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教育出典「国連の基礎知識」

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UN Photo/Shareef Sarhan

近年、教育の分野では長足の進歩があり、就学児童の数は大幅に増加した。それにもかかわらず、2010年、6,740万人の子どもたちは依然として初等教育を受けられず、また入学しても多くの子どもは貧困、家庭内の事情や社会のプレッシャー、しきたりのために退学を余儀なくされた。いくつかの国では内戦、テロ行為、暴動のために就学が妨げられた。膨大な識字努力にかかわらず、7億9,600万人の成人は最低限の読み書きもできない。そのうちのおよそ3分の2は女性である。「国連識字の10年(2003年-2012年)」は、こうした緊急の問題に注意を喚起することを目的としたものである。

調査によると、教育へのアクセスと改善された社会指数との間に密接な関係があることが分かる。学校教育はとくに女性に対して特別の相乗効果を持っている。たとえば、教育を受けた女性は典型的により健康であり、子どもの数が少なく、家計収入を増やす機会を多く持つ。そうした女性の子どもは死亡率が低く、栄養状態も良く、おおむね他と比べて健康である。少女や女性が国連全体で多くの教育計画の対象となっているのは、こうした理由からである。教育にはさまざまな要素が絡み合っていることから、国連システムの多くの機関は多種多様な教育・訓練計画の資金援助や開発を行っている。それは伝統的な基礎教育から行政、農業、保健サービスのような領域における人材育成のための技術訓練や人々にHIV/エイズ、薬物の乱用、人権、家族計画、その他多くの問題について教育する一般市民啓発キャンペーンにまで及ぶ。たとえば、ユニセフは、年間事業費の20パーセントを女子の教育を中心とした教育事業に振り向けている。

教育の領域での先導機関は国連教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization: ユネスコ)(www.unesco.org)である。ユネスコは他のパートナー機関と共に、すべての子どもが子どもにやさしく、良質の教育を行うように訓練された教師のいる学校で学ぶことができるようにすることを目指している。ユネスコは、2015年までに普遍的な、良質の初等教育を達成するというもっとも野心的な国連の機関間キャンペーンの事務局を務めている。このキャンペーンの目標は、2000年にセネガルのダカールで開かれた世界教育フォーラムで160カ国以上の国が採択した「行動の枠組み」に基づくもので、その年の9月に採択された「ミレニアム宣言」の中でも世界の指導者が再確認した。教育フォーラムでは、各国政府は、少女や働く子ども、戦争の影響を受けた子どもたちに特別の注意を払いながら、すべての人のために良質の教育を実現すると公約した。援助国や援助機関は、基礎教育の達成に努めるいかなる国も資金不足のためにその事業を妨害されるようなことはあってはならないと誓った。フォーラムは、6回のハイレベルの地域会議の成果と、これが最大の動機となったことであるが、史上最大かつもっとも包括的、統計的に正確な教育の実績調査、「すべての人のための教育評価」から生まれた。

ユネスコの教育部門は、あらゆるレベルで、すべての人に教育を提供すること、特別のニーズと社会の主流から取り残された人々の成功、教師の養成、労働人口の能力の育成、教育による成功、非公式生涯教育の機会確保、教育および学習を向上させる技術の利用、教育の機会の拡大に焦点を当てている。こうした活動は、「2000年ダカール行動枠組み」、「国連識字の10年、2003-2012年」、「国連持続可能な開発のための教育の10年、2005-2014年」、「教育・エイズに関する世界イニシアチブ」との関連で進められている。また、ミレニアム開発目標の達成にも努め、すべての少年、少女が初等教育を終えられるようにすること、できれば2005年までに、初等教育や中等教育における格差を解消することを目指している。

2010年末で、180カ国の8,500校以上がユネスコの「共同学校プロジェクト・ネットワーク(ASPnet)」に参加している。国際社会でともに生活することを学ぶにあたっては教育が果たす役割は大きい。このプロジェクトはそうした教育の役割を高める方法や手段を作り上げる国際的なネットワークである。また、100カ国以上の国におよそ3,700のユネスコクラブやユネスコ・センター、ユネスコ協会が設けられている。主に教師と学生で構成され、幅広い教育活動や文化活動を行っている。

若者と学校

第2のミレニアム開発目標である初等教育の完全普及を宣言したことに加え、国連は教育の分野で数多くのイニシアチブを進めてきた。

「国連サイバースクールバス(UN Cyberschoolbus)」(www.cyberschoolbus.un.org)は、受賞歴のあるウェッブサイト(ホームページ)で、小学生から中学生まで以下のようなことができる。

  • 国際連合の起源、目的、機構について学ぶ。
  • 加盟国についての情報を入手する。
  • 人権や平和と安全保障から気候変動まで、議題となっている世界の課題とは何か、なぜ問題なのか、を知る。
  • グローバルな問題についての解決策を探ることに参加する。
  • ライブ・ビデオ・チャットを通して幅広い問題について国連の外交官や専門家と意見を交換する。
  • さまざまな美術コンテストに参加する。
  • 子供や若者を対象にした国連本部での行事について知る。

教師はこの年齢層の子供たちにグローバルな問題について教えるための授業計画を参考にし、国連の課題となっている問題に関する教育プロジェクトについて世界の他のクラスと協力できる。サイバースクールバスは200以上の国や地域からアクセスでき、英語、スペイン語、フランス語、ロシア語で利用できる。

若者は国連の最高の優先順位であると同時に、国連を支援する新たな世代である。毎年、何百回という模擬国連が小学校から大学までのさまざまな教育レベルで、様々な形で開かれる。模擬国連世界大会(Global Model United Nations conference)もその1つである。現在の法律、政治、ビジネス、芸術界の指導者の多くは若者のころに模擬国連に参加した。模擬国連に参加することによって、国連の活動について理解を深め、かつ外交や紛争解決の技能を学ぶことができる。世界中から集まった若者が国際問題の複雑さに曝されるからである。学生は外交官として行動し、国連総会や国連の他の多国間機関の模擬会期に参加する。こうした会議の準備を通して、学生はリーダーシップ、調査、文書作成、演説、問題解決の技能を磨くことができる。そうした技能は生涯を通して利用できる。

毎年、国連の4つの行事を記念してテレビ会議(videoconferfence)が中学生、高校生を対象に行われる。すなわち、奴隷および大西洋奴隷貿易犠牲者追悼国際デー(3月25日)、世界環境デー(6月5日)、国際平和デー(9月21日)、人権デー(12月10日)である。これらの記念日の行事には、世界中の学生がテレビ会議を通して参加し、若者の聴衆やニューヨークの国連コミュニティにつながる。すべての行事はライブでインターネットを通して配信され、また学生は国連サイバースクールバスのウェッブサイトを通してリアルタイムで質問やコメントを行う機会を持つ。

アカデミック・インパクト

国連アカデミック・インパクト(United Nations Academic Impact)(www.academicimpact.org/engpage.php)は、人権、識字、持続可能性、紛争解決などの領域で普遍的に受け入れられた10の原則を支持して、国連と高等教育機関とを結ぶグローバルなイニシアチブである。世界平和や経済社会開発に貢献するという高等教育の周知の可能性を利用しようとするものである。アカデミック・インパクト計画の10原則を正式に支持することによって、教育機関は以下の原則に対してコミットメントを行う。

  • 教育がその実現を推進しようとし、かつそのための支援に値するとしている国連憲章に固有の原則
  • 探求、意見、演説の自由など、人権
  • ジェンダー、人種、宗教、民族を問わずすべての人々のための教育の機会
  • 関心を持つすべての個人が高等教育の追求に必要とされる技能および知識を取得する機会
  • 世界の高等教育制度における能力の育成
  • 教育による世界市民としての意識の奨励
  • 教育による平和と紛争解決への貢献
  • 教育による貧困問題への対処
  • 教育による持続可能性の促進
  • 教育を通して異文化間の対話と理解、不寛容の排除の促進

「アカデミック・インパクト」は、それぞれの参加大学は毎年これらのコミットメントの少なくとも1つに対する支持を行動で示すよう求めている。