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飢餓との戦い出典「国連の基礎知識」

食糧生産は1945年に国連が設立されて以来未曾有の勢いで増加してきた。1990-1997年の期間、世界の飢餓人口の数は劇的に減少し、9億5,900万人から7億9,100万人になった。しかし、今日では、その数は再び上昇し、およそ10億の人々は十分な食糧を得ることができない。今日の世界ではすべての男女、子どもが健康かつ生産的な生活を営むに十分な食糧があるにも係わらずである。

飢餓と闘う国連機関のほとんどは、とくに農村地帯の貧しい人口層を中心に、食糧安全保障を強化する目的の社会開発計画を進めている。その設立以来、国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations: FAO)(www.fao.org)は、貧困と飢餓を撲滅する活動を続け、そのために、農業開発や栄養の改善に努めてきた。また、すべての人が活動的かつ健康的な生活に必要な食事療法のニーズや食物の好みに合った十分かつ安全な、栄養価の高い食糧をいつでも実際に、経済的に入手できるようにする食糧安全保障の問題にも取り組んできた。

2009年、世界の飢えた人々の数は10億人に増えた。これは一部食料価格の高騰と金融危機によるものであった。FAOはこうした事態に対する道徳上の憤りを反映させたキャンペーンを開始した。「10億人飢餓プロジェクト」は、オンラインの社会メディアを通して反飢餓に関する請願への署名を求めている(www.1billionhungry.org)。

FAOの世界食糧安全保障委員会(Committee on World Food Security)は、国際食糧安全保障状況について監視し、評価し、協議する。委員会は飢餓と食糧不足の主要要因を分析し、食糧の利用の可能性と在庫を評価し、食糧安全保障に関する政策を監視する。FAOもまた、その全地球情報早期警報システム(Global Information and Early Warning System)」を通して、気象衛星やその他の衛星による監視を中心とした広範な監視制度を実施している。それを通して、食糧生産に影響を及ぼす状態を見守り、食糧の供給に潜在的脅威が生じた場合はそれについての警戒を政府や援助国に呼びかける。

FAOの「食糧安全保障特別計画(Special Programme for Food Security)」は、2015年までに飢餓人口の割合を半減するとのミレニアム開発目標(MDG)を達成するためのもっとも重要なイニシアチブである。100カ国以上のプロジェクトを通して、飢餓、栄養不良、貧困の撲滅のための効果的解決を進める。それは、2つの方法で食糧安全保障を達成する。すなわち、集中的な全国に及ぶ家食糧安全保障計画を実施する国の政府を支援すること、地域経済機関と共同で、貿易政策のような領域で食糧安全保障を達成するために地域の特性を最大限に利用すること、である。

FAO主催の1996年世界食糧サミットで、186カ国が「世界食糧安全保障に関する宣言と行動計画(Declaration and Plan of Action on World Food Security)」を承認した。これは2015年までに飢餓人口の割合を半減させることを目指し、かつ普遍的な食糧安全保障を達成するための方法を概説している。2002年の世界食糧サミットの参加者は、2015年までに飢餓人口をおよそ4億人に半減させるとのコミットメントを再度表明した。サミットは、国の食糧安全保障との関連で、適切な食糧への権利を漸進的に実現することを支援するガイドラインを策定するようFAOに要請した。これらの任意のガイドラインは、「食糧の権利ガイドライン」としても知られるが、2004年のFAO理事会で採択された。

2009年、食糧安全保障に関する世界サミットは、できるだけ早い時期に飢餓を撲滅するようすべての国に義務付けた宣言を採択した。サミットは、開発途上国の農業支援を強化し、2015年までに飢餓人口を半数に減少させる目標を確認するとともに、気候変動が食糧の安全保障にもたらす課題に取り組むことに合意した。

国際農業開発基金(International Fund for Agricultural Development: IFAD)」(www.ifad.org)は、世界のもっとも貧しい地域の農村の貧困と飢餓と闘うために開発資金を提供する。1日1ドル未満で生活する世界のもっとも貧しい人々の大多数は、開発途上国の農村地帯に住んでいて、農業やそれに関連した仕事によって生計を立てている。開発援助がそれをもっとも必要としている人々に実際に届くようにするために、IFADは、貧しい農村の男女を開発に直接参加させ、彼ら自身やその組織との共同で、自分たちの地域社会で経済的に自立する機会を作り出せるようにする。

IFAD支援のイニシアチブによって、農村の貧しい人々が土地や水、資金、技能や組織を利用できるようにする。また、市場に参入し、起業の機会にアクセスすることもできるようにする。さらに、IFADは、彼らが知識や技能、組織の向上を図り、自身の開発を主導し、自分たちの生活に係わる決定や政策に影響を与えることができるように支援する。

1978年の操業開始以来、IFADは838件のプロジェクトやプログラムに対して115億ドルの投資を行い、100以上の国や地域の農村の3億5,000万人の貧しい人々がその恩恵を受けた。同時に、IFADのパートナーは183億ドルの協調融資を行った。

世界食糧計画(World Food Programme: WFP)(www.wfp.org)は、グローバルな飢餓と闘う国連の機関で、第一線で活躍する機関である。2010年、WFPは70カ国以上の国々の1億人の人々へ食糧援助を行った。IFADが現金で受け取る寄付のおよそ半分は開発途上国において食糧の4分の3の購入に充てられる。現地経済の強化を図るために、WFPは、他の国連機関や計画に比べ、開発途上国からより多くの物品とサービスを購入している。また、国連人道航空サービス(UN Humanitarian Air Service)を通して世界の各地の人道支援コミュニティへ要員の航空輸送を提供している。世界の200カ所以上の場所へ飛んでいる。

1962年に世界の飢餓問題に係わって以来、WFPの飢餓との戦いは緊急援助、救援と復興、開発援助、特別の支援活動に焦点を当ててきた。緊急事態が発生すると現地に最初に現れるのがWFPで、戦争や内戦、干ばつ、洪水、地震、ハリケーン、作物の凶作、自然災害の被災者に食糧を届ける。緊急事態が治まると、WFPは食糧を使って地域社会がその破綻した生活や生計を再建できるように支援する。2010年、WFPの支出のおよそ60パーセントが長期化する危機のためであった。このことが示していることは、これらの国々で、飢餓の連鎖を断ち切ろうとするWFPの継続するコミットメントである。人道支援は単に生命を救うばかりではなく、長期の食糧安全保障と開発のための重要な投資の役割を果たしている。

食糧と食糧関連の援助は、飢餓と貧困の永遠の連鎖を打ち破る闘いでもっとも効果的な武器の1つである。開発途上国の多くがこうした状態に追い込まれている。WFPの開発プロジェクトは、学校給食のようなプログラムを通して、とくに母親や子どものための栄養に焦点をあてている。2008年には2,260万人の少女や少年が全大陸で学校給食計画のもとに食事をとることができた。およそ200万人の少女と160万人の少年はさらに家へもって帰れる食糧を与えられた。これは、家族が子供たちを学校へ送るようにさせるためのインセンティブを与えるもので、実際に行われている。WFPはまた、防災など、多くの領域で政府や国民を支援するために、国内の能力の向上やインフラの整備を進めている。

飢餓の連鎖を打ち破るには、危機の根本原因を解決する長期的対策を人道的対応に反映させなければならない。こうした課題に取り組むために、WFPは、社会の弱者層に焦点を当てたプログラムを開発した。学校給食のような食糧・栄養プログラム、訓練のための食糧や労働のための食糧などの生活支援プログラム、母と子の栄養のような世代間の飢餓循環を打破するプログラム、エイズ感染者への栄養支援などである。

WFPの人道援助や開発プロジェクトはすべて任意の拠出金によってまかなわれる。政府が主要な資金源であるが、WFPの企業パートナーがそのミッションのためにますます重要な拠出を行っている。2010年12月現在、WFPは、71カ国政府を含め、78の資金源から36億ドルの拠出を受けた。44の援助国政府の拠出レベルは最近の平均を越えていた。これはWFP活動に対する継続する支援と一層強化されたコミットメントを示すものである。WFPはまた、およそ2,840のNGOsとともに活動する。彼らの草の根、技術的知識は、どのようにして真に支援にふさわしい人々に食糧支援を配達するかを評価するにあたって不可欠である。