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気候変動と地球の温暖化出典「国連の基礎知識」

産業時代の幕開けとともに、大気に「温室効果ガス」が着実に、そして今では危険なまでに増えながら蓄積されてきた。これによって地球上の温度が上昇を続けている。エネルギーを生み出すために化石燃料を燃焼させたとき、森林を伐採して燃やしたとき、二酸化炭素が大気中に排出される。そうした「温室効果ガス」――メタン、亜酸化窒素、その他を含む――の蓄積は増大し、今では地球は巨大な、潜在的には破壊的な影響に直面するまでになった。国連システムはその気候変動に関する活動を通してこの課題に真正面から取り組んでいる(www.un.org/climatechangeを参照)。

1988年、入手可能な最善の研究が問題の深刻さを示し始めたとき、2つの国連機関――国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)――が集まって「気候変動政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC)を設置した。これは気候変動とそれが環境、経済、社会に与える影響について現在の知識を結集し、将来への方向性を示すためであった。パネルは、ボランティアの立場で貢献する何千人もの優れた科学者や専門家の世界的ネットワークで、問題に関する科学的な研究を見直し、問題に対して法的に拘束力のある、調整の取れたアプローチを発展させる。その活動が認められ、同パネルは、アルバート・アーノルド(AI)ゴア・ジュニア元米副大統領とともに2007年ノーベル平和賞を受賞した。

世界の科学者の警告を心に留めて、世界の国々はリオデジャネイロに集まり、「1992年気候変動に関する国連枠組み条約(1992 United Nations Framework convention on Climate Change)」(www.unfccc.int)に署名した。現在、194カ国がこの国際条約に加入している。この条約によって、開発先進国は、自分たちが大気中に放出する二酸化炭素やその他の温室効果ガスの排出量を2000年までに1990年のレベルまで引き下げることに同意した。開発先進国はまた、開発途上国が気候変動の課題に取り組むさいに必要な技術や情報をこれらの国に移転させることにも同意した。

1995年、IPCCが提示した証拠によって、たとえ1992年の目標が予定通りに達成されたとしても、地球の温暖化とそれに付随する問題を防止できないであろうことが明らかになった。その結果、1997年、条約の批准国は京都に集まり、法的に拘束力のある「議定書」に合意した。この議定書の下に、開発先進国は、1990年のレベルを基準として、2008年から2012年までの間に6種の温室効果ガスの総排出量を5.2パーセント削減することになった。現在、「議定書」の締約国は192カ国である。議定書はまた、排出レベルを抑制する費用を削減する目的で、いくつかの革新的な「メカニズム」を設置した。

「京都議定書(Kyoto Protocol)」は、2005年に発効した。議定書が規制する6種のガスのうち、二酸化炭素とメタン、亜酸化窒素は大気中に自然に発生するものの、人間の活動がそのレベルを著しく増大させた。六フッ化硫黄は合成ガスで、大気に対して破壊的な影響を持つ(1キロで2万2,200キロの二酸化炭素に相当する)。ヒドロフルオロカーボン(HFCs)やペルフルオロカーボン(PFCs)も合成ガスで、それぞれ1キロにつき、温室効果という観点から言えば、二酸化炭素の数トンにも相当する。議定書の「クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)(www.cdmbazaar.net)を通して、開発途上国において温室効果ガスを削減し、持続可能な開発に貢献するプロジェクトは、認証排出量削減クレジット(CERs)を受け取ることができ、先進工業国はそれを購入して自国の排出削減コミットメントの一部に充当することができる。

国連が、気候変動がもたらす脅威に取り組むために初めて世論を動員したとき、それは理論であって「証明されていない」と考える人が沢山いた。わずかではあったが、科学的見解の相違もあった。予測モデルを作成するために必要な方法はまだ完全ではなかった。しかし、2007年初め、IPCCは、最新の気候モデルの利用、データの収集と分析、もっとも最新の、専門家の審査を受けた科学論文を検討し、90パーセントの確立を持って、重大な地球温暖化が進行中で、なおかつ強まっていると報告した。同時に、それはある程度は人間の活動に起因するものであり、さらに重要なことは、その影響はすでに現れており、大きな是正措置が採られなければそれはさらに悪化するであろう、と発表した。パネルの報告、「気候変動、2007年」は40カ国の気候科学者や専門家が全員一致で同意し、また113カ国政府が支持した。報告は、温室効果ガスが現在のペースで増え続けるならば、世界の平均温度は今世紀末までに3度(摂氏)上昇することを示している。その結果、より極端な温度、熱波、新しい風のパターン、いくつかの地域のより激しい干ばつ、豪雨域の拡大、氷河や北極氷原の溶解、世界の海面水位の上昇が発生するであろう。そして、熱帯性サイクロン(台風やハリケーン)は減少すると予測されるものの、その激しさは増すと思われる。海水温度の上昇によって、最大風速が速まり、集中豪雨が多くなる。

「兵庫行動枠組み2005-2015年」が、神戸で開かれた2005年国連防災世界会議で168カ国の参加国によって採択された。それには気候関連の災害による災害リスクを削減する際に効果的だと思われる勧告も含まれている。しかし、究極的には、唯一の効果的な道は、大気を持続可能なレベルまで回復させ、かつ地球温暖化の流れを逆転させることである。幸いなことに、そうする手段が概説されている。もし世界の国家と国民がともにその実現に努力するなら、目標は達成されるであろう。「気候変動条約」や「京都議定書」が期待する国家の行動に加え、個人や自治体、非政府組織、その他の機関すべてが果たすべき役割を国連は認めている。たとえば、「UNEP地球のための植樹:10億本植樹キャンペーン(UNEP Plant for the Planet: Billion Tree Campaign)」がある。これは二酸化炭素の蓄積を軽減する目的で2006年に始まった世界的な緑化運動で、2009年末までに74億本の植林が行われた。

2007年初め、国連財団とシグマXI、科学研究協会、は「気候変動に直面して「管理しがたいものを回避し、回避できないものを管理する」というタイトルの報告書を刊行した。その結論は、国際社会は、費用効率の高い政策や現在および将来の技術を活用することによって、今後数十年間に温室効果ガスの排出を大幅に遅らせ、次いで削減することできる、言うものであった。その政策勧告には、車両効率基準、燃料税、効率車や代替燃料車の購入の支援、商業ビルや住宅の設計や効率の改善、エネルギー効率投資のための奨励金の提供や融資などが挙げられた。同報告はまた、国連や関連の多国間機関を通して、必要としている国に対する融資やエネルギー効率向上の技術の展開を国際社会に求めている。

同じく2007年、気候変動の問題に取り組む国際的な協調行動が緊急に必要なことを強調したこれまでにない動きの中で、国連安全保障理事会は、エネルギー、安全保障、気候に関する公開討論を行った。その討論の場で、藩基文事務総長は、「最新の科学的発見に沿って、また、経済社会開発と両立できる、長期のグローバルな対応」を求めた。事務総長は気候変動の問題を「われわれの時代の最重要課題」だとのべて、それを優先事項の1つとし、国家の指導者とこの問題について話し合う多くの特使を任命した。

気候変動に関する統合報告書

「気候変動2007年:統合報告書(Climate Change 2007: Synthesis Report)」が気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から公表された。世界的関心のあるこの問題について重要な調査結果を載せている。その中に以下のような観測があった。

  • 気候システムの温暖化は疑問の余地がない。大気や海洋の温度が上昇、広範にわたる雪氷の融解、グローバルな平均海面水位の上昇が観測されていることから明白である。温度の上昇は地球全体に広がっており、緯度の高い地域ほど高い。
  • 産業革命以降、人間活動による世界の温室効果ガスの排出量は増加し続けており、1970年から2004年までの間に70パーセントの増加があった。現在の気候変動の緩和政策および関係する持続可能な開発に関する実践においても、世界の温室効果ガスの排出量は、今後数十年にわたって増加し続けるとの、多くの意見の一致と多くの証拠がある。
  • 温室効果ガスを現在の、もしくはそれ以上の速度で排出し続けるなら、一層の温暖化の原因となり、21世紀中に世界の気候システムに多くの変化を引き起こすであろう。人為起源の温暖化は、突然のあるいは非可逆的な影響を引き起こす可能性がある。
  • 気候変動が特異で脆弱なシステム(たとえば、極地や山岳社会、生態系など)に与える影響については、新たな、より強力な証拠がある。温度の上昇につれて、悪影響のレベルが増加する。
  • 干ばつ、熱波、洪水は、それらがもたらす悪影響と同様に、増加するという予測にはより高い確信度がある。
  • 開発途上国ばかりではなく、開発先進国においても、貧しい人々や高齢者のような特定のグループの脆弱性がさらに大きくなるとの証拠が増している。さらに、低緯度で開発の進んでいない地域は一般により大きなリスクに直面する。たとえば乾燥地や巨大なデルタ地域である。温暖化による海面上昇は避けられない。
  • 緩和行動を促すインセンティブを作り出すために、多種多様な政策及び手法が各国政府にとって利用可能である。気候変動枠組み条約および京都議定書の注目すべき功績は、世界的な気候問題への対応の確立、一連の国内政策の推進、国際的な炭素市場の創設、さらに将来の緩和努力の基礎となる可能性がある新しい組織メカニズムを構築したことである。このことについて多くの意見の一致と多くの証拠もある。