ABC 人権を教える 小中高校向けの実践活動 注記 本シリーズに含まれる資料は、自由に引用、転載できますが、その際には、出所を明らかにし、転載された資料を含む出版物を1部、下記に送付することを条件とします。 国際連合広報センター (〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-70 UNハウス8階) 本書での名称の使用と資料の提示は、いかなる国、領土、都市あるいは地域、またはその当局の法的地位について、もしくはその国境線あるいは境界線の画定について、国連事務局の意見を何ら表明するものではありません。 HR/PUB/2004/2 UNITED NATIONS PUBLICATION Sales No. E.03.XIV.3 ISBN 92-1-154149-2 クレジット 写真 表紙と1ページ: UN/DPI, UN/DPI, UNESCO/A. Abbe, UN/DPI - p. 8-9: UNESCO/A. Abbe - p. 11: UNICEF/HQ93-1919/G. Pirozzi - p. 14: UNICEF/HQ97-0448/J. Horner - p.19: UN/DPI - p. 20: UN/DPI - p. 23: UNESCO/O. Pasquiers - p. 24: UNESCO/O. Pasquiers - p. 30-31: UNESCO/P. Waeles - p. 48-49: UN/DPI - p. 102-103: UNICEF/HQ97-0448/J. Horner - p. 110-111: UNESCO/O. Pasquiers - p. 140-141: UNESCO/D. Roger - p. 146-147: UNESCO/O. Pasquiers - p. 156-157: UNESCO/D. Roger - 裏表紙: UNESCO/D. Roger, UNESCO/D. Roger, UNICEF/HQ93-1919/G. Pirozzi, UNESCO/O. Pasquiers, UN/DPI, UNESCO/A. Abbe 挿絵 F. Sterpin グラフィックデザイン Louma productions まえがき 『ABC:人権を教える−小中高校向けの実践活動』は、私たち人間を題材としています。そこで語られるのは、「世界における自由、正義および平和の基礎」である「人間の(固有の)尊厳と価値」の重要性について教え、学ぶプロセスです(世界人権宣言前文)。また、私たちすべてに属する権利も取り扱います。 こうしたことは単に教室だけでの授業ではなく、生涯を通して続く教育であり、私たちの日常生活と経験にも直接結びついています。この意味で、人権教育は単に、人権の「知 識」を教え、学ぶことにとどまらず、人権の「追求」を教え、学ぶことだといえます。人権教育の基本的な役割は、自分の、そして他者の権利を守る力を個人に与えることにあるからです。このエンパワーメントは将来に向けて、すべての人々の人権が価値を認められ、尊重される公正な社会の実現を目指すための重要な投資といえます。 本書は人権高等弁務官事務所が「国連人権教育の10年」(1995-2004年)への具体的貢献として製作したものです。この10年間には特に、各国政府、国際機関、非政府組織、専門職協会、市民社会のあらゆる部門、そして個人がパートナーシップを確立し、人権教育に向けた取り組みを集中的に実施するよう奨励されてきました。人権教育の10年は私たちに、協力のためのグローバルな共通の枠組みを与えてくれます。事実、人権の実現は私たちの共通の責任であり、その達成はすべて、各人にどのような貢献の用意があるかにかかっているのです。本書と、これに基づくその他の取り組みにより、世界の各地で教員や教育者として活動する多くの人々が、プラスの変革をもたらす力となうよう願っています。 本書の作成にあたり、人権高等弁務官事務所にご支援をいただいた方々、特に1989年の初版を製作したラルフ・ペットマン氏、初版の改訂と更新に携わったナンシー・フラワーズ氏、そして、改善に向け有意義なコメントや示唆をいただいたマーゴット・ブラウン氏、フェリサ・ティビッツ氏、および、ユネスコ良質教育促進部の方々に感謝いたします。                        セルジオ・ビエイラ・デメロ                        国連人権高等弁務官                        2003年3月 目次 序文:『ABC:人権を教える』利用の手引き 第1章:人権教育の基礎 人権枠組みの発展 人権の促進 国連人権教育の10年(1995-2004年) 学校での人権教育プロセス 人権教育の内容 人権の「知識」と「追求」を教える 権利と責任 教育と説教−言葉よりも行動 難しい問題の取り扱い 人権教育の教授法 評価 第2章:幼稚園、小学校低学年用の人権トピック 自信と社会的尊重 争いの解決 差別に立ち向かう 類似と相違を認識する 自信と自尊心を養う 信頼を築く クラスのルール作り 人権を理解する 子どもの権利の初歩 第3章:小学校高学年、中学、高校用の人権トピック 命を守る−社会と個人 戦争、平和と人権 政府と法 思想、良心、宗教、言論、表現の自由 プライバシー権 集会と公務参加の自由 社会福祉と文化的幸福 差別 1. 差別−ステレオタイプ 2. 差別−皮膚の色あるいは人種 3. 差別−少数者の地位 4. 差別−ジェンダー 5. 差別−障害者 教育を受ける権利 発展と環境 経済開発と相互関連 企業と人権 国連を理解する 人権コミュニティを作る  校内の人権尊重度を測る ほんの始まり... 付録 1. 世界人権宣言(1948年)−原文と簡略版 2. 児童の権利に関する条約−原文と要約版 3. 国際人権法用語集 4. 主要機関 5. その他主要な授業用資料 略称 CEDAW 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約 CRC 児童の権利に関する条約 FAO 国連食糧農業機関 ICERD あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約 ICRC 赤十字国際委員会 ILO 国際労働機関 OHCHR 国連人権高等弁務官事務所 UNDR 世界人権宣言 UNDP 国連開発計画 UNEP 国連環境計画 UNESCO 国連教育科学文化機関(ユネスコ) UNHCR 国連難民高等弁務官事務所 UNICEF 国連児童基金(ユニセフ) WHO 世界保健機関 序文 『ABC:人権を教える』利用の手引き 『ABC:人権を教える』は、人権教育の使いやすいツールとして、また、数多くの人権分野をカバーする総合的資料として作成されています。小中高校生の人権に対する意識と行動力を向上させようと望む教員や教育者の方々には、学習活動発展のための提案を含め、実務的なアドバイスを提供しています。すでに過密なカリキュラムにさらに負担をかけるのではなく、学校で取り扱われる教科に人権問題を取り入れる手助けをしようというのが、本書の趣旨です。 成長につれて、子どもや若者の判断力がどう発達するかについては、多くの研究が行われてきました。あらゆる人権原則をクラスの全員が把握できるとは限りません。生徒に最初から理解を迫ったのでは、考えや気持ちを素直に表現できなくさせるばかりか、それ以上の発展を妨げてしまうことさえあります。本書では、権利問題を探究する機会はあらゆる人間にとってためになること、そして、このような機会を与えられた子どもは、10歳になるころまでに、通常の期待をはるかに上回る活発で深い思考能力を身につけるようになることを想定しています。本書で示した活動に、追加的な教材はほとんど必要ありません。その代わり、すべての教員が備えているはずのもっとも豊かな資源、すなわち、生徒とその日常生活の経験を活用することが求められています。 第1章では、主な人権の概念と、人権教育の基礎を紹介します。そして、基礎的な教育の内容と方法論を概観し、参加を促す手法について詳しく述べます。 第2章では、小学校教員の方々を対象に、人間の尊厳と平等という人権原則を引き出す教材を使って、自分と他者の価値に対する幼児の意識を高める方策を提案します。 第3章は、小学校高学年と中高生向けに、より高度で、時事問題も取り扱う活動を紹介します。 第2章と第3章に示した活動の意図は、全世界、さらにはクラス内や地域社会での人権問題に対する生徒の意識と理解を深めることにあります。独自の思索と研究を促し、民主主義国での積極的な市民活動に向けた能力を育成するというのが、そのねらいです。生徒にとっては、活動を楽しむことも重要です。生徒の抵抗が強すぎる活動は、中止あるいは中断してください。 それぞれの活動紹介に続いて、「世界人権宣言」と「児童の権利に関する条約」で参照すべき条項が掲げてあります。これら2つの国連文書は、第1章でも紹介されているほか、付録1と付録2にそれぞれ収録されています。参考条文を掲げたねらいは、各活動の発想の源となった条項に注意を促すことにあります。しかし、本書で紹介された活動は必ずしも、上記文書に含まれる権利全体を、国際法によって認識されるところに従い、完全に反映するものではありません。付録3では、国際人権法体系で用いられる用語が簡単に説明されています。 学童を対象とした人権教育促進のために全世界で利用できる資料は多くあります。『ABC:人権を教える』もその一つです。すべての教育レベルでそれぞれの文化に適した教材を開発することを念頭に、人権に関する一層の研究や調査の出発点として、本書を利用することもできます。また、各地の関係主体(政府機関、国内人権機関、NGO、その他市民社会組織)が独自に教材を作成している場合には、これを本書と並行して、あるいは補完的に利用し、補助や支援を得ることもできます。 その他、国際レベル、地域レベルで作成された主な授業用教材は、付録5に掲載されています。本文中で触れた各種文書を含むその他の資料も、付録4にある機関やその現地事務所から入手できます。 第1章 人権教育の基礎 人権は一般的に、私たちに生来備わった、人間として生きるために欠かせない権利であると定義することができます。人権と基本的自由があるからこそ、私たちは人間としての資質、知能、才能、そして良心を十分に磨いて活用し、精神的欲求を含むニーズを充足できるのです。人類は、各人に生まれながらにして備わった尊厳と価値が尊重、保護される生活を強く望むようになりました。人権はこうした動きに根ざしています。人権の否定は、個人的な悲劇にとどまらず、社会不安や政治不安の温床を作り出し、社会や国家の内部だけでなく、その相互間の暴力や紛争の火種にもなるのです。 人権枠組みの発展 人権の歴史は、主要な世界的な出来事と、各地で行なわれた尊厳、自由、平等を求める闘争とによって形成されてきました。しかし、人権が正式かつ普遍的に認識されたのは、国連が創設されてからのことです。 第2次世界大戦中の混乱と残虐行為、および、植民地独立闘争の激化は、世界の国々が戦後に残されたいくつかの課題、特に、このような恐ろしい出来事の再発防止に取り組むためのフォーラムを作り出すきっかけとなりました。このフォーラムこそが国連だったのです。 国連は1945年の創設時、加盟国の国民の人権に対する信念を再確認しました。国連憲章でも、人権は加盟国の中心的な関心事とされました。これは今でも変わっていません。 新たに創設された国連が初めて達成した偉業の一つに数えられるのが、1948年12月10日に国連総会で採択された「世界人権宣言(UDHR)」1です。この強力な文書は今でも、全世界の人々の生活に大きな影響を及ぼし続けています。普遍的価値を認めた文書が国際機関によって採択されたのは、史上初めての出来事でした。また、人権や基本的自由がこれほど詳しく規定されたのも、これが初めてのことでした。 宣言は採択にあたり、幅広い国際的な支持を受けました。当時の国連加盟国58カ国は、イデオロギーや政治制度においても、また宗教的・文化的背景においても、社会経済発展のパターンにおいても多種多様でしたが、世界人権宣言は、共通の目標と期待を表す共同声明となりました。それは、国際社会が求める世界の姿だったのです。 宣言は「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳...は、世界における自由、正義および平和の基礎」であり、あらゆる人々が希求する基本的な権利の認識と結びついていることを認めています。この基本的な権利とは、生命、自由および身体の安全の権利、十分な生活水準を得る権利、迫害からの庇護を他国に求め、これを享受する権利、財産を所有する権利、言論と表現の自由を得る権利、教育を受ける権利、思想、良心および宗教の自由を得る権利、拷問や品位を傷つける取り扱いを受けない権利などを指します。こうした権利は、地球村の全住民(恵まれない立場にあるかどうかに関係なく、社会における女性、男性、子どもおよびすべての集団)が享受すべき固有の権利であり、だれかの気まぐれで渡すのをやめたり、取り返したり、与えたりすることのできる「贈り物」ではありません。 当初、国連人権委員会の委員長を務めたエレノア・ルーズベルト氏は、これらの権利の普遍性と、それに伴う責任をともに強調し、次のように問いかけました。 「普遍的人権とは結局、どこから始まるものなのでしょうか。それは身近な小さい場所、それも、あまりにも近くて小さいので、どんな世界地図にも載っていないような場所から始まるのです。しかし、この小さな場所こそ、一人ひとりの人間にとっての世界なのです。自分が暮らす地域、自分が通う学校、そして自分が働く工場や農場やオフィス。一人ひとりの男女、そして子どもは、このような場所で差別のない平等な正義、平等な機会、平等な尊厳を求めています。そこで人権が意味を持たなければ、ほかの場所でもほとんど意味を持ちません。身近なところで人権を擁護する積極的な市民活動がなければ、より広い世界での進歩など到底、期待できないのです2。」 「世界人権宣言」採択50周年にあたる1998年、メアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官はこれを「私たち人類の歴史において、もっとも大きな希望を与える文書の一つ」と形容しました。宣言は、多くの国々で憲法のモデルとなっただけでなく、その他いかなる文書よりも多くの言語に翻訳され、真の意味でもっとも普遍的な法文書となっています3。 世界人権宣言はその後、数多くの人権法文書に着想を与えましたが、これらは全体として、国際人権法と呼ばれています4。こうした法文書には「経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約」(1966年)と「市民的、政治的権利に関する国際規約」(1966年)が含まれますが、これら2つの条約は締約国に対し、法的拘束力を備えています。人権宣言と2規約を指して、「国際人権章典」と呼ぶこともあります。 人権宣言と2規約に含まれる権利はさらに、ほかの条約によって敷延されてきました。「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(1965年)は、人種的な優位性あるいは憎悪に基づく思想の流布が、法律によって処罰されることを宣言しています。「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(1979年)は、政治的・公的活動、教育、雇用、保健、結婚および家族における女性差別を撤廃する措置を規定しています。 学校関係者にとって特に重要なのが、子どもの人権保障を定めた「児童の権利に関する条約5」です。1989年に総会が採択した同条約の批准国は、人権条約の中でもっとも多くなっています。条約は、傷害や虐待から子どもを守ることを保証し、保健医療、教育、家庭生活など、その生存と福祉について規定しているだけでなく、社会と自らに関する政策決定に参加する権利を子どもに認めています。最近になって、「児童の売買、児童の買春および児童ポルノに関する選択議定書」と、「児童の武力紛争への参加に関する選択議定書」(2000年)という、2つの条約議定書が採択されました。 主要な国連人権法文書一覧 国際人権章典 世界人権宣言(UDHR)、1948年 市民的、政治的権利に関する国際規約(ICCPR)、1966年 経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約(ICESCR)、1966年 難民の地位に関する条約、1951年 あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約、1965年 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する 条約、1979年 拷問およびその他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約、1984年 児童の権利に関する条約、1989年 人権の促進 世界人権宣言の採択以来、人権は国連活動の中心となってきました。コフィー・アナン国連事務総長は宣言採択50周年にあたり、人権の普遍性を強調し、「人権はどの国とも無縁ではなく、そこに本来備わっているもの」であり、「人権がなければ、恒久的な平和も繁栄もあり得ない」と述べました。 国連システム内では、多種多様な仕組みや手続きによって、人権の推進が図られています。 たとえば作業部会や委員会、報告、研究および声明、会議、計画およびプログラム、行動のための10年、調査と研修、自発的拠出と信託基金、グローバル、地域および国内レベルでのさまざまな援助、具体的な措権状況の調査、人権の促進と保護を目的とする多くの手続きなどです。 人権文化を構築するための行動は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連児童基金(ユニセフ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連開発計画(UNDP)、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)など、国連の専門機関、計画および基金、さらには、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)をはじめとする国連事務局の関連部局も支援しています。その他の国際、地域、国内機関も、政府、非政府にかかわらず、人権の促進に努めています。 1993年、オーストリアのウィーンで開かれた世界人権会議では、171カ国が人権の普遍性、不可分性、相互依存性を改めて強調し、「世界人権宣言」を守りぬく決意を新たにしました。会議で採択されたウィーン宣言と行動計画は、人権促進に対する総合的なアプローチの採用を促し、地方、国内、国際レベルの各主体を関与させるため、新たな「計画、対話、協力の枠組み」を定めています。   国連人権教育の10年(1995-2004年) こうした人権促進活動の中でも重要な位置を占めるのが、人権教育です。「世界人権宣言」の採択以来、国連総会は加盟国や社会各層に対し、この基本的文書を広め、その内容を人々に伝えるよう呼びかけてきました。1993年の世界人権会議でも、教育、研修、広報の重要性が改めて確認されました。 世界人権会議の呼びかけに応じ、総会は1994年、1995年から2004年までの期間を「国連人権教育の10年」と宣言しました。総会は、「人権教育を単なる情報提供とせず、あらゆる発展段階、あらゆる社会階層の人々が、他者の尊厳を尊重するとともに、すべての社会においてそれが尊重されるようにするための手段と方法を学ぶという、生涯を通じた包括的なプロセスとすべきである」ことを確認しました。 10年の行動計画では、国際社会の合意を得た人権教育の理念、すなわち国際人権法文書の規定6に基づく理念が定義されています。これらの規定よれば、人権教育は「知識と能力を与え、態度を形成することを通じて普遍的な人権文化を構築することをねらいとし、かつ、 (a) 人権と基本的自由の尊重を強化すること (b) 人格とその尊厳の感覚を十分に育成すること (c) すべての国々、先住民および人種、国民、民族、宗教、言語集団の間に理解、寛容、男女平等の友好を促進すること (d) すべての人々が実質的に自由な社会へ参加できるようにすること (e) 平和維持のための国連の活動をさらに進めること に資する研修、普及、情報提供への取り組み7」と定義できます。 10年の行動計画は、ニーズの評価と有効な戦略の策定、国際、地域、国内、地方レベルでのプログラムや能力の構築と強化、教材の協調的開発、マスメディアの役割強化、および、世界人権宣言のグローバルな普及を通じ、人権教育をさらに進めるための戦略を提示しています。 学校での人権教育プロセス 教育制度に人権教育を取り入れるための持続可能(長期的に)で包括的かつ有効な国内戦略には、下記のとおり、さまざまな手順を含めることができます。 * 学校教育を律する国内法に人権教育を組み入れること。 * カリキュラムと教科書を改定すること。 * 教員の初任・中間研修に、人権と人権教育方法論に関する研修を含めること。 * 校内だけでなく、家庭やコミュニティにも範囲を広げた課外活動を組織すること。 * 教材を開発すること。 * 教員やその他の専門家(人権団体、教員組合、NGO、専門職協会)などの支援ネットワークを確立すること。 このプロセスが各国で具体的にどのような形をとるかは、現地によって大きく異なる教育制度、特に授業の目標を立て、これを達成する上で、教員にどの程度の裁量が認められているかによって左右されます。しかし、教員は常に、新たな取り組みを成功させる上でキーパーソンとなります。したがって教員には人権のメッセージを伝える大きな責任があります。そのための機会はさまざまです。歴史、公民、文学、美術、地理、言語、理科など、既存の学校教科に人権のテーマを取り入れたり、これに特別の課程を設けたりすることができます。また、放課後の活動、クラブ、青少年フォーラムなど、校内、校外のより身近な教育現場を通じ、人権教育を進めることもできるでしょう。 理想的にいえば、人権文化はカリキュラム全体に組み込むべきです。(しかし実際のところ、特に中等教育では、社会・経済学や人文科学の確立されたカリキュラムの一部として、断片的にしか取り扱われていないのが実情です。) 人権原則を生徒にとって意味のあるものとするためには、子どもの発育段階と社会的、文化的背景に十分配慮した上で、人権教育の授業を発展させなければなりません。例えば、幼児向けの人権教育では、自尊心と共感をはぐくみ、人権原則を支持するクラスの雰囲気を作り上げることを主眼とすることができるでしょう。基本的人権法文書の根本的原則は、幼児でも把握できますが、人権文書のさらに複雑な内容については、概念開発と分析的な推論の能力をさらに身につけた上級生を対象に取り扱ったほうがよいでしょう。17ページの表は、年齢に応じ、子どもを人権概念に徐々に親しませるやり方を示したものです。この案は義務的ではなく、単なる一例であり、1997年にジュネーブに参集した人権教育実務者が開発、検討したものです。 子どもを人権の概念に親しませる−段階的アプローチ レベル 目標 主な概念 実践 具体的な人権問題 人権の基準、システム、法文書 幼児期 幼稚園と小学校低学年 3-7歳 * 自己の尊重 * 親と教員の尊重 * 他者の尊重 * 自我 * コミュニティ * 個人的な義務感 * 義務 * 公平 * 自己表現/傾聴 * 協力/共有 * 少人数グループ活動 * 個別活動 * 因果関係の理解 * 共感 * 民主主義 * 争いの解決 * 人種主義 * 性差別 * 不公平 * 人を傷つけること(感情的、身体的) * クラスのルール * 家庭生活 * コミュニティ基準 * 世界人権宣言 * 児童の権利に関する条約 少年期        上記の項目すべてに加え: 小学校高学年 8-11歳 * 社会的責任 * 市民権 * 欲求、必要、権利の区別 * 個人の権利 * 集団の権利 * 自由 * 平等 * 正義 * 法の支配 * 政府 * 安全 * 多様性の価値認識 * 公平 * 事実と意見の区別 * 校内あるいは社会奉仕活動 * 市民参加 * 差別/偏見 * 貧困/飢餓 * 不公平 * 自民族中心主義 * 自己中心主義 * 受動性 * 人権の歴史 * 地方と国の法制度 * 地方と国の人権の歴史 * ユネスコ、ユニセフ * 非政府組織(NGO) 思春期        上記の項目すべてに加え: 中学生 12-14歳 * 具体的な人権の知識 * 国際法 * 世界平和 * 世界の発展 * 世界の政治経済 * 世界のエコロジー * 他者の観点の理解 * 考えを裏づける証拠の引用 * 研究/情報収集 * 情報の共有 * 無視 * 無関心 * 皮肉 * 政治的抑圧 * 植民地主義/帝国主義 * 経済のグローバル化 * 環境破壊 * 国連条約 * 人種主義の撤廃 * 性差別の撤廃 * 国連難民高等弁務官 * 地域的人権条約 青年期        上記の項目すべてに加え: 高校生 15-17歳 * 普遍的基準としての人権の知識 * 個人の意識と行動への人権の取り入れ * 道徳的包含/排除 * 道徳的責任/リテラシー * 市民団体への参加 * 市民的責任の遂行 * 市民的不服従 * ジェノサイド * 拷問 * 戦争犯罪 など * ジュネーブ条約 * 特殊条約 * 人権基準の進化 人権教育の内容 人権の歴史を見れば、人間の基本的な尊厳と価値、および、人間のもっとも当然の資格を定義するために、どれだけの取り組みが行われてきたかが詳しくわかります。こうした取り組みは今も続いています。この歴史についての話を人権の授業に取り入れることもできますが、その際には生徒の成熟度に合わせて、段階的に内容を高度化させるとよいでしょう。市民的、政治的権利を求める闘い、奴隷制度廃止キャンペーン、経済的、社会的正義を求める闘争、および、世界人権宣言とこれに続く2つの人権規約の成果、さらには、児童の権利に関する条約をはじめ、それ以降に採択されたすべての条約や宣言といった話題はいずれも、基本的な法的、規範的枠組みを提供するものです。 学校での人権教育の中心となるのは、世界人権宣言と児童の権利に関する条約です。これらの文書は上述のとおり、普遍的な承認を受けているので、経験を評価し、人権を尊重する学校文化を構築するための原則とアイデアを与えてくれます。そこで体現された権利は普遍的なものです。つまり、すべての人間は平等にこれを享受する資格があるということです。また、これらの権利は不可分です。つまり、権利に順位はなく、いかなる権利も他に比べて「必要性」あるいは「重要性」において劣ることはありません。むしろ、それぞれの人権は相互依存関係にあり、補完的な枠組みの一部をなしているのです。例えば、政治に参加する権利は、表現と結社の自由の権利、教育を受ける権利、さらには、生活必需品を手にする権利によってさえ、直接の影響を受けます。どの人権も必要であり、また、他の人権と相互に関係しています。 しかし、最高の能力と細心の注意を持って教えたとしても、文書や歴史だけで、人権をクラスに根づかせることはできません。また、世界人権宣言や児童の権利に関する条約に最初から最後まで目を通し、各条文の論理的根拠を指摘しただけでは、実生活でこれら条文がどのような意味を持つかを教えたことにはなりません。最適な「事実」と「基本」を選び出したとしても、人権文化を構築するには不十分なのです。これら文書の重要性を単なる知識としないためには、実生活での経験という観点から人権にアプローチし、正義、自由、平等に対する生徒自身の理解を養うような形で取り組む必要があります。 人権の「知識」と「追求」を教える 研究によれば、小学校高学年や中学校には、自信のなさから他人とうまく付き合えない生徒がいます。自分に権利が期待できなければ、他者の権利を気遣うことは困難です。このような場合に人権を教えるためには、本書第2章で提案するように、まず出発点に戻り、自信と寛容を教える必要があるかもしれません。同章にある信頼形成の練習は、どの集団でも利用でき、人権教育にとって不可欠ともいえるクラスの雰囲気を改善するのに役立ちます。こうした活動を繰り返す(適切な変更を施した上で)ことで、チームワークを必要とする活動に生徒が取り組めるようになります。また、もろく一時的なものであったとしても、人間が実際に持ち合わせている同情心を養うことで、人間性に上下の差はないという事実を確認させることもできるでしょう。 ここにはすでに、人権の「知識」を教えるだけでは不十分だという、本書の中心的な考えが示唆されています。教員には後にも先にも、人権の「追求」を教えるという役割があります。本文のほとんどで実践活動を取り扱っているのはこのためです。こうした活動により、教員と生徒はまず、生命、正義、自由、平等や、欠乏、苦難、苦痛が持つ破壊的性質という、人権を形作る基本的要素について見た上で、これを用いながら、幅広い実世界の問題について、自分たちの本当の考えや感じ方を探ることができるのです。 人権教育の焦点は単に、外面的な問題や出来事について見ることではなく、個人的な価値観、態度、行動について内面的に考えることにあります。行動に影響を与え、人権に関する義務感を沸き起こすために、人権教育では、独自の研究、分析、批判的思考を強調する参加型の方法論を用います。 権利と責任 人権文化の基本原則を守ってゆくためには、人々がこれを擁護する意義を感じ続けなければなりません。「私にはその権利がある。単に欲しいとか、必要だというのとも違う。それは私の権利なのだから、果たしてもらうべき責任がある」ということです。しかし、権利が成り立つのは、そこに理由があるからです。それはしかも、きちんとした理由でなければなりません。そのような理由を人々が自ら考え出す機会(しかも、学校はそれに一番ふさわしい場所)がなければ、権利が認められなかったり、奪われたりしたときに、それを要求することも、他者の権利を擁護する責任を感じることもないでしょう。私たちは自ら、権利がなぜそれほど重要なのかを考えなければなりません。そうでなければ、責任感も生まれないからです。 もちろん、その逆に、まず責任と義務という点で、人権を教えるというやり方もできます。しかし、その際にも、生徒にどうすべきかを指示するのでは不十分です。こうした考え方を身につけさせるためには、生徒が自らの社会的責任を真に理解し、受け入れるための機会を作るとよいでしょう。そうすれば、教員も生徒も、責任、義務あるいは権利の衝突という避けられない事態が生じた場合、これを解決するのに必要な原則と能力を確保できるでしょう。 このような衝突は有意義な洞察力の源でもあるため、むしろ歓迎すべきです。対立点があるからこそ、人権教育が活発で妥当なものとなるのです。衝突があることにより、恐れることなく創造性を持って対立に立ち向かい、独自の解決策を探るよう生徒に促すような学習機会が生まれるのです。 教育と説教:言葉よりも行動 「世界人権宣言」と「児童の権利に関する条約」が事実上、全世界で有効かつ適用可能だという事実は、教員の方々にとって非常に大切です。普遍的な人権基準を推進することにより、単に生徒に説教だけしているのではないということを心から言えるからです。しかし、教員には第2の難関があります。実際のクラスと学校環境の中で、人権を尊重しながら教えるということです。生徒が学習内容を実際に身につけるためには、人権について学ぶだけでなく、そのお手本となるような環境で学ぶ必要もあるのです。 これは要するに、偽善者となるなかれ、ということです。端的に言えば、偽善とは、言っていることとやっていることが矛盾する状況を指します。例えば、「きょうは表現の自由について勉強しましょう...。ほら、そこの後ろ、黙れ!」というような言動です。このような状況では生徒が学ぶのは権力だけで、人権のことはほとんど頭に残らないでしょう。生徒は長い時間、教員の姿を眺め、その信条をかなり理解できるようになるため、理不尽あるいは居丈高な態度をとることはプラスの影響はほとんど生じません。生徒は気に入られたいがために、自分で考えず、教員の個人的な考え方をまねようとすることも多くあります。したがって教員は少なくとも最初からは、自分の考えを示すべきでないといえます。偽善がこじれれば、クラス内、校内、さらには社会全般において、教員と生徒双方の人間としての尊厳をどのように守り、促進してゆくのかという点で、根本的な問題が生じます。 校内とクラス内の「人権環境」は、あらゆる主体相互の敬意に基づくものでなければなりません。そのため意思決定プロセスの進め方、争いを解決し、規律を確保するための方法、そして、全主体の内部と相互間の関係が、重要な貢献要素となります。 教員は最終的に、生徒、学校管理者、教育当局、保護者だけでなく、コミュニティ全体を人権教育に参加させる方法を模索する必要があります。そうすれば、人権教育を教室からコミュニティへと普及させ、双方の利益とすることができます。関係するすべての人々が、普遍的な価値とその現実との関係について議論し、学校が基本的人権の問題解決に貢献しうることを認識できるようになるでしょう。 生徒については、まず第一歩として、クラスの一連のルールと責任について話し合うことが、古くから極めて有効な方法として実証されています(第2章の「クラスのルール作り」活動を参照)。基本的人権に沿った授業実践は、一貫性のあるモデルとなります。例えば、体育や数学の教員でも、このような方法で人権の追求を教えることができるのです。 難しい問題の取り扱い 生徒が人権について議論を始めると、意見の分かれる微妙な論点が現れることもあります。教員は常に、生徒の不快感や意見の分かれそうな論点に注意を払う必要があります。人権には必然的に、価値観の衝突が絡むこと、そして、こうした衝突を理解し、その解決を探ることは、生徒のためになることを、教員は認識しなければなりません。 場合によっては、現地の価値観や慣習に反し、これを脅かす異質な原則を押しつけるものだという理由から、人権教育に対する抵抗が生じることもあります。管理者の抵抗が懸念される場合には、こうした人々にあらかじめ会って、授業の目標と計画を共有するとともに、国連の人権枠組みと関連の教育への取り組み(国連人権教育の10年など)について説明すべきです。管理者に授業参観を促してはいかがでしょうか。こうした人々にとって、格好の人権教育となるかもしれません。 人権教育の教授法 下記に提示する手法、および、第2章と第3章で示す活動でのその応用は、教員がどのようにして生徒の共感と道徳的想像力を呼び起こし、その仮定に疑問を投げかけ、人間の尊厳や平等といった概念を日常的な人付き合い、権力、責任のなかに取り入れさせることができるかを例示するものです。これらの手法は特に、人権の教育に適しているとの結論が出ています。批判的な思考法、認知学習と感情学習、経験と意見の違いの尊重、そして全参加者の継続学習への積極的参加を促すからです。 A. ブレインストーミング この手法は、理論と実際の双方の問題に対する解決策を探るのに利用できます。まず問題を分析した上で、解決策を作り上げることが必要です。ブレインストーミングは積極的な参加を促すだけでなく、参加者に刺激を与え、最大限の創造性を発揮させます。 問題の提示に続き、これに対する答えをすべて、黒板や模造紙に記録します。回答をすべて記録することが重要で、この段階では、いかなる説明も求められなければ、いかなる案についての判断や拒否も行われません。教員はその上で、答えを分類して分析しますが、この段階で、そのうちのいくつかをまとめたり、適応させたり、退けたりします。最後に、グループで提言を出し合って、問題についての決定を下します。 例:「メッセージ・イン・ア・ボトル」(34ページ)、「傷つく言葉」(43ページ)、「『少数者』の見分け方」(49ページ)、「住宅」(58ページ)、「エネルギー」(59ページ)。 B. ケーススタディ 生徒が少人数のグループに分かれ、人権基準の適用を必要とする現実あるいは想像上の事例に取り組むというものです。ケーススタディは、2つか3つの主要問題に焦点を当て、信ぴょう性と現実性を備えたシナリオに基づいて行うべきです。対象となるシナリオは、一度に全部を提示して生徒に考えさせることも、状況を徐々に展開させながら(「展開型仮説事例」)その都度、生徒に回答させることもできます。この方法は分析、問題解決、計画作成だけでなく、協力とチーム構築の能力も養います。ケーススタディは討論、話し合いあるいは一層の研究の下準備として利用することもできます。 例:「ジャーナリストが消えた」(35ページ)、「荷物をまとめて」(36ページ)、「『大きくなったら』っていつ」(44ページ)。 C. 創造的表現 芸術は頭と心の反応をともに引き起こすことにより、概念を具体化し、抽象的なことを自分のこととして受け止め、態度に影響を与えることに役立ちます。具体的な手法としては詩と物語、グラフィックアート、彫刻、演劇、歌、ダンスなどがあげられます。教員自身が芸術家である必要はありませんが、興味を持てる課題を出し、生徒が創造性を共有できるようにしなければなりません。 例:「『私について』の本」(24ページ)、「生命線」(25ページ)、「壁/床の上の私」(25ページ)、「手紙と友達」(26ページ)、「欲しいものと必要なもの」(31ページ)、「子どもに必要なもの」(31ページ)、「子どもの権利推進」(32ページ)、「みんな同じ」(47ページ)。 D. 話し合い 2人ずつの組、少人数グループあるいはクラス全体で有意義な話し合いを促すための手法は、いくつかあります。信頼と敬意に満ちた環境を作り出すため、生徒が自分たちで「話し合いのルール」を作ることもできるでしょう。 話し合いのやり方もさまざまです。フォーマルな討論、パネル討論あるいは「フィッシュボウル」フォーマット(少人数グループの話し合いを残りの生徒が聞き、そのあとでコメントしたり、質問したりするもの)に適した話題もあります。 そのほか、「トーキングサークル」(生徒が2つの円を作り、一方が外側、もう一方が内側を向いて座る。生徒はそれぞれ、反対側にいる人と議論する。少ししたら、教員が内側の円の生徒に一つづつずれるよう指示し、新しい人と同じトピックについて再び議論する、というもの)に適したトピックもあります。個人的あるいは感情的な話題は、2人ずつ、あるいは、少人数グループで議論させるのがよいでしょう。 クラス全員を議論に参加させるため、教員は「トークアラウンド」(教員が「あなたにとって、尊厳の意味は」、「幸せなのは、どんなとき」といった自由回答の質問をして、それぞれの生徒が順番に答えるというもの)などの手法を使うこともできるでしょう。 話し合いの成果を目に見える形で生き生きと示すやり方として、「ディスカッション・ウェブ」があります。生徒は輪になって座り、一人ずつ発言します。そうしながら、毛糸玉を次の人に回し、これをほどいてゆきます。各人は発言が終わっても、毛糸を握ったままでいます。最後には、グループ全体がクモの巣状の毛糸で結ばれ、話し合いでのやりとりの模様がきれいに表れます。 例:「話の輪」(24ページ)、「私の五感」(25ページ)、「願いの輪」(25ページ)、「新しい国を作ろう」(30ページ)、「人間であること」(34ページ)、「始まりと終わり」(34ページ)、「法の前での平等」(40ページ)、「権利を学ぶ権利」(55ページ)。 E. 社会見学 コミュニティの場にまで学校の活動を広げ、人権問題が動く場所(裁判所、刑務所、国境など)や、人々が権利擁護や被害者救援の活動をする場所(NGO、食糧あるいは衣料の貯蔵配給所、無料診療所など)から学ぶことは、生徒のためになります。 社会見学の目的は前もって説明しなければなりません。生徒には、見学後に話し合いをしたり、感想文を書いたりできるよう、十分に注意し、観察したことを書き留めるよう指示してください。 例:「議会と裁判所」(39ページ)、「学校にいないのはだれ」(54ページ)、「食糧」(56ページ)、「健康」(60ページ)。 F. インタビュー インタビューは直接的に学び、問題や歴史を個人のものとして考える機会となります。インタビューの相手は家族や身近な人であったり、活動家、指導者、あるいは、人権関係の事件の目撃者であったりするでしょう。このように、歴史をじかに聞き取ることは、地域社会での人権問題を文書化し、理解することにも役立つ可能性があります。 例:「議会と裁判所」(39ページ)、「昔々のこと」(46ページ)、「障害者の話」(53ページ)、「企業人の話」(63ページ)。 G. 研究課題 人権関連の話題は、自由調査の題材の宝庫といえます。図書館やインターネットを利用してフォーマルな調査を行うことも、インタビュー、意識調査、メディア報道その他のデータ収集手法を基に、インフォーマルな調査を行うこともできます。個人で行うにせよ、グループで行うにせよ、研究課題は独自の思考とデータ分析の能力を養い、人権問題の複雑性について理解を深めることができます。 例:「荷物をまとめて」(36ページ)、「子ども兵士」(37ページ)、「人道法」(38ページ)、「議会と裁判所」(39ページ)、「国際刑事裁判所」(41ページ)、「『少数者』の見分け方」(49ページ)、「食糧」(56ページ)、「労働」(59ページ)、「エネルギー」(59ページ)。 H. ロールプレイ/シミュレーション ロールプレイとは、クラス全員の前で演じられる寸劇のようなものです。ほとんどがアドリブで、ストーリーとして(ナレーターと主要な登場人物により)演じることも、状況として(主要な登場人物が、教員や級友の助けを借りたりしながら、即興でかけ合う形で)演じることもできます。ロールプレイの価値は特に、他のグループの感じ方や見方、一定の問題の重要性を生徒に意識させることにあります。 ロールプレイは短いほうがうまく行きます。あとで話し合いの時間を十分にとってください。子どもたちがロールプレイを見て感じたこと、怖かったこと、理解できたことなどを表現できるようにし、効果を可能な限り引き出すとともに、何か嫌な感じを持てば、それを消し去ることが極めて重要です。生徒たちがその役割にはまりこむことを抑える必要もあるかもしれません。参加者は自分の演技から一歩下がって、コメントしたり、質問を出したりすることができる必要があるからです。見ている生徒は、コメントしたり、質問を出したりすることはもちろん、ロールプレイに参加できるようにするのも一案です。 ロールプレイを変形させたものとしては、模擬裁判、想像上のインタビュー、シミュレーションゲーム、ヒアリング、尋問、審理などがあげられます。これらは通常、より整然としており、時間的にも長いので、教員にも生徒にもそれなりの準備が必要になります。 例:「私の人形家族」(26ページ)、「サミット」(36ページ)、「議会と裁判所」(39ページ)、「模擬裁判」(40ページ)、「労使関係」(61ページ)、「模擬国連シミュレーション」(63ページ)。 I. 視覚教材 黒板、OHP、ポスター、展示、フリップ、写真、スライド、ビデオ、映画などを使えば、集中的な学習ができます。一般原則として、OHPや表に示す情報は短く簡潔にし、概略や一覧表の形をとるようにしてください。さらに文章が必要であれば、配布資料を使うようにしましょう。ただし、視覚教材は使いすぎの恐れがあるので、集中的な話し合いや生徒の直接参加の代わりとして用いてはなりません。 評価 情報の内容と生徒の理解度は、通常の方法でテストできます。しかし、態度やその変化の評価には主観的な性質があり、判断も絡んでくるため、はるかに難しくなります。もっとも簡単な方法として、自由回答型のアンケートを繰り返すことがあげられますが、これによって印象を把握できたとしても、それはせいぜい一過性のものにすぎません。 同じように、学校全体の人権環境が改善したかどうかを評価するのも困難です。しかし、成功のための指標を慎重に定め、定期的な評価を行えば、学校環境をモニターし、対策を講じることができます。 個人、クラスおよび学校全体の人権面での実践を評価するためのチェックリストを生徒に作らせることは、重要な学習活動にもなり得ます(65ページの「校内の人権尊重度を測る」を参照)。 第2章 幼稚園、小学校低学年用の人権トピック 自信と社会的尊重 幼稚園や小学校低学年での人権教育のねらいは、自己と他者を信頼し、尊重するという感覚を養うことにあります。これらは人権文化全体の基礎となるものです。したがって、教員の「教育者としての人格」が極めて重要になります。常に励ますようなアプローチをすれば、人権教育に限らず、あらゆる活動が有意義なものになるでしょう。 物語には大きな価値があります。巧みに語られた物語に出てくるお気に入りの登場人物と結びつけば、幼児は教訓を学び、それをしっかりと覚えることができます。このような物語は、子ども向けの市販本や両親、祖父母から、さらには自分の想像力を働かせることで手に入ります。 資源が許せば、学級図書館も役に立つかもしれません。本を選ぶ際には、多文化的で積極的な型にはまらない登場人物として男女双方を描いた、魅力のある本を見つけるのがよいでしょう。生徒に読み聞かせたり、絵本を見せたりするときには、そのよい点を指摘してください。 資源があれば、生徒を調理実習や木のいす作り、あるいは植物の鉢植え作業などに参加させることもできます。これはままごとのような形で行ってもよいでしょう。すべての活動に男子、女子の両方を参加させてください。活動について意見の衝突が起きたら、クラスで条件を平等にするためのルールを作り、差別的な行動を阻止する必要があるかもしれません。このようなルールは、定着すれば必要なくなるはずです。クラスの席順や生徒の並び方を変えることで、平等を高めることもできます。明らかな違いを際だたせるやり方で、子どもをグループ分けしないことが重要です。生徒の間の友情だけでなく、相違は克服可能で自然なことであるという意識を育てるようにしてください。 争いの解決 争いが生じることも多いので、一貫性のあるアプローチを開発し、これに取り組む必要があります。争いが起きたときには常に、その議論の内容に耳を傾けなければなりません。どのような問題にも解決策があることを強調してください。ただし、解決策を見つけるためには、子どもたちが問題について考えることが必要です。より体系的な問題解決には、下記のようなアプローチを採用することができるでしょう。 1. 問題を洗い出し、認識すること。けんかや口論をやめさせ、当事者の子どもに対し、自分たちの行動について話し合うよう求めてください。 2. 何が起きたかを説明させること。当事者や周囲にいた子どもに、事のいきさつを聞いてください。発言を遮(さえぎ)らず、各人に順番に話をさせましょう。適切であれば、身体に触れたり抱き寄せたりして生徒を励ませば、怒りや罪悪感を和らげることができます。ただし、常に中立を保つことが不可欠です。 3. 幅広い解決策を探ること。直接の当事者に対し、どうしたら問題を解決できるか聞いてみましょう。子どもが解決策を見つけられない場合は、いくつかアイデアを出してあげても構いません。 4. 合理的な解決策を引き出すこと。公平な解決策はいくつかありうることを指摘してください。これら解決策の物理的、感情的結果を子どもに考えさせるとともに、過去の同じような経験を思い出させてください。 5. 手順を選ぶこと。提示された解決策のいずれかについて、相互の合意ができるようにしてください。 6. 解決策を実行に移すこと。 差別に立ち向かう 差別的行動があった場合、解決策はそう簡単には見つかりません。通常、侮辱を受けた子どもか、侮辱した子どものいずれかが、差別をはっきりと理解しています。こうした状況では、教員の行動が特に重要です。まず、差別的行動を厳しく諭した上で、それが絶対にいけないことをはっきりさせてください。差別を受けた子どもに対しては、その怒り、恐怖、困惑を批判せず、味方であることをはっきりと示す一方で、差別した子どもには決然とした態度をとりながらも、敵視はしていないことを示してください。差別された子どもには、その性別、容姿、障害、言語、人種などを理由にした差別をする反応は、偏見によるもので、それは絶対に受け入れることのできないものであることを認識させましょう。また、事件にかかわった子どもや、これを目撃した子どもとの間でも、何が問題なのかを話し合ってください。親、学校職員、地域社会の人々とも、このような事件について話し合ってください。 このやり方は、校内のあらゆる学年を対象にすることができるほか、校外での重大事件にも応用することができます。また、すべての差別的行動にも応用できます。可能であれば、機会あるごとに、クラス内の民族的多様性を認識、理解、さらには歓迎させるようにしましょう。幼児期の子どもには通常、人種主義や性差別がありますが、この方法でそれを改められることを思い出してください。また、教員自らも差別的行動を抱えているおそれがあることに留意しつつ、これを認識、克服するよう努めてください。 さらに、障害のある子どもにとっても、クラスや学校が通いやすく、温かい場所となるよう、注意を払ってください。 下記の戦略や活動は、幼児期教育に人権の概念を取り入れる方法を提示するものです。 類似と相違を認識する A. 属性 子どもたちは輪になって座ります。1人が輪の中央に立って、「ベルトをしている」、「姉妹がいる」などの表現で、自分を描写します。中央の子どもを含め、同じ属性を持つ子どもたちはすべて、いす取りゲームの要領で場所を移動しなければなりません。座る場所がなかった子どもは中央に立ち、次の属性を言います。子どもたちはすぐ、自分たちにはいろいろな類似点と共通点があることに気づくでしょう。最後には「優しい人」など、目に見えにくい属性を選ぶとよいでしょう。このような属性は一目で見分けにくく、ゲームはこの時点で成り立たなくなるからです。人間は普通、このような行動的属性をどのように見分けているのかについて話すのも一案でしょう。 (UDHR第1、2条;CRC第2条) B. 似たもの同士 まず、人間は似たもの同士を見分けられるとは限らないことを説明します。それから、ある質問(生まれ月、兄弟姉妹の数、ペットの種類、好きなおもちゃや遊びなど)をして、答えが同じ子ども同士でグループを作るよう指示します。年齢が上の子どもたちには、より複雑な質問(話す言語の数、将来の仕事、趣味、好きな教科など)もできるでしょう。終わりに、「このゲームで何を勉強しましたか」と尋ね、人間の気づかない類似点と相違点について話し合いましょう。 (UDHR第2条;CRC第2条) 自信と自尊心を養う 1. 私って、どんな人 A. 「私について」の本 子どもに自分についての本を作らせます。表紙には自画像を描かせます。この本には、自分の写真、作文、詩などを集めることができます。字を書く能力が上達するにつれ、自分についての詳しいことや、自分についての質問、その答えなども書き入れることができるでしょう。資源が限られている場合は、クラス全体で1冊の本を作り、各生徒に1ページか2ページを割り当てても構いません。 (UDHR第3、19条;CRC第6、7、8、12、13、30条) B. 話の輪 生徒と一緒に輪になって座ります。参観者がいれば、参加させてください。自由回答形式の質問をして、各生徒に答えさせます。質問は次の中から選ぶとよいでしょう。 - 自分の好きなところは...。 - 私がなりたいのは...。 - 私の好きなゲームは...。 - 私の名前の意味は...。 - 私が勉強したいのは...。 - 私が幸せなのは...の時。 - 私が悲しいのは...の時。 - 私はもっと...なりたい。 - 私はいつか...なりたい。 発言を遮らずに聞き、時間を平等に与えることがとても大事です。話したくない子どもは「パス」しても構いません。終わるまで全員が座ったままでいます。答えは「私について」の本に書き込んでもよいでしょう。 (UDHR第18、19条;CRC第8、12、13、14、17、31条) C. 生命線 子どもは1人ずつ、自分の生涯を表す1本の毛糸を張ります。その毛糸に、今までに起きた重要なことを伝える絵や話、ものをぶら下げます。これは時系列的に並べても、子どもがやりたいように並べても構いません。内容を将来にまで広げることもできます。 (UDHR第1、3、19条;CRC第6、8、12、13、14、27、30、31条) D. 壁/床の上の私 子ども1人ひとりの輪郭を大きな紙(横にさせて描くとよい)あるいは床の上になぞります。生徒本人に身体の部分を描かせ、周囲に個人的、身体的な性質(氏名、身長、体重、学校で何を一番勉強したいか、大人になったときに何を一番やりたいかなど)を書き込ませます。紙に書いたものは壁に貼りましょう。すべての生徒がお互いのこと、そして自分のことをわかるようにしてください。 (UDHR第3、19、24条;CRC第6、7、8、12、13、28、29、31条) E. 私の五感 子どもを輪にして座らせたり、ロールプレイを用いたりして、下記の文を完成させます。 - 耳が聞こえるから...できる。 - 目が見えるから...できる。 - においをかげるから...できる。 - 手で触れられるから...できる。 - 味がわかるから...できる。 障害を持つ子どものニーズに応じて適宜、質問を言い換えてください(「目が(あまり、まったく)見えなくても、私は私で、...できる」など)。聴覚、嗅覚、触覚を改善できるような装置を各生徒に発明させましょう。それを説明させたり、絵に描いたり、劇にしたりさせましょう。 (UDHR第22、25、26条;CRC第23、26、28、29条) F. 願いの輪 生徒に輪を作らせます。順番に次のようなお願いをさせてみてください(少人数のグループや2人ずつでも可能)。 - 動物になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 鳥になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 虫になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 花になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 木になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 家具になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 楽器になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 建物になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 車になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 道路になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 市町村/県/地方になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 外国になれるなら    がいいな。だって...だから。 - ゲームになれるなら    がいいな。だって...だから。 - レコードになれるなら    がいいな。だって...だから。 - テレビ番組になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 映画になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 食べ物になれるなら    がいいな。だって...だから。 - 色になれるなら    がいいな、だって...だから。 (UDHR第19条、CRC第13、14条) 2. 他者とどう暮らすか A. 私の人形家族 各生徒に、自分を含めた家族の人形を作らせます。人形は、厚紙を切り抜いて色をつけ、棒に刺したものや、粘土や泥で作ったものなど、簡単なもので構いません。人形に名前をつけて、その関係を説明させます。そして1人ずつ、ある儀式(結婚式など)やお祭りを考えて、クラスの前で演じます。人形家族には近所の人を加えてもよいでしょう。子どもたちは、家族をまとめるためにいつもしていることを劇にできます。これをさらに広げて、世界のどこかの人も加えるようにしましょう。 (UDHR第16、20、27条;CRC第9、10、15、31条) B. こんな友達がいたら 子どもを座らせるか、寝かせて、静かに目を閉じさせます。大きく息を吸って、吐くよう指示します。そして、世界(さらには宇宙)のどこでもいいので、特別な場所、好きな場所を想像させます。そのまま、その場所を歩いて、実際にものを感じたり、聞いたり、見たりしているのを思い浮かべます。ある家か建物を思い描き、その中に入って、特別の部屋を探します。部屋の壁にはドアがあって、下から開くようになっています。そのドアがゆっくりと開き、また会ったことのない特別な友達の姿が、足から顔まで、ゆっくりと見えてきます。友達は子どもでも大人でも関係ありません。その友達はいつもそこにいて、だれかに会って話したくなったら、また会いに行くことができます。ドアを閉め、家を出て、子どもたちは教室に戻ります。そして輪になったり、2人ずつ組になったり、少人数のグループを作ったりして、お互いに何が見えたかを話します。 (UDHR第20条;CRC第15条) C. 手紙と友達 他校、さらには外国のクラスとの間で、文通あるいは電子メールの交換をします。こうした交流は、クラスから詩やプレゼントを贈ることで始めてください。その後、距離が近ければお互いを訪問したり、他のコミュニティの子どもと会ったりする機会が生まれるかもしれません。姉妹校のことを調べてみましょう。 * どれくらい大きいか。 * どんな遊びをしているか。 * 親はどうしているか。 * 違うところと似たところはどこか。 (UDHR第19、20、26条;CRC第13、17、29条) D. 先輩 生徒が上級生の友達を持てるようにしてください。何か問題が起きたら、先輩の助けを借りるよう促せるような活動をするとよいでしょう。遊び方を教えたり、活動を助けたりすることで、先輩が後輩に関心を持てるような方法を考えてください。 (UDHR第20条;CRC第15条) E. 身近な人々 輪になって座った子どもたちに、自分のよいところについて考えるよう指示したり、「他人の尊重できるところはどんなところ」と尋ねたりします。そして、次のことについて話し合いましょう。 * 自分のよいところが他人にもあったら、尊重できますか。 * 自分になくて、他人にあったら尊重できるところはどこでしょう。 * 人間にはすべて尊重する価値がありますか。それはなぜでしょう。 * 他人に対する敬意をどう表したらよいですか。 その次に、だれかから尊重されなくて傷つくのはどんなときかを、子どもに考えさせてください。 * 軽蔑されて、どんな気持ちでしたか。 * 人間が他人を軽蔑することがあるのはなぜでしょう。 * 尊厳とは何ですか。他人から尊重されなければ、尊厳は傷つきますか。 * 他人から尊重されないときに、何ができるでしょうか。 そして最後に、 * 「人間はすべて尊重する価値があるとは、どういう意味でしょうか」と生徒に尋ねましょう。 * 人間がお互いにもっと尊重しあえば、地域の暮らしはどんなふうに穏やかになるのか、例をあげさせましょう。 * だれかに敬意を示せる方法を一つ考えるよう、子どもに指示してください。 (UDHR第1、2、12条;CRC第2、12、13、14、16、29条) F. 洗濯機 子どもを近い間隔で2列に並ばせ、向き合わせます。1人の子どもを片方の端から、列の間を通るように歩かせます(「洗濯機にかける」)。全員が(文化的に見て適切であれば)その子どもの背中をたたいたり、握手をしたりしながら、ほめたり、優しい言葉をかけたり、励ましたりします。最後には、「洗濯機」のもう一方の端から、ぴかぴかに輝く幸せな顔が現れます。次に、この子どもも列に加わり、別の子どもが同じ「洗礼」を受けます。(全員を一度に「大掃除」するよりも、毎日1人か2人ずつを洗ったほうが楽しいでしょう。) (UDHR第1、2条;CRC第2条) 信頼を築く 信頼は師弟の関係から始まります。生徒を楽な気持ちにさせるには、次のことが必要です。 * 教員も同じ人間であることを生徒に知らせましょう。 * それぞれの活動について、よく説明しましょう。 * 聞き慣れない言葉や考え方(概念)を説明しましょう。 * 情報を提供しましょう(具体的な活動についてだけでなく、生徒の生活にかかわる問題についても)。 適切であれば、一日のうち数分間を、身近な出来事やメディアでのニュース報道の議論に充ててください。そうすれば、よりリラックスした形で、人権問題を取り扱う機会が多くなるでしょう。それ自体が一つの教育といえます。 全幅の信頼 クラスを2人ずつの組に分けます。一方の子どもが相手に目隠しをして数分間、「目の不自由な」ほうの子どもを誘導します。この目的は信頼をはぐくむことであり、それを壊すことではないので、誘導役の子どもに権力を乱用させないようにしてください。2人のうちの「誘導者」は、足や指でものを触らせたり、声で誘導したり、さらには一緒に遊んだりしながら、「目の不自由な」相手に、できる限りの経験をさせてあげます。 数分したら立場を逆転させて、「誘導者」を誘導される側に、「目の不自由な」ほうを目の見えるほうの側にします。 これが終わったら、子どもにどうだったか聞いてみましょう。「目の見えない」パートナーとしてどう感じたかだけでなく、「誘導者」としてどんな責任を感じたかについても議論させてください。 この活動は、視覚(あるいは聴覚)障害者にとっての生活がどのようなものかに対する認識を深めるだけでなく、コミュニティ全体での信頼の重要性を議論することにも役立ちます。さらに一歩進めれば、国際社会とそれが成り立つ仕組み、また、成り立たなくなる仕組みについても話し合うことができるでしょう。 (UDHR第28条;CRC第3、23条) クラスのルール作り クラスの雰囲気の大切さと、参加や協力の必要性は、いくら強調しても足りません。クラスの雰囲気を最高に持ってゆくためには、子どもたちの提案や意見も大きな助けになります。これを受け入れて、必要な変化を示しましょう。 次の活動は、クラスの雰囲気に直接影響するという点で、極めて重要です。クラス運営のやり方にクラス全員を参加させるという教員の意思と、生徒に対する信頼をはっきりと示す活動でもあります。また、クラスでどんなルールが望ましく、可能であるか、これをどのように守ってゆけるか、そして、クラスの雰囲気の維持に果たす教員の役割は何かについて、子どもが自分たちで考えることにもなります。 A. クラスに必要なもの クラスのルールは、ブレインストーミングを行う(その後の話し合いで結果を絞る)、少人数のグループで検討させ、結果をクラス全体会に報告させる、個別に課題を出して教員が取りまとめ、後にクラス全体で考えるなど、多くのやり方で作ることができます。 初めに、何が「欲しい」かを子どもに聞くのがよいでしょう(答えはかなり多くなるかもしれません)。そのあとで、この中から本当に必要と思う項目を選ばせます。答えはやや絞られ、本質的なものが残るでしょう。これらの項目を「クラスに必要なもの」として、表にまとめます。最後に、「必要なもの」の中から、子どもたちが社会の一員として「権利」があると考えるものを選ばせます。選んだ項目は「クラスの権利」として、表にまとめます。どうしてそれを選んだのかを、子どもたちに聞いてみましょう。 (UDHR第7、21条;CRC第12、13、28、29条) B. クラスの責任 権利と責任との本質的な関連性を強調します。生徒がクラスの権利の一覧を作ったら、権利の一つひとつを責任という観点から表現し直し、「クラスの責任」として、表にまとめます。(例えば、「教室ではだれでも安心していられるべきだ」という表現は、「だれにも他人を軽蔑したり、気持ちを傷つけたりしない責任がある」という言い方に変えられるでしょう。) (UDHR第29条;CRC第29条) C. 権利と責任の実践 基本的な権利と責任について、クラスの意見がまとまったら、これを掲示し、必要に応じて引用したり、修正させたりしましょう。子どもや教員がルールを破ったり、ルールで解決できない状況が生じたりすることもあります。また、クラスのルールが他の教員や学校管理のルールと矛盾する場合には、衝突が生じることもあるでしょう。このような場合には、なぜ物事がうまく行かないのかを話し合い、慎重に考える必要があります。全員の合意で秩序を保つことは、単に指示を下すことよりも常に難しいので、こうした合意に至るまでには、妥協や慎重な話し合いが必要になります。こうしたプロセスはそれ自体、貴重な学習経験といえます。 (UDHR第7、11、21条;CRC第12、13、28、29条) 人権を理解する 何らかのクラスのルールができたら、同じことを普遍的な規模で考えるのが自然な成り行きでしょう。 A. 新しい国を作ろう 人間が住める新たな陸地が発見されたことにします。ここには、まだだれも住んだことがありません。だから、法律も歴史もありません。クラスの全員がここで暮らすことになりました。この新しい国での権利を示す一覧表を作るため、少人数のグループが指名されました。ただし、この新しい国で、だれがどんな地位に就くかはわかりません。 生徒は少人数に分かれて、この国に名前を付け、全員が合意できる10の権利を決めます。それぞれのグループが権利のリストを持ち寄り、すべての権利を含めた「クラスの一覧表」を作ります。このクラスの一覧表について話し合いましょう(いくつかの権利が取り除かれたらどうなるか、何か大事な権利が忘れられていないか、この一覧表とクラスのルールではどこが違うか、など)。 (UDHR第13、21、26条;CRC第12、13条) B. 「世界人権宣言」入門 世界人権宣言について紹介し、それが世界の人々全員の権利を書き出したものであることを説明します。そして、簡略版を朗読します(付録1を参照)。クラスの一覧表と同じような条文が出てきたら、この条文の番号を権利の横に書き込みます。 読み終わったら、結果について話し合いましょう。 * 人権宣言にある権利の中で、クラスの一覧表に入っていないものはありますか。生徒は何か新たな権利をリストに加えたいと思うようになりましたか。 * クラスの一覧表にある権利の中で、人権宣言に入っていないものはありますか。 * 人権宣言には権利だけでなく、責任も含まれていますか。   「児童の権利に関する条約」の要約版を使って、同じようなことをするのもよいでしょう。 (UDHR第21、26条;CRC第29条) 子どもの権利の初歩 A. 子どもの権利とは何か 人間全体としてではなく、特に子どもである自分たちに当てはまる権利や責任があるかどうか、生徒に聞いてみましょう。たまたまある時点で「子ども」だからという理由で、その人にしてはならないこと、あるいは、しなくてはならないこととは何でしょうか。 「児童の権利に関する条約」を紹介し、子どもが健康、安全かつ幸せに育ち、コミュニティの中でよい市民になるために必要なものが保証されていることを説明します。子どもが必要と権利との関係を理解できるよう、手伝ってください。 次のことについて話し合いましょう。 * 国連が子どもの人権だけを取り扱った文書を採択したのはなぜだと思いますか。子どもに必要なことは大人に必要なこととどう違うでしょうか。 * 子どもに特別の保護が必要なのはなぜですか。例をあげてみましょう。 * 子どもの福祉に特別の規定が必要なのはなぜですか。子どもの生存、幸福、発育には何が必要でしょうか。 * 子どもがコミュニティに参加する必要があるのはなぜですか。例をあげてみましょう。 * 子どもの権利尊重を確保するのは、だれの責任でしょうか(親、教員、他の大人、他の子ども、政府など)。 B. 欲しいものと必要なもの 子どもを少人数のグループに分け、子どもが幸せになるために必要なものを、各自10枚のカードに書かせてください。古雑誌からの切り抜きを使っても、絵を描いても構いません。カードに表題を付けるのを手伝ってあげてください。それぞれのグループがカードについて説明し、それを「必要なもの」という見出しの下に貼ります。 次に、政府が変わり、必要なもの全部は出せなくなったため、グループは「必要なもの」一覧の中から10個の項目を消さなければならなくなったことを告げます。選んだカードを外して、これを「欲しいもの」という見出しの下に貼ります。 さらに、もう一度消去が必要になったことを告げ、グループに再び10の項目を削らせ、同じことを繰り返します。 最後に、この活動について話し合いましょう。 * 最初に削られたものは何ですか。それはなぜですか。 * 欲しいものと必要なものはどう違いますか。 * 欲しいものと必要なものは人によって違いますか。 * クラスに必要なものを減らし続けなければならないとしたら、どうなるでしょうか。 最後に、子どもの権利は、すべての子どもが健康で幸せな生活を送り、責任ある市民へと成長するために必要なものに基づいていることを説明してください。「児童の権利に関する条約」を手がかりに、すべての子どもがこうした権利を持てるよう努めましょう(上記の「子どもの権利とは何か」を参照)。小学生なら、条約の要約版(付録2を参照)を朗読し、自分たちが作った欲しいものと必要なものの一覧表と比べることもできるでしょう8。 C. 子どもに必要なもの 生徒を少人数のグループに分けて、1人の子ども(あるいは生徒のだれか)の輪郭を描かせ、その子どもに名前を付けます。それから、この理想的な子どもが大人になったときに期待する心理的、身体的、精神的、人格的な資質(健康、ユーモア、優しさなど)を決めさせ、こうした資質を輪郭の内側に書き込みます。理想的な資質を示すために、輪郭線やその周囲にシンボル(教育を表す本など)を描いてもよいでしょう。輪郭の外側には、こうした資質を実現するために、子どもが必要とする人材や資材を書き入れます(例えば、子どもが健康でいるためには、食糧と保健医療が必要)。それぞれのグループはそこで、新しい仲間をみんなに「紹介」し、その子のために選んだものについて説明します。 「児童の権利に関する条約」を紹介しましょう(上記の活動「子どもの権利とは何か」を参照)。そして、条約の要約版(付録2)を朗読しましょう。自分たちが選んだ必要なものを子どもに保証する条文が出てきたら、その番号を項目の横に書き入れます。クラスが必要なものとしながら、条約に出てこないものがあったら、丸を付けましょう。 D. 子どもの権利推進 国によっては、子どもの権利が新聞、ラジオ、テレビの広報で紹介されています。生徒を少人数のグループに分け、「児童の権利に関する条約」の具体的条文について、広報資料(ポスター、スキット、歌などの形で)を作らせましょう。それぞれのグループに、アイデアをクラスの前で披露するよう指示してください。 第3章 小学校高学年、中学、高校用の人権トピック 人権文化とは、あらゆる人間行動をプラスに作用させるための原則を定めようとするものです。本章では、これら原則の実現に絡む問題を取り扱います。それぞれの問題について例示された活動はわずかですが、教員の方々にとっては、独自の活動を発展させるための出発点となるはずです。問題の中には意見の分かれるものもあるので、敏感かつ慎重な対応を心がけてください。 具体的問題(平和と軍縮、世界開発、政治犯、少数民族、人種主義反対、性差別反対など)に重点的に取り組む場合には、これを人権との関連で取り上げてください。そうすれば、話し合いの内容は、その他多くの問題が絡んだ、大きな枠組みの一側面にすぎないことを生徒が理解できるようになるでしょう。こうした一般的な理解で視野を広げながら、具体的な問題で思索を深めましょう。人権の諸側面を専門とする教員の方々が協力して、生徒の理解を深めるよう努めてください。 命を守る−社会と個人 人類が個人の集まりであることをはっきりと意識させるため、「人間」とは何かについて、生徒と一緒に考えてみましょう。これは、第2章の信頼と尊重に関する活動を発展させたものです。人間は社会的な生き物です。私たちには、それぞれの個性がありますが、ほとんどのことは他者と暮らすことで学んでゆきます。ですから、個人について考えることは、社会について考えることにもなります。 A. 人間であること クラスの前に適当なもの(ゴミ箱を逆さにしたものなど)を置きます。それが宇宙からの訪問者だと仮定します。この訪問者は、「人間」という生き物について知りたがっています。自分たちが「人間」であることを訪問者に理解させるには、どうしたらよいか考えさせてください。 次のことについて話し合いましょう。 * 「人間」であるとは、どういう意味でしょうか。 * それは単に生きていること、あるいは「生き残ること」とどう違いますか。 (UDHR第1条;CRC第1条) B. メッセージ・イン・ア・ボトル 生徒に、宇宙から信号が届いたと想像させます。国連は特別の宇宙船で、人間についての情報を送ることになりました。何を送るか(音楽、人の模型、衣服、本、宗教関連のもの)は、生徒の選択に任されています。どんなものを送れるか、クラスでブレインストーミングを行ったり、個人や少人数グループの課題として考えさせたりしてください。 ここで提起される「私はだれだろう」、「私たちはだれだろう」という疑問には、深い意味があります。この活動は生徒にとって、自分たちが人間であるという感覚と、人間の尊厳に対する理解をもたらすはずです。人間の使者として、多種多様な人類全体を代表する責任を果たすためには、このことが不可欠です。人間とは何かを一般的に定義できれば、何が非人間的かに気づくきっかけとなるでしょう。 (UDHR第1条;CRC第1条) C. 始まりと終わり 社会の中の人間は、もっとも複雑な存在です。教員の裁量で、個人の一生の始まりと終わりについて主張される生存権について考えることもできるでしょう。 * 「生命」はどこで始まるのでしょうか。 * 生命は奪い去ることができるものですか。 * 「生命」に関する私たちの意見は、どんな要因で決まるのでしょうか(宗教、科学技術、法律など)。 (UHDR第3条、CRC第6条) D. 「ジャーナリストが消えた」 次のケーススタディは教員の裁量で行ってください。生徒に次のように伝えます。 「あなたはジャーナリストです。あなたは新聞で、だれか偉い人を怒らせるような記事を書いてしまいました。翌日、見知らぬ人たちがあなたの家に押し入って、あなたは連れ去られてしまいます。あなたは殴られ、部屋に一人きりで閉じこめられます。だれもあなたの居場所を知りません。だれも何もしてくれません。あなたはそこに何カ月も閉じこめられています。」 このジャーナリストは、多くの基本的権利を奪われています。世界人権宣言を用いて、それがどの条文に違反するのかを生徒に判定させてください。 それぞれの生徒に、これらの権利に触れながら、法務大臣に手紙を書くか、このジャーナリストに公開書簡を書くよう指示してください。このような場合、だれかほかに助けられる人はいるでしょうか(市民社会組織の役割を生徒に紹介しながら)。 (UDHR第3、5、8、9、11、12条) E. 子どもを守る 「児童の権利に関する条約」に目を通し、子どもを保護する条文、そして、これらの条文にいう虐待や搾取の状況や具体的形態をすべて書き出してみましょう。 * ほかに加えたいものはありますか。 * 子どもによって、被害を受けやすかったり、保護が余計に必要だったりすることはありますか。 子どもを保護する責任について話し合いましょう。 * 条約によれば、子どもを保護する責任はだれにありますか。 * 条約はこの責任に何らかの優先順位を付けていますか。 * 子どもを保護する責任のある人が、その責任を果たさなかったら、どうなりますか。 この活動の初めに作った一覧表を用いて、地域での子どもの保護について研究しましょう。 * みなさんの地域では、子どもを守るのにどんな特別な必要がありますか。 * 子どもを保護しているのはどんな人々やグループでしょう。 * みなさんやクラスがこの保護に貢献できる方法はありますか。 * 子どもの権利を特別の条約で表現する必要があったのは、なぜだと思いますか。 (CRC第2、3、6、8、11、16、17、19、20、22、23、32、33、34、35、36、37、38条) 戦争、平和と人権 「世界人権宣言(UDHR)」は、第2次世界大戦の惨状を教訓に作られたものです。宣言はその前文で「人権の無視および軽侮が、人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらした」と述べ、「人類社会のすべての構成員に固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義および平和の基礎である」ことを強調しています。 平和、軍縮、発展、人権は相互に絡み合った問題です。平和と軍縮、さらに、発展と環境意識を教えることは、人権教育に対する総合的なアプローチといえます。 子どもたちには、軍拡競争や、軍備管理の試みについての情報を与えることもできるでしょう。第2次世界大戦が終わってからも、150件を超える紛争が起きているという事実は、武器を用いた暴力が続いていることを示しています。クラスのレベルに応じて、国際政治・経済問題を取り上げるならば、なぜ平和の維持がこれほど難しいのかについて、生徒の理解を深めることができるでしょう。発展の格差や環境問題も現在の世界につきものです。これらはそれ自体、暴力的な性質を秘めているだけでなく、戦争の火種となる可能性もあります。戦争、特に核戦争は、小規模なものであっても、大きな環境災害を引き起こす恐れがあります。 A. 平和 できれば、天気のよい日を選んでください。「各地で紛争が起き、戦争のおそれがある世界で、平和はなぜ大切だと思いますか」と生徒に問いかけます。 生徒を戸外、それも気持ちのよい場所に連れ出します。そして、全員を黙ったまま仰向けに寝かせ、約3分間、目を閉じさせます。クラスに戻って、平和の根本的な価値について話し合います。「平和」をどのように定義しますか。平和と人権との間には、どのような関係があるでしょうか。 (UDHR第1、3、28条;CRC第3、6条) B. サミット 地雷の使用を減らすこと、子どもに危険な仕事をさせないことなど、重要な問題について、すべての国々の指導者が話し合うサミットをロールプレイします。この議題について、グループがそれぞれ当事国を演じながら、クラス内で討論を行います。これらの禁止を求めるグループもあれば、禁止に反対するグループもあります。できれば、「対人地雷禁止条約」(1997年)や「最悪の形態の児童労働禁止条約」(1999年の国際労働機関第182号条約)ができるまでに出された議論を比較してみましょう。違う国々、違う人々でも、私たち全員が平和に暮らせるよう協力できることを強調してください(別のやり方として、下記の活動「模擬国連シミュレーション」も参照)。 (UDHR第28条、CRC第3、4、6(c)条) C. 荷物をまとめて 戦争や抑圧から、難民が生じることがよくあります。難民とは、「人種、宗教、国籍、特定の社会集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために」、母国を離れた人々のことをいいます(1951年の難民の地位に関する条約第1条A項2号)。 次のシナリオを読んでください。 「あなたは    の先生です。あなたの仲間が行方不明になり、やがて殺されたことがわかりました。新聞記事には、あなたの名前が破壊活動の容疑者として載っています。あなたはその後、反社会的な政治活動をしているから殺すという脅迫状を受け取ります。逃げるしかないと決心したあなたは、荷物をまとめます。持って出られるのは5種類のもの(洗面用具、衣服、写真など)だけで、しかも、かばんは1つしか持てません。持って行くものを決める時間は5分だけです。二度と国には戻れないかもしれないことを覚えておいてください。」 何人かの生徒に、持ち物のリストを読ませます。新聞記事か脅迫状(着いた国の当局に対して「迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖」があるために出国したことを証明できる唯一のもの)を忘れたら、「難民申請却下」を告げます。何人かの例を見たあとで、難民の定義と、迫害の証拠の重要性を説明してください。不安な状態で感情に流された決定を下した経験についても、話し合いましょう。 今の世界の難民について研究しましょう。 * 難民がもっとも多く集まっているのはどこでしょうか。 * 難民はどこから、どんな理由で逃げたのでしょうか。 * 難民の世話はだれの責任ですか。 (UDHR第14条、CRC第22条) D. 子ども兵士 世界には、10歳にもならないような男子や女子が、兵士として使われているところがあります。このような子どもたちは誘拐され、このような危険な仕事をさせられていることが多く、死んだり、傷害を負ったり、地元のコミュニティや社会全体からのけ者にされてしまうこともあります。「児童の権利に関する条約」の新しい選択議定書(2000年)は、国際労働機関(ILO)の「最悪の形態の児童労働禁止条約」(1999年)とともに、このような武力紛争で子どもを徴用することを禁止しています。 次のことについて話し合いましょう。 * 軍が子どもを戦争に使いたがるのはなぜでしょうか。 * このような子どもは、どの人権を侵害されていますか。「児童の権利に関する条約」の具体的条文をあげましょう。 * 子ども兵士になった影響は、女子と男子でどのように違うでしょうか。 * 子ども兵士が生き残り、家に帰ったとしたら、まずどのような困難が待ち受けているでしょうか。短期的にはどうですか。長期的にはどうでしょう。 生徒は次のようにして、この問題について行動したり、調査したりできるでしょう。 * 世界各地の子ども兵士について、もっと調べてみましょう。 * 元子ども兵士の社会復帰と支援はどんな組織が行っているか、調べましょう。 * 政府に手紙を書いて、「児童の権利に関する条約選択議定書」を批准し、武力紛争に子どもを使うことを禁止するよう促しましょう。 (UDHR第3、4、5条;CRC第3、6、9、11、32、34、36、37、38、39条) E. 人道法 国際人権法と対をなし、これを補完する法体系が国際人道法です。これらのいわゆる「戦争のルール」は、1949年の「ジュネーブ条約」に組み込まれ、傷者、病者あるいは難船した軍人、捕虜、および、戦争地域もしくは敵軍占領下で暮らす民間人の保護についての基準を定めています。多くの国々では、軍人を対象に「ジュネーブ条約」の研修を行っているほか、赤十字国際委員会(ICRC)も、国際人道法と戦時中の人道援助物資供給について、一般市民を対象とした世界的な教育を展開しています。 しかし、現代の戦争の現実は様変わりしています。闘っているのは交戦国の軍隊(国際武力紛争)だけではなくなり、反乱軍やテロリスト、敵対する政治勢力や民族集団(非国際武力紛争)も戦闘にかかわっています。しかも、犠牲者の大半は軍人ではなく民間人で、特に女性や子ども、高齢者が多くなっています。 人権の枠組みと国際法は多くの点で、相互補強関係にあります。例えば双方とも、兵士として使われている子どもに特別の関心を払い、武力紛争に巻き込まれた子どもを特に保護する必要性を認めています。 人権法と人道法が戦争状態にどのように適用されるのか、もっと調べてみましょう。 * 国際赤十字・赤新月社運動の歴史と「ジュネーブ条約」について研究しましょう。1949年当初の「ジュネーブ条約」は、現代の戦争状況にどのように適応してきたでしょうか。 * 戦争被害者を対象とした赤十字国際委員会(ICRC)の人道援助活動について調べましょう。ICRCの7つの基本原則(人道、公平、中立、独立、自発的サービス、統一性、普遍性)を世界人権宣言の原則を比べてみましょう。 * 「児童の権利に関する条約」、1949年の「ジュネーブ第4条約」(戦時における文民保護に関するジュネーブ条約)、1977年の「ジュネーブ条約追加議定書」がそれぞれ、戦争に巻き込まれた子どもについてどのように規定しているか、比べてみましょう。国際人権法と国際人道法の両方で子どもを守る必要があるのはなぜですか。 * 武力紛争への子どもの関与を取り扱った「児童の権利に関する条約選択議定書」と、子どもの徴兵に関する「ジュネーブ条約追加議定書T」第77条とを比べてみましょう。どちらが効果的ですか。両方とも必要でしょうか。15歳になったら、兵士として使ってもいいと思いますか。 * 今の世界の武力紛争についての報道を調べましょう。その紛争でジュネーブ条約は守られていますか。UDHRはどうですか。 (UDHR第5、9、10、11、12、13、14、21条;CRC第3、6、22、30、38、39条) 政府と法 人権はあらゆる人間に固有の権利です。法律で決められているかどうかに関係なく、このことは道義的に主張できます。例えば、法律で承認されているかどうかに関係なく、すべての人間には生存する権利があります。 しかし、法律があれば、道義的な主張に法的拘束力が生まれます。権利が法制化されている国々でも、法律がきちんと実施されているとは限りません。それでも、道義的主張を法的権利にすることは、重要な第一歩といえます。 法律には重要な教育効果も期待できます。法律は、ある社会が適切だと考えることを定め、承認すべきと考えられる基準を具体的に規定します。法律はだれの目にも見え、少なくとも原則的には、指導者にも、それに従う者にも平等に適用されます。 A. 議会と裁判所 法律を作るのは国の立法機関です。次の質問に答えるためには、生徒が実際に立法過程を見る必要があります。 * 「法律」とは何ですか。 * だれが作りますか。 * なぜ作りますか。 開会中の国会や地方議会を見学して、生徒が議員の活動を観察できるようにしてください。上の3つの問題について話し合いましょう。同様に、裁判所を見学して、法律がどのように運用されているかだけでなく、将来の判決に直接あるいは間接に影響しうる判例法を作り出す判決が下される様子も観察させてください。上記の問題について話し合いましょう。 このような見学ができない場合には、また、できる場合でも、クラスで模擬国会を開いて時事問題について討論したり、地方あるいは全国で裁判中の事件を裁く模擬裁判を開いたりしましょう。自分で適切な例を探すよう、生徒に促してください。 国際的な視点を加えるために、国連の政策決定過程や、審議中の問題について研究させてもよいでしょう。国際的な委員会、法廷、裁判所に持ち込まれた事件について調べることもできるでしょう(下記の活動「国際刑事裁判所」を参照)。 また、地元の政治家をクラスに招いて、最初に提示した3つの質問と、さらに以下の3つの質問をしてみるのもよいでしょう。 * なぜ法律は守られているのですか。 * 「正義」はどうやって確保するのですか。 * 政府や法律では、「公正」をどうやって達成していますか。 自分たちに影響する事柄について意見を出す権利を子どもに認めている、「児童の権利に関する条約」第12条について調べましょう。みなさんの国では、この権利が認められていますか。また、どのように認められていますか。 次のことについて話し合いましょう。 * 法の下で、女性には平等の地位が与えられていますか。 * みなさんの国に、女性の弁護士はどれだけいますか。裁判官はどうでしょうか。地方議会や国会の議員はどうですか。 * この数は、法律での女性の取り扱い方にどのように影響していますか(下記の活動「法の下での平等」と「決定権」を参照)。 (UDHR第7、8、10、12、21、40条;CRC第12、40条) B. 模擬裁判 司法過程は、クラスの模擬裁判で学ぶこともできます。「紛争当事者」は中央に、「友達」や「家族」はその近くに座らせ、残りはその周りを取り囲んで「村」を作ります。円に加わらない生徒1人を「裁判官」に指名して、村人が外の人の意見を聞きたいときにだけ、発言させるようにします。紛争当事者にそれぞれ発言させて、それぞれの言い分を詳しく聞きます。合意で判決が下されるまで、話し合いを続けます。 どんな問題を取り扱うかは、生徒の意見を聞きながら選ぶとよいでしょう。終わったあとで、現実の裁判と模擬裁判で「法律」がどのように役立ったかを話し合いましょう。双方にもっともな言い分がある場合、だれかを悪者にはできない可能性があることを指摘してください。 (UDHR第8、10条;CRC第3、12条) C. 法の前での平等 「世界人権宣言」第7条は冒頭で「すべての人は、法の前に平等」であるとしています。しかし、この原則が常に実行されているとは限りません。 次のことについて話し合いましょう。 * みなさんのコミュニティでは、すべての人々が法の前で平等ですか。それとも、違った取り扱いを受けている人々がいますか。 * 一部の人々だけに特権を与えるような要因は何ですか。 * 人権文化にとって法の前での平等が欠かせないのはなぜでしょう。 (UDHR第7条;CRC第2条) D. 「権利」文書を比べる9 権利を保障しているのは、「世界人権宣言(UDHR)」のような国際文書だけではなく、憲法のような地域、国、地方の法典もあることを指摘してください。UDHRに加え、2つの何らかの法文書をコピーして生徒に配り、それぞれの中に次の権利が含まれているかどうかを比べて、当てはまる条文を見つけるよう指示します。 1. 教育を受ける権利 2. 表現の自由(報道の自由を含む) 3. 配偶者選択の自由 4. 女子や少数者を含め、すべての人々の平等 5. 子どもの数を選ぶ自由 6. 拷問や非人間的な取り扱いを受けない権利 7. 思想、良心、宗教の自由 8. 財産を所有する権利 9. 銃器を所有する権利 10. 十分な食糧 11. 適切な住居 12. 十分な保健医療 13. 国内と国外を自由に移動する権利 14. 平和的集会を開く権利 15. きれいな空気と水を得る権利 次のことについて話し合いましょう。 * 同じ点、違う点にはどんなものがありましたか。それをどのように説明できますか。 * みなさんの憲法や条例にある権利の数は、UDHRよりも多いですか、少ないですか。 * これらの文書を書いた人は、「権利」を同じように考えていますか。 * すべての文書に権利だけでなく、責任の規定もありますか。 * みなさんの国の人々には、憲法や条例に含まれるもの以外の権利がありますか。 * これらの法律が矛盾していたら、どうなりますか。 * 国民に一定の権利を保障する上で、政府の限界と責任はどのようにすべきですか。例えば、食べるものがなかったり、住む家がなかったりするのは政府の責任ですか。 * 文書にある権利の中で、すべての政府が保障すべきものはありますか。 (UDHR全条文) E. 国際刑事裁判所 1945年から1946年にかけ、ニュルンベルクと東京で開かれた国際軍事法廷で、勝利を収めた連合国側は、ドイツ人と日本人の戦争に責任ある個々の将校を、第2次世界大戦との関連で実行された「平和に対する罪」、「戦争犯罪」および「人道に対する罪」を理由に起訴しました。 それ以降も、このような犯罪や大がかりな人権侵害は、多くの武力紛争で発生してきました。カンボジアでは1970年代、クメール・ルージュが200万人を殺害したと推定されています。モザンビーク、リベリア、エルサルバドルなどの国々では、おびただしい数の女性と子どもを含む民間人数千人が命を失いました。しかし、このような残虐行為を裁く国際裁判所を作るという国際な合意ができたのは、1990年代になってからのことです。当時、旧ユーゴスラビアで起きた紛争では、「民族浄化」に名を借りた戦争犯罪、人道に対する罪やジェノサイドが、再び国際社会の大きな関心を集めました。国連安全保障理事会は1993年、旧ユーゴスラビアに関する特別の国際刑事裁判所を設置し、このような組織的で大がかりな人権侵害の責任者を訴追、処罰することにしました。同様に、1994年4月から7月にかけ、民間人約100万人が虐殺されたルワンダ内戦の終結を受け、安全保障理事会はルワンダ国際刑事裁判所を設置しました。 歴史を見れば、個人の責任を追及する国際刑事裁判所という法執行の仕組みがない限り、ジェノサイドや言語道断の人権侵害の処罰が難しいことは明らかです。このような裁判所があれば、ジェノサイドや戦争犯罪、人道に対する罪が起きた国に、これを起訴する意思や能力がなくても、確実に責任者を訴追する補足的手段ができるでしょう。また、このような裁判所があれば、国際法違反の重大犯罪の実行を思いとどまらせることができるかもしれません。こうした理由から1998年、各国政府代表はローマで国際会議を開き、常設国際刑事裁判所を設立するための規程を作りました。1998年7月17日には、賛成120カ国、反対7カ国、棄権21カ国で、国際刑事裁判所規程が採択されました。2002年7月には、批准国が60カ国に達したため、規程が発効しました。国際刑事裁判所は現在、オランダのハーグに設置されています。 国際刑事裁判所の設立には、いくつか重要な問題が絡んでいるため、生徒の研究や活動にとっても、よい機会となるでしょう。 * このような裁判所はなぜ必要ですか。効果はあるのでしょうか。 * 政府による国民の扱い方など、ある国の国内問題に、国際社会はどのような権限で介入できるのでしょうか。これは内政干渉にあたりますか。(国際機関に内政干渉の権利があるのかどうか、また、あるとすればどのようなときなのかについて、クラスで話し合う活動を考えてもよいでしょう。) * 国際刑事裁判所について、もっと調べてみましょう(手続き規則、取り扱う事件の種類など−裁判所の公式ウェブサイトはhttp://www.icc.org)。各国政府には、国際刑事裁判所と協力するために、どのような義務があるでしょうか。 * 国際刑事裁判所を設立するためには、60カ国以上の批准が必要でした。これまでにどの国が批准したか、調べてみましょう。みなさんの国がまだ批准していなければ、批准の賛成、反対について討論をしてください。批准に関するみなさんの意見を書いて、国会議員に手紙や陳情書を送りましょう。 * 世界史の中で、もしその時に国際刑事裁判所があれば、そこで取り扱われていたかもしれない事例を探してみてください。 (UDHR第7、10、11、28条;CRC第3、40、41条) 思想、良心、宗教、言論、表現の自由 思想、良心、宗教、言論、表現の自由は、人権文化の中心的な位置を占めます。「児童の権利に関する条約」も、子どもの成熟度に応じて、これらの権利を認めています(下記の活動「成熟度」と「大きくなったらっていつ」を参照)。これらの権利には、宗教あるいは信条を変える自由、干渉されることなく意見を持つ自由、そして国境に関係なく、いかなるメディアを通じても情報や考えを求め、受け取り、与える自由が含まれます。 A. ものの見方 好きか嫌いかによって、ものの見方は変わるものです。それは私たちが使う言葉にも表れます。例えば、同じ人でも見方によって、「高飛車」な人だったり「自立性」がある人だったたり、「攻撃的」な人だったり「積極的」な人だったり、「おとなしい」人だったり「協調性」がある人だったり、「やる気満々」の人だったり「苦労をものともしない」人だったりします。このほかにもどんな言葉が対になっているか、生徒に聞いてみましょう。 自分の本当に素晴らしいと思うところを5つ、もっとも肯定的に表現させてみてください。次に、同じことを否定的な見方で表現し、同じところをほめるのではなく、けなすようにします。そして今度はその逆に、自分の特に嫌なところを否定的に表現したあとで、これをきつくない言葉で表現し直します。 もう一つのやり方として、一般的に女子か男子のどちらかを形容する言葉を書き出させます。そして性別を逆にしてみます(男の子なら「元気」や「大志」といった言葉が、女の子になると「おてんば」や「わがまま」という表現になるなど)。 (UDHR第1、2条;CRC第2条) B. 傷つく言葉 児童の権利に関する条約第13条2項は、子どもに表現の自由を認めていますが、他人の権利や評判を傷つけるような表現を特に制限しています。自分の考えや信条について言いたいことに制限を設けるべきでしょうか。いつでも、言いたいことは何を言ってもよいものなのでしょうか。次の活動は、教員の裁量で行うようにしてください。 全員に紙切れを渡し、それぞれに一つずつ、学校で聞く悪口を書かせます。壁に「からかい/いたずら」から「とても傷つく/我慢できない」までのものさしを作ります。それぞれ適当だと思う位置に、自分の書いた言葉を貼らせます(場合によっては、だれが書いたかわからないようにするため、一度紙を集めて教員が読み、それから生徒に貼らせるのも可)。次に、生徒に黙ったまま壁の文句を見るよう指示します。同じ言葉が何回も出てくるのに、それがばらばらの位置にあることが多いはずです。 このことについて話し合いましょう。生徒に悪口を分類させます(容姿、能力、民族的背景、性別など)。 * 女子か男子だけに対して言う悪口はありますか。 * このような分類から、悪口についてどのような結論が出せるでしょうか。 * 人によって、特定の悪口が傷つく言葉だったり、単なる悪ふざけだったりするのはなぜでしょう。 クラスを少人数のグループに分け、もっとも傷つくと考えられる悪口のいくつかをそれぞれに渡します。各グループの1人に、最初の悪口を読むよう指示します。これが傷つく悪口であることをグループ全体で認めた上で、(1) こんなことを言うのは許されてよいものなのか、(2) 言われたときはどうすればよいのか、について話し合います。それぞれの悪口について、同じことを繰り返します。 最後にクラス全体で、悪口に関する権利と責任について話し合いましょう。 * 教員には、学校での悪口をやめさせる責任がありますか。 * 生徒は自分の生活の中で、悪口をやめる責任がありますか。そうだとすれば、   なぜですか。 * みなさんのコミュニティで悪口をやめさせるために、何ができますか。 * それはなぜ大事なのでしょうか。 (UDHR第1、2、18、19条;CRC第12、13、14、16、17、29) C. 成熟度 「児童の権利に関する条約」は発達する能力に応じ、思想、良心、宗教の自由を子どもに認めています。どれだけ大きくなれば、家族や文化、伝統とは違う宗教に入ったり、政治的意見を持ったりしたりできるのか、生徒に話し合わせましょう。また、それはだれが決めるべきなのでしょうか。 (CRC第14条) プライバシー権 「児童の権利に関する条約」第16条は、プライバシー(私生活)、家族、家庭、通信に対する干渉、および、侮辱や中傷からの保護を受ける権利を子どもに認めています。しかし、条約で子どもに保障されるその他多くの権利と同様、この権利も子どもの「発達しつつある能力」に応じて制限されています。7歳の子どもが17歳の若者と同じ権利や責任を持てないのは明らかです。 「大きくなったら」っていつ クラスに次の話を読んであげてください。 「エクとロミットは、小学校で席が隣になってから、友達になりました。2人はすぐに親友になりましたが、一つ問題がありました。2人の家族は違う社会集団に属していて、昔から対立していたのです。だから、ロミットがエクを家に誘うと、2人の親は大反対しました。エクの家族は先生にこのことを話し、2人は別の席に座らされてしまいました。それでも2人の友情は続いていましたが、エクは別の町の高校に通うことになりました。2人は手紙を出すと約束しましたが、エクからの手紙が届くといつも、ロミットの両親は、それを開ける間もなく、破って捨ててしまいました。ロミットには両親の気持ちがわかりましたが、もう16歳なのだから、自分で友達を選んだり、手紙を見られなかったりする権利があるのでは、とも考えました。」 次のことについて話し合いましょう。 * 「児童の権利に関する条約」によれば、ロミットにはどんな権利がありますか。 * ロミットの「発達しつつある能力」は、どのように判定できるのでしょうか。 * ロミットの両親にはどんな権利がありますか。  この争いを解決できる戦略を考えてみましょう。 (UDHR第12条;CRC第5、16条) 集会と公務参加の自由 コミュニティはどうやって維持、発展できるのでしょうか。メンバーが集まって、自分たちの問題を話し合うのも一つのやり方です。このような自由があれば、コミュニティへの参加はとても重要になります。この自由が拒否されれば、社会はもっとも豊かな資源の一つ、つまり人々の技能と才能を失うことになるでしょう。 コミュニティ参加の習慣は、学校教育を通じて培うことができます。また、校外での社会奉仕活動を行えば、生涯を通じて社会と政治の問題に貢献してゆく基礎ができるでしょう。多くの学校には、自分たちで物事を決められる生徒会がありますが、通常は大人が活動の範囲を制限しています。 人権クラブ クラスで人権を促進するクラブを結成すれば、価値あることに向けて協力する直接の経験が得られるかもしれません。このようなクラブの結成を目指した作業の多くは、教員の指導で行うことができます。 * 人権クラブの細かい目的を決めましょう。 * クラブのシンボルマークを決めるコンクールを行いましょう。 * 決められたロゴの付いた会員カードを作りましょう。 * 役員を決めましょう。 * 人権クラブの活動を知らせる特別の掲示板を作りましょう。 * クラブが連絡を取れる国内、国際の人権ネットワークや組織がないか調べましょう。その資料を請求して、みんなが読める場所に展示しましょう。 * 会合を始めましょう。結社の自由の権利それ自体から話し合いを始めるとよいでしょう。「なぜ団体を作るのですか。地方で、全国で、さらには国際的に公共の事柄にかかわることは、なぜ重要なのでしょうか。」 * 来賓(地方の政治家、問題別、分野別の専門家など)を招いて講演してもらい、話し合いをしましょう。 * 具体的な作業について話し合い、調査する小委員会を作りましょう。 * 12月10日の人権デーを記念しましょう。ほかにも人権関連の国際デーがあるか調べ、記念しましょう10。 グループを作ってほかのクラスにも声をかけ、具体的な人権問題/分野について話したり、クラブの結成理由や活動について説明したり、準会員の資格を認めたりすることもできるでしょう。資源が許せば、定期的に機関紙を発行してみてはいかがでしょう。 (UDHR第20、21条;CRC第15条) 社会福祉と文化的幸福 「世界人権宣言」と「児童の権利に関する条約」は、人々が自由に休息、学習、礼拝できること、コミュニティの文化的生活の中で自由な共有ができること、その人間性を十分に養えることを規定しています。学校は、生徒を地域と世界の芸術や科学に触れさせ、自分たちの、そして他者の文化的アイデンティティ、言語、価値観に対する敬意をはぐくむ場となるべきです。また、歴史のさまざまな時期の多文化的な例を用いて、人権問題を教えるべきです。 個人的、社会的福祉の多くは、家庭から生まれます。独り暮らしの世帯から、コミュニティ全体に及ぶ大家族制に至るまで、家庭は一人ひとりが暮らす文化と経済の基本をなす形態です。「児童の権利に関する条約」第18条は、子育てに関する両親の一義的な共同責任を規定し、第20条は、里親家族か施設のどちらかで、身寄りのない子どもを特別に保護することを定めています。 学校カリキュラムのほとんどの活動は、この点と関連しています。教育のプロセスそれ自体から話し合いを始めることもできるでしょう。教育(学校教育と対比する意味で)は一生続く、真の意味で包括的な活動です。それぞれの世代の文化を学び取る人がいなければ、それは廃れてしまうからです(下記の活動「文化的アイデンティティ」も参照)。 A. 昔々のこと 祖父母の方々を呼んで、子どものときに何を教わったか、それが後にどんな役に立ったかを話してもらいましょう。今は「児童の権利に関する条約」で保障されている権利でも、おじいさんやおばあさんが子どものときにはなかったものは何でしょうか。 人間性を十分に養うにはどうしたらよいか、人権と自由の尊重を強めることについて何を勉強したか、それはどのようにして、異なるグループや国々の間で理解と相互尊重をはぐくむのか、正義と平和には何が役立つのかを尋ねてみましょう。 (UDHR第19、27条、CRC第29、31条) B. 家族のかたち 生徒に現在までの家系図を書いてもらいます(クラスに養子がいる可能性がある場合には注意が必要)。どのような違いが出てきたか比較し、話し合いましょう。 おじいさんやおばあさんの時代から、家族生活はどのように変わりましたか。さらにそのおじいさんやおばあさん、そのまたお父さんやお母さんの時代と比べてはどうでしょうか。 なぜこのような変化が現れたのでしょう。変わったのは価値観、文化、科学技術、それともほかのことでしょうか。どんなことが良く、どんなことが悪かったでしょうか。 これまでの数世代で、家族の人権は改善しましたか。 (UDHR第16、19、27条、CRC第5、29、31条) 差別 人間であることに上下の差はありません。私たちは本質的に平等であり、等しく人権を享受しているのです。 平等だが同じではない...。人々はこの事実を理由に、人間を分け隔て、重要だと考える違いに関心を引きつけます。単なるグループ分けを越えて、人種、皮膚の色、性別、言語、宗教、政治的意見、国民的もしくは社会的出自だけを理由に、グループに優劣を付けるような区別を行えば、それは差別になります。 もっとも差別の理由になりやすいものの一つが性別です。性別は、人類に生物学的に備わった二分法なので、この違いを越えて、さらに深いアイデンティティを探るのは至難の業ともいえます。ある点で違っているからといって、全部が違っているわけではありません。身体の特徴や役割が違っていても、人権が違ってもよいということにはならないのです。 皮膚の色や人種による差別も悪質です。特定の違いが繰り返し強調されることで、私たちに共通の人間性が隠されるからです。 教員である限り、差別の問題は避けて通れません。人間の平等と、それによって可能になる人生のチャンスと選択は、放っておいて実現するものではありません。特に、ステレオタイプ的な態度や偏見を突き止め、生徒に能力と愛情があることを理解させる手助けをし、適切で正確な情報を提供することにより、これを教えなければならないのです。 それは終わることのない自問自答のプロセスといえます。社会経済や政治、その働きに関する情報を得ることが重要です。しかし、それ以上に大切なのは、すべての人々と同じように、教員自身にも偏見や差別的態度があるという自覚を持つことです。教員はそれぞれ、我が身を振り返るという重い個人的責任を負っています。偏見を自覚しない限り、それは消え去ることなく、若い世代にも影響を与えるからです。 1. 差別−ステレオタイプ ステレオタイプに立ち向かう際には、それと反対のことを促す危険も指摘しなければなりません。ステレオタイプに一理あるとしても、それはあくまでも「一理」にすぎないことを強調してください。別のやり方として、「あの人たちはみんな同じだね」とか、「あの連中はみんなそうだ」などという表現をどんなときに聞いた覚えがあるか、生徒に聞くこともできます。 A. みんな同じ 各生徒に小石やジャガイモなど、何かありふれたものを一つ渡して、それと「友達」になり、親しくするよう指示します。何人かの生徒に「友達」をクラスに紹介し、それが何歳か、悲しいか幸せか、なぜそんな形になったのかなどを話させましょう。それについての作文を書いたり、歌を作ったり、詩を捧げたりしてもよいでしょう。そこで、全部のものをまとめて箱か袋に入れて混ぜます。ひっくり返して中身を出し、その混ざった中から、生徒に自分の「友達」を探させます。 ここから明らかにわかることを指摘してください。つまり、どんなグループの人々も、最初は同じように見えても、一度親しくなれば、みんな違った人間であり、それぞれの生活経験があり、友達にもなれる人々だということを。しかし、そのためには、親しくなるまで十分な間、従来のステレオタイプ(「石は冷たくて固く、何の変哲もない」など)をとりあえず置いておかなければなりません。つまり、偏見を捨てるということです。 (UDHR第1、2条;CRC第2条) B. 違いを見つけよう 次のような言い方をしてみます。 1. お医者さんは好きだ。みんな優しいから。 2. 優しいお医者さんは好きだ。 3. お医者さんは優しい人たちだ。 どれがステレオタイプにあたるか(3)、偏見にあたるのはどれか(1)、単に意見を言っているのはどれか(2)を話し合いましょう。この3つの言い方(心理的なものの見方として)がすべて、親切で優しい人たちとしてだけでなく、不機嫌で短気な人たちとして医者を見ることをどれだけ難しくしているかを指摘してください。ステレオタイプや偏見、意見がどのように態度を決めてしまうかについて、話し合ってみましょう。 (UDHR第2条;CRC第2条) 2. 差別−皮膚の色あるいは人種 人種主義とは、特別な(通常は身体的)特徴により、他よりも優れた、あるいは劣った人間の集団があるという信念を指します。人種主義的な行動は、人種や皮膚の色によって一部の人々の取り扱いを変えるといった、あからさまなものから、社会が組織的に、何らかの差別的判断に基づいて集団を取り扱うといった目に見えにくいものまで、さまざまです。 人種主義的行動は人種差別につながることも多く、単なる無視や、違う、あるいは劣っていると考えられる人々の忌避から、より明らかな嫌がらせ、搾取、排他に至るまで、明らかな悪影響を及ぼします。 この問題を取り扱う上でよい資料となるのが、「あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約(ICERD)」です。 皮膚の色は、人類がこれまで考え出したものの中で、もっとも勝手な差別方法の一つです。試しに、生徒たち一人ひとりがどんな皮膚の色になるかを事前に教えないで、必ず暮らす運命にある多人種社会を計画させてみてください。 人種差別のない教室 教室を心の広い、多くの人種を歓迎する場所にする方法は多くあります。どれだけ目を合わせれば居心地よく感じるか、グループで学習戦略を立てるときにどれだけ理解力があるか、どのようなスタイルで劇を演じたり、話を語ったりするかなどの文化的要因は、生徒の反応に影響を与えます。クラスで人種間の争いが起きたら、放っておかないで、きちんと対処することです。生徒には、人種主義を強めかねない行動をどのように認識するかを教えましょう。差別と闘った有名人の話を調べましょう。世界各地の人々が人類共有の知識や経験の蓄積に果たした貢献についても調べましょう。カリキュラムにはできる限りの文化的多様性を盛り込んでください。この関連で、保護者やその他の親類、友人の助けを求めましょう。ほかの人種あるいは皮膚の色で、社会事業にかかわっている人々を招き、その活動についてクラスに話してもらいましょう。 (UDHR第1、2条;CRC第2条) 3. 差別−少数者の地位 「少数者」の概念は「民族」やしばしば「人種」の概念と混同されることが多く、こうした場合にも、なるべく早い対応が必要といえます。少数者という言葉は定義がはっきりしないので、先住民、避難民、移住労働者、難民、さらには圧制下にある多数者を指す意味でも用いられてきました。これら集団にしばしば共通して見られるのは貧困です。少数者が十分に強くなれば、「少数者」ではなくなります。 少数者の人々は個々の人権を認められる資格を持っていますが、集団の構成員としても一定の権利を要求するのが普通です。具体的な集団に応じ、その中には文化的・政治的自決権、土地、明け渡しに対する補償、天然資源の支配権、聖地へのアクセス権などのの要求が含まれることがあります。 A. 「少数者」の見分け方 クラスが「少数者」を定義する手助けをしてください。 * 少数者は常に数的に少ない存在でしょうか。 * 少数者は通常、多数者や支配的集団とどのように違っていますか。 地域社会からスタートして、現代の「少数者」の一覧を作るため、クラスでブレインストーミングを行いましょう。階級、能力、性的嗜好など、人種以外の要因に基づく少数者も必ず含めてください。これらの少数者は差別を受けていますか。それはどんな差別でしょうか。 高校生の場合には、ケーススタディを行って、具体的少数者の規模、居住地、歴史、文化、現在の生活条件、重要な主張などを調べることもできるでしょう。 * 国民の中に少数者が作られる状況には、どのようなものがありますか(先住民、移住者、難民、移住労働者など)。 (UDHR 第1、2条;CRC第2、29、30条) B. 文化的アイデンティティ/文化的多様性 文化的アイデンティティはだれにもありますが、あまりにも当たり前になっているため、気づかないことも多くあります。しかし、民族的、宗教的あるいは言語的少数者、または、少数先住民がいる国々では、特に強大な集団がその文化を弱者集団に押しつけようとする場合、文化的アイデンティティがしばしば人権問題に発展します。 「児童の権利に関する条約」は、子どもが文化的アイデンティティを得る権利に特別の注意を払っています。第29条は子どもに対し、それぞれの文化、言語、価値観を育成する教育を保証しています。第30条は特に、少数者コミュニティや先住民の子どもたちが、それぞれの文化を享有し、その宗教を実践し、その言語の使用する権利を認めています。また、第31条では、子どもが文化的、芸術的生活に十分に参加する権利が認められています。 ユネスコの「文化の多様性に関する世界宣言」は、文化的アイデンティティと多様性との関連を強調し、次のように述べています。「文化は時間、空間を越えて多様な形態をとるものである。その多様性は人類を構成する集団や社会のそれぞれのアイデンティティが、独特かつ多様な形をとっていることに表れている。生物多様性が自然にとって必要であるのと同様に、文化の多様性は人類にとって、文化の交流、革新、創造性の源として必要なものである」(第1条)。 みなさんのコミュニティはどうでしょう。 * 文化的少数者はいますか。 * その文化は尊重されていますか。 * 少数者の人々は、自由に堂々と文化活動に参加できますか。それとも、これを目立たないように行ったり、まったく行わなかったりすることを期待されていますか。 * みなさんの学校は、少数者の文化を尊重するよう奨励していますか。 次のことについて話し合いましょう。 * 文化的アイデンティティを手にする権利はなぜ、それほど重要なのでしょうか。異なる文化の保存、発展、認識はなぜ大切ですか。 * 多数者が少数者に自分たちの文化を押しつけようとすることが多いのはなぜでしょうか。 (UDHR第26条;CRC第29、30、31条) C. 少数者の話 できれば人権クラブの活動として、具体的な「少数者」の人を招き、クラスで話をしてもらいましょう。その準備として、生徒がステレオタイプ的な期待感を持っていることを認識させ、有意義な質問を準備するのを手伝ってあげましょう。このような具体的なケースで、生徒はどのようにすれば正義、自由、平等の推進にもっとも貢献できるでしょうか。 (UDHR第26条;CRC第29、30条) 4. 差別−ジェンダー 「世界人権宣言」第2条は、人権が「いかなる差別も受けることなく」人権を享有できると宣言しています。そして、人々を勝手に分け隔てるために利用されている数多くのレッテルに具体的に触れています。性別もその一つです。性差別が今でも、社会的不公正の最大の元凶であることからして、これを具体的に取り上げるのは適切といえます。 性差別は人種差別と同様、文化や社会のあらゆる側面に絡むことがあります。その多くは無意識のうちに人間の行動にも現れ、さらに差別を広げるという悪循環を生んでいます。一方の性に人権の全面的享受を拒むことは、その性が完全な人間ではないと言っているのも同然です。 A. 性とジェンダー 性(生物学的に決まった要素)とジェンダー(文化的に決まった要素)との違いを説明してください。2つのチームを作り、それぞれ男女の違いを書き出させます。その中には、性に基づくもの(「大人の男にはひげがある」、「女のほうが長生きする」など)と、ジェンダーに基づくもの(「数学は男のほうができる」、「女は憶病だ」など)があります。各チームは交互に特性を一つずつ読み、審査員団はそれが性に基づくものか、ジェンダーに基づくものかを判断します。もちろん、意見の食い違いも起きる(「男には攻撃的な性質がある」など)でしょうが、このような話し合いにより、生徒は自分たちが持つジェンダー的偏見を認識するようになるでしょう。教室や教科書、メディア、コミュニティの中で、ジェンダーによる差別の例を探してみましょう。 (UDHR第2条;CRC第2条) B. 人名録 校内にある本などの資料を生徒に調べさせます。 * 出てくる人は男女同数ですか。 * 女性の登場人物は勇気ある決断を下し、身体能力に優れ、冒険好きで創造性があり、幅広い職業に関心がある人物として描かれていますか。 * 男性の登場人物は人間的で愛情があり、人の支えとなり、感情を表に出し、他人から「男らしくない」と見られることを恐れない人物として描かれていますか。 * 男女はお互いを平等な人間として尊重していますか。 * 男性は子育てや家事に積極的に参加していますか。 * 女性は家庭の外で積極的な役割を果たしていますか。もしそうであれば、それは伝統的に女性のものとされる職業(教員、看護師、秘書など)や、給料が安かったり、まったく支払われなかったりする職業以外の役割ですか。 (UDHR第2条;CRC第2、29条) C. ジェンダーの転換 有名な物語(小説、映画、TVシリーズ、民話など)を、登場人物の性別を入れ替えて話してみてください。このジェンダーの転換にどんな効果があったかを話し合いましょう。 (UDHR第2条;CRC第2、29条) D. したいこと/していること11 次の質問に関する自分の答えを生徒に書かせてください。 1. 同性がするものとされていることの中で、自分が好きなこと3つ。 2. 同性がするものとされていることの中で、自分が嫌いなこと3つ。 3. 自分が異性だったらしてみたいこと、あるいは、なってみたいもの3つ。 同性の生徒を2人ずつ組にして、答えを見せ合うよう指示します。そのあと、各組が異性の1組と(同性しかいないクラスでは、もう1組と)答えを見せ合うよう指示します。 結果について話し合いましょう。ジェンダー的な期待に適合しない人々に対し、コミュニティはどう反応するでしょうか。ジェンダー的な期待は人々の人権を制限していますか。 (UDHR第2条;CRC第2条) E. 決定権 家庭で下さなければならない決定で、家族全員に影響するものを生徒のブレインストーミングで出し合います。それぞれの決定の横に、それを主として下すのが男性か、女性か、その両方かを書き込みます。家庭で男性と女性が下す種類の決定にどのような違いがあるか、話し合いましょう。 次に、最近の数年間でコミュニティが下した重要決定のうち、住民全体に影響するものを書き出させます(新たなクラブやチームの結成、病院の建設や閉鎖、土地の割り当て、バス運賃値上げなど)。クラスを少人数のグループに分け、それぞれに1つずつの決定を分析させます。 * これらの決定には、ジェンダー的にどのような意味合いがありますか。これらの決定は、女性や女子に特に影響するものですか。それとも、男性や男子に対する影響が大きいですか。 * 各決定の横に、決定を下した機関の名前と、機関職員のおおよその男女比を書き入れてください。 * 決定機関が男女同数で構成されていたら、決定はどのように違っていた可能性がありますか。 (UDHR第2、21条;CRC第2、12条) F. 性差別のない教室 人種差別のない教室について示した提案のほとんど(上記「2. 差別−皮膚の色あるいは人種」を参照)を応用すれば、性差別のない教室を作ることもできます。男女のステレオタイプを取り除くため、あらゆる方面からできる限りの支援を求めてください。性に基づく疎外を許してはなりません。何が公平かを常に問いかけてください。「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)」の内容を生徒によく知らせましょう。研究によれば、教員自身、男子により大きな関心を向けたり、男子を女子の2倍以上発言させたりすることで、女子に対する差別の源となりかねないことがわかっています。男子の好奇心や自己主張がほめられる一方で、女子は清潔さ、素早さや、従順さをほめられるというクラスも多くなっています。この調査では、ほとんどの教員が男子をひいきにしていることを自覚しておらず、結果に当惑しているという結果も出ています。 メディア、特に広告はジェンダー分析に格好の材料となります。学校カリキュラムや教科書を詳しく点検するのもよいでしょう(上記の活動「人名録」も参照)。 * 「歴史」は男性と同様、女性の役割にも大きな関心を向けていますか。 * 「経済」は労働市場(家庭内、家庭外を問わず)の女性を議論の対象にしていますか。 * 「法律」は女性と財産について取り扱っていますか。 * 「政治」は女性の代表が少ないことに対処していますか。 * 「理科」は女性の功績を正当に評価していますか。 * 女子は数学、理科、情報処理の成績を上げるよう促されていますか。 * 「文学」、「言語」、「芸術」の教育には、どの程度の性差別がありますか。 学校の課外活動についても調べてみましょう。 * 女子にはクラブ指導者などの役員に選ばれる平等な機会がありますか。 * 学校が後援する活動で、女子が参加できないものはありますか。 * 女子は男子と同じように、スポーツ施設を利用したり、運動のチームに参加したりできますか。 * 女子は学校で、セクハラ(性的嫌がらせ)や身体的な脅威を感じずにいられますか。 * 賞金、奨学金、資金援助などの報奨は、女子にも平等に与えられていますか。 (UDHR第2、26条;CRC第2、29条) 5. 差別−障害者 校外のコミュニティで、実際に身体的あるいは精神的障害を抱えた人々とともに活動することは、生徒が問題の本質を理解する上で最善の方法といえます。 A. 障害者の話 できれば人権クラブの活動として、特定の障害を抱えた人々を招き、クラスで話をしてもらいましょう。生活する上でどのような困難があるか、その結果としてどんな教訓を学んだか、具体的にどのような権利を望んでいるのかについて、説明してもらうとよいでしょう。障害者もまず人間であり、障害を抱えているというのは副次的特徴にすぎないのだということを強調してください。 (UDHR第1、2条;CRC第2、23条) B. 学校は一つ クラスの生徒に自分の学校とその環境を調べさせ、特定の障害を持つ人々にとってどれだけ通学しやすいかを考えさせましょう。 次のことについて話し合いましょう。 * どのような変化が必要だと思いますか。 * 国連が1975年と1971年にそれぞれ採択した「障害者の権利に関する宣言」と「精神薄弱者の権利に関する宣言」を推進するために、みなさんの学校で何ができるでしょうか。 (UDHR第1、2条;CRC第2、23条) 教育を受ける権利 教育を受ける権利はだれにもありますが、「児童の権利に関する条約」第29条の条件を満たし、「児童の人格、才能ならびに精神的および身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させる」(CRC第29条1項)教育を受けられない人々は多くいます。数百万人の子どもには、学校に通う機会がまったくありません。学校に通えない理由は、子どもの社会的地位、性差別、貧困のため働かなくては生きてゆけないなど、さまざまです。教育を受けられない子どもは、その他の人権を享受する能力も制限されてしまいます。 A. 学校にいないのはだれ 自分たちの学校に通えずにいる子どもはだれか、次の例を参考にして、生徒に聞いてみましょう。 * 女子と男子のどちらが多いですか。 * 身体的障害を持つ子どもはどうですか。 * 精神的障害を持つ子どもはどうですか、 * 法律や学校の当局に逆らった子どもはどうですか。 * 孤児になった子どもはどうですか。 * ホームレスの子どもはどうですか。 * 親になったり、結婚していたりする子どもはどうですか。 * 移住労働者の子どもはどうですか。 * 難民の子どもはどうですか。 * コミュニティの少数者の子どもはどうですか。 * 家庭が貧しく、働かなければならない子どもはどうですか。 学校にいないことがわかった各集団について、次のことを聞いてみましょう。 * このような子どもたちが学校に通わないのはなぜですか。また、そもそも学校に通うべきですか。その理由は何でしょう。 * このような子どもたちは、ほかの学校に通っていますか。 * 物理的に学校に通えない子どもたちはどうでしょう。どのようにして教育を受けたらよいですか。 違う学校に通っている子どもがいる場合、次のことを聞いてみましょう。 * このような子どもたちはなぜ、みなさんと違う学校に通っているのでしょうか。 * その学校はどこですか。簡単に通えるところでしょうか。 * この別の学校に子どもが通う費用は、家族が負担しなければなりませんか。親にその余裕がない場合はどうなりますか。 * このような学校の子どもは、きちんとした教育を受けていると思いますか。 学校に通わない子ども(家庭が貧しく、働かなければならない子ども、就学年齢のうちに結婚したり、子どもを産んだりした女子など)に、教育を受ける権利を保障するにはどうしたらよいか、生徒に聞いてみましょう。このような子どもたちが教育を受けられるようにするのは、だれの責任でしょうか。 できれば、生徒に調査を行わせたり、特殊なニーズのある子どもたちが通う学校を見学させたりしましょう。このような特殊学校は、子どもが教育を受ける権利という点で、「児童の権利に関する条約」の基準を満たしているかどうか、生徒に話し合わせたり、作文を書かせたりしてください。すべての子どもが教育を受ける権利を保障するために、何ができるでしょうか。 (UDHR第26条;CRC第28、29条) B. もし字が読めなかったら 普段の日に、家、学校、コミュニティなど、いろいろな場所で、どれだけ字を読むことがあるか、生徒に書き出させてみましょう。コンピュータを使っていたり、テレビを見ていたり、近所を歩いていたりするときなど、「無意識のうちに」字を読む回数もカウントさせるようにしてください。 生徒に一覧表を比べさせて、次のことを話し合うよう指示します。 * 字が読めなかったとしたら、生活にどのような支障があるでしょうか。 * どんなことが不可能になったり、うまくできなくなったりするでしょうか。 * 字が読めないとしたら、みなさんと家族の健康と安全にどのような影響があるでしょうか。 * みなさんが次のような立場だったとしたら、どのような影響があるでしょうか。 - 父母 - 工場労働者 - 農業労働者 - 店主 - 兵士 - 市民 C. 人権としての教育 教育を受ける権利は、人権の相互依存の原理を見事に表しています。UDHRの30条それぞれや、「児童の権利に関する条約」の要約版について考えさせた上で、「みなさんが教育を受けていなかったとしたら、この権利を享有する能力にどのような違いが出るでしょうか」と生徒に尋ねてください(UDHR第21条の政治と自由な選挙に参加する権利、CRC第13条の表現の自由など)。 2000年の時点で、世界で字が読めない大人8億5,000万人のうち、ほぼ3分の2が女性であることを指摘してください。また、世界中で小学校に通えない子ども約1億1,300万人のうち、60%が女子である12ことにも触れましょう。この数字が何を意味するか、生徒に説明させてください。この事実は女性と女子の人権にどのような影響を与えているでしょうか。 D. 権利を学ぶ権利 人権教育はそれ自体、国際的に合意された人権であることを説明してください(本書第1章を参照)。生徒に次のことを聞いてみましょう。 * 人々は人権について何を知る必要がありますか。 * 人権教育はなぜ重要ですか。人権教育が特に必要な人々はいますか。そうだとすれば、だれですか。また、それはなぜですか。 * 人権はどのように教えられるべきでしょうか。 * 人権はほかの学科とどう違いますか(知識だけでなく、行動も必要など)。 * 生徒が自分で人権を学ぶためには、どうすればよいでしょうか。 (UDHR第26条;CRC第17、29条) 発展と環境 みなさんはどこに住んでいますか。どこに住んでいようとも、発展、人権、環境は相互依存関係にあります。なぜなら、発展は人間を中心に据え、参加のすそ野が広く、環境にも優しいことが条件となるからです。単に経済成長だけでなく、公平な分配、人間の能力向上、そして選択肢の拡大も必要です。発展の最優先課題は貧困の解消、開発過程への女性の参加、民族や政府の自立と自決、先住民の権利保護にあります。 人権と発展の強いつながりは半世紀以上前から、国連での討議で中心的に取り上げられてきました。1986年には、国連の「発展の権利に関する宣言」第1条で、発展の権利がはっきりと示されました。宣言は次のように述べています。「発展の権利とは、奪うことのできない権利である。この権利に基づき、すべての個人および人民はあらゆる人権および基本的自由が完全に実現されるような経済的、社会的、文化的および政治的の発展に参加し、貢献し、並びにこれを享受する権利を享有する。」発展の権利には下記が含まれます。 * 天然資源に対する完全な主権 * 自決 * 発展への国民参加 * 機会均等 * その他の市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利を享受できる条件の整備 世界のどこに住んでいるかにより、こうした問題について生徒の理解や経験は異なる可能性があります。 物質的欠乏が日常となっている生徒を受け持つ場合には、現実に沿った活動を行い、これを世界システムの現実とできる限り関連づけるやり方があるでしょう。段階的な発展の見通しと、その達成に必要なステップを考えるのも一案です。 物質的に恵まれた生徒を受け持つ場合には、発展と自決の要求に対する対応力を養い、これらを促進できる方法について具体例を示すとよいでしょう。NGOや、国連開発計画、国連環境計画などの政府間機関による国際協力が、発展と環境保全の権利を促進する上で果たす役割を生徒に研究させるというやり方もあります。 A. 食糧 1日のうち何を食べたり飲んだりしたか、生徒にすべて記録させます。生存と成長のために身体が必要とするもの(炭水化物、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミン、水分など)について、学んだことを分析します。 ある1回の食事を選んで、その要素を生産、加工、輸送、調理したのがだれかを、さかのぼって調べてみます。この調査は、地元の市場や食料品店に物資を供給する生産地の見学と組み合わせて行うこともできるでしょう。 毎日の食事の中から、近くで簡単に育てられるもの(なじみのあるもののほうがよい)を1つ選びます。生徒を2人ずつ組にして、これを缶、植木鉢あるいは校庭で栽培させます。生徒によってなぜ生育状況が違うのかを判定させます。庭作業や作物について詳しい人を招き、植物の世話について話してもらいましょう。全生徒が共同で作業し、作物を分かち合えるような庭をクラスで作りましょう。どのような改善ができるかを話し合うため、ブレインストーミングを行ってください。例えば、栽培方法は最適なものでしょうか。病害虫を防ぐ方法は、ほかにもありますか。作業分担システムの効率と協調性を高めるためには、どうしたらよいでしょうか。 クラスでの作業を、世界の他地域の状況と重ね合わせることもできるでしょう。都市部の学校については、農村部の学校と交流を行って、具体的な経験(この場合、食糧の生産と流通にそれぞれがどのようにかかわっているか)を共有するという方法もあります。 (UDHR第25条;CRC第24、27条) B. 水 淡水は世界中で貴重な存在であり、しかもその希少性はますます高まっています。乾燥地帯に暮らす生徒は、この状況を十分に認識していることでしょう。生徒に飲み水、洗濯用水などを示すグラフを書かせて、毎日どれだけの水を使っているか計算させましょう。使っている水はどこから来ているのか、調べさせてください。 水はゴミや病原体も運びます。地域の福祉にとって、水の衛生管理(上下水道とも)は欠かせません。学校の上下水道設備を生徒(個別あるいは少人数グループ)に調べさせて、どのような改善策があり得るか、提案してもらいましょう。コミュニティ全体で同じ活動を行うこともできます。自分たちが使う水の安全を確保する責任を負う人がいるとすれば、それはだれでしょうか。 (UDHR第25条;CRC第24、27条) C. 十分な生活水準 十分な食糧と水は、発展の基本的な優先課題です。世界人権宣言第25条は具体的に、健康と福祉に十分な生活水準を得る権利の一環として、食糧に触れています。「児童の権利に関する条約」第27条はさらに、子どもの身体的、心理的、精神的、道徳的、社会的発育に十分な生活水準を得る権利を、あらゆる子どもに保障しています。このような権利は国連児童基金(ユニセフ)や国連食糧農業機関(FAO)などの機関にとっても関心事となっているほか、国家の安全保障や世界平和にも影響します。 生存と福祉のために最低限どれだけの食糧と水が必要かを、生徒に調べさせましょう。子どもが発育に十分な生活水準を得られなかったとしたら、どうなるでしょうか。 生徒に開発水準が対照的な国々を担当させ、ユニセフの『世界子ども白書』、国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告』などの出版物にある国連統計を用いた調査を行わせてください。各生徒に、担当国の平均的な人物像(平均寿命、所得、食生活、きれいな水が利用できるかどうかなど)を発表させましょう。このような違いが国や地域の発展だけでなく、個人の発育にどのような影響を及ぼすのか、話し合ってください。 物質的に恵まれた生徒を受け持つ場合には、自分たちのコミュニティでの貧困について調べるよう指示することもできるでしょう。貧困の影響から人々を守る責任はだれが負うのかについて話し合いましょう。 (UDHR第23、25条;CRC第6、27条) D. 住宅 各地の気候や地理、家族構成と家庭状況、文化的・宗教的な好み、利用できる建築資材などは、すべて直接、住宅に反映されます。クラスでブレインストーミングを行って、住宅にあるべきものをすべて書き出した上で、こうした特徴を備えた家を生徒に設計させましょう。設計の特徴について、生徒自身に説明させてください。 * 設計は生徒たちの価値観や文化をどのように反映していますか。 * 水や電力などの資源を保全し、汚染を最小限に抑えるために、地域の住宅の設計をどのように修正、改善できるでしょうか。 * 身体的障害を持つ家族には、どのような要望があるでしょうか。 コミュニティにホームレスの人々がいる場合、それはだれで、なぜそうなったのかについて話し合い、調査しましょう。 * ホームレスの責任はだれにありますか。 * ホームレスは人権問題ですか。 * どのような取り組みができるでしょうか。 (UDHR第25条;CRC第27条) E. 人口 人口増加の影響は、世界各所で如実に現れています。しかし、それほど大きな影響が見られない場所もあります。しかし、人口増加という現象の影響は普遍的です。統計を見れば、世界人口がどれほど急激に増えているか、また、この増加によって、環境や資源獲得競争にどのような影響が生じるのかがよくわかります。人口増加とその背景にある問題について考えることは、生徒にとって重要です。 人口を話題にすることで、権利の衝突や、個人と国家の関係について話し合う機会も生まれます。子どもの数を多くするか、少なくするかなど、家族の人数に関する各国の政策を調査し、話し合うようにしましょう。 * こうした政策は個人の権利に反していますか。 * そうだとすれば、このような衝突はどのように解決すべきでしょうか。 (UDHR第16条) F. 労働 世界経済の変化につれ、世界の労働も性質を変えてきています。例えば、先進国では工業化に伴って都市化も進んだため、地方に住んで農産物を作る人々は減っています。大都市では、サービス産業で働く人々が多くなっています。職を探す人々すべてを雇うのに十分な仕事がなければ、人々は世界中を移動してでも、経済的なチャンスを改善しようとします。経済発展のパターンと同じように、国内、国際の移住パターンも、雇用に関係していることが多いのです。各国は農業、工業、金融、貿易政策を統合し、国民の生産能力を最大限に引き出すよう努めるべきです。 社会に出る準備として、さまざまな仕事のことを調べ始めている生徒も多いことでしょう。さまざまな職業に就く社会人をクラスに招くことは、生徒の認識を広げることにもつながります。また、生徒をさまざまな労働環境に置き、現場の状況を肌で感じさせれば、さらに効果が上がるでしょう。できれば、どのような仕事に興味があるかを生徒に聞き、社会見学をさせましょう。 子どもの労働に関する問題は、特に関心の対象となります。子どもの就労年齢、労働時間、職種を制限すべきかどうかといった問題です。これには実際的、道徳的な問題が絡んでくるため、思索と研究の格好の材料となるでしょう。国際労働機関(人権と労働者の権利を扱う国連の専門機関)が1999年に採択した「最悪の形態の児童労働禁止条約」(182号条約)を、「児童の権利に関する条約」の規定と比較させてもよいでしょう。 子どもの労働と労働慣行について勉強すれば、一般的に、消費者の責任や、人権とグローバル貿易慣行との関連性といった問題を探究するきっかけにもなります(下記の「企業と人権」を参照)。 労働に関する研究課題(地方、国内、国際の雇用パターン;これらのいずれか、あるいはすべてのレベルで「労働」がどのように変化しているか;「労働者」は自分たちの権利を守るため、どのように団結しているかなど)を出せば、重要な学習成果が得られる可能性もあります。国際労働機関の条約、勧告、報告は、労働と人権に関する重要な情報源です。 (UDHR第23、24条;CRC第31、32、36条) G. エネルギー 何をするにもエネルギーが必要です。することが多ければ、必要なエネルギーも多くなります。クラスでブレインストーミングを行い、太陽光、食糧、石炭、ガス、電気など、エネルギー源になりうるものの一覧を作りましょう。1日のうちにどのような形態のエネルギーを使っているのか、生徒にすべて記録させてください。それぞれがどこから来ているのか、そしてどのようにして利用者に届くのかを調べましょう。そのエネルギー源は「再生可能」ですか。これらエネルギーの環境への影響についても話し合いましょう。 学校のエネルギー利用状況を表にしてみましょう。ムダなエネルギーは使われていませんか。省エネのための案を出してみましょう。家庭、コミュニティ、地域、世界全体についても、同じことができるでしょう。 グループ別に課題を出して、コミュニティにエネルギーを供給できる装置を設計(さらにできれば製作)させましょう。風、日光、水、化石燃料、ゴミなど、エネルギーを作るために地元で利用できるものには何がありますか。 (UDHR第25条;CRC第27条) H. 健康 健康は基本的人権であるだけでなく、グローバルな発展の基本的目標でもあります。国連で健康を専門に担当する世界保健機関(WHO)は、数多くの決議でこの目標と、世界の人々の健康状態に見られる大きな格差を縮める必要性とを確認しています。プライマリー・ヘルスケアを計画、実施するには、個別行動と集団行動の両方を通じ、すべての人々の健康を増進しながら、大半の資源がそれをもっとも必要としている人々に使われるようにする必要があります。地方、国内、そして世界の保健医療制度を調べさせるには、さまざまな興味深い研究課題を用いることができるでしょう。ほとんどの国々の学校カリキュラムには保健教育が盛り込まれ、生徒が栄養、生理機能、病気の原因と予防に関する基礎知識を得られるようになっています。地元の医師や巡回医療関係者は客員講師としても、適切な情報やアイデアの提供者としても、貴重な資源となるでしょう。病院や地域の保健プロジェクトも見学してみましょう。 健康という全般的な話題には、ほかにも重要な人権問題が絡んできます。具体的には、保健医療での女子に対する差別、子どもの労働と結婚が健康にもたらす影響、リプロダクティブ・ヘルスに関する情報を得る権利、環境汚染と栄養不良の悪影響、教育の健康に対する効果などがあげられます。 (UDHR第2、19、25条;CRC第2、3、17、24、17(訳注:27の誤りか)、28条) 経済開発と相互関連 世界人権宣言にも、「児童の権利に関する条約」にも、人間がまともな生活水準を得る権利を確認する条文が多くあります。これが実現できているかどうかは複雑な問題であり、各国の資源、工業開発、経済的優先事項、政治的意志にも左右されます。経済開発の達成(国内的にも国際的にも大きな意味がある)は明らかに、これら権利の実現に大きく影響します。 世界の資源と処分可能な富の配分は不平等です。なぜそうなのでしょうか。これに十分な答えを出すためには、地理や国際社会やその政治経済の歴史を説明しなければならないでしょう。 A. ローカル/グローバル 新聞やニュース雑誌で、世界の遠く離れた場所の出来事が、どのように地域社会に影響しているか、あるいは、自分たちの国の出来事が、遠く離れた場所にどのような影響を与えているのかを取り扱った記事を、生徒に探してもらいます(環境、経済、保健あるいは政治問題;食品、ファッション、音楽あるいはその他文化の交流;移住;食糧や資源をはじめとする輸出入など)。見つかったつながりをいくつかに分類(貿易、文化、観光、環境など)し、各項目の横に当てはまる分類を記入させます。 世界地図を広げて、その周囲に各項目を分類別に書き入れます。矢印や毛糸を使って、原産国と、これに影響を与えたり、与えられたりしている国とを結んでみましょう。 次のことについて話し合いましょう。 * 世界の中で、もっともつながりが多い場所はどこですか。もっとも少ない場所はどこですか。それはなぜでしょう。 * どのようなつながりが一番多いですか。 * この活動から、グローバルな相互関連について何がわかりましたか。 (UDHR第13、19条;CRC第17条) B. 労使関係 ある労働環境(工場、プランテーション、農場など)で、労働者が所有者あるいは経営者に対し、多くの要求を行う決定を下したと想定します。労働者は職場の運営についての発言力を高めたいと思っています。さらに、賃金の改善、傷病手当の改善、職場の安全に対する関心の強化、教育プログラムを発足させる機会、休暇の延長も要求しています。 クラスを労使2つのグループに分けます。各グループの代表に交渉を行わせ、その結果をほかのメンバーに報告させます。国際労働機関の条約を資料として、労働者の権利に関する情報を生徒に探させてください。さらに、労使の役割を入れ替えて、もう一度同じことをします。 (UDHR第23条;CRC第32条) C. 連鎖関係 現代の若者は、相互依存関係が複雑に絡み合った組織として世界を理解する必要があります。また、この組織の各部分には微妙なバランスがあり、一部分をいじれば全体に影響が及ぶことを認識する必要もあります。例えば、ある場所で環境汚染が起これば、ほかの多くの場所で食物連鎖、健康、生活条件、生計などが乱れるおそれがあります。ゥ問題にも連鎖関係があります。貧困には多くの要因が絡み合っていることがあるので、貧困根絶に取り組むためには、これら全部を考えなければならないのです。 こうした相互関連の複雑性を生徒に実感させるため、クラスを偶数の少人数グループに分け、それぞれに1つずつの文を配ります。2つ以上のグループが同じ文を受け取るようにしてください。配布する文は、事実を表現するもの(「   では、人口の30%以上がエイズウイルス(HIV)に感染している」など)か、仮定を表現するもの(「女性が男性と同じだけの財産を持っていたらどうなるか」など)とします。各グループは、一枚の模造紙の一番上に、渡された文を書きます。生徒は文の内容からどのような結果が生じるかを3つ考え、文の下に書き込みます(「たくさんの子どもの親が死ぬ」、「エイズウイルスに感染して生まれてくる子どもが多くなる」、「病人が増えて、国の保健医療機関がパンクする」など)。さらに、これら3つの結果それぞれの下に、そこから生じる結果を3つずつ書き込みます(「たくさんの子どもの親が死ぬ」ことで「孤児になった子どもの世話で家庭や社会事業がパンクする」、「働ける人々の数が減る」、「適当な育て親がいない子どもが増える」など)。このようにすれば、出来事の連鎖関係が図にはっきりと表れます。この作業をさらに繰り返すこともできるでしょう。最初に同じ文を受け取ったグループ同士で結果を比較し、話し合いましょう。出来上がった図を自由に見られるように「展示」し、内容をほかの生徒に説明させるようにしてください。 出来上がった図が人権にどのような意味を持つのか、また、たった一つの問題が、社会の多くの側面や、多くの異なる国々にどのように影響するのかについて話し合いましょう。 (UDHR第28条;CRC第3条) D. 開発問題関係者の話 できれば人権クラブの活動として、開発の問題に携わっている人々を招き、クラスで話をしてもらいましょう。その下準備として、生徒に背景となる情報を与え、質問を用意できるようにしてください。話を聞いたあとで、クラスをグループに分け、話の内容について調べさせましょう(地理的区分別、コミュニティの具体的部分別、あるいは、近代化、官僚化、グローバリゼーション、都市化、文化的価値観の変化をはじめ、あらゆる人々に影響する特殊問題別など)。 (UDHR第19、25条;CRC第6、27条) 企業と人権 20世紀半ばに作られ、発展を遂げていた人権枠組みは当初、政府が国民をどのように取り扱うかを主眼としたものでした。しかし、グローバル経済の台頭により、財務、権力、人々の暮らしに対する影響力という点で、政府をしのぐ企業も多く出てきました。政府は国民に対して法的な説明責任を負いますが、企業の中でも特に、全世界のさまざまな国々で事業活動を行う企業には、株主に対する責任を除けば、一般市民に対する法的な説明責任がほとんどありません。その結果、こうした多国籍企業が人権問題の矢面に立たされることが多くなってきたのです。 A. 企業は説明責任を負うべきか 次の問題について話し合いましょう。 * 大手の多国籍企業は、どのように社員の人権を侵害するおそれがありますか。一般の人々についてはどうですか。 * このような企業は、その影響力により、どのように人権を促進できるでしょうか。 * 企業にとって、人権基準を守ることが利益につながりうるのはなぜですか。また、それが不利益につながりうるのはなぜですか。 * 企業は人権基準を守ることについて、説明責任を負うべきですか。 * 市民や非政府組織(NGO)がどのように圧力をかければ、企業に人権基準を守らせることができるでしょうか。 (UDHR第28条;CRC第3、6条) B. 企業の行動規範 企業の中には、人権基準を守るよう求める圧力に応じ、関連会社や取引先がすべて従うべき行動規範を設けているものもあります。 ある大手の多国籍企業(衣料品メーカー、石油会社など)からの依頼で、行動規範作りを助けると仮定します。生徒を少人数のグループに分け、あらゆる業務面で企業が従うべき原則の一覧を作らせてください。人権や労働慣行、環境への配慮を取り入れるようにしましょう。すべての行動規範案を比べ、これを組み合わせて、最終文書を作り上げます。 出来上がった一覧表を、1999年にコフィー・アナン国連事務総長が発表した原則リスト「グローバル・コンパクト」と比べてみてもよいでしょう。(グローバル・コンパクトについては、http://www.unglobalcompact.orgでご覧になるか、国連広報センターにお問い合わせください。) (UDHR第3、28条;CRC第3、6条) C. 企業人の話 できれば人権クラブの活動として、地元のビジネス団体(商工会議所、ロータリークラブ、銀行協会、商店組合など)や、公正/倫理的取引への取り組みに携わる公共機関やNGOからの代表を招き、グローバル経済が地元経済にどのような影響を与えているか、また、人権に関する企業の説明責任についてどのように考えているかを話してもらいましょう。 (UDHR第19、23、25条;CRC第3、6、17、27条) 国連を理解する 「世界人権宣言」第26条によれば、教育は「平和の維持のための、国際連合の活動を助長する」ものでなければなりません。模擬国連は、国連システムのシミュレーションとして、学生が国連加盟国の「大使」の役割を果たすもので、国連の限界と潜在能力の理解に大いに役立つ教育ツールといえます。 ほとんどの模擬国連プログラムは、次の3段階方式を採用しています。 1. 準備:生徒は3つの基本主題の研究を行います。 (a) 国連とその活動 (b) 国連加盟国の政府、政策、関心事項 (c) 議題に上っているグローバルな課題 このような研究と調査により、「ポジションペーパー」あるいは決議、および、担当する加盟国の交渉戦略を策定できるはずです。 2. 参加:生徒は行った研究を生かして加盟国の「大使」となり、演説、傾聴、時間管理、交渉、協議の能力を発揮します。 3. 評価:締めくくりとして、慎重な結果報告と評価を行うことが不可欠です。シミュレーションの各側面(研究、発言、交渉など)の成否を判断するため、いくつかの基準を設けておくべきです。 教員は専門家ではなく、生徒の研究と分析を助けるガイドの役割を果たさなければなりません。下記に示したのは、模擬国連活動の要約版です。模擬国連プログラムに関しては、付録5に掲げた資料をご覧ください。模擬国連プログラムについてさらに詳しくは、国連協会世界連盟にお問い合わせください(付録4を参照)。 模擬国連シミュレーション グローバルな重要性を持つ時事問題をいくつか選び、集中的に考えさせましょう。生徒を個人あるいはグループ単位でさまざまな国連加盟国の代表に指名し、その国について研究させます。研究の目的は担当する国のことを理解し、その立場から重要な問題を考えることにあります。この点を生徒に説明してください。 生徒がそれぞれの調査を終えた時点で、各「大使」に、担当する国あるいは地域にとって重要な問題を一つ選び、それに関する「総会」決議案を作成するよう指示します。決議には、問題の詳しい説明と、国連がどのような役割を果たすべきかを含め、状況を改善するための計画を盛り込むようにしてください。生徒は自国の決議案があらゆる人々にとって利益となり、検討に値することを他国に納得させなければなりません。お互いの決議案を比較し、支持国や共同提案国を探すよう、生徒に促しましょう。決議を採択させるためには、決議案を修正し、合意を作り上げる用意がなくてはなりません。生徒にこの点を説明してください。 模擬国連フォーラムを開催しましょう。輪を作るようにして生徒を座らせ、その前に担当国名を書いた札を置きます。教員あるいは能力のある生徒が「事務総長」を務めます。フォーラムの議事規則をいくつか作りましょう(各人を「   国大使」と呼ぶ、「事務総長」が認めない限り発言できない、など)。 「事務総長」は決議案の提出、審議、質疑応答、投票を求めます。決議案の審議が終われば、だれでもこれを投票にかける動議を提出できます。動議通過のためには、いずれか他国の「大使」による支持が必要です。決議採択には3分の2の多数票が必要となります。 シミュレーションの締めくくりとして、書面か口頭での評価を行いましょう。評価には自己評価だけでなく、国連とその国際問題における役割について生徒が何を学んだかも含めるようにしてください。 (UDHR第1、28、30条;CRC第3条) 人権コミュニティを作る 人権教育の究極的目標の一つとして、真の意味の人権文化を作ることがあげられます。そのためには、生徒が自分自身の行動や近所のコミュニティをはじめ、実生活での経験を人権面から評価することを学ばなければなりません。自分たちが日常的に経験する現実が、人権原則にどのように適合しているのかを率直に評価した上で、コミュニティ改善に向けて積極的な責任を担う必要があるのです。 校内の人権尊重度を測る13 生徒に下記の調査を行わせて、ちょうど温度を測るように、校内の人権尊重度を評価させてください。調査結果を記録し、次のことについて話し合いましょう。 * みなさんの学校はどのような分野で、人権原則を促進していると考えられますか。 * 人権上の問題があると見られるのは、どの分野ですか。 * このような問題の存在をどのように説明できるでしょうか。それは差別に関係していますか。意思決定への参加に関係していますか。こうした人権侵害により、だれが得をし、だれが損害を受けていますか。 * みなさん自身、あるいは、コミュニティのほかの人々は、現状の改善や悪化に関係していますか。 * 校内の人権尊重度を高めるためには、何をする必要がありますか。 クラスとしての行動計画を作成して、目標、戦略、責任を定めましょう。 校内の人権尊重度を測る やり方:下の各文を読んで、校内の状況がどれだけ正確に表現されているかを評価しましょう。生徒、教員、管理者、スタッフを含め、学校コミュニティ全体のことを考えてください。得点を合計して、学校全体の総合評価をしてみましょう。 評点尺度: 1 2 3 4 DN 絶対にない (いいえ) まれにある しばしばある いつもある (はい) わからない 1. 学校コミュニティの人々は人種、性別、家庭環境、障害、宗教あるいはライフスタイルを理由とする差別を受けていない。 (UDHR第2、16条;CRC第2、23条) 2. 私にとって学校は安全で、安心できる場所だ。 (UDHR第3、5条;CRC第6、37条) 3. 生徒は全員、進学や就職について同じように情報を受け、励まされている。 (UDHR第2、26条;CRC第2、29条) 4. 私の学校はすべての人々に平等なアクセス、資源、活動、宿泊設備を提供している。 (UDHR第2、7条;CRC第2条) 5. 私の学校コミュニティは、校内で差別的な言動や事物が見られれば、これに反対する。 (UDHR第2、3、7、28、29条;CRC第2、3、6、30条) 6. だれかが別の人の権利を侵害した場合、この侵害者は、どのように行動を変えるべきかを学ぶ手助けを受けられる。 (UDHR第26条;CRC第28、29条) 7. 学校コミュニティは、私の学力だけでなく、人間としての成長にも気を遣い、必要なときには助けようとしてくれる。 (UDHR第3、22、26、29条;CRC第3、6、27、28、29、31条) 8. 争いが起きた場合、私たちは暴力を使わず、これを協力的に解決しようとする。 (UDHR第3、28条;CRC第3、13、19、29、37条) 9. 学校には差別に取り組む方針や手続きがあり、問題が起きた場合には、これを適用している。 (UDHR第3、7条;CRC第3、29条) 10. 規律に関して、罪と処罰を決定する場合、あらゆる人々が公正で公平な取り扱いを保証されている。 (UDHR第6、7、8、9、10条;CRC第28、40条) 11. 私たちの学校で、品位を傷つける取り扱いや処罰を受ける人はいない。 (UDHR第5条;CRC第13、16、19、28条) 12. 告訴された人がいても、有罪が決まるまでは無罪と推定されている。 (UDHR第11条;CRC第16、28、40条) 13. 私の個人的な空間や持ち物は尊重されている。 (UDHR第12、17条;CRC第16条) 14. 私の学校コミュニティは、国内で生まれていない人々も含め、さまざまな背景や文化を持つ人々を生徒、教員、管理者、スタッフとして受け入れている。 (UDHR第2、6、13、14、15条;CRC第2、29、30、31条) 15. 私は差別を受けるおそれなく、自由に信条や思想を表現できる。 (UDHR第19条;CRC第13、14条) 16. 私の学校の人々は、検閲や処罰を受けるおそれなく、出版物を作成したり、配布したりすることができる。 (UDHR第19条;CRC第13条) 17. 教科や教科書、集会、図書館、授業では、多様な立場(ジェンダー、人種/民族、イデオロギー)が反映されている。 (UDHR第2、19、27条;CRC第17、29、30条) 18. 私には学校で文化活動に参加する機会があり、私の文化的アイデンティティ、言語、価値観は尊重されている。 (UDHR第19、27、28条;CRC第29、30、31条) 19. 私の学校の人々には、学校の方針や規則を作るための民主的な意思決定に参加する機会がある。 (UDHR第20、21、23条;CRC第13、15条) 20. 私の学校の人々は、校内で団体を作る権利や、自分たちの権利や他人の権利を擁護する権利を持っている。 (UDHR第19、20、23条;CRC第15条) 21. 私の学校の人々は互いに、正義、エコロジー、貧困、平和にかかわる社会的問題やグローバルな問題について学ぶよう働きかけ合っている。 (UDHR前文、第26、29条;CRC第29条) 22. 私の学校の人々は互いに、正義、エコロジー、貧困、平和にかかわる問題に取り組む組織を作り、行動を起こすよう働きかけ合っている。 (UDHR前文、第20、29条;CRC第29条) 23. 私の学校コミュニティの人々は、授業日に十分な休憩/休息をとり、公正な労働条件で合理的な時間だけ働くことができる。 (UDHR第23、24条;CRC第31、32条) 24. 私の学校で働く人々は、自分と家族の健康と福祉にとって十分な生活水準を確保できるだけの報酬を受けている。 (UDHR第22、25条;CRC第27条) 25. 私は学校で、人々が他人を差別しないようにする責任を担っている。 (UDHR第1、29条;CRC第29条)   合計点 人権尊重度の満点=100点 みなさんの学校の人権尊重度=  点 ほんの始まり... 『ABC:人権を教える』は出発点であり、ゴールではありません。そこに提示されているのは提案であり、義務ではありません。その目的は、議論と思索を刺激することで、子どもたちが権利と義務の基礎を客観的に理解できるように手助けを行い、これによって、人権原則を生活のできるだけ幅広い範囲に適用できるようにすることにあります。 本書は教員の方々に力と着想を与え、学校のカリキュラムと文化に人権を取り入れる上で有効な教授法と戦略を見つけるよう促すことを意図しています。教員の方々はぜひ、その他の人権教育者と連携して、アイデアと経験を共有するネットワークを作ってみてください。 その一方で、あらゆる人権教育への取り組みは、次のような基本的特徴を共有することも事実です。 * 人間の尊厳や平等など、普遍的な人権原則の中核をなす価値体系。 * 世界人権宣言や児童の権利に関する条約など、中心的な人権法文書に根ざした内容。 * 人権の普遍性、不可分性、相互依存性の受け入れ。 * 人権と個人や国の責任との間に相互連関があるという認識。 * 人間のニーズに対する理解の進展と、一般市民やNGOがその関心事項を国際舞台に提示する役割に応じて進化するプロセスとして人権を理解すること。例えば、世界人権宣言が採択された1948年の時点で、環境汚染を心配していた人々はほとんどいませんでした。今では、きれいな空気や水が基本的人権としてとらえられることが多くなり、環境上の懸念に取り組むための国際的な法律文書も検討されています。 しかし何よりも、人権侵害は人ごとではないという認識を生徒が持つことが重要です。人々にさまざまな違いがあっても、人権は(世界人権)宣言に規定する権利および自由が完全に実現される社会的および国際的秩序」において、すべての人が「人格の完成」を達成する権利にかかわっているのです(UDHR第26、28条)。 生徒たちが学んだことを、自分たちのコミュニティで人権を促進、保障するためにどう利用したらよいか、考えさせてください。本書では、人権原則を社会全体で実際に適用するための活動を提示しましたが、その多くは、こうした行動に役立つことでしょう。また、実際の行動により、生徒は授業で学んだことをしっかりと身につけ、今後とも、クラスや学校以外の社会での貢献に必要な能力を培う指針を得ることでしょう。 1 「世界人権宣言」の全文と簡略版は、付録1を参照ください。 2 Eleanor Roosevelt, "In Our Hands"(1958年、世界人権宣言10周年に寄せるスピーチ)。 3 330を超える言語と方言に翻訳されたUDHRの本文を含め、世界人権宣言についてさらに詳しくは、http://www.ohchr.orgをご覧になるか、国連人権高等弁務官事務所までお問い合わせください。 4 本章でも用いられている「条約」、「議定書」、「批准」などを含め、国際人道法の用語については、付録3に簡単な説明があります。国際人道法文書全般については、http://www.ohchr.orgをご覧になるか、国連人権高等弁務官事務所までお問い合わせください。 5 児童の権利に関する条約の全文と要約版は、付録2をご覧ください。 6 世界人権宣言(第26条2項)、経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約(第13条1項)、児童の権利に関する条約(第29条1項)、および、ウィーン宣言と行動計画(D節、パラグラフ78-82)を含むもの。 7 国連文書A/51/506/Add.1付録パラグラフ2。http://www.ohchr.orgをご覧になるか、国連人権高等弁務官事務所までお問い合わせください。 8 Susan Fountain, It's Only Right! A Practical Guide to Learning about the Convention on the Rights of the Child (UNICEF, 1993) を基に作成。 9 David Shiman, Teaching Human Rights (Center for Teaching International Relations Publications, University of Denver, 1998) に基づき作成。 10 実用的なアイデアについては、More than 50 Ideas for Commemorating the Universal Declaration of Human Rightsを参照ください。http://www.ohchr.orgか、国連人権高等弁務官事務所を通じて入手できます。国際デーの一覧もウェブサイトか事務所を通じて入手できます。 11 Julie Mertus, Nancy Flowers and Mallika Dutt, Local Action/Global Change: Learning about the Human Rights of Women and Girls (UNIFEM, 1999) を基に作成。 12 UNESCO, "Education for All Year 2000 Assessment." 13 David Shiman, Social and Economic Justice: A Human Rights Perspective (University of Minnesota Human Rights Resource Center, 1999) を基に作成。 ?? ?? ?? ?? 1