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UN Women日本事務所 所長代行 ステイヌン・グッドヨンスドッテ さん

今回ご紹介するのは、UN Women日本事務所 所長代行のステイヌン・グッドヨンスドッテさんです。今回は新しい国連機関であるUN Womenの活動についてお話を伺いました。

un_interview_photoプロフィール

アイスランド出身。アイスランド大学でジェンダー学と文化人類学を専攻。在学中より女性の地位向上のために数々の運動に参加。2007年―2010年、アイスランドのUNIFEM(現UN Women) 国内委員会事務局長。2010年5月、UNIFEM(現UN Women)日本事務所所長代行に就任。

 

― まず、UN Women とはどういう組織なのですか?

UN Womenは昨年設立された新しい国連機関です。国連内に元々あった4つの異なる役割を持っていた女性関連専門機関が一つに統合され、途上国などでさまざまなプログラムを行なうと同時に、加盟国に対して政策提言を行なう役割も持ちます。UN Womenは、途上国だけを対象とするのではなく、世界全体で男女平等の実現に取り組んでいます。また、国連内の男女平等の推進もしています。自分達が実践していないものを外で推進することはできませんからね。
UN Womenが設立されたということは、男女平等に以前よりも関心が集まっているということを意味します。男女平等はそれ自体が目的ではなく、教育、貧困、健康などの他の課題の解決にも欠かせないものです。例えば、一日1ドル以下で生活している人々の70%は女性です。ですから本当に貧困を解決したいのなら、女性に注意を向ける必要があります。単に別々の組織が集合体になったというのではなく、UN Women という機関になることで国連システム内での存在感を大きくし、強い発言力を持つことができるようになったと言えるでしょう。

「男女平等の達成は、他のあらゆる分野の課題の解決に欠かせないものです。」

― ステイヌンさんが所長代行を務められている日本事務所での活動について教えてください。

私達には3つ目標があります。第一に、UN Women と日本政府の関係を強めて、私達のプロジェクトへの日本の協力を強化することです。第二に、男女平等の推進と資金集めのため、民間企業とのパートナーシップを構築することです。そして第三に、日本でのUN Womenの知名度を上げることです。まだまだ長い道のりですが、UN Womenと言えば誰もが活動内容をイメージできるようになることが理想です。そのためにはメディアやソーシャルメディアでの露出を増やしたり、講演を行なったりしていきたいと思っています。

― 日本の民間企業とのパートナーシップの中で男女平等を推進しているということでしたが、実際に企業に対してどのような働きかけを行なっているのですか?

まず私たちが作った「女性のエンパワーメントのための指針」というものがあるのですが、これは国連グローバル・コンパクトとの共同プロジェクトで、企業や民間団体が職場、市場、地域社会で女性のエンパワーメントに取り組む上で、実践的な手引きとなるものです。この指針に賛同する企業を増やすことで、民間企業における男女平等の促進に取り組んでいます。

un_interview_photo01― 日本の企業と関わって仕事をされている中で、日本での男女平等についてどう思いますか?

日本は先進国なので世界全体の他の国と比べれば、女性が出産や妊娠で命を落とすことも無く、遺産相続や財産に対して男性と同等の権利を持っている分、良い環境にあると言えるでしょう。しかし、日本を同じ経済レベルの国と比べると、特に女性のエンパワーメントの点では日本は遅れていると言わざるを得ません。このエンパワーメントというのは、民間部門での管理職・役員職や、政治的リーダーとして女性がどれだけ活躍しているかということです。これについては日本は他の先進国の中でかなり劣っています。私自身、日本は経済の発展から見て、もっと男女平等が進んでいるのだろうと考えていたので、日本に来たときには驚きました。

― 日本で仕事をしていて難しいと感じることは何ですか?

まず日本では男女平等の概念が完全に発達しておらず、「問題がある」ということにすら気付いていない人が沢山いると思います。しかし、問題に気付いている人は積極的に行動を起こそうとしていますし、多くの人は私達の活動に協力的です。

「国際女性の日」で講演される山崎夫妻

「国際女性の日」で講演される山崎夫妻

今年3月に開催された「国際女性の日」では宇宙飛行士の山崎直子・大地さん夫妻が講演し、夫の大地さんが家庭の仕事をするということについてお話しいただきました。この講演の後で若い男性と話してたのですが、彼はそれまで、キャリアを諦めて家に居なければならない自分の妻が時々不満を言うことが理解できなかったそうです。でも講演で妻のためにキャリアを諦め家に居ることを選んだ大地さんの話を聴いて、彼自身も大地さんの身になって考えると、キャリアと家庭の2つの選択肢の中で選ばなければならないということの難しさを理解することが出来たと言っていました。男女平等を達成するためにはこのように女性だけでなく男性も問題を認識することが重要だと思います。UN Womenの事務局長であるミチェル・バチェレもこの点を強調しています。女性だけの力でできることには限界があるので、男女平等の達成には男性の協力が必要なのです。世界の発展と貧困の解消のためには男女平等の実現が不可欠で、男女平等の実現には男性の参加が不可欠だからです。

「まずは問題があることに気付くこと。男女平等は女性だけの問題ではありません。」

― ステイヌンさんはこれからUN Women を離れ、アイスランドでお仕事をされると伺いましたが。

そうです。私は売春に関わったことのある女性や人身売買の被害にあった女性のためのシェルターを立ち上げようとしているNGOで働くことになっています。これはアイスランドでは未だ表面化されていない問題なので、私たちもこの問題の規模は分かっていません。売春の経験がある女性のためだけに作られるシェルターとしては、このシェルターがアイスランド初となります。これができるようになったのも2009年に法律が改正されて売春自体が違法ではなくなったためです。それによって女性たちは助けを求め、必要なサポートを受けられる状況になったのです。

― アイスランドの女性は社会にも多く進出していてとても行動的だと聞いたのですが、実際ステイヌンさんの目から見るとどうですか。

アイスランドでは全体の85%の女性が仕事についており、国会では40%が女性です。因みに日本では50%の女性が仕事についており、国会での女性が占める割合は11%です。ですから日本と比べれば女性の社会進出が進んでいるかもしれませんが、それでもアイスランドにおける真の男女平等の実現には程遠いと考えています。世界で本当に男女平等が成し遂げられている国はまだないでしょう。

un_interview_photo03― UNはこれから男女平等のために何をしなければならないと思いますか?

まずUN Womenができたことで大きな一歩を踏み出すことができたと思っているので、ここからどうなっていくのかを見るのが楽しみです。男女平等達成のためのUN Womenの活動や国連全体の活動はとても大きな成果を出すことが出来ると思います。もし全ての国連機関が男女平等の推進に積極的ならば、大きく前進することが出来ると思います。これは男女差別撤廃に関わる活動に限らず、農業、漁業のプログラムでも清潔な水を供給するためのプログラムでも良いんです。どんな問題にしろ男女両方からの視点が必要だからです。
私たちは今ジェンダーバジェティングというものを推進しています。これは先進国、発展途上国に関わらず世界中の政府に年間の予算のなかで女性のために使っている額がどのくらいなのかということを分析してもらうというものです。予算の使い道は実際にその国が今何をしているのかということを示すのでその国が実際女性のためにどの程度活動しているのかということが分かります。

― ステイヌンさんが達成したいと思っているゴールはありますか。

一つに絞るのは難しいですが、男女平等と女性のエンパワーメントは私の中でいつも優先順位のトップにあります。もし私がそのこととは全く関係のない仕事をするとしても、私は常にジェンダーの視点から物事を考えると思います。

― 学生の頃からジェンダーについて興味があったのですか。

そうです。高校生のとき、テレビで同世代の女性の歌手達が少しでも魅力的に見せようと下着に近い格好で踊っているミュージックビデオを見たときに、「これだけが私のお手本なのか」と疑問に思ったのが始まりです。また私には12歳年下の弟がいるのですが、当時6歳だった弟が友達と遊んでいるところを見ると、男の子達は青やグレーの洋服を着て元気に走り回っており、女の子達は部屋の中でおとなしくしてお人形遊びをしているという風に役割がはっきり分かれていました。そこで、これは違うのではないかと感じたこともきっかけになりました。

― このインタビューを読んでいる人にメッセージをお願いします。

そうですね、男女平等の推進などと専門的なことをお話してもピンと来ないかもしれませんが、何が言いたいかというと、私たち全員に何かしらできることがあるということです。もう働いている方なら仕事場で女性が子供のために早退や欠勤をしなければならないとき、非難せずに理解してあげることで職場を女性にとって働き易い環境にすることができます。他には、子ども達に性別にとらわれないことを教えることもできます。女の子達には恥ずかしがらずにもっと意見を述べるように教え、男の子達にはお人形で遊んでも良いんだよ、と言うとか。また学生達も性別にとらわれず将来を選ぶべきです。山崎さんの様な女性の宇宙飛行士もいますし、男性が看護士になるとか。このように周囲の人に伝統的な性別の役割に捉われない、ということを教えていくことが重要です。

― 国際女性デーや今回のセミナーなどのイベントには多くの男性が参加しづらいと考えている様ですが、その人たちに対しても何かメッセージをお願いします。

こういうイベントに男性が参加しづらい気持ちは良く分かります。でも男女平等によって男性が得るところは大きいものがあります。男性にも男性特有の問題がありますよね。例えば労働の負荷がかかりすぎています。男性は女性に比べて残業が多いので、家族と過ごす時間が少なくなってしまっています。また男性は個人的な悩みを相談できる相手や時間が少ないので、自殺や鬱の症状は男性により多く見られます。ですが男女平等が促進されれば男性の男性としての役割の幅が広がり、男性にとっても住みやすい世界になると思います。

「全員何かしらできることはあります。男女平等が促進されれば女性にとっても男性にとっても住みやすい世界になります。」

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(インタビュアー:前田怜那/写真:山口 裕朗)


※UNIFEM=国連女性開発基金、UN Women=ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関

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