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農業開発出典「国連の基礎知識」

地球上の人口の大多数は依然として農村地帯に住み、直接的または間接的に農業によってその生計を立てている。この数十年の間に農村の貧困が拡大し、深刻化したが、工業化を急ぐあまり、農業部門に対する投資は十分でなかった。国連はさまざまな方法でこの不均衡を是正すべく努めてきた。

国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations: FAO)」(www.fao.org)は、農業、林業、漁業および農村開発のための先導機関である。FAOは、広範な技術援助プロジェクトを通して具体的な援助を開発途上国に行っている。とくに優先的に行っていることは、農村開発と持続可能な農業を奨励することである。これは、天然資源の保存と管理を進める一方で食糧の増産と食糧安全保障の強化をはかるもので、長期的な戦略である。

持続可能な農業開発を進めるにあたってFAOが奨励していることは、環境、社会、経済の要因を考慮に入れて開発プロジェクトを策定するという統合したアプローチである。たとえば、ある地域では、特別な作物の組み合わせによって農業の生産性を改善し、農村の住民に燃料用のまきを提供し、土壌を肥やし、浸食作用を緩和することができる。

FAOは常時およそ1,000件の現地プロジェクトを実施している。プロジェクトは総合的な土地管理プロジェクトや緊急の対応から政府に対する林業計画やマーケティング戦略に関する政策やプランニングについての助言にまで及ぶ。 FAOは一般に以下にのべる3つの役割のうちいずれか1つの形をとる。 FAO自身の事業計画を実施すること、他の機関に代わって事業計画を実施すること、国家プロジェクトに対して助言や管理支援を提供すること、の3つである。

FAOの投資センター(Investment Centre)は、開発途上国が農業開発や農村開発に対する投資プロジェクトを策定するのを支援する。これは国際的な融資機関(IFIs)とのパートナーシップのもとに行われる。毎年、同センターは700回以上のフィールド・ミッションを派遣する。1964年以来、同センターとパートナーの融資機関は農業・農村開発にたいして890億ドルの投資を可能にした。そのうち、国際的な融資機関は530億ドル以上の融資を行った。

FAOの活動は土地と水資源の開発、農産物と畜産物の生産、林業、漁業、経済・社会・食糧安全保障政策、投資、栄養、食品基準と食糧の安全、第一次産品と貿易に及んでいる。たとえば、以下の通りである。

  • 2010年、FAOとハイチ農業省は重要な春の栽植季節に地震の被害を受けた農村地帯の7万2,000戸の農家に対して農業支援を行った。この地域はハイチの農業生産の60パーセントを生産する。この支援によって、36万人の人々が食糧を生産し、かつ現地生産食糧を消費することができた。それに加え、余った食糧を販売し、その収益で保健や教育の経費に充てることができた。
  • 「ンジャ・マルフク・ケニア」は、ケニア政府が進める10カ年計画で、FAOがその成立を支援した。食糧の増産を図り、ケニアの慢性的飢餓を削減することを目的とする。当初は、地域社会の能力育成、学校給食、天然資源の保護を支援した「食糧と労働」活動に焦点が当てられ、5万世帯が参加した。2005年6月から2010年12月までに7万7,140人の農民からなる2,593コミュニティ・グループに対して8,930万ドルの補助金が支給された。さらに、854人のコミュニティ・グループ・ファシリテーターが研修を受けて、技術的能力を向上させるグル―プへ配属された。
  • 1976年の創設以来、FAOの「技術協力計画(TCP)」はおよそ8,800件のプロジェクトに対して11億ドルの資金援助を行った。また、エドアルド・サウマ賞も管理する。これはTCP融資のプロジェクトをとくに効果的に実施した国もしくは地域の機関を称えて与えられる賞である。

国際農業開発基金(International Fund for Agricultural Development: IFAD)(www.ifad.org)は、農村に住む人々が貧困を克服できるようにする農業開発計画やプロジェクトに融資する。IFADは、貧しい農村の人々の経済的向上と食糧の安全を促進する計画やプロジェクトに融資や無償資金を提供する。IFAD支援のイニシアチブによって、こうした人々が生産的な農業を行うために必要な土地、水、財政的資源、農業技術とサービスを受け、かつ収入を増やす一助となる市場や企業機会を利用できるようになる。また、貧しい農村の人々の知識、技能、組織を構築する。

IFAD支援のプログラムやプロジェクトから恩恵を受ける者は、世界でももっとも貧しい人々である。すなわち、小農、農村で土地を持たない人、遊牧民、昔ながらの漁業社会、先住民であり、そしてすべての社会層を通して貧しい農村の女性である。IFADの資源の多くは、非常に緩やかな条件で貧しい国々に融資される。返済期間は10年の猶予期間を含めて40年以上で、手数料は年に0.75パーセントである。IFADがとくに力を入れていることは、飢餓に苦しむ極貧の人々の比率を2015年までに半減するというミレニアム開発目標を達成することである。

1978年の設立以来、IFADは100カ国以上の国や独立した地域で838件のプロジェクトに対して115億ドルの投資を行い、3億5,000万人以上の貧しい農村の人々がその恩恵を受けた。また、受益国の政府や融資機関が、プロジェクト参加機関も含め、101億ドルの拠出を行い、多国間、2国間、その他の援助機関がさらに82億ドルの協調融資を行った。このことはおよそ総額298億ドルの投資を示し、IFADが投資した1ドルにつき、追加資源として2ドル近くを動員することができたことを意味する。2010年12月、IFADは「2011年農村貧困報告書( Rural Poverty Report 2011)」を発表し、農村の貧困、そのグローバルな影響、その撲滅の見通しについて包括的に概観した。