006.0             5,240.8 出所:行政調整委員会報告(E/1993/84)。説明ノートは次頁に掲載。 ・添付文書I表の説明ノート  a/ある報告機関が出資し他の報告機関が実施した活動は、計算の重複を避けて、実施した機関の数値に含めた。  b/数値は、国連貿易開発会議、国連環境計画、国連訓練調査研究所、国連大学、地域委員会、国連人間居住センター(ハビタット)、国連難民高等弁務官事務所および国連薬物統制計画のそれぞれのデータを含む。関税貿易一般協定(GATT)が通常予算の50パーセント以内を出資している国際貿易センターの総財源も含まれている。  c/国連開発計画(UNDP)と国連人口基金(UNFPA)は、出資機関として開発のための財源を供与している。その支出は、他の機関、直接UNDPまたはUNFPA、または他の機構を通じて執行された。 UNICEF 国連児童基金 UNDP   国連開発計画 UNFPA  国連人口基金 UNRWA  国連中東パレスチナ難民救済事業機関 WFP    世界食糧計画 ・添付文書II 国連運用活動の経費・財源・計画 1992年 (単位:百万米ドル) 1.国連開発計画(UNDP)a/から出資 1,026.8 2.UNDP管理の財源から出資 137.6 3.国連人口基金(UNFPA)から出資 128.2 4.国連児童基金(UNICEF)から出資 743.8 5.世界食糧計画(WFP)b/から出資 1,575.2 6.国連通常予算から出資 16.6 ------------- 合計c/ 3,628.2 出所:国連、事務総長の総会決議47/199の実施状況報告、補遺、表B.1およびB.5(E/1994/64/Add.2)  a/各政府の分担拠出金を含むUNDPの主財源。  b/WFPの予算外支出、開発活動および緊急運用の支出を含む。後者の支出の大部分は国際緊急食糧準備金から、残余WFPの一般財源から出資された。  c/専門機関の通常予算からの出資(2億2,500万米ドル)と予算外財源からの出資分(7億2,720万米ドル)は、この合計に含まれていない。 ・添付文書III 経済、社会、人権の分野での国連の主要政府間・専門組織 I.総会および総会に所属する条約組織.  基幹委員会(第2−経済および財務;第3−社会、人道、文化)  条約組織(人種差別撤廃;市民的、政治的権利;経済的、社会的、文化的権利;女性差別撤廃;拷問;児童の権利;に関する国際協定)  合計9a/ II.経済社会理事会および従属組織.  機能的委員会(統計;人口;社会開発;人権(差別防止および少数者の保護に関する小委員会);女性の地位;麻薬;開発のための科学技術;持続可能な開発;犯罪防止と刑事司法)  常設・専門機関(多国籍企業;人間居住;開発のための新しい再利用可能なエネルギー;非政府組織;計画調整;天然資源;開発計画;危険物輸送;租税問題に関する国際協力;行財政;会計と報告の国際標準;地理的名称)  地域委員会(アフリカ経済委員会;アジア太平洋経済社会委員会;欧州経済委員会;ラテンアメリカおよびカリブ海経済委員会;西アジア経済社会委員会)合計73b/ III.他の国連計画、機関、基金と管理組織.  国連貿易開発会議         会議                   貿易開発理事会、他のUNCTAD常設委員会および特別作業グループ(11)  国連国際麻薬統制計画       国際統制局  国連開発計画           執行理事会  国連環境計画           管理理事会  国連人口基金           UNDPに同じ  国連難民高等弁務官        執行委員会  国連児童基金           執行理事会  国連女性開発基金         協議委員会  国連パレスチナ難民救済事業機関  諮問委員会  世界食糧理事会  世界食糧計画           世界食糧政策/計画委員会                   合計  23                   総計 105  a/この他に現在、世界社会開発サミット、国連50周年記念、国際人口開発会議、開発途上島嶼国の持続可能な開発に関する地球会議および国連人間居住会議(ハビタットII)の準備組織ならびに気象変動の枠組み条約、砂漠化に対する国際条約策定、定着性魚類資源と回遊性魚類資源に関する国連会議に関する政府間準備委員会がある。  b/合計は、地域委員会に所属する45の補助組織を含む。 ●開発への課題:提言 事務総長報告 A/49/665、1994年11月11日 序文  1 1992年12月22日の総会決議47/181に従い私は、全加盟諸国、国連システムの担当機関や諸計画とともに、広範囲におよぶ官民両部門の見解を求めるために、1994年5月6日に「開発への課題」(国連文書A/48/935)に関する報告書を配布した。  2 本報告書は1994年6月に総会議長によって組織された開発に関する世界公聴会に提示され、また1994年7月に経済社会理事会の実質会期において討議された。新たに多くの論評が他の様々な部門から寄せられている。私はこれらすべての意見に対し慎重に検討をかさねてきた。ごく最近、第49回総会の一般討議に提出された声明書の多くが「開発への課題」について論じていた。  3 1993年12月21日の総会決議48/166の第5項の要請に基づき私は、経済社会理事会の1994年の実質討議における論議および総会議長によって進められる公聴会で表明され、議長自らの責任の下にまとめられた見解(国連文書A/49/320、付随書)を踏まえた「開発への課題」に関する私の結論と提言を第49回総会に提出する。   そうした中、私は総会決議47/181の本文に含まれる課題の内容に関する様々な要請を心に留めている。提言の要約は本報告書の付随書に明らかである。 I.はじめに.  4 取りまとめられた一般提言は、簡潔に述べられうるが、基本的にはきわめて重要なものばかりである。第一に、開発は現代において最も重要かつ遠大な責務として認識されるべきである。この責務の認識、開発を達成させるためのコミットメント、そのための継続的、協力的、効果的活動は、人類共通の未来にきわめて重要である。開発に対する配慮と支援を劇的に推進することが最優先目標であることを再認識することが、各国政府、政府間組織および国連にとって急務である。  5 第二に、開発は多面的に見なければならない。1994年5月6日の「開発への課題」に関する報告書の中で私は、五つの次元から開発を検証している。平和、経済、環64開発への課題境保護、社会正義および民主主義である。これら五つの次元の重要性は、加盟国からは十分理解され支援されている。多くの人々や多くの国々にとって、経済成長は開発の必須条件である。経済成長は選択肢のひとつではなく、必修条件なのである。しかしこれこそが目的達成の手段である。新しい開発へのアプローチは、単に経済成長を促進するだけでなく、その恩恵を公平にもたらすべきである。新しいアプローチは、人々がそれぞれの生活に影響を及ぼす様々な決定に参与することを可能とする。これらは雇用先導型の成長をもたらす。あらゆる生命体が依存する自然遺産を補充しなければならない。また、開発の包括的なビジョンを基本としなければならない。  6 開発の中核となるのは、人類の福祉の向上、飢餓、疾病および無知の撲滅、そしてすべての人々に対する生産的雇用でなければならない。中でも最初の目標は貧困の解消であり、次世代においても生産的に持続可能である方法において、人々の優先的ニーズが満たされなければならないということである。  7 第三に、優先事項および開発の諸次元に関する新生のコンセンサスは国際協力への新たな枠組みを創出することである。私たちが開発に対する国際協力と呼ぶ事業は、現在これまで以上に多く求められているが、冷戦という過去から完全に抜け出し、目標である開発を完璧に実現させるためにも蘇生させなければならない。  8 第四に、開発に対する協力の新たな枠組みの中で国連は、政策指導者・運営者として重要な役割を果たさなければならない。開発への課題に関する1994年5月の報告書に対する諸見解は、開発の諸次元に対する理解を強化しただけではない。それらはまた、国連の役割の再活性化および開発における国連システム間の一貫性と関連性を強化する手段への強力な支援を明言している。  9 開発に対する国連の任務と責任は、直接国連憲章から、また国際政治の存在や道徳的観念としての国連の基本的性格から、平和維持、人道的および開発活動の不可分性から、平和、自由、社会正義および環境の質といった普遍的な目標−まさに国連が掲げる目標であり、世界中で日々活動している目標−に対する開発の貢献から、そして50年の間に進展したプログラムから発している。国連は、開発において強い力でない限り、平和においても強い力とはなりえない。  10 今まさに国連が社会的・経済的分野において本来の任務を認識し、開発に対する包括的探求を活動の中心に置き、さらにこの新たな文脈において、加盟諸国がそれぞれ多様な開発目標を認識する努力を支援する時である。  11 国連システム−国連そのもの、専門諸機関およびブレトン・ウッズ機関−は開発の過程にもたらすものを多く有している。しかしこれらシステムは、その政府間プロセスが強化され、より一層一貫性がつらぬかれ、また様々な開発援助の構成要素が各国の熱意に対して首尾よく調整された支援に統合されることによってのみ、その潜在能力が発揮されることになろう。加えて、平和維持や人道的援助と開発との連鎖を含む諸機構の運営には改善の余地が十分にある。  12 「開発への課題」をまとめあげる過程において生じた一般提言は、三つの重要な目標を前面に掲げている。つまり、国際的開発協力をあまねく強化し、再活性化させ、開発を支援するにあたってより強力で、より効果的で、なおかつ首尾一貫した多国間システムを構築し、全体として国連システムとのパートナーシップの下に、各部局、地域委員会、基金および計画といった機構そのものによる開発作業の有効性を強化するということである。  13 第二部に提示した提言は、上記の三つの目標に沿ってそれぞれのケースについて国連は何ができるか、さらには何をすべきかといったことに特に焦点をあて、とりまとめられ、提出された。加盟諸国が提案された変化の必要性を納得しない限り、またあらゆる地域の国家と国民が変化がもたらす果実を分かち合えない限り、実際の改善は不可能だろう。加盟諸国はこの機会を捉え、国連システムをより一層効果的な多国間主義の手段とするという挑戦を受けている。 II.国際開発協力の再活性化への提言.  14 開発に対する国際協力の新たな枠組みは、国家および国際レベルにおいて相互に支援し合う行動を必要とする。 A.開発に対する国家政策  15 開発は、各国が優先的に推進し、また国家およびその国民の福祉向上に専心することによってのみ達成可能なのである。開発プログラムを計画し、管理し、実行する国家の能力は、政府と市民社会双方において構築されなければならない。  16 もはや個々の国家が開発の単独役者にはなりえないものの、各国は自国の開発に対し第一義的責任を担っている。国家の責務として、もしくは人々の権利として表現されようと、開発は有能な政府指導者、理路整然とした国内政策そして人々の強力なコミットメントを必要とする。  17 政府と市民社会との間の強力なパートナーシップは、持続可能な開発にとって欠くことのできない要件である。  18 各国政府は、貧しく社会の隅に追いやられた人々を保護し、彼らを社会や経済に組み込む道を提供するような政策を探求する特別な責任を負っている。  19 草の根レベルの人々の運動や非政府諸機関を含む非国家の従事者たちは、強化され支援されるべきである。こうした市民社会の諸機関は人々の声の代表であると認識され、また新しい開発モデルにも組み込まれるべきである。  20 民間企業の重要性を過小評価すべきではない。パートナーシップとして、強力な民間企業部門、市場の力と市場を基盤としたメカニズムの活用、企業家の開拓を奨励すべきである。各国政府は、社会的・環境的コストは正確に価格に反映され、マクロ経済に安定をもたらすことを保証すべきである。  21 政府、市民、社会は、適切な法規を通じて、汚職と闘い、消費者、投資家、労働者および環境を保護するために行動していかなければならない。 B.国際的背景  22 順風な、開発に対する成長志向型の国際的背景は不可欠である。対外マクロ経済的な力、つまり貿易、債務管理、直接投資、資本の流れおよび技術へのアクセスは、開発目標を支援しなければならない。開発に対する国際協力には国内および国際ビジネス社会とのパートナーシップが含まれていなければならない。  23 最貧困国および低援助諸国を世界経済の中に公正に組み込むことは、必須条件である。こうした国々が隅に追いやられていることが目につくし、これは変えていかなければならない。  24 1970年に採択され、最近でも1992年に国連環境開発会議(UNCED)において再確認された国民総生産(GNP)の0.7パーセントを目標とした政府開発援助(ODA)を1993年に達成したのは、デンマーク、オランダ、ノルウェー、スウェーデンと、わずか4カ国のみであった。開発援助は承認された目標に近づけなくてはならないし、非開発に優先的に資金を流用することはやめなければならない。政府開発援助の着実な増大という、達成可能な暫定的目標に関して新しい協定が達成されなければならない。国連の開発事業に対してはより大きなシェアーを配分すべきである。  25 開発援助の全体的水準を向上させ、平和維持、人道的緊急援助ならびに地球環境への資金は、開発援助からではなく新規および追加的財源によって供給されることを保証することが急務とされている。  26 国際社会は、この20年間混乱をきわめた開発努力にまつわる問題、つまり債務問題に対する解決策を探求しなければならない。債務問題は再貧困国、とりわけアフリカ諸国においてきわめて深刻である。  27 債務危機にある諸国を改革するには、蓄積された債務を十分にかつ永久的に削減させることが必要であり、それが民間部門の自信を内外で回復させ、さらには復興、成長および開発を促進するであろう。後発開発途上国および最貧困国の債務は完全に免除されるべきである。債務を金融、経済、社会および環境プロジェクトへの融資として還流させることを考慮すべきである。  28 開発途上諸国は、世界において拡大する貿易、技術、投資および情報の機会へのアクセスを公平に与えられなければならない。現在の国際経済の不均衡がこれ以上深まらず、地球の進歩の基礎を弱めないために、技術や情報革命の果実をより公平に入手可能とすべきである。  29 市場経済へ移行中の国々は、緊急に必要とされるが微妙でもある基本的な経済組織の変革、国際市場における競争力の欠如、不況およびその他様々な事柄に起因する特異な問題に直面している。これらの国々は国際社会からの追加的財源によって支援されるべきである。  30 地域間経済協力は、多くの国の開発戦略の重要な構成要素として認識されるべきである。地域の統合計画案は、ゆるやかな連合から自由貿易協定まで、新政策の構想が参考にしうる豊かな経験をもっている。類似した挑戦や経験を持つ開発途上諸国間の経済および技術協力は、奨励されるべきである。  31 世界の多くの国々の経済発展と人類の福利は、抑制されないままの人口増加と環境悪化によって脅威にさらされている。カイロの国際人口開発会議において案出された「行動計画」とリオデジャネイロのUNCEDで合意された協定を含む、こうした諸問題と取り組むためのプログラムは、包括的開発の構成要素として、高い優先度が与えられなければならない。  32 新しい技術の迅速な応用と消費における変革は、天然および環境資源の贅沢な消費を抑制するために必要である。  33 過度の軍事支出とそれがもたらす結末は、開発目標にとって重大な弊害である。軍事支出の削減、軍事援助と武器輸出に対する補助金の段階的廃止、そして見境のない武器の国際取引の効果的な削減をより一層推進させる唯一の機会が今開かれている。軍事支出の透明性を一層高めることが必要である。国連通常兵器登録は強化されなければならない。軍事および社会予算に対するより広範な比較分析がなされなければならない。地雷は、生活を脅かし、生産的利用から土地を奪うなど、開発への大きな弊害となっている。地雷とその構成物の生産と移転に対する世界的な全面禁止を宣言すべきである。総会議長によって行われる軍縮と開発との関係に関する世界的公聴会の開催について真剣に考慮しなければならない。  34 カイロの国際人口開発会議の成功を受けて、強力な国際的な開発の課題が国連会議および各種サミットの一連の作業を通して進行する形で発生している。こうした会議で設定された目標を実施するためにも効果的かつ現実的なメカニズムが構築されなければならない。  35 共通の枠組みが、過去そして将来の主要国連会議の成果を生かすためにも作り上げられるべきである。過去の国際会議やサミットで賛同を得た経済・社会開発の分野における最終目標を統合し、コストを出し、優先度をつけ、実施のための適切な期間の見通しを立てるべきである。  36 第50回総会は、先進工業諸国と開発途上諸国間の開発協力の新しい枠組みの創出に国際社会の関心を集中させる適切な機会をもたらしたが、その中で共通の利益と相互のニーズが新たなパートナーシップのための基本的な根拠を提供している。  37 これに関連し、開発への資金供与に関する国際会議は総会で検討されるべきである。こうした会議は、ブレトン・ウッズ機関、地域開発銀行および経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)と密接に協議したうえで招集されえよう。 III.効果的な多国間開発システムへの提言.  38 地球規模で相互依存が拡大するとともに、多国間協力の必要性が必然的に増大するであろう。国連をその中心に置く強力かつ効果的な多国間システムは、開発や国際経済政策および運営における多国間協力の成功には欠くことのできない要件である。  39 開発協力の新たな枠組みを構築する責任は広範囲に割り当てられている。しかし国連の役割には特有なものがあり、また必要不可欠でもある。普遍性の原則に基づいた世界的機構であり、あらゆるレベルで比類のないグローバルなネットワークを有す国連は、自覚を促し、コンセンサスを構築し、開発に影響を及ぼすあらゆる側面における政策を公表し、開発への全世界的な官民努力の多様性を合理化し調和させることができる。総会と経済社会理事会の役割を増強し、一方では国連機構とブレトン・ウッズ機関との、他方では部門別諸機関や技術機関との連係を強化することは、こうした目的のためには絶対的に不可欠である。 A.国連総会  40 経済や社会およびそれら関連分野における国連の再構築と再活性化へと進みつつある政府間改革過程の文脈において、国連総会は開発協力の新たな枠組みの案出に国際社会の関心を惹くために重要な役割を演じなければならない。  41 国連総会は、国際協力と政策開発のための重要な問題を明らかにし、そこに生じるずれや矛盾とともに、開発、貿易、金融の分野において一層焦点のしぼめられた諸機関の内部で噴出する諸問題を定期的に明確にする場として活躍すべきである。総会は、急速に変化する国際環境におけるグローバルな相互依存を管理するため、また経済・社会開発への統合されたアプローチを促進するために必要な計画の規範、水準および規則の開発に焦点をあてるべきである。第二および第三委員会の役割は、この視点から再検証することができよう。  42 首脳レベルが出席する国連総会における協議の初期の部分を、本会議においてこうした諸問題に焦点をあてた対話の場を組織するために利用することができるであろう。開発に対する国際協力をあらゆる角度から探る特別総会を数年ごとに招集することも考えられる。 B.経済社会理事会  43 効果的な多国間開発システムの中核として国連を強化する努力の鍵となるのは、経済社会理事会が国連憲章にうたわれた役割を十分に果たしうるよう復活させることである。  44 第一に、同理事会は専門機関およびブレトン・ウッズ機関との「関係協定」と権限を重視しつつ、その役割に従ってあらゆる開発問題について議論を交わし、判断を下すべきである。同理事会は、専門機関を国連とより密接な連絡を保つよう努め、総会に関する憲章第4章、経済的および社会的国際協力に関する第9章、同理事会に関する第10章に特定された諸機能を実行すべきである。  45 第二に、同理事会は援助拠出国と被援助国双方が援助計画および政策について討議し、査定する機会を定期的に供与する国際開発援助検証委員会の役目を果たすべきである。こうした役割の一部として、同理事会は主要な政策問題に関連する統一機関として、現行の国連の基金および計画の諸管理機構がかかわれるよう機能すべきである。さらに関連する国連各部の政府間監視体制にも開発に対する運営上の活動責任を与える。  46 第三に、同理事会は潜在的なもしくはすでに発生している人道上の非常事態を明らかにし、こうした事態と取り組むための協調されたイニシアチブの開発に対する指針を供与すべきである。  47 同理事会のこうした責任と機能は、理事会の作業に焦点をあて、理事会による承認のため諸問題に関する合意を促進するために、閉会中であっても会合を持つ拡大されたビュアローによって強化されよう。代表性を維持しつつ、その効率性を保持するためにも拡大されたビュアローは、加盟国を制限すべきである。作業の方法としては、即座の対応を可能とするためにも最大限の柔軟性を与えるべきである。ハイレベルの理事会全体の会合を、一般的な指針を供与し、拡大されたビュアローの作業を検討するために、毎年特定の時期に開催することになる。  48 国連総会と経済社会理事会が、開発における効果的なリーダーシップを発揮しうるように、国際開発諮問理事会が検討されるべきである。この理事会は年に一度もしくは2年に一度独自の報告書を発行し、地球経済や開発に及ぼす影響に関する重要な問題を分析し、国際世論に紹介する。 C.ブレトン・ウッズ機関  49 ブレトン・ウッズ機関との関係強化は、経済社会理事会ハイレベル協議や開発に関する世界公聴会における最近の論議の大勢を占める課題のひとつであった。国連とブレトン・ウッズ機関との関係強化は、「開発への課題」を求めた総会決議47/181による要請のひとつである。  50 ブレトン・ウッズ機関と国連との間で進行する対話や実質的なパートナーシップが強化されるべき分野は数多くある。とりわけ、能力の構築、分散化された計画や実践、小規模貸付や市民社会のあらゆる諸機関を巻き込んだ開発を必要とする社会、環境、その他の諸部門への世界銀行の貸付が拡大していることから、国連の諸計画およびこうした分野に従事する諸機関との協力を一層強化させる余地は大いにある。  51 同様に世界銀行は、無償ベースの技術援助の供与、とりわけ特定の資本投資プロジェクトとは関係しない「単独業務としての」技術援助を供与することで、国連の諸計画を活用し支援することができる。  52 こうした分野や他の分野において、ブレトン・ウッズ機関と国連諸計画との間の協力が国家レベルで成功した例があり、これを手本として採用すべきである。  53 ブレトン・ウッズ機関と国連との協力は、その他もろもろある中でも以下に挙げる分野の共同イニシアチブを通して求めることができる。それらは、小規模の企業開発やミクロ信用の利用可能性を含む貧困削減戦略、資源の生産性の改善と持続可能なエネルギーの開発、予防的開発と紛争後の平和の建設と復興、社会的にも環境的にも責任ある構造調整計画、そして能力の構築と改善された公的部門の管理である。  54 経済社会理事会の議論の場において、また開発に関する世界公聴会において多大な関心が寄せられた問題は、世界銀行と国際通貨基金(IMF)が打ち出した構造調整貸付の政策条件である。構造調整および経済改革の必要性についてはほとんど異論がない。しかしながら、構造調整計画の中の政策要素には議論の余地があり、またこのような計画の中味、そして計画そのものが不十分であると懸念されている。  55 国連とブレトン・ウッズ機関は、関係諸国とともに政策対話の構成要素や構造調整計画に伴なわなければならないその他の補足的また補償的イニシアチブについて、関係諸国とともに作業を進めていくべきである。このような共同作業の可能性は、援助協議グループおよび多国間援助、とりわけ世界銀行および国連開発計画(UNDP)からの援助の下に組織された円卓会議など、かなり広範囲に及ぶ。さらに政府の対話過程に対する指導能力と世界銀行/IMFおよび国連開発システムが起草した各国向け文書を詳細化する政策の選択の自由を与えることによって、各国の政策対話の透明性を高め、その適切さを増すことに特別な関心を寄せる必要がある。国連駐在調整官はこのような政策対話に関与すべきである。各国の戦略ノートと政策の枠組み文書間により一層の補完性をもたらすために現在なされている様々な努力は続行されるべきである。  56 実質的な協議の促進をはかる国連-ブレトン・ウッズ連絡委員会の復活を模索することも考えられる。また事務総長は、国連システム全体にかかわる重要課題を適切にIMFと世界銀行の合同開発総務会に伝達すべきである。 D.部門別および技術機関  57 国連システムの諸機関が提示する多様性は、それらが代表する支援団体と専門技術が包括的で持続可能な開発の支援に利用できれば、開発強化の重大な源泉となりうる。  58 部門別および技術機関は、主要世界会議−政府間政策インプット、特別な事務的専門技術および市民社会の異なる分野からの貢献の促進などを含む−の準備およびフォローアップを行っているが、これは国連の開発作業のあらゆる局面に漸進的に適用すべきモデルとなっている。エイズ・ウイルス/エイズ(HIV/AIDS)に対する新しい機関間計画といった共同活動に関するイニシアチブは同様に他の領域にも拡大されるべきである。  59 こうした諸機関からの技術的貢献、とりわけインフラストラクチャーの開発の様々な側面に関与する小規模な技術機関は、国連システムによって促進される経済・社会計画および優先度に完全に統合されるべきである。  60 国連システムの高潔性と包括性を確保することは、国際社会にとって大きなそして不変の関心事である。この文脈において、国際経済社会協力計画の分野において広範な国際的責任を担う世界貿易機構といった新しい機構を国連と関連づけることは望ましいことであり、優先的な注目を受ける価値がある。  61 昨今の事務局間調整機関の再構築推進という目標に関連して、事務総長が議長を務める行政調整委員会の加盟国は、同委員会の作業がもたらす影響力と一貫性を強調する同委員会の貢献度を高める措置を一層進めるであろう。こうした努力の一貫として、重大な開発問題に焦点をあてた行政長レベルの小規模なタスクフォースを最大限に活用し、国家レベルで実行しうる共通の政策を軸とした合同計画を開発することが意図されている。 IV.より能率的で効果的な国連開発活動のための提言.  62 国連の開発活動は幅広い分野を網羅している:長期的な社会経済および政治開発;危機後の復興および再建;そして人口、女性の地位、児童の生存、環境、麻薬統制、住宅・都市管理などの問題も含む。国連への信頼は、これらの計画の能率性と効率性に大きく依存している。  63 国連開発援助努力を改善する根本的な理由は、これらの努力が失敗したからではなく、これらが成功しているためである。国連が提供するサービスへの需要は、その能力をはるかに上回るものである。言い替えれば、開発のための国連活動を強化するための最も説得力のある理由は、過去の成功の上にさらに構築し、立証された能力を最大限に活用し、そして新たな需要と機会へ対応する必要性である。  64 統治、管理、融資、分業および責任分担、調整および人事の配分などを改善し強化するための措置はこれまでの改革イニシアチブを基礎に築き上げられなければならない。これらは、開発に対する諸活動、その他の再構築・再活性化努力に関する3年に一度の政策見直しの分脈において、1989年12月22日の総会決議44/211および同日の総会決議47/199によって着手された一連の国連改革を含んでいる。国連そのものの内部調整や効率性を強化することは、制度全体の一貫性の促進に大いに役立つ。 A.資産と力点  65 国連活動をより効率的・効果的にする努力は、国連が開発を支援するにあたって、特別な長所と力点を備えている分野を慎重に特定していくことから始めなければならない。  66 国連は、一般意識の向上、情報提供、国際開発の課題の定義、行動のために必要な合意の取り付けなどを提供できるユニークな場である。一度形成された合意は、国際的規範や協定となり、国家開発の優先事項に統合され、国連の活動によって支援されるのである。  67 国連の中立性は、特定の国家や商業利益を代表するものではないことを意味する。従って国連は、それら国々の開発努力を支援していくことにより、特別な関係や信頼を築き上げられる。国連は、短期的な政治・経済目的に拘束されない、安定的、長期的な能力構築に対する援助を提供しうる。  68 国連は他に類を見ない地域委員会や国内事務所の世界的ネットワークを持っている。結果的に国連の実行能力は特別に強力である。その世界的な存在によって、国連はそれぞれの国家、国家間および地域レベルにおいても有効的に活動できるのである。  69 国連は、条件付きではない末端から積み上げていく国家指導型の開発援助資金計画を強調している。国連の統治への途上国の参加とともに、これは国連の開発イニシアチブが国家の優先事項に由来すること、また関連諸国やその国民の発展に貢献することを確実にしている。70国連は社会・経済・政治問題などを網羅する包括的な権限を持っている。関連専門機関と協力しながら国連は、開発関連事項のほとんど全領域にわたる専門技術を有している。この領域の広さは国連の実行能力をさらに高めるものである。    71 国連の諸計画は、最も援助を必要としている国々と人々に焦点をあてている。国連は各国政府、草の根活動やその他の非政府機関などと連携して、開発の社会的側面に対応し、社会・経済面を統合する特別の経験と力を有している。72国連は人道的援助を動員し、実行し、調整することがきる。国連は再建、再統合、また緊急事態後のその他の開発を推進することができる。また平和維持、難民援助、救済努力や開発などを繋げることができる。早期警戒や予防開発イニシアチブなどを支援する理想的な基礎を提供することもできる。これらの分野やその他において、国連機構はあらゆるレベルの非政府機関との連携関係を確立している。 B.共通の目標  73 共有されたビジョンや共通な目的があるところでは、国連活動の調整や統合などが追随する。国際会議やその他の方法を通じて、国連とその加盟国は人間中心で、かつ公平で社会的にも環境的にも持続可能な開発の共通ビジョンを明確化し推進することを探究している。このような過程によって、共通の目標が台頭し、国連やその他の関連機関とともにその資金や計画努力の焦点を定め、エネルギーを刺激するのに役立つのである。  74 これに関連した主要目標は、女性に力をつけることである。開発の優先度や次元に関する合意が生まれると、政治・社会・経済、環境、また安全保障に関する開発のほぼあらゆる側面において女性の役割が中心的であるという理解が深まってきた。地球上の人口の半数を占める女性の本当の能力を抑圧する政策や制度は改革されなければならない。女性に権限を付与することは、社会の創造的なエネルギーの解放の強力な道具として認識され、利用されるべきである。女性に関する開発課題における国連の可視性、調整、計画性や責任などは改善されなければならない。  75 国際人口開発会議の結果、第48回国連総会における「女性への暴力撤廃に関する宣言」の採択や女性への暴力に関する特別報告官という新しい役職の創設を決定した人権委員会などは、女性の人権保護のための主だった最近の功績である。第4回世界女性会議では、女性の前進をはかる措置に対する国際合意のさらなる推進を見ることであろう。これらの合意の実施は、開発努力に完全に統合されるよう調整されながら進められるべきである。  76 その他の三つの共通な目標の概要が以下に明記してある。すなわち貧困の撲滅、予防的および治療的開発、アフリカ開発などである。加盟諸国はこれらの分野における国連の指導力を支援するよう推奨される。国連の開発事業資金や計画を統合する他の重要な目標には、食糧の安全保障に対する国家優先計画への支援、完全雇用と教育、持続可能な生産のための天然資源の保護と再生などが含まれる。  77 すべての国は特定期間中に貧困を撲滅する地球規模の協定に合意すべきである。  78 近々予定されている会議、特に世界社会開発サミットや第4回世界女性会議などは、それぞれの国情に合致した事業戦略に支持された明確で野心的、かつ監視可能な貧困撲滅目標を定義することができる。国連はこれらの目標に向かって国際社会全体を動員するために払われるこうした努力に直接的な役割を演じるべきである。  79 基礎的社会サービス、雇用創出、食糧安全保障、麻薬や国際的な犯罪抑制、融資・技術・訓練・市場へのアクセスなど、貧困撲滅構想の決定的要素は、包括的な事業パッケージに組み込まれるべきである。  80 近年では平和維持、難民援助や人道的救済など組織の活動の膨大な成長がみられる。これらの諸活動は予防的また治療的開発への新しいイニシアチブの展開によって補完されなければならない。  81 予防的開発は予防的外交を補完するのに必要である。国連は開発に対し予防的な行動を起こすために、人為的または自然の危機を事前に想定し、対応するために高い水準の能力を構築すべきである。前述のように、これは経済社会理事会の作業の主要焦点に掲げるべきである。  82 切迫した人道的緊急事態の早期発見や経済社会理事会による予防的行動の指針などを提供する世界的な監視システムが検討されるべきである。このようなシステムは、現存する能力にアクセスがあり、それを発展させ、強化することを追求する。  83 治療的開発の新たな焦点が必要となっている。社会の傷を癒し、軍隊を解体し、内外の難民を再入植させる時期が到来したときには、再建や復興を含む時宣を得た紛争後の平和建設および開発が必須である。  84 アフリカにおける開発努力にさらなるはずみを付けるべく、特別な構想が早急に必要である。世界の最貧困47ヶ国のうち33ヶ国がアフリカにある。アフリカは世界貿易のわずか2パーセント、世界輸出の1.4パーセントしか占めていない。経済成長は対外債務問題、対外資金流入の減少、交易条件の急速な衰退、そして市場アクセスへの障害の増大などによって妨害されている。砂漠化は開発への深刻な障害となっている。そして大陸全体で貧困の永続と広範な失業が、社会的信用と安定を侵食し、紛争と動揺に火をつけている。  85 1990年代のアフリカ開発に対する国連の新課題にかかわる1994年7月29日の経済社会理事会決議1994/38、および行政調整委員会の最近の会議において提案されたように、アフリカ支援における主要な機関間構想を特定する作業部会を行政調整委員会の下に設置することが検討されている。作業部会は特定の目標や問題に関する国家レベルの開発協力に焦点をあて、アフリカ経済回復や開発に対し国際的な支援を喚起するために必要な政策の選択肢を定義するであろう。 C.運営協調  86 国連を構成する多様な開発機関はそれぞれの組織文化、名称の一般的知名度や支持団体、資金動員能力などを有している。さらに適度の組織多様性や複数性は健全である。国連内部における運営協調の強化努力は、現行アプローチの力を維持させながら一体化した制度の長所を伸ばすよう努力すべきである。  87 そのような努力は次のような目標に向けられるべきである。すなわち国連がその多様な構成要素のより明確な役割や使命の補完的定義を含む、開発目標を達成しようとする国々を支援できるような、より統一され、効率的で効果的な枠組みを構築すること。重複や細分化を廃絶すること。国、地域また本部レベルにおける指導力と協力を強化すること。人道的援助の協調や実施、開発と緊急援助の連携、予防的および治療的開発の推進における国連の能力を強化すること。分析的、規範的能力の動員および運営活動を支援しうる貿易や技術へのアクセスを含む関連分野における組織の役割を強化すること。様々な問題に対応する活動に関し適切なレベル−国、地域または本部−を明確化すること。組織全体の開発事業に地域委員会を統合すること。地域駐在調整官と国家指導のアプローチを強化すること。共通の前提、計画アプローチ、共通の計画サイクルなどを通じて国連の実施能力を合理化すること。国の優先事項に対応できるよう、国家戦略ノートやその他の道具などを含む、国連総会決議44/211および47/199を国連がより速やかにまた積極的に実施できるようにすること。  88 これらの目標を追求するには、全体の計画協調を改善し組織内の政策統一達成のための主要な道具として、国連開発計画の事務局長の支援をえて、私は経済社会分野の全幹部職員と頻繁に会合を持つ意図である。国家レベルの協調と関連問題に焦点をあてた、強化された政策に関する共同作業グループ事業の結論は、これら幹部職員の会議において重要な貢献を果たすであろう。  89 開発のための運営活動が、特別代表の指令の下に平和維持活動の文脈で実施される時、その活動に動員されている国連システムのすべてのレベルの全要素が、その特別代表の指令下、指導下に入らなければならない。この点で特別代表が政治的役割のみならず、重要な調整役割を有することを認識しなければならない。 D.将来の財政  90 より良い運営調整と優秀な国際公務員は絶対不可欠ではあるが、開発のための国連運営活動の効率性は最終的にはその財政に依存する。開発事業に従事している国連関連機関が直面している難問は、その財政逼迫によって、加盟国がそれぞれの挑戦に対処させるための努力をその規模に応じて支援できないことである。  91 国連は財政危機に陥っている。国連の開発に対する権限拡大に伴い、寄付金のみでは賄えなくなっている。これに対応するために、いくつかの原則と提案が提出された。より多くの資金が必要であり、国連に与えられた権限と資金が健全な関係になければならず、また事業が中途で途絶えないよう資金の予測性が重要であることが認識された。国連の加盟諸国が国連の予算やその課題を十分管理することを可能にするための、査定され交渉された自主的な資金拠出の制度が最も理論的かつ適切な財政支援方法であると提案された。さらに国連がその自主的資金による計画、特に信託基金を通じて実施されるものは、不必要で重複するような支出を避けるためにも再吟味するよう提案された。その他検討されうる措置は、投機的国際金融取引に対する手数料、すべての国における化石燃料の使用税(または結果として出る公害税)、期待される世界的な軍事費削減からねん出される費用の小規模部分の計上、不必要な補助金の廃止により解放される資金の部分的活用、および国際旅行や旅行関係文書にかかわる印紙税からねん出される資金の利用などを含む。 V.結論.  92 人間中心で持続可能な開発への闘いの勝敗は、政府省庁の廊下においてではなく、地球社会の個々の日常生活の営み、村落や町、または小村や家庭において、そして市民社会の組織において決まるのである。国連憲章は「われわれ人民は・・・」といった誓約で始まる。われわれは全員開発の生まれつつある新しいビジョンの真の管理人として、人々の代理で行動するのである。開発協力の新しい枠組みや国連システムの再活性化を達成するためにわれわれが働くのは、彼らのためである。 ●付表 ・開発への課題:主要提  開発は国家の優先事項によって作動されなければならない。政府、市民社会および強力な民間企業部門を動員したパートナーシップを通じた、開発プログラムを計画し管理し実施する国家能力を構築する必要がある。  対外マクロ経済勢力は開発目標を支援しなければならない。開発途上諸国は、増大する貿易、技術、投資、または情報のグローバルな機会に公正なアクセスを提供されるべきである。  開発援助は合意された目標に近づかねばならない。政府開発援助の安定した増大へ向けた達成可能な暫定目標値に合意すべきであり、国連の開発事業によって大きな比率が向けられるべきである。  経済改革に取り組んでいるものの債務危機に直面している債務国に対しては、適切かつ恒久的な債務削減がなされるべきである。最貧困国と後発開発途上国の債務は、完全に帳消しにすべきである。  市場経済に移行している国々は、国際社会からの追加資金によって支援されるべきである。  軍事費削減にはさらに進展がみられるべきである。軍縮と開発とのつながりに関して国連総会議長の下で公聴会が検討されるべきである。  国連会議において設定された目標を実施するために共通の枠組みが考案されるべきである。目標や目的を統合し、経費を計算し、優先度化し、実施のための適切な時間的展望の下に置くべきである。  第50回国連総会は、開発協力に対して新しい枠組みを模索することに対して国際社会の関心を引くべきである。このような文脈において、開発のための資金に関する国際会議の開催が望ましいことも検討されるべきである。  効果的な多国間開発システムは、国連の無比な役割が認識され、支援されることを要請している。その普遍性、稀有なネットーワーク、合意を作り、政策を流布し、官民の開発努力の合理化を助ける能力が認識され、支援されるべきである。  総会は危機的な問題を特定し、開発・貿易および金融に焦点をあてて活動している諸機関に該当する新たな問題に関する場を提供すべきである。グローバルな相互依存のより効果的な管理や経済社会開発への統合されたアプローチの推進などへの要請に焦点を絞るべきである。  高いレベルの代表が出席している総会の初期部分は、本会議において開発問題への対話に光をあてうる。開発に向けた国際協力の主要側面に関する特別総会の開催も検討されるべきである。  経済社会理事会は、憲章でうたわれている役割を演じるためにも再活性化されるべきである。再活性化された理事会は次のことをなすべきである。  ● 専門機関が国連とより緊密に作業ができるようにすること。国際開発援助検証委員会として機能し、国連基金や計画の管理組織が関連する統一された組織として機能 すること。人道的緊急援助を特定し、協調イニシアチブのための政策指針を打ち出すこと。  理事会の承認を得るために、諸問題についての合意を容易にするために、閉会中にも会合できる理事会の拡大ビュアローが検討されるべきである。  国連とブレトン・ウッズ機関との間の協力強化は下記の共同イニシアチブを通じて追求されるべきである。  ● 貧困撲滅戦略、持続可能なエネルギー開発、紛争後の平和建設、能力構築および公的部門管理の改善。  国連とブレトン・ウッズ機関は、構造調整プログラムに伴う、政策対話その他の構想の構成について関連国家と共同で作業すべきである。対話のプロセスを進める各国政府の能力は、地域駐在調整官の支援で強化されなければならない。国別報告書の補完強化も探究されるべきである。  技術および部門関係機関の貢献は、包括的で持続可能な開発を支援するためにも、開発戦略により完全に統合されるべきである。  国連システムの高潔性と総括的な性格は維持されねばならない。世界貿易機関(WTO)などの新しい組織を国連と関係付けることは、優先注目に値するだろう。  行政調整委員会の委員は、事務総長の委員長の指導の下に、国連システムの作業の影響と一貫性を強化する措置をさらに追求すべきである。  統制、管理、財政、責任分担、調整、人事などを改善するための措置は、今日まで取られてきた、総会決議44/211および47/199によって着手され、またはその他の再建、再活性化のための努力および改革構想に則って構築されるべきである。  女性の権能、貧困撲滅、予防的・治療的開発、そしてアフリカ開発を支援する特別イニシアチブなどは、国連が指導力を持って行動すべき重要な分野である。国連が開発努力を統一できるその他の重要目標は、食糧、安全保障、完全雇用、あらゆる人々のための教育、持続可能な生産に必要な天然資源の保護と再生などを含む。  運営協調を強化するための努力とは、統一されたシステムの利点を達成することを試みることおよび現行の手法力を保存することである。それらの目標には下記が含まれる。  ● 国連開発援助のためのより統合された、効率的で効果的な構造;国連の人道的援助の協調と実施能力の強化;運営の支援に向けた貿易や技術へのアクセスなど密接に関連する分野への国連の分析的役割の動員;地域委員会の国連の開発事業への統合;国家優先事項へのより迅速な対応を目的とする国家指導のアプローチや地域駐在調整官の強化。  これらの方向に向けて、事務総長は国連開発計画事務局長の支援を得て、経済社会部門にかかわる幹部職員との会合を頻繁に持つことになろう。  平和維持活動において、開発活動に従事しているあらゆるレベルの者が、特別代表の指令の下にその活動に動員されている国連システムの全要素をもって従うべきである。  国連の開発努力は十分な資金によって支援されなければならない。国連の開発任務の拡大にかんがみ、自主的拠出金のみに依存することは、もはや不十分である。  三つの原則が基本である。すなわち一層の資金が必要であること。権限とそのために提供された資金は健全な関係になければならないこと。事業が途中で途絶えないように資金の予測が必要であること、である。 ●第2部 関連の国連文書 ●再版文書の一覧 総会決議  開発への課題  A/RES/47/181、1992年12月22日............................................................83  開発への課題  A/RES/48/181、1993年12月21日............................................................85  開発への課題  A/RES/49/126、1994年12月19日............................................................87 経済社会理事会報告  理事会上級部会  A/49/3(第2章)、1994年9月12日..........................................................89 ●総会決議 ●開発への課題 A/RES/47/181、1992年12月22日  総会は、  国連憲章の、特に全人類の経済的・社会的発展の促進に国際機構を用いるコミットメントを想起し、  事務総長の年次報告、特にその中の開発への課題(注1)への言及箇所に留意し、  開発のための国際協力促進のフォーラムとしての国連の比類のない立場を再確認し、  開発、特に開発途上国の開発の諸問題に有効的に対処するための国際協力および国際経済に関連する広範な主題に正当な考慮を払う必要を強調し、  開発、特に開発途上国のそれに関連する広範な問題に対処するための国際協力を育成する国連の能力の強化を継続する重要性を重視し、  総会によって開発に関して採択された目標とコミットメント、特に「国際経済協力に関する宣言」のうちでも特に「開発途上国の経済成長と開発の再活性化」(注2)「第4次国連開発の10年のための国際開発戦略」(注3)「カルタヘナ・コミットメント」(注4)「1990年代アフリカ開発のための国連の新課題」(注5)「1990年後発開発途上国のための行動計画」(注6)および多くのコンセンサス合意と条約、特に国連環境開発会議(注7)において参加各国首脳レベルで採択され持続可能な開発への新しい地球的パートナーシップの開始を印した「アジェンダ21」などのすべてが、ともに開発のための国際協力の全体的枠組みを提供していることを重視し、  1991年5月13日の決議45/264が創始した再構築および再活性化プロセス、特に国連の経済的・社会およびその関連分野での目標と優先性の達成を促進するという、他の関連諸決議にも盛られたコミットメントを想起し、  事務総長に対して、加盟国とも協議のうえで、総会が採択した開発に関する目標および協定を十分に考慮に加え、国連の役割ならびに開発協力促進における国連とブレトン・ウッズ機関との関係を国連憲章の枠組みと条項およびブレトン・ウッズ諸協定条項の範囲内で高める方策についての分析と勧告、なかんずく国連が課題の中で対処する具体的テーマと領域の総括的な注釈つきのリストおよび事務総長自身の優先順位についての見解を含む開発の課題に関する報告を、加盟国の検討のために第48回総会に提出するよう要請する。 ・注  1/総会公式報告書第47会期、付録第1号(A/47/1)、105文節  2/決議S-18/3、添付文書  3/決議45/199  4/第8回国連貿易開発会議報告1992年2月8-25日、コロンビア、カルタヘナ・デ・インディアス(TD/364)、第1部、セクションA参照  5/決議46/151、添付文書11セクション  6/第2回国連後発開発途上国会議報告1990年9月3-14日、パリ(A/CONF.147/18)、第1部参照  7/国連環境開発会議報告1992年6月3-14日、リオデジャネイロ(A/CONF.151/26第1、2巻および正誤表I、III)、47/182参照 ●開発への課題 A/RES/48/166、1993年12月21日  総会は、  1992年12月22日の決議47/181を想起し、  開発の分野における国際的コンセンサス促進の枠組みを入念に構築する必要を確信し、  経済的・社会的領域における国連の有用性の強化にコミットし、またその観点から経済的・社会的開発のための国際協力の育成と促進における国連の役割を再活性化する必要を認識し、  開発への課題について表明された各国の見解に留意し、  事務総長が1994年初めに決議47/181で要請された報告を提出することを歓迎し、  1.総会決議47/181(注1)の実施状況に関する事務総長覚書に感謝とともに留意し、  2.開発への課題とそれに関する事務総長覚書を検討する政府間討議が、経済社会理事会の1994年の実質討議および総会の第49回会期において行われるべきであることを決定し、  3.総会議長が1994年のできる限り早期に、総会決議47/181の要請による事務総長報告に基づいた開発への課題に関する自由形式の広範な討論と意見交換を主催するよう要望し、  4.また総会議長に対して、それらの討論の広範性を確保するために、関連する国連システムの諸計画、基金および機関、関連する国際機構、科学および学術を含むその他の組織に対して、期間中の全面参加または所見の表明を求めることをも要望し、  5.事務総長に対して、開発への課題に関する彼の報告を補遺する追加的提言を、経済社会理事会の1994年実質討議を通じて表明された見解および総会議長が進めた討論で表明され議長の責任で要約された見解を十分に考慮に加えたうえで、適正な形で総会の第49会期に提出するよう要請し、  6.経済社会理事会に対して、1994年の組織会期において、「開発への課題」を1994年実質討議における高級担当者部会への予定議題とするよう勧告し、  7.開発への課題に政治的な弾みを与える方策を考慮する、高級担当者による特別本会議を第49会期の期間中に開くことを決定し、  8.「開発への議題」と題する案件を第49会期の暫定議題に加えることを決定する。 ・注 1/A/48/689・87総会決議 ●開発への課題 A/RES/49/126、1994年12月19日  総会は、  1992年12月22日の決議47/181および1993年12月21日の決議48/166を想起し、  事務総長から提出された「開発への課題」(注1)に関する報告に留意し、  総会第48会期の議長が主催して1993年6月6日から10日までニューヨークで開かれ、現在進んでいる「開発への課題」の論議に実質的貢献を果たした「開発に関する世界公聴会」を歓迎し、また第48会期議長による「開発に関する世界公聴会」覚書と彼の要約ならびに結論(注2)に留意し、  経済社会理事会の1994年実質討議中に開かれた高級担当者による論議に留意し、また同理事会議長による要約と結論(注3)にも留意し、  開発の国際協力を促進する行動的な合意の枠組みの入念な構築と国連の経済的・社会的分野での役割を強化するコミットメントを強調し、  1.「開発への課題」をさらに行動的かつ総合的なものとする自由形式の特別作業部会を総会に設置し、その活動を1995年のできる限り早い時期に開始することを決定し、  2.総会の自由形式の特別作業部会に対して、その討議においては、総会決議47/181および48/166に基づいて事務総長から提出された報告ならびに勧告をはじめ、経済社会理事会1994年実質討議の高級担当者による検討結果、総会の現会期中にハイレベル討議で表明された見解、「開発に関する世界公聴会」の要約ならびに国や国のグループからの国連開発会議の招集を含む提案に配慮するよう要請し、  3.経済社会理事会に対して、その1995年組織会議において理事会が自由形式の特別作業部会にさらに実質的財源を与える手段を講じるよう要請し、  4.自由形式の特別作業部会に対して、「開発への課題」の最終案とその採択の適正な諸様式を検討するよう要請し、  5.また自由形式の特別作業部会に対して、本会期末の前に総会に作業の進行状況を報告することも要請し、  6.第50会期の暫定議題に「開発への課題」とする案件を加えることを決定する。 ・注  1/A/48/689、A/48/935およびA/49/665  2/A/49/320、添付文書  3/E/1994/109 ●経済社会理事会報告 ●理事会上級部会 A/49/3(第2章)1994年9月12日  1.1994年の組織会議において理事会は、  (a)上級部会は以下の主要テーマについての考慮に献身すべきであり、「開発への課題」  (b)閣僚級の参加による上級部会は1994年6月27日から29日まで開催(決定1994/201)されるべきである、と決定した。  2.総会決議45/264に従い、上級部会は国際連合憲章第69条に基づいてすべての加盟国に開放された。 A.上級部会の議事進行状況  3.上級部会は、1994年6月27日から29日までの間(理事会の第9〜15回会合)開催された。日程進行の記録は、関連要約記録(E/1994/SR.9−15)に記載されている。理事会は同部会に以下の文書を配付した。  (a)開発への課題に関する事務総長報告(A/48/935)  (b)「グループ77」が1994年6月24日に採択した開発への課題に対する閣僚級ステートメントを伝達するアルジェリア国連常駐代表からの国連事務総長あて1994年6月27日付書簡(A/49/204−E/1994/90)  (c)「グループ77」30回記念日に採択された閣僚級ステートメントを伝達する1994年6月27日付アルジェリア国連常駐代表からの国連事務総長あて書簡(A/49/205−E/1994/91)  (d)1994年6月29日付ユーゴスラビア国連常駐代表部代理大使からの国連事務総長あて書簡(E/1994/101)  4.6月27日開催の理事会第9回会合で、理事会議長がステートメントを発表した。  5.同会議において理事会は、世界経済と国際経済協力の重要問題について国連システムの多国間金融、貿易機構の長との政治対話と討論を開始した。  6.世界銀行総裁、国際通貨基金専務理事、国連貿易開発会議事務局代表、関税貿易一般協定事務局次長がステートメントを発表した。  7.見解交換の中で、アメリカ、ベルギー、ドイツ、ノルウェー、ギリシャの代表がステートメントを発表した。  8.世界銀行総裁、国際通貨基金専務理事、国連貿易開発会議事務局代表、関税貿易一般協定事務局次長、政策調整・持続可能な開発担当事務次長が、意見交換の間に出された質問に答えた。  9.6月27日の第10回会合において、理事会は政治討議を続行した。意見交換の間に、デンマーク、インド、エジプト、ロシア連邦、ナイジェリア、チリ、中国、イギリス、バングラデシュ、日本、インドネシア、ベラルーシの各代表とアルジェリアおよびモロッコのオブザーバーがステートメントを発表した。  10.欧州共同体のオブザーバーもステートメントを発表した。  11.国際通貨基金専務理事、国連貿易開発会議事務局代表、関税貿易一般協定事務局次長、政策調整・持続可能な開発担当事務次長および世界銀行代表が、意見交換の間に出された質問に答えた。  12.理事会議長が政策対話と討議を総括するいくつかの見解を述べた。  13.6月28日の第11回会合において、理事会は開発への課題(議題2)の検討を開始した。  14.事務総長がステートメントを発表した。  15.総会議長もステートメントを発表した。  16.続いて、アルジェリア国連常駐代表(「グループ77」に参加している加盟国および中国の代表として)、ギリシャ臨時外務大臣(欧州連合に参加している加盟国の代表として)、カナダ国務大臣(アジア・太平洋)、フランス外務副大臣、米国国際開発局長官、デンマーク開発大臣、セネガル国連常駐代表、メキシコ国連常駐代表、パラグアイ外務大臣がステートメントを発表した。  17.国連食糧農業機関事務局長もステートメントを発表した。  18.6月28日の第12回会合において、インドネシア外務省多国間経済協力 次長、イギリス海外開発局副長官、インド外務担当国務大臣、ドイツ外務大臣、ポーランド外務次官、エチオピア計画・経済開発担当大臣、ルーマニア外務次官、ブラジル上級部会特別代表、イラン国際関係担当外務次官、スリランカ国連常駐代表、マレーシア総理府無任所相、フィンランド外務審議官(開発協力)、ベルギー開発協力担当国務次官、コスタリカ外務大臣、ジンバブエ大統領府国家経済計画委員会計画委員長、スウェーデン外務次官、バングラデシュ財務省経済関係局長、クロアチア副首相がステートメントを発表した。  19.世界保健機関事務局長、国連教育科学文化機関事務局長、国連工業開発機関事務局長もステートメントを発表した。  20.6月29日の第13回会合において、コロンビア国連常駐代表部代理大使、リビア経済商業問題総人民委員会次官、アイルランド外務大臣、ノルウェー外務省政務次官、スロベニア外務次官(外務副大臣)、中国国連常駐代表、パキスタン首相付社会問題担当特別補佐官、バハマ総理府議会担当次官、ウクライナ第一外務副大臣、ブルガリア副外務大臣、イタリア外務次官がステートメントを発表した。  21.欧州共同体のオブザーバーもステートメントを発表した。  22.国連開発計画事務局長、国連児童基金事務局長、国連人口基金事務局長、世界食糧計画事務局長もステートメントを発表した。  23.理事会議長が対話を開始するステートメントを発表し、デンマーク開発大臣がその対話に参加した。  24.6月29日の第14回会合において、日本国連常駐副代表、ロシア連邦外務副大臣、オーストリア国連常駐代表、ポルトガル外務省協力担当国務次官、キューバ第一外務次官兼国連常駐代表、ベネズエラ国連常駐代表、オーストラリア国連常駐副代表、イスラエル特命全権大使、ジャマイカ国連常駐代表、ネパール国連常駐代表、ベラルーシ国連常駐代表、マケドニア旧ユーゴスラビア対外関係省大使、モロッコ経済問題担当大臣、韓国国連常駐代表、ヨルダン情報・国務大臣、スワジランド経済計画開発担当大臣、エジプト国連常駐代表、スイス国際組織局長がステートメントを発表した。  25.ラテンアメリカ経済機構、アフリカ統一機関のオブザーバーもステートメントを発表した。  26.国際民間航空機関事務局長、国際労働機関事務局次長、難民副高等弁務官がステートメントを発表した。  27.ギリシャ代表がステートメントを発表した。  28.6月29日の第15回会合において、マダガスカル国連常駐副代表、スペイン王宮府外務室国際機関担当局長、トルコ国連常駐代表、クウェート社会労働次官がステートメントを発表した。  29.同会議において、理事会は対話に入り、そこでアンゴラ、イギリス、ドイツ、ベニン、オランダ、日本、エジプト、セネガル、中国、カナダ、フランス、パキスタン、ブラジル、アメリカ、インド、オーストラリアおよびナイジェリアの各代表およびアルジェリアとオランダのオブザーバーがステートメントを発表した。  30.国連開発計画、世界銀行の代表もステートメントを発表した。  31.理事会議長は、いくつかの総括的見解を述べた。 B.上級部会の結論  32.7月18日の第35回会合において、理事会議長は上級部会の要約と結論(E/1994/109)を提出した。  33.同会議において、アメリカ、ロシア連邦、ドイツ(欧州連合に参加している加盟国の代表として)、ウクライナ、中国、パラグアイ、リビア、ベラルーシの各代表およびアルジェリア(グループ77に参加している加盟国の代表として)とキルギスタンのオブザーバーがステートメントを発表した。  34.国連食糧農業機関代表もステートメントを発表した。  35.理事会議長がいくつかの総括的見解を発表した。  36.討議を通じて現れた主要な要素は以下に要約された。 ●経済社会理事会議長リチャード・バトラー大使の要約と結論 ●要約 ・現状について  「地球の経済的・社会的現況をめぐる主要な特徴が以下のように識別された。  「世界経済全体としては成長が再開したが、それはきわめて不均衡に広がっており、とても安定したものとはいえない。  「かなりの数の開発途上国が世界経済の中で重要な役割を演じているとはいえ、最貧困の規模と拡散はきわめて大きく増大している。今日、10億人以上の人々が最貧困状態にある。  「全体に先進国と開発途上国との格差は拡大を続けている。そのことは国際的な貿易、金融、財政、技術および情報・通信の流れの主要な決定要因からの開発途上国の疎外化となって反映されている。  「いくつかの先進国の力強さを加えた成長にもかかわらず、失業率は憂慮すべき高さにとどまっている。  「地球経済の統合/地球規模化は、今やその中に広がる根本的特徴である。  「持続可能な開発は追求されるべきである。  「政府開発援助の水準が下降を続けている。援助予算の停滞、場合によっては減額に特徴づけられる、国民総生産の0.7パーセントという合意目標に背く政府開発援助の危機が存在している。  「地球的には開発途上国に対する直接民間投資は拡大しているが、それらの投資は不均等に広がっており、多くの場合、政府開発援助を代替することはできない。  「緊急援助が、今や国連によって開発途上国のために用意された資源の相当部分を吸収している。  「世界貿易の成長では、いくつかの開発途上国が生みだす割合が拡大している。これは地球経済にとってのプラスであり、さらに開発途上国の成長を支援することの必要性を示している。  「ガットの多国間貿易協定のウルグアイ・ラウンドの完結と世界貿易機関の創設は、世界経済に大きく貢献する展望を与えている。ウルグアイ・ラウンドの恩恵はすべてに平等であるべきだが、当初において不平等になることがありうる。そのことは、部分的には健全な輸出指向政策にかかっている。そのことの、より広範な、あるいは完全な実現には、開発途上国のための移行措置、貿易、金融、財政政策の間に一層の一貫性を適切な形で形成すること、ならびに保護主義的性格の一方的行動の防止と対応などが必要である。  「この10年間に、相当数の開発途上国が関税率引き下げとともに貿易自由化措置を実施した。これはプラスの傾向であり、いまだそれが実現していない先進国によって同調されるべきである。  「債務負担が、なお多くの開発途上国、特に厳しい債務返済困難を経験し続けているアフリカと後発開発途上国の開発努力の束縛になっている。この状況は開発努力を阻害し続けている。  「後発開発途上国および最も傷つきやすいグループに特別な関心が寄せられなければならない。アフリカにおいて引き続いている危機的な経済状況はアフリカだけでなく、世界経済にとっても多大な損失である。  「移行過程にある経済が経験している経済的・社会的開発への障害は、本質的にも地球的見地からも重大である。  「世界経済、特により貧しい国における女性の状況は、人間的・社会的にも深い憂慮の原因であり、高度生産性資源の活用という経済的な観点からみると、重大な失敗となる。 ・優先順位について  「『開発への課題』を主題とする討論を通じて、以下の諸問題が現在の状況の基本をなしており、従って/また、新しい課題が実施される場合に対応すべき必要事項であるとして識別された。  「政策、行動、資源の配分を、地球的経済社会開発、すなわち世界人類のうちできわめて多数を占める開発途上国の人々の生活水準を大幅に向上させることを優先する、すべて95総会決議の国による政治的協定の必要性。新しい課題は、パートナーシップに基づく行動指向性をもち、国の特異性にも応分の関心を払わなければならない。  「このコミットメントは、質量両面の目標、任務が緊急なものか根の深いものかを識別する必要性、経済成長および持続可能な開発の重要性などの認識に基づいたものになろう。  「世界人権会議で採択されたウィーン宣言に述べられている開発の基本的権利、平和と開発の連環性、民主主義と開発と人権尊重と基本的自由は相互依存し強化しあうものであること、などの認識。  「経済成長と、社会のあらゆる人々の機会平等の推進を含む社会正義の重要性。  「国連は新しい開発の課題によって、いま行動を起こす比類ない機会をもっている。現在の状況は、必ずしも長く続くものではない。世界の経済と社会情勢の現況は地球規模で相互に結びついていることから、この機会を捉えそこなうことは、広範かつ深刻な打撃的影響を残すかもしれない。  「開発は地球規模の問題である。開発途上世界の多様性を認識し、区別された包括的アプローチならびに南と北、南と南の二つの協力を強化する必要性がある。  「新しい課題に、すべての適切な行為者が関与することが必須である−市民社会の諸機構、非政府機関、民間部門ならびに政府と国際機関などである。自己暗示的な課題は必ず失敗する。  「新しい開発の課題は、まず人間を中心に据えたものでなければならない。全体的な経済開発の必要性を認めつつも、行動計画では教育、保健と人々の福祉に適正な優先性を与えるべきである。この枠組みの中で、機構、政府当局および市民社会の双方が強化される必要がある。  「10億人以上を苦しめている貧困に対して協調的な攻撃がなされるべきである。その行動は、特に根底にある原因の根絶に向けられなければならない。特別な関心が後発開発途上国、とりわけアフリカに払われなければならない。  「女性の地位に特別な関心が払われるべきである。女性は意思決定や経済の主流的活動の中に組み入れられなければならない。彼らの教育、保健、福祉に対する投資の経済的および社会的効果は、他の類似投資のそれより大きい。  「開発の制約要因のひとつが、急速な人口増加である。新しい課題は、全体的な持続可能な開発の文脈に、明確で有効な人口政策を組み込むべきである。  「政府開発援助が減少している問題と、多国間開発資金が開発目的よりも緊急目的に振り向けられる割合が増大していることに対策が講じられるべきである。  「開発への課題は、特に開発途上国での科学と技術の基本的役割を考慮すべきである。それは、開発途上国への技術のアクセスと移転を改善し助成する手段を識別すべきである。  「貿易、債務、商品価格、技術移転、資金の流れといった外部要因は、開発途上国の国内努力の成功または失敗に決定的に重要である。  「地域的経済統合は多国間主義と補完関係にある。地域統合の過程は、開放的貿易システムに向けて貢献すべきである。  「政府は、自立努力に基づく開発の枠組み条件を確保する一次的責任をもっている。  「今日の国連機構が、当面の挑戦的課題には不十分な方法で運用されていることがはっきりしてきた。新しい機構の設立に対する支持はなく、現機構とくに本部を、今より格段に効率的に機能するようにすべきだという主張だけがある。現地レベルでは駐在調整員システムが引き続き強化されるべきである。  「国連機構をより効率的に機能させるための行動は、国連が比較優位にある作業分野を識別し、そうでない分野を切り捨てることからはじめるべきである。  「業務分野も含めて、開発における国連のより強力な役割が必要である。他の行為者との関係での国連の役割も明確化される必要がある。これは、開発への課題の実施に伴う事務総長の国連システムに対する行動指向的な勧告を容易にすることになろう。  「国連とブレトン・ウッズ機関の関係には、相当に改善の余地がある。構造調整計画の社会的次元も一層の関心を払うことを要する。 ・結論  「経済社会理事会の上級部会、開発のための世界公聴会で発表されたステートメントおよび理事会メンバーとの事後の討論は、開発への課題に基づく行動の中心的な優先問題を指し示した。それらの行動は総会で考慮される。  「その考慮を容易にするため、事務総長は開発への課題に関する追加的報告を総会の第49会期に提出する。私は事務総長が彼の報告を作成するにあたって、本文書に記録された優先順位を検討に加えることと思う  「加えて、国連開発システムの活動に関して理事会では、同システムが有する比較優位を、一層明確にする必要性が多く語られた。  「この文脈では、私は二つの基本的考慮が適切だと信じる。  「国連が開発に関連して直接的に活用している地球資源は、全体のほんのわずかな部分である。  「同時に国連は、地球全体にかかわる政治的決定のためのコンセンサスを形成する能力を、唯一独自に持っている。これがその第一の比較優位である。  「この優位性が関連データの正確な分析に基づいて発揮されるなら、このきわめて重要な資源を、国連が識別した優先順位と矛盾なく多額の資金を約束しているものを支援するはずだし、従って、開発という重要きわまる事業に国連とともに推進することになろう。 ●UNITED NATIONS PUBLICATIONS OF RELATED INTEREST THE FOLLOWING U N PUBLICATIONS MAY BE OBTAINED FROM THE ADDRESSES INDICATED BELOW, OR AT YOUR LOCAL DISTRIBUTOR: An Agenda for Peace SECOND EDITION, 1995 BY BOUTROS BOUTROS-GHALI, SECRETARY-GENERAL OF THE UNITED NATIONS E.95.I.15 92-1-100555-8 155pp. Building Peace and Development, 1994 ANNUAL REPORT OF THE W ORK OF THE ORGANIZATION BY BOUTROS BOUTROS-GHALI, SECRETARY-GENERAL OF THE UNITED NATIONS E.95.I.3 92-1-100541-8 299pp. New Dimensions of Arms Regulations and Disarmament in the Post - -- --Cold War Era BY BOUTROS BOUTROS-GHALI, SECRETARY-GENERAL OF THE UNITED NATIONS E.93.IX.8. 92-1-142192-6 53pp. $9.95 Basic Facts About the United Nations E.93.I.2. 92-1-100499-3 290pp. $5.00 Demographic Yearbook, Vol.44 B.94.XIII.1 92-1-051083-6 1992 823pp. $125.00 Disarmament - -- --New Realities: Disarmament, Peace-Building and Global Security E.93.IX.14 92-1-142199-3 397pp. $35.00 United Nations Disarmament Yearbook, Vol.18 E.94.IX.1 92-1-142204-3 1993 419pp. $50.00 Statistical Yearbook, 39th Edition B.94.XVII.1 H 92-1-061159-4 1992/93 1,174pp. $110.00 Women: Challenges to the Year 2000 E.91.I.21 92-1-100458-6 96pp. $12.95 World Economic and Social Survey 1994 E.94.II.C.1 92-1-109128-4 308pp. $55.00 World Investment Report 1994 - -- --Transnational Corporations, Employment and the Work Place E.94.II.A.14 92-1-104435-9 446PP. $45.00 Yearbook of the United Nations. Vol. 46 E.93.I.1 0-7923-2583-4 1992 1277pp. $150.00 * * * THE UNITED NATIONS BLUE BOOKS SERIES The United Nations and Apartheid, 1948-1994 E.95.I.7 92-1-100546-9 565pp. $29.95 The United Nations and Cambodia, 1991-1995 E.95.I.9 92-1-100548-5 360pp. $29.95 FORTHCOMING: The United Nations and the Nuclear Non-Proliferation Treaty The United Nations and El Salvador, 1990-1995 The United Nations and Mozambique, 1992-1995 UNITED NATIONS PUBLICATIONS UNITED NATIONS PUBLICATIONS 2 UNITED NATIONS PLAZA, ROOM DC2-853 SALES OFFICE AND BOOKSHOP NE W Y ORK, NY 10017 CH-1211 GENEVA 10 UNITED STATES OF AMERICA SWITZERLAND 1995年7月 国際連合広報センター 東京都渋谷区神宮前5丁目53-70 国連大学ビル8階 〒150電話03-5467-4451 国際連合 ●開発への課題 集団安全保障、国際法、人権、および経済的・社会的発展の原則は、1945年の国際連合憲章に正式に記された。半世紀にわたり、これらの各領域における成果を高め、共通の前進を促すことが、国際連合の使命であり課題であった。 国際連合創設50周年を迎えて、国際機関は冷戦後の世界という新たな環境においてその目的を達成するための革新的なアプローチを見出しつつある。それゆえに私は、この『開発への課題』と姉妹編『平和への課題』を上梓することができて、大変嬉しく思っている。いずれの課題も分かちがたい関係にある。したがって、これらは関連国連文書とともに、同時に刊行される。 私は、これらの文書が今後の思考と行動を刺激するものとなることを願ってやまない。 ブトロス・ブトロス=ガーリ 国際連合広報局発行 DPI/1622/DEV-1995年2月-10M 国連販売番号:E.95.1.16 ISBN:92-1-100556-6